証券取引法の改正について |
*何故改正されたのか 金融庁の資料によると、「証券取引法の一部を改正する法律」の国会提出書類の中で次のように書かれている。 <<<最近の証券市場をめぐる情勢の変化に対応し、及び我が国証券市場の国際競争力の向上を図るため、公開買付制度の適用範囲の見直し及び親会社等状況報告書制度の導入並びに外国会社などの英文による開示制度の導入などの措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。>>> これまでに説明してきたことからも分かるように、今の証券取引法のままでは、また今回のような問題が起こってしまう。よって証券取引法が改正されることになった。改正の概要についてはまた後で説明するが、改正されたのは時間外取引についてだけではない。そもそも改正されるきっかけはライブドアだけではない。というのは2004年秋、西部鉄道が有価証券報告書に大株主の株式保有の状況について虚偽記載を続けていたことが発覚した事件があった。これをきっかけに、経営実態が不透明な非上場会社が上場会社を支配する問題点も指摘されていた。このようにいくつかの問題点が出てきたので、日本の証券市場をよくするため、証券取引法はさまざまな改正を行っている。 *改正の過程 では改正はどのような手順で行われたのだろうか?? 証券取引法の改正については、金融庁が「証券取引法の一部を改正する法律」案を国会に提出して、成立すれば改正ができることになる。 国会提出日:平成17年3月11日 ↓ 衆議院で修正議決:平成17年4月26日←修正とは課徴金制度についてはこの時に付け足されたことを言う。 ↓ (参議院で可決:平成17年6月22日) 成立日:平成17年6月22日(平成17年法律第76号) ↓ 公布日:平成17年6月29日 ↓ 施行日:平成17年12月1日 ・親会社等状況報告書に関する規定(平成18年4月1日以後に開始する親会社等の事業年度から適用することとされている) ・(公開買付規制の適用範囲の拡大については、できる限り早く施行するため、公布の日から起算して十日を経過した日、つまり7月9日に施行された。 ・(英文開示に係る規定の施行日12月1日、だが段階的に実施することとされている。) *改正の概要は?? ここで、証券取引法の一部を改正する法律案の概要を簡単にまとめてみた。 ☆上場会社の親会社に対する情報開示の義務付けについて 親会社等状況報告書制度 子会社が上場会社で、その親会社が上場していないために親会社の企業情報が開示されていない場合には、親会社に対して情報の開示を義務付けることにした。また重要な事項で虚偽の記載がある有価証券報告書等を提出した場合には課徴金の納付を命ずる制度を導入した。上場会社の親会社等で有価証券報告書を提出していないものは、当該親会社等の事業年度ごとに、当該親会社等の株式の所有者に関する事項その他の事項を記載した親会社等状況報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないこととするほか、所要の規定の整備を行うこととする。 (第21 条の2、第24 条の7、第25 条関係) *では、親会社とはどこまでのことを指すのだろうか? ・ 親会社の範囲 上場会社の議決権の過半数を直接又は間接に保有する会社 *親会社はどのような情報を開示すればよいのだろうか? ・ 開示させる内容 @ 株式の所有者別状況及び大株主の状況 A 役員の状況 B 商法に基づく貸借対照表、損益計算書、営業報告書、附属明細書等 *何故このような制度ができたのだろうか? ・投資者が安心して株の取引をするために子会社(上場会社)の状況を把握することは大切なことだが、親会社の情報がなければ十分とはいえない。だが今までは親会社に開示義務はなかった。すると子会社が上場会社であって、親会社が上場していないこと等から開示していない場合、親会社自身の情報は投資家に十分に提供されない。そこで今回の改正では親会社の情報開示が義務付けられた。 ☆外国会社の英文による企業情報の開示について 外国会社等の英文による継続開示 日本の証券市場に上場している外国会社に対するもので、外国会社が日本で適切な開示基準に基づき英語による開示を行っている場合は、日本語による要約などの添付を前提として、英語による有価証券報告書の提出を認めることにした。 