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2004年度春学期
| 2004年4月26日 |
平成16年度森泰吉郎記念研究振興基金研究助成金(研究者育成費修士 課程)申請書を掲載した。 |
本研究助成金の決定額5万円は、一年間の研究活動費として使用した。
| 2004年5月17日 |
アジアパイプライン研究会(事務局:且O菱総合研究所)にヒアリングを実施した。 |
| 2004年6月9日 |
日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団にヒアリングを実施した。 |
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§北東アジアの天然ガス導入促進政策
◆韓国のケース
日本と同様に国内資源に乏しく、石炭と水力、そして僅かな木炭(薪)があるのみで、1973
年当時、一次エネルギー供給の5割を占めていた石油に依存していた韓国は、オイルショック
で大きな打撃を受け、その教訓からエネルギー源の多様化を模索することとなった。また、石
油に次ぐシェアを占めていた国内炭の利用についても環境問題が懸念されていたことも背景
に、天然ガスを石油代替エネルギーかつ“清浄燃料”と位置づけ導入に向けて着手した。
1976年に韓国電力公社による「LNGの経済性調査」、1979年に韓国動力資源部(現:韓
国産業資源部)による「LNG輸入・利用に関する経済性調査」を実施する等、様々な公的調査
を経て、1983年には天然ガス事業の推進母体となる国営企業の韓国ガス公社を設立した。
韓国ガス公社には独占三権(独占パイプライン敷設権・独占LNG輸入権・独占ガス卸売権)が
付与され、国内基幹パイプライン網の整備と天然ガス市場開拓が積極的に行われた。
そして、日本より遅れて1986年にインドネシアからLNG輸入を開始して以来、1990年には
天然ガスを全国へ供給するための基本計画が策定され、韓国ガス公社が主要都市を網羅す
る幹線パイプライン網を国策として、国家投資基金や韓国開発銀行設備投資基金による財
政・公的支援、公有地の低価格による買収及び国道の側溝利用等の便宜を受けながら基本
計画に基づき整備を開始した。
1993年までにソウル首都圏〜水原〜烏山〜平澤(分岐して牙山湾の平澤LNG基地)〜
天安〜鳥致院(分岐して清州)〜大田間を中心に441km、1995年には大田〜金泉〜亀尾
〜大邱間、1996年には大邱〜永川〜慶州〜蔚山(分岐して蔚山火力発電所)〜釜山及び
大田〜論山〜益山〜井州〜光州間が結ばれ“釣鐘状”のルートが形成された。
さらに、1998年までに首都圏とのリンク強化に向けて南東部(釜山〜金海〜昌原間)及び
南西部(光州〜羅州〜木浦間)のパイプラインが敷設され総延長は1482kmとなり、その後
も大都市圏のリンク強化(議政府〜一山間、仁川〜永宗島の仁川国際空港間、天安〜牙山
間及び慶州〜浦項間等)、南東部と南西部を結ぶループ化(昌原〜馬山〜統営LNG基地〜
晋州〜順天(分岐して麗水)〜光州間)、黄海沿岸部(平澤LNG基地〜唐津〜瑞山(分岐して
保寧火力発電所)〜舒川〜群山〜益山間)及び北東部(水原〜原州〜春川間)への延伸等
の敷設が着実に行われ、2003年には総延長2460kmに達しておりほぼパイプライン網は
完成している。
韓国の天然ガスパイプライン網

<出所>韓国ガス公社
点線は1998年以降の敷設区間
2004年3月時点で総延長は2562.8kmに達する。また、2000年に韓国初となる国産ガ
ス田「東海1」が南東部蔚山沖で発見され、韓国国営石油により2004年から生産が行われて
いる。埋蔵量は57億m3で国内年間需要の2.2%を15年間満たす。蔚山にある韓国ガス公
社の貯蔵施設に海底パイプライン(58km)で輸送され、蔚山の火力発電所や慶尚南道に供
給される。
韓国産業研究院によると、最終的に62の市(韓国全市の82%)及び21の郡(韓国全郡の2
2%)で天然ガスが供給され、これによって全家庭の86%が供給対象になると推計している。
韓国はLNG輸入に依存しながらも、北東アジアで唯一国土を縦貫するパイプライン網を有して
いるのである。
韓国と同様にLNG輸入に頼っている日本では、内閣府国民生活局によると、2001年11月
ベースで標準的な家庭の月間ガス使用量(55m3)の都市ガス料金を日韓で比較した場合、
韓国は日本の3分の1程度の40円/m3となっており、この価格差の原因として、為替レート
及び需要家1件当たりガス使用量に違いがあるほか、供給パイプラインの発達有無を指摘し
ている。
韓国ガス公社では今後のLNG需要拡大(韓国政府見通しによると、年平均の都市ガス需要
伸び率が2001〜2015年にかけて5.3%)に対応すべく、平澤(1986年完成)及び仁川(19
96年完成)の2LNG基地(貯蔵容量は各100万kl)の順次拡張計画を実施すると同時に、新
規に2002年、統営の安井産業団地にLNG基地(貯蔵容量42万kl)を建設したほか、浦項製
鉄梶iPOSCO)が統営近郊の光陽(貯蔵容量20万klで、2005年完成予定)に建設中であ
り、年間の設備規模が1999年の190万klから2010年には558万klと、10年間で3倍程度
になる見通しである。
日本と並ぶLNG消費国に向けて韓国のエネルギー構造は大きく変化しており、将来はLNG
基地と相互に連携し国土を縦貫する広域なパイプライン網を通じて日本よりバランスの良い形
で天然ガス供給を実践する可能性が大きい。
また、韓国では自国経済の活性化及び効率化に資する競争原理を導入するため、天然ガス
市場の規制緩和に取り組んでおり、1999年に韓国産業資源部が米国アーサー・アンダーセ
ン、アンジン会計法人及び韓国エネルギー経済研究院に委託して取り纏めた『韓国ガス産業
の構造改革案』を発表し、韓国ガス公社の政府保有株式売却と会計分離、韓国ガス公社の
LNG輸入・卸売部門の3分割民営化(アンバンドリング)による新会社設立、韓国ガス公社の
輸送及び販売部門の分離(パイプライン・LNG基地の設備部門は引き続き独占的に保有し民
間事業者が育成された段階で随時民営化)、エネルギー市場規制(監視)機関の創設、天然
ガス取引所の設置及びパイプライン・LNG基地の第三者開放(英国の事例を手本としたTPA
導入)等を段階的に実施する方針である。ただ、最大野党のハンナラ党や韓国ガス公社労働
組合を中心に規制緩和には反対の意向が強く、思惑どおりに進展するかは不確実性が高い。
『韓国ガス産業の構造改革案』

