7月の子どもたち

日中蒸し暑かった日の夜、「今夜は見えるかな」と森の奥に目をこらします。
森は木々の茂みを暗闇が包み込んでいて何の物音もしません。
その何も見えない森のなかをそれでもじぃっと見つめていると、あっ、あれ。
ほわぁっとかすかに小さな光が飛びました。
「いたぁ」と小さな声が聞こえました。
「どこどこ」「ほら、あそこの枝に」
「見えないよ。どこさ」
「ほんとだ。あっ、あっちにもいたよ。」
「ホタルがやっぱりいたんだね」
よく目を凝らしていると、一匹のホタルの光に呼応するようにあっちでもこっちでも光りはじめました。
子どもたちはいつまでも声もたてずに佇んで森の闇に光が乱舞する様子を見ていました。

人工物に囲まれて暮らしている日常生活から離れて、山の中で森や川に囲まれて生活している年長組の子どもたち。
お家から離れ、保育者や友だちと寝食を共にしています。
川に入ってその水の冷たさにびっくりしている子どもたち。それでもビショショになりながらどんどん川を遡っていく子どもたちの周りで水がキラキラと光っています。
鳥の声に起き、吹く風の音に耳を澄まし、木々のにおいを嗅ぎ、漆黒の闇の暗さを感じる。
そんな自然のなかにどっぷりとつかった生活を子どもたちとしながら、数日を過ごします。
子どもたちは森の川にかかっている丸太橋をへっぴり腰で渡ったり、アップダウンのきつい山登りに悲鳴をあげたりしながらも自然のやさしさ偉大さに抱かれ、友だちとの一体感に励まされて山での生活を楽しむことができるのです。
テレビもビデオもオモチャもない数日ですが、子どもたちが興味関心をキラキラと輝かせてやりたいこと、おもしろいことがいっぱいの日々を過ごすのです。

子どもたちの生活はいつもこうした山や海や川があるようなところに行って自然と共にという訳にはいかないかもしれません。
むしろこうした生活は非日常的な稀有な体験といってもいいかもしれません。
しかし、遠くにわざわざ連れださなくても、身近な生活のなかで子どもが探求できる自然や出来事があるはずです。
子どもが体を動かすと,心が動きます。
心が動けば本物の素晴らしさが実感できます。
暑い夏の日、私たちも子どもと共に汗を流しながら体を動かし心を震わせて過ごしたいと思います。



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