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韓国コラム

写真
2006.3.30
韓国では「写真」というものを大切にする傾向があるように感じます。

僕の住むマンションの周りには、何件かの写真屋があります。どこの写真屋も必ずスタジオを持っており、店頭には様々な写真が掲げられています。日本でも目にするような行事の際の家族写真もありますが、中には何に使うのかわからないようなソロショットがあったりですとか、お腹を抱えた妊婦の写真もあったりします。何故彼らがわざわざ写真屋に足を運び、スタジオでそのような写真を撮るのか。しかも背景が明らかな合成だったり、どう見ても人間自体をスマートに見えるよう加工しているようにしか見えない写真もある始末で、毎回そこを通るたび、僕の頭には疑問符が付いて止みません。

また韓国人の家にお邪魔するとポスター並みの巨大な写真が立派な額に納められ、ででんと壁にかけられているような事があります。また、どう見ても証明写真にしか見えないようなすまし顔の恋人の写真をキーホルダーにして持ち歩いているような光景も珍しくありません。僕のような顔面障害者に言わせれば何故わざわざ自分の姿を撮影するためわざわざ写真屋に赴くのかなど見当もつかないわけですが、デジタルカメラの発達や携帯電話にカメラが搭載されるようになるにつれて、彼らのそんな心情の一端が垣間見えるようになってきたような気がします。今回はそんな韓国の一風変わった写真に纏わるエトセトラについて書きたいと思います。それではどうぞ。


韓国にいるとこんな光景を目にする事があります。

例えば僕が欲望渦巻く暗黒の街ソウルを闊歩していたとしましょう。僕の前を歩くのはタイトなジーンズにみを包んだおねえちゃん。韓国の女性というのは非常にスタイルが良いですからね、男なら誰もが後を追い回したくなるものです。綺麗な黒髪ストレート。うりんうりんと揺れるケツ。あーもーこれは辛抱堪らん!と鼻の下を伸ばしていますと、突如おねえちゃんが立ち止まりました。

予想外の展開に戸惑う僕。何故おねえちゃんは立ち止まったのだろう。やっべえこれは見つかったかなー、視姦は痴漢になるのかなーと様々な思考が交錯します。徐に鞄から携帯電話を取り出すおねえちゃん。いやちょっと待て、ちょっと後ろを歩いただけで通報なんていただけないぜ!と僕も逃げ出す準備をしますが、彼女はその携帯電話を耳に当てる事はせず、代わりに高らかに掲げたかと思うとビシっとポーズ。ブイサインの手を顔にあてがい、シャキーンと自分の写真を撮って再び歩き始めたのでした。


こういった事が行われるのは何も街中だけではありません。電車の中でも工場でも、周囲を見ると必ずこうした「自分撮り」をしている人と遭遇します。僕が担当する工場の事務所にいるおねえちゃんなんて昼休みになると毎日のように携帯電話に向かってポーズをキメています。この様子だと夜とかさぞかしハメ撮りなんかに勤しんでいるに違いないと思うのですが、さすがに怖くて質問する事ができません。また、以前韓国でスノーボードに行った際、一緒に行ったおねえちゃんのひとりが、

「ちょっとデジカメ貸してよ」

などと言い出しまして、快く貸して差し上げましたところ暫くして帰ってきたデジカメはそのおねえちゃんの自分撮り写真に占拠されていたりもしました。これがまた可愛い娘なら僕も夜のオカズにと感謝感激するわけですが、如何せんそのおねえちゃんが僕の好みから激しくかけ離れていたがために、僕はデジカメを持ったまま呆然とするしかありませんでした。

というわけで韓国には日本ではちょっと考えられないような不思議な写真文化が存在するわけなのですが、何故このような事をするのかを考えた時、あるひとつの結論に思い当たります。それは、韓国人が容姿を非常に気にする人種だという事です。

