◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略VOL185
江田島孔明
今回は、2007年度の最後として、本年の総括と、既に始まった「世界戦国時代」の様相を展望してみたい。
まず、基本的認識として、前号で述べたように、ドル機軸体制の終焉、すなわち、アメリカ幕府崩壊後の世界とは、事実上、ヤルタ体制以前の世界、あるいは、アメリカが国際政治に登場した、日露戦争のポーツマス会議以前の状態に復する事を意味する。
この時代、世界は帝国主義の最終段階にあった。現在、世界はアメリカ以後をにらんで、新たな枠組みの構築を目指し、世界規模での「椅子取りゲーム」が開始されつつある。
単純に考えて「基軸通貨の崩壊は自由貿易の死」を意味し、それは、物価の高騰、世界経済の縮小から物々交換の開始や世界規模での軍拡に道を開く。
下記に記す中ロの動きや小麦の高騰は、この裏打ちするものであり、まさに、春秋戦国時代以来、このような時代は、戦略家冥利につきるといえる。
<参考>
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071219ig91.htm
プーチン外交 大国復活をもくろむ“強面”(12月20日付・読売社説)
ロシアのプーチン政権が推進する“強面(こわもて)”外交が、これまで以上に明確な形を取り始めている。そのために米欧など西側社会との溝が深まることなど、意に介さないかのようだ。
国連安全保障理事会の常任理事国でもあるロシアは、国際社会の重要なプレーヤーである。その動向から目を離すわけにはいかない。
最近の動きで注目すべきは、1992年に発効した欧州通常戦力(CFE)条約の履行を一方的に停止した措置だ。
欧州諸国に配備される通常兵器の上限を定めたCFE条約は、冷戦後の欧州の安全保障体制の礎石、との評価にふさわしい実績を上げてきた。
今回の措置で、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)に対し、条約が定める兵力の移動や軍事演習などに関する情報の通知義務を負わなくなる。査察も受け付けないことが予想される。
ロシアもNATOに対し、同様の情報公開などは期待できなくなり、軍事情報をめぐる透明性は低下するだろう。発効から15年、CFE条約が重大な転機に立たされているのは間違いない。
問題の直接の発端となったのは、米国が進めているポーランドとチェコへのミサイル防衛(MD)配備計画だ。
米国は、イランからの弾道ミサイル攻撃を想定したもの、と説明してきたが、ロシアは受け入れていない。その背後にロシア封じ込めの意図を読み、対抗策として打ち出したのが今回の措置だ。
条約復帰のための条件として、ロシアは、バルト3国とスロベニアの条約加盟や、ロシア国内での軍移動制限の撤廃などを挙げている。
これらの条件の中でNATOが懸念するのは、国内におけるロシア軍の移動制限撤廃に関する要求だ。
ロシアは特に、NATO加盟を望むなど西側への傾斜を強めるグルジアへの軍事圧力を強めたい、という思惑から、北カフカス地方での部隊増派を狙っているのではないか。
プーチン政権の非妥協的な姿勢は、かつてのソ連圏における勢力復活を目指す意図の表れのように見える。
ロシアは、国連が暫定統治するセルビア・コソボ自治州の最終地位交渉をめぐっても、コソボの独立を拒否するセルビアを一貫して支持してきた。
交渉決裂を受け、コソボの一方的な独立の宣言は確実な情勢だ。だが、ロシアにコソボ独立を認める構えはない。バルカン地域の不安定化は必至だ。
多少の緊張もいとわず――。それもプーチン外交の特徴かも知れない。
(2007年12月20日1時34分 読売新聞)
<参考>
http://www.afpbb.com/article/politics/2327435/2465702
東シナ海ガス田開発、首相の訪中時に解決は困難、経産相
2007年12月18日 18:58 発信地:東京
福田康夫首相(2007年11月20日撮影)。(c)AFP/How Hwee Young