KOGAS=韓国ガス公社
白地地域=KOGASの供給区域外地域

<出所>(財)日本エネルギー経済研究所
◆北朝鮮のケース
日本は2003年に初めて、事実上ミサイル防衛に係る対北朝鮮監視・偵察行為と言える情
報収集衛星を打ち上げた。核開発や弾道ミサイル「テポドン」発射疑惑で不穏な瀬戸際外交を
続ける北朝鮮の動きを牽制する目的であるが、北東アジアにおける中長期的な視点で捉える
と、このような軍事的対峙構造による主権国家間の勢力均衡型集団的安全保障は、真に北東
アジアの地域共存や信頼醸成に適うものとは言い難いと思われる。

<出所>日本経済新聞社
また、防空強化と呼べるミサイル防衛には莫大な資金(防衛庁によると、2003年度までは
研究開発段階としてミサイル防衛関係費が19億円であったが、2004年度は実戦配備を想
定し1423億円となり約75倍の超大幅増)を必要とするから代替案として、北朝鮮を含む北東
アジアに国際公共財としてのインフラストラクチャーの整備を進め、戦略的な新機軸を打ち出
すことにより“矛と楯の関係”によるミサイル防衛の必要性を低下させることが肝要である。

ミサイル防衛とは、日本に向かって来る弾道ミサイルを二段階で撃ち落とす仕組み。まず、
大気圏外を飛行中の弾道ミサイルに海上のイージス艦から迎撃ミサイル(SM3)を発射して撃
ち落とす。それに失敗すれば大気圏内に再突入して来るところを地上に配備したパトリオット3
(PAC3)ミサイルで破壊する。海上にSM3を配備しているイージス艦は現在4隻、陸上にPA
C3を配備している基地は首都圏をカバーする入間基地(埼玉県)、中京・近畿圏をカバーする
岐阜基地(岐阜県)及び北九州圏をカバーする春日基地(福岡県)の3ヶ所のみで、日本全土
は網羅できていない。
2004年に韓国国防研究院は、北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」の最大射程が従来推定して
いた1300kmよりも長い1500kmに達すると明らかにした。日本全土が完全に射程内に入
ることから、現行の防衛体制を見直すべく2005年に弾道ミサイルの迎撃手続きを定めた改
正自衛隊法が成立した。また、防衛庁を「省」に格上げすることも検討されている。
日本の選択は、日米同盟を基本としながらも、ミサイル防衛からある一定の距離を置いてい
る近隣の北東アジア諸国にも配慮しなければならないだろう。2003年、韓国・中国・ロシアの
3ヶ国は、北朝鮮を北東アジア経済圏に取り込むための多国間協力を推進し、協調的安全保
障に向けた長期的な戦略計画を発表した。

<出所>潟Rーエイ総合研究所
TMD=戦域ミサイル防衛
戦略的ODA(政府開発援助)=多国間インフラ整備をはじめとする経済協力等
内容は軽水炉に替わり核開発とは全く無縁な天然ガスによる火力発電所の建設計画であ
り、燃料となる天然ガスを東シベリア・イルクーツク州バイカル湖近郊のコビクタ天然ガス田か
ら北朝鮮を経由して韓国西部に至る輸送パイプライン敷設に向けた事業化調査を行なった。
調査ルートはイルクーツク州からモンゴル〜北京〜北朝鮮を経由して韓国及びイルクーツク州
から中国東北地区を通過し海底パイプラインで韓国に至る2ルートが有力である。
コビクタ天然ガス田パイプラインルート案

<出所>石油公団(現:石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
イルクーツクから450km北西のコビクタ天然ガス田に開発権を持つルシア・ペトロリアム(英
国メジャーBP及びTNK(チュメニ石油)の合弁会社TNK−BPが筆頭株主)、中国石油天然
気集団公司及び韓国ガス公社の3社によるパイプライン敷設に向けた共同事業化調査(FS)
が2003年に実施され注目を浴びている。当初ロシアは、経済性の観点からモンゴルを通過
する最短ルートを推奨していたが、中国としては政治的に微妙な関係にあるモンゴルをルート
から外したい意向で、韓国は中国に対して理解を示す立場をとった。結局、ルートはモンゴル
を迂回してロシアのザバイカリスクより中国の内蒙古治区満洲里に入り、遼寧省大連から北朝
鮮も迂回するために黄海を渡り、韓国の平澤(当初案では仁川)に陸揚げすることとなった。
しかし、開発コストの高騰(パイプライン敷設費を含む総事業費180億ドル)やバイカル湖の
南を通るルート選定について環境上の懸念が想定されるほか、天然ガス販売価格で合意に達
しておらず、今後の交渉は難航するものと予想される。なお、チャヤンダ天然ガス田について
は、レンスク、オレクミンスク、トンモト、ティンダを経由してコビクタ天然ガス田との連結が想定
されるが、コビクタ天然ガス田での交渉次第であり、現状は凍結状態にある。
●ルシア・ペトロリアム
ルシアの名称は、シベリア連邦管区の5都市(ラドゥジヌイ・ウソリエ・シビルスコエ・イルクー
ツク・アンガルスク)の頭文字を採って“RUSIA”となることに由来する。イルクーツク州におけ
る油ガス田開発を目的に結成されたコンソーシアムで、1992年に設立。当初の株主は、BP、
TNK、インターロス及びイルクーツク州資産基金であった。
また、韓国政府は独自にサハリン大陸棚の天然ガス鉱区「サハリンT」からサハリン島の
オハ〜ヴァル〜ラザレフ〜デカストデカストリ〜コムソモリスク・ナ・アムーレ〜ハバロフスク〜
ウラジオストク〜北朝鮮を通過して韓国に抜けるパイプライン構想を米国に提案し、米国も前
向きに検討をし始めている。サハリン大陸棚に開発権を持つ米国メジャーのエクソンモービル
が「コーラス(KoRus:韓国・ロシアの頭文字から命名)」プロジェクトとしてサハリン〜ロシア極東
南部〜北朝鮮〜韓国に繋がる総延長2300kmのパイプライン構想を米国政府に働きかけて
おり、『米朝枠組み合意』に基づき米国主導で発足した朝鮮半島エネルギー開発機構(KED
O)による軽水炉建設計画や重油支援に替わり北朝鮮で深刻化する電力不足の解消策とし
て、2003年に米国与党である共和党所属ペンシルベニア州第7区選出のカート・ウェルドン
下院議員(当時:下院軍事委員会副委員長)が「コーラス」プロジェクトを北朝鮮側に提案した。
サハリン大陸棚からロシア極東南部向けパイプライン計画

