スイス シャトーデー ・ ロシニエール

 

 

7月5日(火) ロシニエール Rossiniere ・ ロングラン湖周辺 Lac de l'Hongrin

シャトーデー Chateau-d'Oex → ロシニエール Rossiniere (鉄道)
ロシニエール散策 Rossiniere village
ロシニエール Rossiniere → モンボヴォン Montbovon → ロングラン湖周辺 Lac de l'Hongrin → エーグル Aigle (徒歩)
エーグル Aigle → シャトーデー Chateau-d'Oex (鉄道)

 

 

Chateau-d'Oex シャトーデー

発音しない文字が尾ひれ派ひれ付く仏語のスペリングは難解だ。

シャトーが城の意味であることは薄々理解していたが

それがフランス語の単語であることは

恥ずかしながら、この旅に出るまで知らなかった。

 

しかし、この地に城なんてあるのだろうか?

この町の目立ったシンボルは、

牧草地が広がる丘の上に建つ三角帽子のような塔だろう。

その尖塔のある教会の背後の谷間には、低い雲がたちこめている。

怪しい天気の早朝である。

 

ユースホステルで相部屋だった

バーゼルの高校生ブルーノ君は

長身のバレーボール選手。

 

学校もクラブも休暇なので、兄貴のマウンテンバイクを譲ってもらい自転車旅行を企てたとのこと。

どこから走ってきたのか尋ねてみたところ、なんとモントルーから峠を越えてきたというではないか!

彼がもっていたサイクリングマップをみせてもらうと、確かにモントルーからの山を越えるコースが示されている。

 

名作アニメ「わたしのアンネット」のクライマックスシーン

モントルー滞在中の名医を呼び寄せるため、吹雪の中ルシエンが命がけで越えた雪山の峠。

そのルートを、徒歩で辿ってみようかと考えていたのだが

そこがサイクリングコースとなっているのであれば、貸し自転車を利用しない手はない。

早速、ユースホステルの人に付近にあるレンタサイクルの店を教えてもらった、ブルーノ君の励ましもあり

俄然やる気満々となったのだが・・・

あいにく小雨がパラツキはじめた。

天気が悪いのであれば、峠越えを中止し

Vevey のネスレ(Nestle)本社で菓子の試食、・レマン湖対岸のエビアン(evian)で天然水がぶ飲み等をして過ごす

という魅力的なアイデアも温めていた。

それに、山岳地帯を徒歩移動するなら地図を探したい。

観光+野暮用を片づけてからシャトーデーに戻ってくればよいので

サイクリング日和を明日に期待し延期しつつ、YHに連泊することにする。

 

雨カッパを羽織って、一人自転車に跨るブルーノ君の健闘を讃えながら

とりあえず、今日はレマン湖周辺の観光スポットでチョコレートとエビアン水を腹に詰め込んでくると告げ

にが笑いを浮かべる彼がYHから出発するのを見送って

独りシャトーデー駅へと向いローカル線に乗車する。

 

*          *          *

 

そして、列車は名作アニメ「わたしのアンネット」の舞台である

ロシニエールに差し掛かかったのだが・・・

はて?どうしたことか?

 

小雨が止み、わずかながら日の光が

雲の間から差し込みはじめたではないか!

 

早速、列車を降りることにして

牧場の広がる山の斜面を

バックにした駅前の

まっすぐな道を歩んでいく。

すると、この地方独特の形状の古い民家が密集した地区に

公道に面した村の広場が現れた。

 

時計台の手前、噴泉を取り巻いた

ロシニエール村の中心的空間。

アニメーションで描かれていた、

村の人々や牛が集まる活気ある雰囲気を思い起こしてみる。

水飲み場は東屋に覆われていたと思うが

現在は取り払われ撤去されてしまったのだろうか?

 

時計台から右方向の路地裏を通り抜け

坂道を上がっていくと、村の小学校が見えてきた。

そして、左手の丘に錐型の鍔を深く被った村の教会が建っている。

 


学校、そして教会は、

この小さな村の人々の日常、人生の節目を見守り続けているのだろう。

アンネット達の生活にも大きく関わり

村の人々のライフサイクルの一部となっているパブリックスペース。

 

「わたしのアンネット」登場人物の人間的成長を描ききった物語の最終回、

結婚式と卒業式というセレモニーでストーリーを締めくくりつつ

主人公達は次段階の人生ステージへとその一歩を踏み出す。

終わりは始まり、平凡なスイス山村の何気ない人間生活の営みは続いていくのだ。

 

この地域で、多数派な民家建築である合掌組のログハウスが並んでいる。

果たしてアンネットの家は、どの家屋をモデルとしたのだろうか?

