“地球人”として日本が果たす国際協力のあり方
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科
Sustainable
Developmentプログラム
修士課程 山田 衆三
私は大学院に進学する以前、ある政府系機関で勤務し、アジアにおける環境保全関連の国際協力事業に携わった経験がある。そして、国際協力を通じて日本の果たす役割の重要性を現地に赴いて目の当たりにした。今も鮮明に私の脳裏に残っている出来事は、フィリピンのマニラ首都圏に位置する主要な水がめのひとつであるラグナ湖に海外出張した折のことである。急速な産業の発展とともに水質汚濁の著しいラグナ湖は瀕死の状態に陥っていた。しかし、日本の最先端技術を駆使した水質浄化支援や人道的なボランティア活動等によって、湖にとって昔はごく当たり前であった自然の営みや生態系を奇跡的に取り戻し再生されつつあった。その姿に現地スタッフや地域住民が心の底から喜び日本人に感謝していたことを…そして、国際協力の絆としてお互いに固い握手を交わしたことを…それら体験を活かして現在、実社会の姿とリベラルアーツな理論を有機的に結びつけるべく、アジアにおける環境調和型の持続可能な経済発展に資する開発と国際協力のあり方について、学際的な領域を専門的に扱う大学院で政策的な視点から研究を行っている。
過去に日本はアジアに先駆け目覚しい経済発展を遂げるなか、逸早く地域レベルの公害問題を克服し、今や「京都議定書」に批准する等、世界的規模の地球温暖化防止対策にも積極的に取り組んでいる。日本はまさに環境先進国であり、経済発展著しいアジアにおいて環境問題への対応策が喫緊の課題となっている今日、日本からの環境技術移転や専門家派遣による現地交流・人材育成は、環境問題に悩むアジアの途上国にとって、自国の持続可能な発展に大きく資するものである。また、日本にとっても協調的な外交政策を講じる具体的な方策として、開発と環境保全が両立し得るハードからソフトに至る様々な国際協力を途上国に提供することによって、アジアの先進国として主体性あふれるリーダーシップを効果的に発揮でき、国際的評価もより一層高まることが期待される。さらに、全ての国や地域が地球に共生している以上、日本が環境保全を機軸に国際協力を実施することは、アジアと言う域内の枠を超越し、地球そのものの未来永劫続くであろう営みに波及するものとなるだろう。
21世紀が地球環境時代と呼ばれるなかで、日本が国際舞台において時代のニーズに合致した国際協力を実現することこそ、途上国の健全な国益を創出するのみでなく、地球益に繋がるものと私は確信している。すなわち日本が果たす国際協力のあり方を考える際に、人類の経済発展のみでなく、地球に対し人類が果たす責務として環境保全の分野に注力することこそ、“地球人”として日本が真の国際貢献を結実し得るマイルストーン(画期的な出来事)となるのではなかろうか。それぞれ国情によって異なるクロスカルチャー(固有の文化背景や民族性等)を十分理解したうえで、お互いに尊重し合い綿密なコミュニケーションを図りながら、政治・経済・外交・環境問題等、複雑に絡み合う困難な課題を克服するための包括的かつ機動的な国際協力を推進することこそが、相互の信頼醸成や友好的なパートナーシップを向上させる。そして、共通の価値尺度を見出し、さらに地域の安定と恒久的な平和機構となるアジア共同体の構築にも寄与するだろう。
日本人一人ひとりが国際協力のあり方を見つめる機会や場に恵まれているのだから、子どもたちは初等教育のころから国際理解について学び、考え、接し、体感して強い関心を持ち、そしてその関心が徐々に自発的な意志となって、将来は国際協力の分野で携わる人材が数多く輩出されることこそ、国・地域から個人参加による草の根活動まで、多岐にわたるボーダレスな連携を産み出し、日本が活躍できる国際協力の裾野が格段に拡がるものと考える。