1月の絵本の紹介

 子どもは「ことば」を食べてゆたかに育ちます。
 テープやテレビなどの機械音ではなく、
お母様や身近な人の口から出る言葉を聞いて
すべてのことをわかっていくのです。
子どもたちに、たくさん話しかけてあげてください。
おはなしをしてあげてください。
 そして、絵本をたくさんよんであげましょう。
絵本は子どもが「読む本」ではなく「読んでもらうもの」です。
やさしい音声とことばの中で、
子どもは絵本の世界に入り込んで心を遊ばせ養っていくのです。

1冊の絵本の紹介  
「おおどしのきゃく」−日本の昔話−

五十嵐 七重 再話
二俣 英五郎 絵

福音館書店



昔むかしのお話。

今日はおおみそか。

貧乏だけれども、仲のいいじいさまとばあさまが「今日はとしとり。何もねえげんじょも、そばだんご汁でも作ってくうべえかねえ」といっていると、外にだれか来た様子。

戸を開けると、ちいさな坊様が雪のなか立っていて、「一晩泊めてくろ」といったそうな。あたたかい火にあたり、だんご汁も食べ、坊様は寝る段になって「明日の朝、わかみず(お正月に初めて汲む水)を汲む時は手つだうからおこせ」といった。

お正月の朝、起きて来た坊様は、井戸めがけてトットトットと走ったが、げたに雪がくっついてすべってザブーンと井戸の中におっこちた。

じいさまばあさまあわててつるべを落とし、「これにつかまってのぼってきやれー」というと、坊様 中から「じいさまひっぱる時な、なーにがまたあーがるかってゆえよ」という。じいさまいわれた通りに「なーにがまたあーがるか」というと「ふーくのかーみがあーがるぞい」といいながら坊様があがってきた。

体をあたため、もう一眠りと坊様はふとんに入ったが、ばあさまが正月のあさはんができたと呼びにいっても返事がない。

二人してふとんをめくると、山のような小判がざっくざっくとあったんだと。

それをみた隣の欲張りじいさまとばあさま、1年待って おおどしの日。

ちょうど通りかかった坊様を無理やり家に泊め、わかみず汲みにかりだした。

そして井戸に落とし「なーにがまたあーがるか」といいながらひっぱると「びんぼうがーみがあーがるぞい」といって坊様があがってきた。

火にあてもせず、そのまま坊様を寝かせ、いざふとんをはがしてみるとへびやらとかげやらきったねえがな、いっぱいあったのさ。


☆この絵本は福音館2012年こどものとも1月号として発行されました。
日本の昔話のなかにこれに似たいくつかの話があります。
「かさじぞう」(福音館 瀬田貞二再話・赤羽末吉絵)なども、お正月を迎えようとするじいさまばあさまとおじぞうさまのお話ですね。
私は、「かさじぞう」のなかで、お正月のもちを買うために笠を売りに行ったじいさまが、ひとつも売れずにそれを雪の中に立っているお地蔵様に全部かぶせて家に帰った時、ばあさまは「おじぞうさまにあげてよかったな。(じいさまそれはいいことをしなさった)」というところが大好きです。この話のすべてがそこに集約されているような気がします。
この「おおどしのきゃく」もじいさまとばあさまがとても仲がよく、人に対しても生活に対しても2人の大切にしているものが同じだという感じがいたします。
きっとこの二人は貧乏でも幸せな日々を過ごしているのでしょう。そして日頃から人に対して明るくあたたかい関わりをしているのだと思います。
そんな様子は、坊様とじいさまばあさまのやりとりのなかでくみ取れます。
そんな家庭に来た客は、たとえ食べ物が粗末でも心満たされることでしょう。
そのところは欲張りじいさんばあさんの登場によって話がより対比されています。
昔話にはこの欲張りじいさんばあさんもよく出てきます。
舌切り雀のおばあさんをはじめ、「こぶとりじいさん」や「はなさかじじい」など準主役で話をもりあげます。
昔の人はこうやって、善と悪をデフォルメした形で人として生きていく姿を伝えたかったのでしょうね。
この絵本の最後のページに「むかしからなあ、おおどしのひにはどんなおきゃくさまも こころよくとめてやれってゆわれてんだぞ。」といっていますが、おおどしの日にできることは普段からの生活の有り様が問われているような気がします。
リズミカルでユーモアに満ち、読み手も聞き手も一緒に笑顔になれる絵本、どうぞお子さんをおひざにのせて読んであげてください。