11月の絵本の紹介

 子どもは「ことば」を食べてゆたかに育ちます。
 テープやテレビなどの機械音ではなく、
お母様や身近な人の口から出る言葉を聞いて
すべてのことをわかっていくのです。
子どもたちに、たくさん話しかけてあげてください。
おはなしをしてあげてください。
 そして、絵本をたくさんよんであげましょう。
絵本は子どもが「読む本」ではなく「読んでもらうもの」です。
やさしい音声とことばの中で、
子どもは絵本の世界に入り込んで心を遊ばせ養っていくのです。

1冊の絵本の紹介  
「へんてこ へんてこ」

小野かおる 文・絵

福音館書店



みたてをたのしむ

だれかが雲をみて
「あっ、きょうりゅう」
と言ったとします。
その人は、雲のかたちを
きょうりゅうにみたてたのです。
物や事を、なにかほかのものに
なぞらえて表現することを
「みたて」といいます。
つまり発想の転換です。
ものごとをよくみて、
想像し、創造するあそびです。

小野かおる
(前書きより)


☆日常の中にあるいろいろな物を利用してそれらの写真や切り抜きなどを絵の中で様々に使い(いわゆるコラージュといわれる芸術の創造技法)、「みたて」を遊ぶ絵本です。
最近、売れ行きが非常に伸びている書籍に「キノコの図鑑」があるそうです。購入層は小学生が主だとか。もともと植物の図鑑を出した出版社が、アンケートはがきの「おもしろかったページ」にほんの数ページしか載せていなかった「キノコ」が多いことに着目し、キノコ専門の図鑑を出したところ子どもたちにヒットしているのだそうです。
もちろん子どもたちが山に登ってキノコを探したり比べたりするために本が売れているとはあまり考えられないでしょう(本がきっかけになってキノコを探す子はいると思いますが)。他の植物に比べてキノコはどこか暗いイメージがつきものです。かさの形や生えている姿も千差万別、色彩も土や木肌とそっくりな地味なものから、どこからこの色を持ってきたのかと驚くほど派手なものまで様々。さらにカビと親戚だとか毒だとかの言葉の響きを聞けば、おどろおどろしいものに惹かれてしまう子どもの習性がこんなおもしろそうな生き物を放ってはおかないのでしょう。
この絵本もキノコと同じように、大人が一般的に「美しい」「かわいい」と感じるような色彩や雰囲気とはかけ離れています。色も濁りじめっとした湿り気を持っているようなバックの絵の中に、それ単体では綺麗だったりかわいかったりしそうな品々ですらどこの異世界からきたのかしらと思ってしまうような異様さを持たせて描かれています。まさにタイトル通り「へんてこ」な世界がページごとに広がります。
子どもに読んであげたとき、ちょっと気持ち悪いな、と思ったのですが、子どもたちは「おもしろい」と目を輝かせて「へんてこ」な世界を心から楽しんでいました。
今ちょうど秋です。落ち葉や木の実、紅葉に大人は「綺麗」を求めてしまいがちですが、実はこの「へんてこ へんてこ」の絵本に描かれる色彩は秋の景色に近いような気がします。こんなおどろおどろしい世界が、「みたて」の中では実はすぐ身近にもたくさんあるのでしょう。「へんてこ」な世界が子どもたちの目にはそれもまた楽しいものとして日常の中に見えているのかもしれません。そういう感性を高めることが、実は綺麗なもの、美しいものを見つける感性へとつながっていくような気がしないではいられません。
ちなみにこの絵本の最後のページには絵本の中でコラージュとして「つかったもの」が記されています。どこに何が使われていたか確認してみれば「日常」と「へんてこ」の世界がより深みを増して繋がり広がっていくことでしょう。