有価証券報告書等を提出しなければならない外国会社等は、公益又は投資者保護に欠けることがないものとされる一定の場合には、有価証券報告書等の提出に代えて、外国において開示が行われている有価証券報告書等に類する書類で英語で記載されたものを提出することができることとする。(第24 条、第24 条の2、第24 条の5 関係) *なぜこのような制度ができたのか? ・今まで外国会社などは、日本語での開示をするためのコスト負担を意識していた。しかし、それによって世界に対し閉鎖的にならないよう、我が国証券市場の国際競争力を高めなければならない。そこで投資判断に必要な情報の開示を確保しつつ、上場に係るコスト負担を軽減する必要があったのである。 ☆公開買付規制の適用範囲の見直しについて 公開買付制度の見直し 今まで公開買付制度(TOB)の適用対象外だった立会外取引のうち、相対取引に類似したものについて買付後の株券等保有割合が三分の一を超える場合は、公開買付制度の対象とする。取引所有価証券市場における競売買の方法以外の方法による有価証券の売買等として内閣総理大臣が定めるものによる買付け等について、買付け等後の株券等所有割合が3 分の1 を超える場合には公開買付けによらなければならないこととする。(第27 条の2 関係) *何故このような制度ができたのだろうか? ・今までは、立会外取引には公開買付制度が適用されなかった。しかしそれでは今回のように、公開買付をしなくても大量の株を保有することができるようになったしまう。そうすると、公開買付制度は投資者の信用を失い意味がなくなってしまうのである。そこで、立会外取引のうち、相対取引に類似した取引について、買付後の株券等保有割外が3分の1を超える場合にはは、投資者に平等に売却の機械が与えられるようにするために公開買付制度の対象とすることにした。 ☆課徴金制度について 罰則その他 所要の罰則規定その他の規定の整備を行うこととする。 (第198 条、第200 条関係) 二.その他 ここにはこの法律についての施行期日や経過措置、検討などが記載されている。簡単にまとめると次のようになる。 1.施行期日(附則第1 条関係) この法律は、平成17 年12 月1 日から施行する。ただし、公開買付制度の見直しに関する規定は公布の日から起算して10 日を経過した日から施行する。 2.経過措置等 (1) 外国会社等の英文による継続開示に関する規定は、施行日以後に提出される有価証券報告書等から適用し、その他の有価 証券報告書等については施行日から平成21 年3 月31 日までの範囲内で政令で定める日から適用する。 (2) 親会社等状況報告書に関する規定は、平成18 年4 月1 日以降に開始する親会社等の事業年度から適用する。 (3) その他所要の経過措置等を定める。 3.検討 この法律の施行後5 年間を経過した場合において、改正後の規定の実施状況や情勢の変化などを考えて、改正後の金融制度を検討し、必要があれば措置を講じることにする。 *改正の意義と問題点 今回の改正においては、特に有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金制度の導入について、憲法上問題がないかという議論があった。今の課徴金制度は、法令違反をして経済的に利益を得ることができるものに対して、金銭的負担を与えている。これによって、違反行為の防止とという表製目的を達成するのとともに、やった者勝ちになってしまわないようにする目的がある。そのため憲法31条の適正手続きの要請にも合っていて、憲法39条後段の二重処罰の禁止にも抵触しないとされている。しかし有価証券報告書等の虚偽記載については、それによって得られる経済的な利得があるのかを、何を基準にして算定するのかが明らかではない。よって憲法のこれらの規定の関係で問題がないか慎重に検討すべきとするものであった。このため、法案提出時にはこの項目は盛り込まれなかった。しかし、衆議院での審議で、修正という形で盛り込まれることとなった。海外の主要国では課徴金制度は既に導入されていること、また二重処罰の禁止との関係では、罰金と併せて課徴金が課される場合には、その課徴金の額から罰金の額を控除することになっていて、一定の配慮がなされている。 |
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