<出所>(社)ロシア東欧貿易会ロシア東欧経済研究所
ロシア極東は極寒の厳しさや軍需産業の衰退等による人口流出が社会問題となっているほ
か、既存の石炭火力発電所の老朽化に伴う停電や環境悪化も深刻であることから、サハリン
及びハバロフスクの両州政府ではサハリンパイプライン事業を梃子に新規雇用創出と地域振
興策、そしてパイプライン沿線に天然ガス火力発電所を新設して停電と環境悪化を一挙に解
消したい狙いがある。オハ〜ラザレフより間宮海峡を横断しデカストリ〜コムソモリスク・ナ・ア
ムーレまでは既設ライン(老朽化しており抜本的な改修必要)、コムソモリスク・ナ・アムーレ以
南が新設ラインとなる。ハバロフスクまで完成すればロシア沿海地方ウスリースクを経てロシア
極東最大の都市ウラジオストクまで延伸しナホトカ自由経済地帯へ供給する構想も浮上する。
1999年に策定された「サハリン州・ハバロフスク州・沿海地方ガス化連邦計画」に基づいて、
2001年から2006年までにコムソモリスク・ナ・アムーレ〜ハバロフスク間(全長502km)の
パイプラインを完成させる予定。
ナホトカ自由経済地帯について、ナホトカからパルチザンスクに至るボストチヌイ港を基点と
した土地330haで、韓国土地公社がロ韓工業団地(RKIC)の造営(総投資予定額6億ドル)
に協力姿勢を打ち出しているが、ロシア政府は外資導入が国内産業を脅かすと判断し、199
3年以降、ナホトカ自由経済地帯の外資優遇措置が実効性を失いロシア下院で批准されてい
ない等、投資環境は整っておらず企業誘致は進展していない(200社程度の受入れに対し20
03年で30社のみが登録。登録した企業にもペーパー・カンパニーが少なくない)。
●朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)
より核爆弾の製造に利用しにくい軽水炉への転換を図るべく、『米朝枠組み合意』に基づき、
1995年に米国主導で、日本及び韓国を中心とする国際事業体として発足した(その後、EU
も参加)。本部はニューヨークにあり、日本海に面した咸鏡南道の新浦市琴湖に代表事務所を
置く。軽水炉2基(100万kW×2基)の建設・提供を行うこと、1基目の軽水炉が提供される
までの間、米国が暖房及び発電用の重油50万トン/年を支援(KEDOを通じて1995年から
1999年まで総計215万トンを支援済み)することになっている。
KEDO軽水炉収容施設の着工式(2002年)