 

丘の中腹から、教会と学校を眺めてみた。

現役校舎の奥にある建家が、アンネットが通っていた旧校舎なのだろう。

 

ルシエン宅のモデルは

簡単に推定できた。

平屋建ての、村の中では一風変った形状の家屋である。

 

ルシエンの家のすぐ脇を通り抜け

沢に掛かる小さな木橋を渡って進み、居合わせた爺さんにボンジュールと挨拶をする。

 

すると、けたたましい犬の鳴き声が、遠くから響き渡った。

 

茶色と黒の大形犬が2匹

厳重な檻に入れられている。

アンネットの家で飼っていた

ペーテルという犬と同じ品種であろう。

 

愛嬌がありながらも、精悍で俊敏そうな狩猟犬だ。

ダックスフンドとドーベルマンを混ぜ合わしたような感じだろうか?

想像出来ないが、そんな感じの難しい配合だ!

 

合掌作りの集落を抜けて

青い空に綿菓子雲、

緑色に広がる牧草地、

長閑な山村の丘陵をテクテクと登っていく。

 

点在する民家が途切れ、

しばらく上がると、斜面に建つ牛舎がお目見えした。

 

動きの緩慢な牧草地の日溜まり

 

付近には、牛たちが寝そべっている

相対性理論によると

超高速で移動する物体内では

時計の針が遅れるそうだが

現代の物理学で、牛の寝そべる高原での

スローな時間の流れというのは、解明できていないのだろうか。

 

牧場の小屋で、双子のようによく似たチビッコ兄弟と出逢う。

カメラを向けていると、すぐさま人なつこい表情の兄が弟を呼び寄せた。

山村で生まれた、そのまんまの飾り気なくすれていない、フランス語を話す少年。

 

アニメ「アルプスの少女ハイジ」の山羊飼い少年ペーターは

仏映画「禁じられた遊び」に登場する農家の少年をイメージとして

キャラクター設定の基礎としたのだそうだ。

 

彼は少年ミッシェルのように木訥で優しい兄貴であるのかもしれない、

我が儘そうな雰囲気の弟にたいしての面倒見はよさそうな感じがする・・・

などと、勝手な想像を膨らましたものの、この直後、彼は弟を狙い弓矢を射って遊び始めた

それは、アンネットの弟ダニーを苛める、ルシエンの状態かのようでもあった。

 

牧場の丘でのんびりしたあと、

時計台まで下り、村の広場へと戻ってきた。

 

広場に隣接している

村唯一?の商店に踏み込んでみる。

 

わたしのアンネットに

登場した生姜パンのアニメ画を、店員に見せたところ

すかさず、クリスマスの時期しか作っていないとの回答。

とりあえず、熊形状の生姜パン

ツリーに飾ってある物語のシーンは事実であることが判明。

 

辺りで他に食料品店は見当りそうもない、昼前であるがクロワッサンを買喰いすることにし

空がすっかり快晴となったので峠越えを決意する。

徒歩移動に備えてクッキーなど、とりあえず腹に入るものを購入した。

 

店内には、観光パンフレットなども置いてあり案内所的なサービスも

兼ねている様子。

ロシニエール村 案内冊子

店員に、アンネット達が登下校で渡っていた石橋がどこにあるのかを尋ねてみたところ、

アニメ画をじっくりと見ながら、隣駅の La Tine にあるとの情報を教えてくれた。

 

*          *          *

 

交通量の少ない公道を、ボチボチ歩いていく。

時折、高速スピードで走り抜けていく自動車があるので

路肩に避けながら気をつけて進む。

公道から湖ごしに

シャトーデー方向の景色を眺めてみた。

 

草原の斜面に立ち、山々を見つめているアンネットの後ろ姿が脳裏に浮かぶ、

山姿はアニメで観た光景だ、ロケハンのポイントであろう。

公道から外れ、La Tine への牧草地を歩いていくと、

線路に平行する川に架かった、石橋を発見。

 

橋の周りの情景は

アニメで観た雰囲気に似ていたが

沢へ降りて橋梁を眺めたところ

どこかしら違う形状ではないか!残念!