【12月18日 AFP】福田康夫(Yasuo Fukuda<http://www.afpbb.com/index.php?module=Linkword&action=Redirect&type=&word=%22Yasuo+Fukuda%22> )首相の訪中を前に、甘利明(Akira Amari<http://www.afpbb.com/index.php?module=Linkword&action=Redirect&type=&word=%22Akira+Amari%22> )経済産業相は11月18日、東シナ海ガス田開発をめぐる日本と中国の対立は解決しそうもないとの見方を示した。
甘利氏は「今回の首相訪中の時点で(合意)というのは極めて可能性は薄いと感じている」と述べた。首脳会談での解決を目指すならば事務レベルでの協議で差異を埋める必要があるが、現時点ではそこまで至っていないとの見方を示した。
一方、町村信孝(Nobutaka Machimura<http://www.afpbb.com/index.php?module=Linkword&action=Redirect&type=&word=%22Nobutaka+Machimura%22> )官房長官は同日、首相の訪中に際してガス田問題の解決は「絶対的な必要条件とは思わない」と述べた。
福田首相は今月27日に訪中し、胡錦濤(Hu Jintao <http://www.afpbb.com/index.php?module=Linkword&action=Redirect&type=&word=%22Hu+Jintao%22> )国家主席と会談すると報じられているが、公式発表はない。
http://www.asahi.com/kids/news/TKY200712210092.html
小麦、2008年4月20〜30%値上げへ
2007年12月20日付 朝日小学生新聞
国が製粉(せいふん)会社に売りわたす小麦の価格が08年4月、大幅に値上げされることが確実になりました。国際的な小麦の取引価格が大幅に上がっているためで、農林水産省は少なくとも20〜30%の値上げはさけられないとみています。オーストラリアなど産地の干ばつに加え、買い占めてもうけようとする動きも影響(えいきょう)しているようです。
07年10月にも10%値上げされ、小麦粉などを原料とする多くの食品が値上がりしました。来年もパンやめん、菓子(かし)類などの大幅値上げにつながる可能性が高そうです。
要するに、アメリカがイラクで軍事的に、サブプライムで経済的に躓いた間隙を縫って、中ロが躍動を始めたということだ。
下記の様に、サブプライム問題の解決に、特効薬はない。私は、サブプライム問題がなくても、アメリカの崩壊は避けられないと考える。
<参考>
http://www.chunichi.co.jp/article/economics/news/CK2007122202074278.html
サブプライム基金断念 米大手銀、資金が集まらず
2007年12月22日 夕刊
【ニューヨーク=池尾伸一】シティグループなど米大手銀行は12月21日、共同で準備を進めてきた米国の信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題による不良資産の買い取り基金の設立を断念することを決めたと発表した。
基金について、当初から「買い取った資産がさらに値下がりする可能性がある」など、その実効性に疑問の声が多く出ており、資金集めも難航していた。最近は、シティや英金融大手HSBCなどが系列ファンドを自力救済する方針に転換したこともあり、設立の必要性がなくなっていた。
米金融界は、三菱UFJフィナンシャル・グループなど日本の3大金融グループにも基金への資金協力を要請したが、邦銀グループは「経済合理性がない」との理由で断る方針を決めている。
基金は、資金繰りが悪化している金融機関傘下の資産運用会社が大量のサブプライム関連の金融商品を抱えて、回収不能になっているのに対応。健全資産を買い取り、運用会社の資金繰りを支援することが目的だった。
米大手銀は米財務省の呼び掛けで07年10月に最大1000億ドル(約11兆4000億円)規模の基金設立で合意。最近になって資金規模を半減するとの見方も出ていた。