<出所>共同通信社
北朝鮮の瀬戸際外交政策に業を煮やしたブッシュ政権は、米国政府から派遣される形で20
01年からKEDO事務局長を務めてきたカートマン氏を退任させ米国から後任を出さないこと
でKEDOの“死に体化”を進めていた。2005年にはKEDOの組織解散・清算手続きが理事
会で正式決定されている。KEDO廃止に伴い、事業全体の経費が約46億ドルに対して既に
拠出した金額は韓国の約11.4億ドル、日本の約4億ドル、米国の約3.7億ドル、EUの約1.2
億ドルとなっている。日本政府は国際協力銀行を通じて貸し付けているが、実際は日本政府
が閣議決定で国際協力銀行の融資を保証していることから、北朝鮮からの回収が不能となれ
ば日本政府が補填せざるを得なくなり、税金投入で穴埋めする可能性が高い。さらに、KEDO
事務局の運営費等も国庫から累積で100億円程度拠出しており、国際協力銀行の融資焦げ
付き分と合わせた損失は600億円近くに達する見込み。
ただし、この提案には条件が幾つか盛り込まれており、@北朝鮮が核開発を完全に放棄し、
将来において国際原子力機関(IAEA)の査察(監視)を受け入れる、A米国は日本・韓国・中
国・ロシアと協力してパイプライン敷設を支援する、B1994年の『米朝枠組み合意』に基づく
軽水炉建設は中止し、北朝鮮を通過するパイプライン沿線に天然ガスを燃料とした複数の火
力発電所を建設する、Cパイプライン敷設後、北朝鮮は領土通過料(ロイヤリティ)に相当する
天然ガスを現物で受け取り(韓国エネルギー経済研究院が試算したところ、北朝鮮が受け取
る通過料は天然ガスで年間5億m3程度)Bの火力発電所を稼働させる等で、要するに北朝鮮
が核開発を放棄する見返りに天然ガスを得る“ガスと平和の相互交換(gas for peace)”と言う
戦略で、実現すれば北朝鮮の自立的発展を促すのみでなく、北東アジア全体に係るエネルギ
ー安全保障体制の強化にも繋がる副次的波及効果も期待される。
アジアパイプライン研究会によると、北朝鮮もウラジオストクから羅先〜清津〜金策〜咸興
〜元山〜開城間(東ルート:総延長800km)、新義州〜平壌〜沙里院〜開城間(西ルート:総
延長500km)及び平壌〜元山間(東西横断ルート:総延長200km)を結ぶH型パイプライン
構想を提案しているが、北朝鮮有事に係る核開発問題が解決されるまでは時期尚早であり、
実現が困難な状況にある。
北朝鮮が提案するH型パイプライン構想周辺の主な工業地帯
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H型構想
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東ルート
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西ルート
|
東西横断ルート
|
工業
地帯名
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羅津・先鋒(現:羅先)・清津
咸鏡北道海岸地帯・金策・端川
咸興・興南・元山
金剛山 |
新義州・亀城・博川・安州
江界・煕川・徳川・雲山(内陸地帯)
平壌・南浦・松林・沙里院
開城・海州 |
平壌・平城・元山 |
<出所>(財)世界経済情報サービス『ARCレポート 北朝鮮2003』等
六大工業地帯:
@摩天嶺から豆満江河口に至る清津港、羅津港や先鋒港を有し日本海沿岸の鉄鋼・化学・
機械工業地帯である金策(城津製鋼所)、東港と西港を有する北朝鮮最大の港湾都市で
ある清津(金策製鉄所)や羅先。
A元山港を有し北朝鮮最大の化学工業地帯である咸興、興南や元山。
B北朝鮮第2の機械工業地帯である新義州や亀城。
C比較的安全な内陸に位置することから兵器産業の心臓部であり精密機械・自動車・電子
工業地帯である江界、煕川、徳川や雲山。
D北朝鮮最大の軽工業地帯である平壌。
E南浦港を有し北朝鮮最大の機械・非鉄金属工業地帯である南浦(千里馬製鋼所)や松林
(黄海製鉄所)。
金剛山観光特区:2002年に制定された「金剛山観光地区法」に基づく、朝鮮半島屈指の風
光明媚な名所と言われる金剛山における陸路観光を通じた南北の平和共
存・和解・協力の象徴事業であり、韓国観光公社の支援を受け現代峨山が
独占的に手掛ける。軽工業やソフトウェア開発団地も建設する。
●豆満江下流域開発計画
羅先周辺には「豆満江(中国名:図們江)下流域開発計画」がある。この開発計画は1990
年に吉林省長春で開かれた第1回北東アジア経済発展国際会議において、吉林省科学技術
委員会が発表した『黄金の三角地帯−小金三角・大金三角の図們江デルタ』構想がベースと
なっており、ロシアのポシェット、吉林省琿春及び北朝鮮の羅津を繋ぐ「小金三角」地帯(図們
江国際自由貿易区:約1千km2)の中心に位置する中国領最端(図們江河口より15km)の
吉林省防川に河川港を設け、ロッテルダム、香港やシンガポールのような自由港湾都市を目
指して国際公社を設立し共同開発を行う。さらに、ウラジオストク、吉林省延吉及び北朝鮮の
清津を繋ぐ「大金三角」地帯(図們江経済開発区:約1万km2)に発展させ、北東アジアの地域
経済開発を活性化させると同時に北朝鮮の国際社会へのソフトランディング(軟着陸)を成功
させようとする斬新な試みである。
もともと、ロシアは「大ウラジオストク自由経済圏構想:1991年にウラジオストク市が国連工
業開発機関(UNIDO)に委託し、中朝の国境に位置するハサンからクラスキノ、ポシェット、
ザルビノ、ウラジオストクそしてナホトカまでを含む極東ロシア南部に特恵関税で外資を呼びこ
み、沿海地方の自主裁量による独自の借款を導入し国際港湾基地や自由経済圏を設ける構
想」、中国は「琿春辺境経済合作区:長白山(朝鮮名:白頭山)に源を発する図們江航路の開
設によって日本海への出口を確保し、遼寧省の大連港や営口港に依存することなく海外との
独自の物流ルートを持ちたい吉林省が1988年に延辺朝鮮族自治州内の琿春(当初は敬信)
に経済開発区を指定」及び北朝鮮は「羅津−先鋒自由経済貿易地帯構想:1991年に北朝鮮
政務院(現:内閣)で決定され、中ロと国境を接する咸鏡北道の羅津市と先鋒郡(現在は合併
し羅先市)621km2のエリアに国際貨物中継輸送基地(羅津港・先鋒港、近隣の清津港を自
由貿易港に指定及び鮒浦里・黒池地区での国際空港建設)、輸出加工基地(羅津港に隣接す
る新興や厚倉の重点モデル地区を含め10の工業団地造営)、国際観光(七宝山・晩浦・牛
岩・大草島等)及び国際金融・通信等総合サービスセンターと言う複合的な機能を備えた自由
経済貿易区を実現する構想であったが、2000年に羅先経済貿易地帯と改称し外資導入を
制限した結果、海外投資は停滞」と、3ヶ国が独自の開発構想を持っていたが故に相互協力
することなく競合関係にあった。しかし1991年以降、国連開発計画(UNDP)のイニシアティブ
によって、北東アジアを代表する多国間共同管理型開発モデルとして集約されたことで世界的
に注目されている。2005年に長春で開かれた第1回北東アジア投資貿易博覧会において、
UNDPと中国・ロシア・北朝鮮・韓国・モンゴルの各国は@豆満江下流域開発を巡る多国間枠
組みを10年間延長すること、A対象となる地域をロシア極東のサハリン州、中国東北地区、
モンゴル東部、そして韓国の東海岸まで拡大すること等で合意している。

<出所>日本貿易振興会(現:日本貿易振興機構)
●中国国家級開発区「辺境経済合作区」
辺境経済合作区は1992年にケ小平氏(故人)による『南巡講話』(沿海・沿江・沿陸上国境
の全方位門戸開放号令)が発表され、国際色豊かな辺境地区の優位性を活かし対外開放国
境都市として国内外企業の投資誘致を促す。周辺近隣国の市場をターゲットとした特恵政策と
して、国際交流、地域振興及び少数民族支援等、バッファーゾーン(緩衝地帯)の意味合いも
兼ねてスタートした。広西壮族自治区東興、憑祥、雲南省瑞麗、田宛町、河口及び表記を含め
14ヶ所が批准されている。
北東アジアに位置する辺境経済合作区
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国境名
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開発区名
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省・自治区名
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ロシア極東・北朝鮮
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琿春
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吉林省
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ロシア極東・モンゴル
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満洲里
|
内蒙古自治区
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ロシア極東
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黒河・綏芬河
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黒龍江省
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北朝鮮
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丹東
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遼寧省
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モンゴル
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二連浩特
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内蒙古自治区
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カザフスタン
|
塔城・博楽・伊寧
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新疆ウイグル自治区
|
<出所>中国開発区協会
●羅先経済貿易地帯(旧:羅津−先鋒自由経済貿易地帯)
羅津−先鋒自由経済貿易地帯は当初、南北経済交流に積極的な韓国が、韓国土地公社に
よる工業団地造営計画や大韓貿易投資振興公社による貿易館(投資情報センター)の設置等
を試みたが、1996年に北朝鮮の潜水艦が韓国・江陵付近の東海岸に侵入し頓挫した。また
1998年、金正日総書記が視察した際に金日成主席を讃える看板より上に外資企業の宣伝
広告があるのを目撃し激怒したことに端を発し「自由」の言葉が抜け、2000年に羅先経済貿
易地帯と改称し外資誘致を制限している。

