9月の絵本の紹介

 子どもは「ことば」を食べてゆたかに育ちます。
 テープやテレビなどの機械音ではなく、
お母様や身近な人の口から出る言葉を聞いて
すべてのことをわかっていくのです。
子どもたちに、たくさん話しかけてあげてください。
おはなしをしてあげてください。
 そして、絵本をたくさんよんであげましょう。
絵本は子どもが「読む本」ではなく「読んでもらうもの」です。
やさしい音声とことばの中で、
子どもは絵本の世界に入り込んで心を遊ばせ養っていくのです。

1冊の絵本の紹介  
「ちびくろ・さんぼ」
ヘレン・バンナーマン 文
フランク・ドビアス  絵
光吉 夏弥  訳
瑞雲舎



なつかしい1冊の絵本。
あるところにかわいいくろいおとこの子がいました。なまえを ちびくろ・さんぼといいました。という書き出しで始まる不思議な世界の物語です。
おかあさんのまんぼに作ってもらった赤い上着と青いズボン、おとうさんのじゃんぼに買ってもらった緑の傘と紫のくつをはいてちびくろ・さんぼがジャングルに散歩にでかけるとトラに次々に出会い食べられそうになります。そのたびにさんぼは上着もズボンも傘もくつもトラにやって許してもらいます。トラたちは、それぞれもらったものを着ると自分が一番立派なトラだといい合って大喧嘩になり木の周りをぐるぐる回っているうちに、バターになってしまいました。そのバターでおいしいホットケーキを作ってまんぼもじゃんぼもさんぼもたくさん食べました。というお話。
何故かとても印象の強い本で、ホットケーキを見たり、トラときくとこの本を思い出すのです。そしてまんぼが27、じゃんぼが55、さんぼが169枚もホットケーキを食べたということを思うたびにとろけるような思いになるのです。
絵は色彩も美しくしかしことばを負かすことなく、とても印象に残る素敵な絵です。ことばと絵が互いに引き立てて物語りの個性的な雰囲気を創り出しています。
この絵本は一時期、ちび・くろということばが差別的ということで本屋さんから姿を消しました。私はそういうふうに捕らえればそうなのかもしれないけれど、というモヤモヤ感がありました。そんなことを超えてこのお話は素敵だと思ったのです。
そしてしばらくして瑞雲舎から再発行されたときは、何かほっとしました。大切ななくしものが戻ってきたような感覚を覚えたのです。
今、子どもたちにこの絵本を読んであげられる喜びを心から感じています。