日本史は世界史の縮図だと考えられる。日本史において、戦争のない平和な時代である、平安時代、江戸時代の後に鎌倉、明治という武の時代が来たことを思い出す必要がある。
現在は、平安時代や江戸時代の終了と同様に、「武」がエトスの時代に入っている。鎌倉時代には元寇があり、明治時代にはロシアの南下があった。このような戦略状況で、日本がとりうる道は、実は、明治維新後の「富国強兵策」や鎌倉幕府の御家人制度による「有事即応体制の構築」しかない。
具体的には、日中のガス田問題や尖閣問題に見られる東シナ海の制海権につき、日中は不倶戴天の関係になるだろう。私は、両国は19世紀から20世紀の英独関係を再演すると考える。その第一歩は東シナ海の制海権を賭けた海軍戦略だ。
この観点から、本年進水した「そうりゅう」や「ひゅうが」に見られる海自の新世代艦が旧帝国海軍の艦名を踏襲しているのは象徴的な事だ。防衛省の発足とも関連し、本年は日本の防衛政策の転機となる年である。
<参考>
http://military.gozaru.jp/others/16ddh.htm
ひゅうが
日本の新型ヘリコプター搭載護衛艦で、実質的な戦後初のヘリ「空母」。現在各護衛隊群の旗艦となっているヘリコプター搭載護衛艦DDHの内、「はるな」型の「はるな」は昭和48年、「ひえい」は49年に竣工しFRAM(近代化改装・艦齢延長工事)も行われたが、既に艦齢は30年を過ぎており、 「はるな」は平成20年度に除籍が見込まれている。
その為代替艦として本級の建造が平成13年度からの中期防衛力整備計画に盛り込まれ、16年度計画および17年度計画で2隻が建造されることとなっていた。 その後2番艦は18年度計画に盛り込まれたため、それぞれ計画年度から通称16DDH、18DDHと呼ばれている。しかし日本の戦後初めてとなる、このヘリ「空母」建造までの道のりは極めて長いものだった。
http://m3i.nobody.jp/military/soryumenu.html
そうりゅう
そうりゅう型潜水艦は海上自衛隊が建造を進めている新型潜水艦である。1番艦が平成16年度の予算で建造される潜水艦(SS)のため、16SSとも呼ばれる。また排水量の計画値から2900トン型潜水艦と呼ばれることもある。
そうりゅう型潜水艦にはそれまでの海上自衛隊潜水艦にはない様々な新機軸が盛り込まれているが、特筆すべきは海上自衛隊の潜水艦として初めて非大気依存推進機関(AIP;Air Independennt Propulsion)のスターリングエンジンを採用したことである。
外燃機関であるスターリングエンジンは燃焼時に大気を必要としない。このため潜航したままでもバッテリーの充電が可能になり、これまでの潜水艦のように海面近くまで浮上、ディーゼル機関を運転し発電する必要がなくなる。つまりバッテリー充電のために頻繁に浮上する必要が減るため、敵に探知される危険も大きく減少することに繋がる。
アメリカの崩壊による在日米軍撤退が現実のものになりつつある今日、重要な点は、日本が海洋国家である以上、海軍力の拡充による「制海権の充実」は不可欠だということだ。そのために、海自がヘリ空母やAIP潜水艦を保有する事も間違った戦略ではない。
しかし、シーパワーの優位とは、船の頭数ではない。「情報と技術の優位」だということを正確に理解した上で、情報セキュリティーとネットワークやコンピュータといった分野での優位を北京に奪われてはいけない。
日米戦が実は情報戦であり、この情報戦に完敗したことが日本の敗北を生んだ事実、情報技術は実は民間技術が軍事技術をリードしてきた歴史を見ても、日本の「情報技術産業」の盛衰が実は日本の地政学的地位に直結する事を自覚するべきだ。
例えば、戦前の日本で開発された八木アンテナに、当時の軍部は全く関心を示さなかった。欧米の学会や軍部では八木アンテナの指向性に注目し、これを使用してレーダーの性能を飛躍的に向上させた。しかし、日本の学界や軍部ではほとんど注目されず、その存在を知る者もほどんどいなかった。