羅先経済貿易地帯工業団地造営計画
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工業団地名
|
面積
(ha)
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開 発 業 種
|
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新 興(旧:羅津)
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250
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始発区として投資家の希望業種を優先(重点モデル団地) |
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厚 倉(旧:羅津)
|
100
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食料品・建材工業・保税区(重点モデル団地) |
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蒼 坪(旧:羅津)
|
60
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船舶修理・造船業 |
|
白 鶴(旧:先鋒)
|
200
|
電子・機械工業 |
|
寛 谷(旧:羅津)
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550
|
原油精製・石油化学工業(原油精製設備への投資を伴う最大案件) |
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洪 儀(旧:先鋒)
|
180
|
自動車・機械工業 |
|
雄 尚(旧:先鋒)
|
200
|
木材加工・船舶修理・建材工業 |
|
四 会(旧:先鋒)
|
350
|
自動車・軽工業 |
|
牛 岩(旧:先鋒)
|
300
|
牧場経営等サービス業・軽工業 |
|
元 汀(旧:先鋒)
|
140
|
軽工業 |
<出所>日本貿易振興会(現:日本貿易振興機構)
●開城工業団地特区
2002年に「開城工業地区法」を制定し、南北初の共同建設事業として韓国土地公社及び韓
国財閥である現代グループ・現代峨山が主導で2003年に総事業費10兆ウォン(約1兆円)
の工業団地造営に着手した。外資優遇措置を積極的に行い、軽工業団地(第1期:3.3km2
エリアに250社を誘致)と電子・コンピュータ・情報通信工業等の先端科学技術団地(第2・3
期:23km2エリアに1050社を誘致)を段階的に建設する。また、企業所得税率は決算利潤
の14%とし、軽工業・先端科学技術部門は10%とする。流通貨幣は米ドルやユーロ等の兌
換外貨としクレジットカードの使用も許可する。土地賃貸期間は50年であるが企業の申請に
より賃貸を受けた土地を継続利用が可能。価格は3.3m2あたり15万ウォン(約1.5万円)。た
だし、工業団地で生産活動を行う企業への電力・ガス等エネルギーの安定供給や人材と物資
の円滑な輸送を目的とした鉄道・道路の整備が焦眉の急となっている。韓国統一部が運営し
ている南北経済協力推進委員会によると、2004年〜2012年頃まで進出企業への分譲を行
い全体稼働はそれ以降との見方である。
開城はソウルから70km、板門店から10km、南北軍事境界線から僅か4kmに位置し、南
北を縦貫する京義鉄道(ソウル〜DMZ(De-Militarized Zone:非軍事区域38度線休戦ライン)
に位置する長湍から北朝鮮の鳳東に入り開城工業団地特区を経て、平壌から朝中国境の新
義州に至る南北縦貫ルート。さらに、京義鉄道は鴨緑江を渡る鉄道・道路併用の橋梁建設に
より大東・浪頭港、商業貿易観光区、金泉工業区及び保税区を有する中朝国境の国家級開
発区である遼寧省丹東に接続し、本溪〜瀋陽への連結構想がある)が開通すれば主要な中
継地となる。また韓国有数の国際港湾都市である仁川やアジアのハブ空港を目指す仁川国際
空港にも近い。
開城工業団地特区のほか、DMZに近い鉄原一体に400万坪の中小企業専用工業団地を
造営する構想や開城に隣接した開豊に2千万坪の工業団地を三段階で開発する計画があり、
仁川近くの江華島と開豊を橋で連結し、仁川にある自動車部品工場等を現地に移転させ、仁
川の港湾及び空港を製造・物流基地に再開発する。

●新義州特別行政区
2002年に「新義州特別行政区基本法」を制定し、中朝国境地帯である新義州に50年間の
期限つきで国が立法・行政・司法権を授与、外交や安全保障を除いて国内法を適用せずに自
治権を有する香港をモデルとした一国二制度による経済特区を創設した。また、国際的な金
融、貿易、商工業、先端科学そして娯楽・観光地区等として整備し、資本主義体制を導入し外
資導入や貿易活性化を進める。具体的には@中朝の若年(16歳以上)技術者や管理知識の
ある専門家20万人を行政区内(新義州市・義州郡と塩州郡・鉄山郡の一部を編入した132
km2)に定住、A立法会議議員15人の半数は外国人、B司法府のトップ(法務長官)は欧州
国籍の人材を起用、Cノービザ、D輸出入時の無関税・所得税14%、F法定貨幣は米ドル又
は人民元、G公用語は朝鮮語・中国語・英語及びHインフラ整備には行政府が国際入札を実
施する等。

<出所>東洋経済日報
韓国は、南部の釜山や木浦から九州地方北部に至る海底パイプライン敷設も併せて提案し
ている。九州地方北部には2003年、規制緩和を活用して物流の分野からアジア連携強化を
目指す重点拠点として政府から構造改革特区の認定を受けた「北九州市国際物流特区」が
あるほか、西部ガス鰍フ九州地方北部の天然ガス供給を目的とした福岡市東区の福北工場
(福岡市〜北九州市間の福北パイプラインと接続)、若松区響灘エリアの北九州工場、長崎工
場、新設の長崎LNG基地や佐世保工場、そして九州電力葛yび新日本製鐵鰍フ共同出資会
社である北九州LNG鰍フ戸畑工場があり、受入れ体制は万全である。さらに、西部ガス
は、北九州LNG鰍ゥらの天然ガス調達量を拡大する目的で北九州LNG褐ヒ畑工場〜西部
ガス竃k九州工場〜西部ガス株ェ幡供給所間のパイプライン高圧化を推進中であり、輸送
能力を約5倍に高める計画である。

<出所>潟Kスエネルギー新聞
北九州LNG鰍ヘ大口需要家向け(九州電力叶V小倉発電所、新日本製鐵株ェ幡製鉄所、
戸畑共同火力株ュ電所及び西部ガス竃k九州工場)に戸畑工場からの分岐パイプラインで
天然ガスを供給しているほか、関門海峡を横断する海底パイプラインを通じ中国地方下関市
の山口合同ガス兜F島工場に供給している。
関門海峡横断パイプライン