 

ロシニエールの駅から坂を下ったところにも石橋があったのだが、あちらが本命の橋だったのかもしれない。

商店の店員からのガセネタであったが、橋を渡るところの感じなんかはアニメ画にかなり似ているので

まぁ間違えてしまうのも仕方はあるまい。

 

線路脇から、木々の間の道を歩いていく

車の交通はなく、静かで気持ちの良い道だ。

 

そういえば、ルシエンは度々、学校をさぼって森を彷徨っていたが、

さらに奥へ進んでいくと、アンネットに登場する孤高な老人

ベギン爺さんが暮らしているかのような森の小屋を見つけた。

ベギン爺さんが託し、ルシエンが命がけで進んだ道

それはこの森を抜けた彼方の山脈、一生一大の峠へと続いていくのだ。

 

ロシニエールから

徒歩1時間程度で

モンボヴォン駅に到着。

ここから先、

線路は山岳地帯へと登りはじめる。

 

道行く先々で、レマン湖畔モントルーへと続いている

サイクリングコース4号の標識を見かける

地図を持っていないのだが、なんとかなるだろうか・・・?

 

道は、長閑な放牧地の傍らを上っていく。

道端で、草刈りをしている爺さんを見掛けた。

 

ハイジでも

アンネットでも、お馴染み

 

草刈り鎌を構え、上半身スイングを繰り返すあの動作!

リアルにお目にかかれるとは、感激だ!

 

気合いを入れ

坂道を更にどんどんと進んでいく

また、1時間ほど登っただろうか

山岳鉄道の駅

Allières に到達。

 

しかし、ここでやはり地図を持っていないのが災いした。

ルシエンの進んだ峠道は、Allières 駅から線路に沿って狭い道を進み

Ruisseau des Cases 駅の先、トンネル付近からの山道を登っていかなくてはならなかったのだ。

 

山羊たちに見つめられながら、

サイクリングコース4号に従い、過った道を歩いていく。

道は、谷沿いを這うように走っており

 

山々の嶺を仰ぎ

牧場を見上げながら進んでいく。

鉄道の線路からは

大きく逸れてしまったので

ルシエンが越えた峠を迂回し

進んでいるのだろうと気づくが

迷わずにモントルーへと歩いて行けるならそれでもよいかと妥協してしまった。

 

林業の作業車が往く手に立ちはだかり、

鬱蒼とした木立が両側に広がって、谷筋は深くなってきた。

 

変な、ナメクジみたいな

蛭みたいな黒いのが

道端でブチブチ潰れている。

日本では見たことのない生命体だ。

 

道路はディープな秘境?山深い谷間へと、続いていくのだった。

 

しばらくすると、

目の前にコンクリートの巨大な壁がお目見えした、

断崖絶壁に円弧を描いて立ちはだかる

大きなダムである。

 

黒部ダムと同様

水圧を周囲の地形に分散させる

アーチ式と呼ばれる工法なのだろう。

でかい!とにかくデカイ!

ダムの上に立って、吸い込まれてしまいそうな深い谷を覗き込み、思わず足がすくんでしまう。

高さ何メートルなのだろう?バンジージャンプにはもってこいのスポットかもしれない。

 

そして、巨大ダムから貯水湖側を眺めると、

ワゥ!ハウ ワンダフォー!!

 

なんとまぁ

素晴らしく

綺麗な湖水の畔ではないか !!

鏡のように水面が澄んでいる、山々が空が映りこんでいる、

 

オォ ブレーネリ♪あなーたの♪ おうちはどこー♪

 

ヤーッホー♪

ホート ラン♪ ラン♪ ラン♪

ヤッホ ホートランララ♪

 

おぉブレネリを口ずさみながら

時折道端で見掛けるサイクリングルート4号線の標識に従い

スイッツァランドの湖畔を軽快に歩いていったのだが

 

湖を一周なぞるかのようにコースは設定されていたようだ

谷間であるし大きな貯水湖ではないだろうと侮っていたが

不覚にも、複雑な地形を埋めるように湖水は山深く広がっている

尾根や入り江が奥まって伸びており、半端でなく外周距離があるようだ。

 

歩けど、歩けど、延々と路は続く。

どこかにバス停はないかと期待していたが、甘かった。

 

湖の周囲を、3〜4時間は歩いただろうか?

