ロックソック(Lawksawk)  


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藩邸付近のパゴダからの光景


 これまでロックソック藩の名前が知られることは殆どなかったが、2000年に最後のソーボワの娘による自伝が出版され、日本でも訳出されたため、初めて知られるようになった。
 ロックソックの町のホウ(藩邸)は大戦中に焼失し、跡地は現在警察の施設となっており立ち入ることはできないが、作品中で度々登場する作者の住んだ家は現存しており、当時の様子が偲ばれる。
   

○ 地理

 シャン州中部に位置する。 他のシャン諸藩と同様に藩全体が山地であり、南北に走る幾筋かの山脈と、草原に覆われたなだらかな丘陵地帯が広がる谷間の盆地から成る。  藩の中・南部の丘陵地帯は木の無い剥き出しの土地が多いが、森林もまだ豊富に残されている。 特に高原地帯では、草原にオークや松の木立が散在する公園のような美しい風景が見られる。
 石灰岩で形成された山脈を水源とする幾つかの川と無数の沢があり、藩の9割の地域で灌漑が行われる等、水利にも恵まれている。

 支藩のモンピン(Mong Ping)を含め、63地区の285ヶ村から成る。 面積は2,196平方マイルと広いが、内戦による荒廃のため人口は少なく、15,000人程度に留まる。 人口の半数をシャン族、その他の3/4がダヌ族である。 他にタウントゥ族、タウンヨー族、パラウン族も居住する。
 シャン族とダヌ族は主に谷間の盆地に居住し、灌漑農耕を行っているが、タウントゥ族は丘陵の斜面で農耕を行っている。 また、パラウン族は主に阿片栽培を行っている。

 藩内では主として地元で消費される米の他、綿花、オレンジ、ピーナッツ等の商品作物も栽培され、ビルマ全土へ出荷されている。
 地元の綿花栽培を背景にした綿織物の製造が行われている他、素焼の陶器や漆、紙の製造も行われている。




○ 歴史

 かつてロックソックはヨンホエ藩の一部であったが、1788年、或いはそれ以前に、ミョーサの下で独立した藩となった。 藩主一族は何度か入れ替わるが、1847年に再びヨンホエ藩に併合され、その後旧藩主一族による簒奪、ライカ藩への併合と変遷を経るが、1866年にヨンホエ藩ソーボワの甥のサオ・ウェン(Sao Weng)が、藩主となり、ソーボワの位を与えられた。

 しかし、1883年にモンナイ藩がビルマに対して反乱を起こすと、同盟関係にあったロックソックもビルマの攻撃を受け、サオ・ウェンはチェントンに亡命し、藩は再びヨンホエ藩に併合された。
 更に1884年には反乱が発生し、ヨンホエ藩から派遣されていた代官が追放されるが、1886年にビルマのリンビン王子がビルマ王位を狙って反乱を起こすと亡命中のサオ・ウェンもこれに追随して藩に戻り、再びソーボワの地位に復帰した。

 だがビルマがイギリスに併合されイギリスがシャン州にも勢力を伸ばすとサオ・ウェンはイギリスへの服属を拒否、イギリスと交戦するが破れ、再びチェントンに亡命、チェントンがイギリスの支配下に入ると更にチェンフンに亡命する。 その後も藩の奪還を狙い、イギリスと対立を続けるが、再び藩に戻ることなく1896年にモンセで死去した。

 一方、ロックソック藩は、タムパックの前ミョーサの息子のクン・ヌーがイギリスによってソーボワに任命された。
 クン・ヌーの父はタムパックのミョーサであったが、ビルマによってその地位を追われていた。 しかしイギリスに対する貢献が認められてロックソック藩の藩主に任命され、1887年10月にソーボワに就任した。

 絶え間ない内戦によって藩内は荒廃していたが、イギリスの支配はシャン州に政治的安定をもたらし、ロックソックもクン・ヌーの下で復興し始めた。 しかし藩の被害は大きく、1898年の段階でも人口・税収共に内戦以前の水準を大きく下回っていた。

 クン・ヌーが1900年に死去すると、長男のサオ・クン・スックが後を継いでソーボワに任命された。




○ 風土 − 百年前の風景 −

 著名な名所旧跡等は無い。 首都ロックソックには7つの僧院があり、建築物としての壮麗さは無いものの町を見下ろす高台に位置し、そこからの眺めは素晴らしい。 藩邸(ホウ)も同じ高台にある。

 町の中心付近には60平方ヤード程の広さを持つ市場があり、建物こそ粗末だが商品は豊富で、市の立つ日は大いに賑わっている。




○ 藩邸(ホウ)

 かつての藩邸とその周辺の様子についてはネル・アダムスの著作に詳しい。 作品中に登場する藩主が住んだ本邸は大戦中に焼失したが、作者が住んだ藩主の息子の家は今も残る。


            現在のロックソック藩藩邸




 (参考文献)

Scott, J.George and J.P. Hardiman. (1901). Gazetteer of Upper Burma and the Shan States. Rangoon: The Superintendent. Government Printing.

Chiefs and Leading Families in the Shan States and Karenni. Rangoon: Goverment of Burma..

Adams, Nel (2000). My Vanished World. Cheshire: Horseshoe Publications.
(ネル・アダムス(森博行訳)[2002] 『消え去った世界 - あるシャン藩王女の個人史 - 』 文芸社)




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