<出所>山口合同ガス
総延長(北九州市〜下関市間)は4.4kmで、うち海峡横断区間は3.6km。国内唯一の海峡
横断パイプライン。
中国地方では、山口合同ガス鰍ェ中国電力鰍ニ連携して山口県の柳井LNG基地から高圧
パイプラインで徳山市を経由して中圧パイプラインで防府市さらに山口市に至る供給ルート(総
延長85km)を整備している。
山口県内のパイプライン

<出所>山口合同ガス
●徳山市(現:周南市)
2003年に政府より「環境対応型コンビナート」構造改革特区の認定を受け、新南陽市、熊
毛町及び鹿野町と合併し周南市となった。特区内の企業が所有する自家発電施設を活用して
特定電力供給に係る相互融通の弾力的運用を実現し、周南コンビナート共同火力発電所等
の電力インフラを整備して電気料金の低廉化による企業経営の効率化及び国際競争力の向
上を図り、地球温暖化防止や省エネルギー対策を推進する。
また広島ガス鰍ヘ、政府から2004年に広島港を中核国際港湾と位置づけ「広島国際物流・
交流」構造改革特区の認定を受けた広島市や廿日市市等の区内に立地するLNG基地(廿日
市工場)より広島市及び呉市に至るパイプライン(総延長602km)を敷設しているほか、岡山
県倉敷市にある水島LNG基地(中国電力葛yび新日本石油鰍フ共同出資会社である水島L
NG鰍ェ建設中)の2006年稼働に合わせて、2003年には福山ガス鰍ニ共同出資で瀬戸内
パイプライン鰍設立し、新規LNG基地が建設される水島地区から福山ガス鰍フ供給地域で
ある広島県福山市を経由して広島ガス鰍フ供給地域である尾道市に至るパイプライン(総延
長70km程度)を2006年までに敷設する。
瀬戸内パイプライン

<出所>広島ガス
倉敷市は2003年に政府より「水島港国際物流・産業」構造改革特区の認定を受け、全国有
数の工業地帯を背後に持つ。物流と産業が一体となったアジア地域の国際輸送拠点として、
水島港を核とした地域の活性化を図る。福山市は2003年に政府より「びんご産業再生」構造
改革特区の認定を受け、備後地域の産業構造転換に資する環境関連等新規成長産業の創
出と福山港の国際物流機能の強化を図り、産業再生による経済波及効果を狙う。
さらに広島ガス鰍ヘ東広島市以降の延伸パイプラインである備後幹線(東広島市〜三原市
備後工場間)の敷設を計画しており、完成すれば広島市から岡山市まで基幹パイプラインで繋
がり、一層の天然ガス需要拡大が期待できる。
九州地方北部と広島県を中核とする中国地方のパイプライン網の発達によって、局所的なラ
イン(西部ガス鰍フ関連会社である九州ガス圧送鰍ェ2004年に敷設した福岡県大牟田市と
熊本県熊本市を結ぶ総延長52kmの大牟田ライン及び西部ガス鰍ノよって2002年に完成し
た久留米ライン(福岡県春日市〜久留米市間)を分岐し佐賀県佐賀市の佐賀市営ガス局の民
営化譲受会社である佐賀ガス鰍ノ供給するため三愛石油鰍ェ2005年に敷設した佐賀天然
ガスパイプラインで総延長28km)の繋がりを目指し九州地方北部を縦貫する福南幹線(西部
ガス兜泱k工場から大牟田市までの総延長90kmで、2010年完成予定)やパイプラインがな
く天然ガス転換が遅れている東九州エリア(九州電力鰍フ関連会社である大分LNG鰍ェ所有
する大分LNG基地があり、大分県の大分市・別府市のほか、宮崎県の宮崎市・延岡市・都城
市等の中核都市を有する)と南九州エリア(日本ガス鰍ェ所有する鹿児島工場を拠点として
自社管内の天然ガス転換完了)への供給が想定され得る。
九州地方北部縦貫パイプライン(福南幹線)計画

<出所>潟Kスエネルギー新聞
福南幹線は福北パイプラインと接続し、西部ガス兜泱k工場を起点として北九州市から熊本
市まで結ばれる。西部ガス鰍ナは、LNGサテライト基地である熊本工場の設備を増強し、製造
能力を現行の年間最大5000万m3から1億m3に倍増する。熊本県は1980年代半ばから
電子工業等を戦略産業と位置づけて積極的な企業誘致を行っており、半導体や自動車関連
産業の集積が進められている。また、西部ガス鰍ナは、1989年に北九州地区から佐世保、
福岡、熊本、長崎、島原地区と進めた天然ガス転換作業が2005年に完了した。

<出所>潟Kスエネルギー新聞
旧福南幹線である久留米ラインは、西部ガス鰍ェ福北工場から筑紫ガス梶A鳥栖ガス
及び久留米市営企業局(久留米市ガス)へ天然ガスを供給するために敷設された。
そして、大阪ガス鰍ェ姫路市内の供給体制を強化すべく敷設を進めている近畿幹線姫路ラ
インが西方に延伸されれば近畿幹線西部・京滋ライン〜滋賀ライン(姫路市〜三田市〜京都
市伏見区〜草津市〜彦根市間)との接続、さらに滋賀ラインと結ぶべく2010年完成予定で
中部電力葛yび大阪ガス鰍ェ共同敷設している三重−滋賀パイプライン(彦根市〜四日市市
間)を通じて、近畿・中部圏への供給も想定され得る。このように西日本における潜在需要(内
需拡大効果)は大変高いものと推察されるが故に、北朝鮮経由の朝鮮半島縦貫パイプライン
実現に向けた国際協力を積極的に進める必要がある。
近畿圏パイプライン及び三重−滋賀パイプライン計画

