8月の絵本の紹介

 子どもは「ことば」を食べてゆたかに育ちます。
 テープやテレビなどの機械音ではなく、
お母様や身近な人の口から出る言葉を聞いて
すべてのことをわかっていくのです。
子どもたちに、たくさん話しかけてあげてください。
おはなしをしてあげてください。
 そして、絵本をたくさんよんであげましょう。
絵本は子どもが「読む本」ではなく「読んでもらうもの」です。
やさしい音声とことばの中で、
子どもは絵本の世界に入り込んで心を遊ばせ養っていくのです。

1冊の絵本の紹介  
「かぶさんとんだ」

五味太郎

福音館書店




とっても てんきの いい あるひ

あかかぶさん とんだ

しろかぶさんも とんだ

てるてるぼうずくんも とんだ

たこさんが ついてきた

かみなりくんも ついてきた

うちゅうじんさんも ついてきた

みんな そろって とんでった

どこまでも どこまでも とんでった

それから さきは しらないよ

どこかの はたけに おちたかな

それとも おなべに おっこちて

ばんの りょうりに なったかな。

☆ナンセンス。その一言ですんでしまうようなお話しですが、実はそのナンセンスな世界を絵と文、絵本という形にして出力できる能力を持っている大人はどれほどいらっしゃるのでしょうか。子どもの空想は現実との垣根なしに無限に広がり、子どもたちはそれをまだ数少ない言葉で何とか伝えようとしたり絵で表現しようとしたりします。でも年を重ねるにしたがってそんな「嘘話」はだんだんと知識と常識のその奥に押し込めてしまう、ということもまた大人のみなさんならおわかりのことでしょう。
そんなことを思うと、子どもと一緒に絵本を読むということは大人にとっても童心に戻れる貴重な時間なのかもしれません。
この「かぶさんとんだ」はあかかぶさんを筆頭になんとなく形が似ている(ように描かれる)キャラクターが次々と空にとんでいきます。そのセンスあるユーモアと、次々にとんでいく爽快感。子どもも大人も笑ってしまうこと請け合いです。
そして最後は「しらないよ」と言いながらも、「はたけにおちたかなあ」「おなべにおちたから今夜の料理に出てくるかなあ」と読者(子どもも大人も)の想像をもっともっと膨らませるようにして閉じられます。
五味太郎さんの独特なグラフィックが夏の空や海、宇宙をシンプルに描き出していて、どことなく涼しげなのもいいですね。
子どもには「もう一度もう一度」とせがまれること必至の絵本ですが、短い作品ですので大人の方も一緒になっておもしろがって読んであげてほしい絵本です。
そして、もしかぶさんが晩ご飯に落ちてきていたら、もっと想像が膨らんで楽しくなれそうですよね。