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| これがトッププレーヤーに愛されたセントビンセント製「プロスタッフ・ミッド」。 |
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ラケットの性能はまさに日進月歩。メーカー各社からは毎年、数十種類のニューモデルラケットが発売されています。しかし、その激しい世代交代の流れの中で15年以上もプレーヤーの支持を得て、揺るぎないステイタスを確立している名器があります。
ウイルソンの「プロスタッフ6.0」。 かつて「プロスタッフ・ミッド」という名でステファン・エドバーグやクリス・エバートらに愛用され、現在ではピート・サンプラスやマリー・ピエルスたちに使用されているラケットです。もちろんトッププロだけではなく一般プレーヤーの間でもトーナメントモデルの定番として高い支持を受け、現在もテニスショップの店頭に並んでいます。
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| 「プロスタッフ・ミッド」は84年の発売当初から90年ごろまでカリブ海に浮かぶ小島、セントビンセント島の工場で生産されていました。その後、メーカーは生産を台湾工場、中国工場に移し、名称も「プロスタッフ・リミテッド」、「プロスタッフDB6.0」、「プロスタッフ6.0」に変更。セントビンセント製は現在では販売されていません。もちろん生産工場は違ってもラケットの基本スペックは変わりません。それなのに80年代から「プロスタッフ・ミッド」を愛用してきたプレーヤーの中には、ステファン・エドバーグやピート・サンプラスなどセントビンセント製にこだわりを持つ人が少なくないのです。 |
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| 「W」マークの上にはかすれてはいるものの、「MADE
IN ST.VINCENT」の文字が書かれている。 |
| テニパラのお客さんの中にも、セントビンセント製しか使わないという人がいます。「台湾製や中国製はセントビンセント製とは別物で手に持ったときの重量感やボールを打ったときの打感がまったく違う」と彼は言います。セントビンセント製はビンテージ市場でも人気が高く、現在でも新品状態ならば20万円近い値をつけることもあります。 |
| 昨年12月。そのセントビンセント製「プロスタッフ・ミッド」を原型に最新素材のハイパーカーボンを使用した「ハイパープロスタッフ6.0」(テニパラ価格3万5000円)が、国内3000本のみ限定発売されました。当初メーカー側は限定発売ということで専門誌などでのPRは行わないという話でしたが、各誌から取材リクエストが相次ぎ、11月には誌面に紹介記事が載っています。また、テニパラでもホームページなどで事前に情報を流した結果、テニパラが仕入れた40本のうち、30本の注文を発売前に受けるという人気ぶりでした。12月に現物が店頭に並んでから数日で完売。「ハイパープロスタッフ6.0」の何が支持を得たのでしょうか。 |
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| 「プロスタッフ・ミッド」を原型にして作られた「ハイパープロスタッフ6.0」。使い心地はセントビンセント製に限りなく近い。 |
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| 年代順に並べられたラケット。プロスタッフの歴史の深さが感じられる。 |
| 今や伝説となりつつあるセントビンセント製独特の打感を最新素材ハイパーカーボンを使って“復刻”させた点こそ、支持を得た秘密ではないかと思います。素材はハイテクだけど使い心地はセントビンセント製に限りなく近い。それが多くの人の購買欲をくすぐり、さらに“3000本限定”という販売戦略が拍車を掛けたのです。
「プロスタッフ・ミッド」の誕生から現在に至るまで、セントビンセント製にまつわるエピソードは数多く残されていますが、昨年の「ハイパープロスタッフ6.0」の爆発的な売れ方は、セントビンセント人気を裏付ける象徴的な出来事でした。 |
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取材構成/岡田洋介 |