<出所>中部電力
大阪ガス鰍ヘ大阪府及び兵庫県そして京都府を跨る大阪湾周辺を中心にパイプラインを
“コ”の字に整備しており、まず1978年に大阪府高石市の泉北製造所から京都市間を繋ぐ
近畿幹線第二東部ライン(総延長92km)が敷設され、続いて兵庫県の姫路製造所と京都市
間を繋ぐ近畿幹線第二西部ライン(総延長158km)が1989年に近畿幹線第二東部ラインと
接続された。そして、1994年には姫路製造所〜兵庫県三田市間をループ化し供給力の安定
及び輸送能力の増強を担う近畿幹線第三西部ライン(総延長73km)が完成した。さらに、20
01年には泉北製造所から大阪市此花区の北港製造所に至る総延長22kmの近畿幹線湾岸
ライン(総延長21kmで、大阪湾岸の海底下を6回通過し海底部の総延長は7km)を完成さ
せ、大消費地である大阪市及び堺市をはじめ大阪湾沿岸部の供給体制が強化されている。
また、京都市伏見区から滋賀県草津市までの近畿幹線京滋ライン(総延長46km)が2003
年に開通し、さらに延伸して彦根市に至る滋賀ライン(総延長46km)が2007年に完成予定
である。
<出所>大阪ガス
中部電力鰍ェ所有する三重県四日市LNGセンター火力発電所から三重県北勢地方(桑名
市等)、鈴鹿山脈の北端付近を経て彦根市近郊の多賀町までパイプラインを大阪ガス鰍ニ共
同敷設(総延長60km)して滋賀ラインと接続させ、両社の供給地域を跨ぐことで相互に天然
ガスを2010年から融通し合う計画がある。
大阪ガス鰍ヘ供給地域を滋賀ライン及び共同パイプラインによって拡大することで沿線の新
規需要を開拓し(布石として2002年、三重県名張市に拠点を持つ近畿日本鉄道且q会社
「名張近鉄ガス」を買収)、中部電力鰍ニの越境提携によって電力と都市ガスの需要期の違い
を活かして安定的かつ低コストで天然ガスを調達することで、兵庫県及び大阪府にあるLNG
基地から滋賀県に天然ガスを送り込むための圧力が足らない分を設備の新設で補うよりも、
中部電力鰍ェ伊勢湾沿岸に所有するLNG基地から供給を受ける方が得策であると判断した
こと、大阪ガス鰍フ供給地域内で都市ガス事業の拡大を進めている関西電力鰍ノ対抗する
狙いがある。また、中部電力鰍ヘ大阪ガス鰍ニ共同で天然ガスを安定的に調達することから、
LNG調達の余剰感を払拭し調達量が膨らむことでLNG輸入先(天然ガス産出国)に対する
バーゲニングパワー(価格交渉力)の強化も期待されるほか、電力では東西エリアで周波数が
異なる関係で中部電力葛yび関西電力鰍ェ東京電力鰍フ供給地域に参入することは難しい
ことから、必然的に中部電力鰍ニ関西電力鰍ェお互いにパイを奪い合うこととなる。そこで従
来から関西電力鰍ニ熾烈な競争を繰り広げている大阪ガス鰍ニ越境提携することで関西電力
鰍フ中部圏への進出攻勢に対する抑止力効果を狙っている。
さらに、2005年から大阪ガス鰍ヘ、自社管内の姫路市から岡山市向けのパイプライン敷設
ルート・仕様・建設コスト・採算性等を調査し敷設の技術的・経済的可能性を検討している。環
境意識の高まりから大口需要家を中心に天然ガスシフトが進むなか、民間主導でのインフラ
整備の動きのひとつとして注目される。

<出所>大阪ガス
これに先立ち、資源エネルギー庁はガス事業インフラ整備に関する検討会の事務局である
(財)日本エネルギー経済研究所に委託し、追加的な整備が必要とされ得るパイプラインとし
て、大需要地を繋ぐ区間で未敷設又は敷設計画がない福島県郡山市〜栃木県宇都宮市間、
静岡県掛川市〜愛知県豊橋市間及び姫路市〜岡山市間の3区間を対象に採算性・供給安定
性・環境性等、敷設が適切かどうか多面的に試算し、さらには政策的支援が必要かどうかも検
討した。その結果、3区間のなかで姫路市〜岡山市間が最も妥当性があることが指摘されて
いる。
このほか、資源エネルギー庁は「天然ガス広域供給パイプライン整備需要顕在化可能性調
査」として、事業者間を結ぶ一定規模以上の新規基幹パイプラインの敷設を検討する事業者
に対し、事業化調査費用の2分の1を補助する。また、エネルギー多消費型設備天然ガス化
推進補助金に「パイプライン需要顕在化枠」を設け、上記の新規基幹パイプラインの沿線需要
を対象に、補助率を一般枠3分の1以内に対して2分の1以内に引き上げる。本支管敷設費
は同補助金の対象に含まれていないため、これまで供給区域外の大口需要家からの申請は
非常に少なかった。今回、補助率を引き上げることで、これらの需要開拓を支援し、事業者間
のネットワーク相互接続による国内広域パイプラインの形成促進を図る。
関西電力鰍ヘ千億円以上を投じ主力火力発電所である堺港発電所を2010年までに全面
改修する。堺港火力発電所の出力は標準的な原子力発電所2基分に相当する200万kW。
原料を大阪ガス鰍ゥらの購入より堺LNG基地からの自前調達に切り替えて燃料費を抑制し
発電コストを低減することで大阪ガス鰍ノ対する競争力を高める。同じ堺地区では、大阪ガス
鰍熄o力111万kWの大型LNG火力発電所である泉北発電所の建設(泉北製造所第一・第
二工場内)を表明している。発電事業を都市ガス事業に次ぐ柱にする方針で、天然ガスと電力
を有機的に一体化させた新たな戦略部門(Gas & Power)に、液化石油ガス(LPG)を加えた
マルチエネルギー企業を目指している。

<出所>関西電力
南港発電所・大阪発電所・堺港発電所・堺LNG基地(関西電力潟Oループ会社所有)
東京ガス鰍ニ大阪ガス鰍フ中間に位置する名古屋圏の東邦ガス鰍ヘ、伊勢湾にある中部
電力葛yび東邦ガス鰍フ共同出資会社である知多LNG鰍ェ建設した知多LNG共同基地が
1976年に完成したことをきっかけに、LNG受入れに対応したパイプラインの敷設を推進して
おり、伊勢湾を挟んで愛知県知多市と三重県の四日市工場(LNG基地)を結ぶパイプラインを
敷設した。また、四日市工場から三重県中勢地方以南(四日市市〜鈴鹿市〜亀山市〜津市
〜久居市〜松阪市〜伊勢市間)にパイプランで供給されている。さらに、名古屋圏をメインとし
た新高圧幹線ネットワークの整備に着手しており、知多LNG共同基地と東邦ガス鰍ェ所有す
る知多緑浜工場を起点に北上して名古屋市を中心に半径25kmを取り囲む形の新高圧幹線
ネットワークの一部となる知多・名南幹線が2003年に完成した(総延長31km)。2005年に
は東環状・三河幹線が完成したことで、2010年に残りの西環状幹線が敷設されればLNG基
地からの送出路線が完全にループ化され、盤石の供給体制が出来上がる。
知多・名南幹線