やがて、人里を離れ奇妙な形状の岩山が周りに姿を現し

通り過ぎる車さえも見掛けない辺鄙な孤立地域となってきた。

 

なかなかに見応えのある岩山がそびえてはいるが、別段観光地というわけでもなく開発はされていないようだ。

(岩山の反対側は Leysinレザンというスキーリゾート地になっていたらしい。)

 

サイクリングコースと地名の標識を見掛ける。

どこかの村にさえ辿り着ければ、もしかしてバスに乗れるかもと願いつつ

少々焦りながら、道を急ぐ。

 

レマン湖へと下りる峠にすら到達できず、ただただ時間が過ぎ去っていく。

本日中に、シャトーデーのYHに戻ることが困難であることを悟りつつ歩を進める。

 

遂に、レマン湖が眼下遠くに水面を覗かせた。

喜んでいたところ、徐々に太陽が傾き、

なんと!美しい光線を辺り一帯の山々に木々に投げかけてきたではないか!

岩山が樹木が燃え始めた。

どこもかしこも

くれない一色の世界に包まれる。

 

その直中で独り

歩を止め息をのみこんだ。

 

時間を燃料としているかのごとく

お日様は自分の一番美しい光で、今日一日の最期の姿を、この地上に焼き付けてくれる。

なんと神々しいのだ、夕陽を拝むというのはこういうことだったのか・・・

 

夕焼けこやけ

カラスが鳴いてチャイムが鳴って

校舎やサッカーゴールの影が伸びる

ありし日のグラウンド。

ビルのシルエット、都心から家路へと急ぐ人波。

一体いままで自分は、幾つの夕焼けを数えてきたのだろう。

 

そして偶然出くわした、このレマン湖を望む夕陽の光が心の中にまで染みこんで

いつになく沁みりとしてしまうのは何故なのだろう?

 

陽が落ちて辺りが薄暗くなった頃に

ようやく分水嶺の峠、Les Agites 1538m に到達

時間は23時を過ぎている

足がガクガクで気力が失せてきたが、道のりは下り坂のみである。

 

標高差、1000m 地上の星は下れど下れど遠く

一向に近づいてくる気配がしない。

ロシニエール村で買った、クッキーなどをかじりながら

夜通しひたすら坂道を下りる。

 

途中、暗闇のトンネルがあって躊躇するも

運がよいことに50m間隔程度で横穴が掘ってあり、月明かりで、僅かに進路が見え通過することができた。

 

何時間、歩いたのだろうか?

疲労がピークに達した頃、周囲に葡萄畑が広がりはじめ人里が現れた。

東屋の下、湧き出ている水飲み場で一休みし

麓の町を目指して最後の力をふり絞り歩を進める。

 

吹雪の中、夜通し峠を越えモントルーにまで達したルシエン少年には頭が上がらないまでも

結局、星降る夜明け前にレマン湖側の麓町 エーグル Aigle に辿り着くことができた。

 

エーグル駅のホーム待合室は、寒い外気から遮断されていて快適。

近くに自動販売機が設置されていたので、菓子などを買って空腹をしのぐ。

疲れているときにはチョコレートがうまい!

とにかくうまい!全身の細胞・全ての五感で美味いと感じる。

1時間ほど仮眠をとり、始発の電車に乗った。

 

その後、順調にモントルーで乗り換えをして、朝7時前にシャトーデーYHに難なく帰還!

シャワーを浴び朝飯を食べて、チェックアウトせずにそのまま昼過ぎまでベットで寝入ってしまう。

たたき起こされるのを覚悟していたものの、何一つ注意されることなく安眠することができてしまった

随分寛大なユースホステルである、感謝、感謝。

 

エーグル駅&シャトーデーYH泊 :Aigle station / Chateau-d'Oex VD  Youth Hostel
(http://www.youthhostel.ch/hosteldetails.html?&L=1&user_hostels_pi1[bez]=CDO&cHash=023c499929)

 

 

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