ちょっと出典が曖昧で申し訳ないのですが、以前行われた何かの調査によると、韓国人はアジアの中で最も容姿を気にするというデータがあったように思います。その事は韓国がアジア有数の整形大国である事にも裏付けられていると言えるでしょう。これは飽く迄想像ですが、自らを写真に収める事により、無意識に自分の一番容姿端麗に見える姿を分析しているのではないかと思うのです。

そして、ある時そんな僕の仮説を裏付けるかのような出来事が起こりました。


話は僕が昨年の5月に韓国で開催された「ソウルモーターショー」に赴いた時に遡ります。

モーターショーというのは世界の自動車メーカーが一同に会し、自社ブランドの新技術やニューモデル披露するというクルマ好きには堪らないイベントの事です。僕は車やバイクといった所謂「エンジンの付いた乗り物」というのが大好きです。人間の力では成しえない作業をいとも簡単にこなしてしまうエンジンのパワー。この発明は人類に大きな進歩をもたらしました。そんな力に魅了されて止まない僕は、モーターショーの開催期間に休日が含まれているにも関わらず、休日は混んで嫌だというとんでもない理由を引っ提げ、わざわざ仕事を休んでまでそのモーターショーに乗り込んだのです。

平日だというにも関わらず、会場は熱気で満ち溢れていました。韓国で販売されている殆どのメーカーが会場にブースを構え、美しいコンパニオンが僕の来場を歓迎します。とはいえ僕は車目当てで来たわけですからそんなおねえちゃん如き気にもしません。いろんなブースを行ったり来たり、時には車の説明を求め韓国語の説明にわけわかめで逃げ出したりとそれはもうモーターショーを堪能しておりました。

しかしながら、ブースを巡っていくに連れ妙な違和感に襲われます。会場の熱気が向かうベクトルが明らかに異様なのです。よくよく見ると人だかりができているのは決まって美人なおねえちゃんの前。そしてそこに集った彼らは必死でおねえちゃんを撮影しているわけですよ。まあ中には何を勘違いしてるのか不細工な娘がコンパニオン気取りで車と一緒に自分撮りをかましていたりしたのですが、とにかく視線はコンパニオン。男の視線はコンパニオン。これ程下衆な光景を見せ付けられてしまっては僕もげんなりしてしまいます。

そういうわけで僕は遠目に下衆連中の人だかりを眺めていたわけなのですが、その中心に突如として若い男が躍り出ました。ざわめく会場。困惑するコンパニオン。何だコイツは一大事か?と僕も群集に加わります。さあどうなるかと目を凝らすと、男は何かを喋りながらカメラをコンパニオンに渡しました。コンパニオンは笑顔で頷き、受け取ったカメラを高く掲げて自分の写真を数枚撮り、更には撮った写真を全部確認してから男にカメラを返しました。

なんつーかな、さすがにそりゃないだろうと。

まーその後はその場の皆がコンパニオンに詰め寄る始末で、彼女も気をよくしたのかどうかはわかりませんが全てのカメラで自分撮り。写りの良さを確認して返却という愚行を繰り返しておりました。そんな事をするコンパニオンは、ただ単にカメラを向けられた時よりもいっそう素敵な笑顔でした。そんな彼女の笑顔の奥には、自分を一番引き立てる、そんなポーズを熟知した自信がちらりと見えました。文化の違いってのは恐ろしいなと実感した出来事でした。


さて、そんな感じでですね、今回は韓国の写真への思い入れに関するコラムをお届けしました。皆さんは自分撮りをしたりしますか?街で会社で電車の中で、自分の写真を撮れますか?異様に感じる自分撮り、でもそんな写真分化が隣の国では既に根付いているのです。やってみると意外と快感だったりするのかもしれませんね。また、新しい自分の笑顔を発見する良い機会になるかもしれませんよ。

僕は絶対やりませんけど。


因みにモーターショーですが、家に帰ってカメラの中身を確認すると車の写真よりおねえちゃんの写真の方が明らかに多くて吃驚しました。自分がこんなに下衆な人間だったとはいざ知らず、もの凄く凹んだ記憶があります。まあ下衆でも良いんですけどね。おねえちゃん可愛かったしね。
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