<出所>東邦ガス
東西環状・三河幹線

<出所>東邦ガス
東環状幹線:総延長約60kmで、桃花台〜小牧間が2005年完成
西環状幹線:津島〜一宮〜小牧間が2010年完成予定
三河幹線:総延長16kmで、刈谷〜幸田間が2005年完成
名古屋圏新高圧幹線ネットワーク

<出所>東邦ガス
知多幹線:知多市〜大府市間(総延長約17km)
名南幹線:東海市〜豊明市間(総延長約13km)
知多幹線以外の知多市を起点とした主な輸送幹線:
@知多市〜東海市〜大府市〜豊明市〜東郷町〜日進市〜長久手町〜春日井市〜
尾張旭市〜小牧市間
A知多市〜名古屋市港区空見環境センター〜飛島町〜津島市間
B知多市〜常滑市〜中部国際空港間
C知多市〜半田市〜刈谷市〜安城市〜岡崎市〜豊橋市(中部ガス滑ヌ内)間
豊橋市周辺のパイプライン

<出所>中部ガス
中部ガス鰍ヘ豊橋市及び静岡県浜松市を中心とする東海道沿線の東西60km、南北25km
の7市2町が管内(供給区域)
(財)環日本海経済研究所によると、北朝鮮の生産電力量は1989年の292億kWhをピーク
に年々低下し、1998年で発電設備の構成比は水力と火力で6対4の割合になっており、火力
の大半が石炭(一部重油)であることから、金正日政権は“石炭なくして電気を起こせず、電気
なくして石炭の採掘もできない”と言う相互補完的な関係を重視し、石炭及び電力工業の両部
門を統合することで双方の効率を高めることを目的とした電気・石炭工業省を設置している。
だが、1980年代後半以降、炭鉱の深部化によって新規炭鉱開発が困難になっており、石炭
の生産量減少(韓国統一部の推定によれば、1989年には4330万トンあった石炭生産量
も、1998年には1860万トンまで減少)に伴って火力発電所は正常に稼働しなくなっている。
また、深刻な食糧不足に陥り飢餓状態が厳しさを増している北朝鮮では、十分な食事もできな
い労働者が重労働である石炭の採掘現場には行きたがらない。水力に関しても慢性的な雨量
の不足や大洪水が原因で稼働率は低下している。これらの発電所の大部分は1960年代以
前に建設されたものであり、発電効率が低いうえに老朽化による電力損失や故障が頻発して
おり、1990年の稼働率が44.3%(総発電能力714万kWに対し総発電量は277億kWh)で
あったのが、1998年ではわずか26.3%(総発電能力739万kWに対し総発電量は170億
kWh)の低水準となっている。
●送・配電中の漏電問題
一般的に送電する際は太い高圧電線を使用し漏電が少ないが、北朝鮮の場合、細い電線で
発電所から大口需要家に送電しており、また電線の老朽化も深刻で、この送電の段階で既に
70%を漏電している。おまけに、電柱やトランスがないことから地域全体が言わばタコ足配線
のようになっており、電線の多くが地中に埋設されているため、老朽化は地上に配線される場
合よりも早く、地下配電中でさらに30〜50%が漏電している。
韓国統一部によると現在、北朝鮮の総発電能力は755万kWであるが、実際の発電量は約
200万kWに留まっており、国内需要分(約400万kW)のうち約200万kWが電力不足となっ
ている。そこで韓国は、北朝鮮に対し不足分の電力供給を提案しているが、パイプライン敷設
や火力発電所建設支援等と異なり、受け入れれば生命線である電力供給を韓国側に掌握さ
れることとなることから、北朝鮮が提案を受け入れるかどうかは不透明である。
さらに、2002年に米国に対して核開発の継続を認めて以降、国際原子力機関(IAEA)の査
察官を追放し、2003年には核拡散防止条約(NPT)の脱退宣言を行う等、核開発問題に係
る緊張の度合いが強まったことを背景に、米国は2002年にKEDOを通じた暖房及び発電用
の重油支援を中止し、2004年にはKEDOの軽水炉建設事業存続は困難との見解を示した。
そして、2005年にはKEDOの解散・清算手続きを巡り、日米韓等それぞれの思惑にズレが
生じて、KEDO理事国間の調整難航が表面化している。

<出所>日本経済新聞社
これら悪循環によって、北朝鮮のエネルギー不足により一層拍車が懸かろうとしている今、
極端なエネルギー不足は生産活動を直撃しており、北朝鮮の大部分の製造工場では稼働率
が10〜30%に落ち込み、遊休設備が増えているのが実情である。工場の稼働率が下がれ
ば工業生産のみならず、農業用の資機材も生産できないことから化学肥料、農薬及び食糧
生産も回復しないと言うマイナスの経済が連鎖反応している。
日本は1980年代半ば以降、急速にアジアへの傾斜を強めて来た。しかし、それは中国中
南部以南を中心に東南アジアを対象とするものであって、北東アジアにおける日本の存在は
大きくない。北東アジア地域開発の象徴とも言える豆満江下流域開発計画は、1996年から
関係5ヶ国(中朝ロに韓国及びモンゴル)から構成される域内初の政府間組織である「図們江
経済開発地域及び北東アジアの開発のための諮問委員会」を発足させ図們江開発事務局を
北京市に置き、図們江信託基金を創設したが、日本は未だにオブザーバーに留まっている。
北東アジア諸国から日本に寄せられている期待は、官民を挙げて巨大な潜在力を有し得る
多国間開発に明確な協力姿勢を示し真摯に取り組むことである。新社会資本となり得るパイプ
ラインのような多国間エネルギー供給インフラの整備によって、北東アジアに協調的な信頼醸
成と恒久的な安定をもたらす処方箋(国際的な緊張緩和の道具)になるものと考える。それは
また遠からず、日本の持続可能なエネルギー政策にとっても大きな価値を持つものとなるであ
ろう。
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