そのため、1942年に日本軍がシンガポールの戦いでイギリスの植民地だったシンガポールを占領してレーダーを発見した時に、技術書の中にあった"YAGI"の意味を捕虜のイギリス兵から日本人の発明者の名前だと教えられて驚嘆したと言われている。
その後、日本は急遽、レーダー開発に躍起になるが、時既におそく、ミッドウェイで、八木アンテナ装備のドーントレスに発見された南雲機動部隊は急降下爆撃で壊滅させられる。
<参考>
ミッドウェイ海戦
http://www.youtube.com/watch?v=DRQOb9F1yJY
http://www.youtube.com/watch?v=a9soGxFrDZo
<http://www.youtube.com/watch?v=a9soGxFrDZo&NR=1> &NR=1
このような故事に見られるように、情報通信技術は民間がリードしている以上、日本も官民合わせた「情報通信技術の育成体制」が早急に構築される必要がある。
思うに、日本存立の基盤である「制海権」概念をここで明確にしておく必要がある。
第一次大戦において、制海権獲得の主役は戦艦であった。第二次大戦においてはこれが、空母と潜水艦に変わった。この意味で、バトル・ドクトリン上の大きな変化があったのだ。この動きを決定したのは、海軍の真珠湾攻撃だ。
<参考>
真珠湾攻撃
http://www.youtube.com/watch?v=cSjWLPf3o4M
では、現代の制海権獲得の主役とは何であろうか。それは、「ネット」だと考える。全ての政治経済軍事を問わず、全てのツールがネットで繋がれている今日、ネットを支配する勢力はその国を支配できる。
<参考>
http://oval-office.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_e146.html
ハイテク陸上自衛隊
この写真(テキスト文のため省略)は、陸上自衛隊第2師団(旭川)の演習の模様です。普通の演習と違うのは、陸上自衛隊で最初に同師団に配備された野外ネットワーク・システム「ReCS(基幹連隊指揮統制システム)」を使用しているところです。
ReCS端末は、GPSを組み合わせたPDA(携帯端末装置)とノートパソコンで構成。また見た地点の座標や距離を表示できるデジタル双眼鏡なども利用できます。展開した部隊はPDAで自隊の位置を本部に通報。敵部隊の陣地や車両などの位置や映像もメールで送信可能です。
大型スクリーンが設置された戦闘団本部には、各部隊からの情報が刻々と届き、敵、味方の位置情報はスクリーン上のデジタル・マップに映し出され、指揮官・幕僚はこれら情報を分析しながら部隊を動かすことができるというシステムです。
敵、味方の部隊位置が映し出されたデジタル・マップを見ながら、戦闘団本部で戦況を分析する指揮官と幕僚。
民間の情報通信分野が目覚しい発展を遂げているのですから、自衛隊の情報通信も変わっていきます。なにしろ軍のハイテク化はアメリカについで世界第2位だそうですから。ただし規模は小さいですけどね。少数精鋭です。第2師団は陸上自衛隊最初の「総合近代化師団」としてレベルアップを図っていくそうです。
すなわち、日米戦が太平洋上の硫黄島やマリアナといった「島の飛行場」の奪い合いという形態を取ったのに対し、現代の冷戦は「サイバースペース」の奪いあいという形態をとる。すなわち、ランドパワーとシーパワーの決戦海域は「ネット」なのだ。私がネットを通じた文筆活動を行っているのも、それが理由だ。ネットこそは現代の空母機動部隊であり、エクスカリバーなのだ。
海軍戦略の骨子は「見敵必殺」につきる。ネルソンや東郷はこれを忠実に行った。旗艦先頭により、最高指令官が陣頭に立ち、露天で指揮をとる。海軍とはこれをやることに真髄があり、昭和の海軍はこの点、如何に駄目であったか、日吉の防空壕が物語る。
連合艦隊は既に、「マジノ線」と化していたのだ。
(編集者による注) マジノ線: 第一次大戦後、仏国・マジノ陸相の建議によって独国国境により構築された仏国の要塞線、独軍に突破された。
ここで、来るべき本土決戦につき、私が参考にしているのは、帝国陸軍の戦略だ。太平洋戦争とは、「海軍の戦争」であった。そして、海軍は、あの戦争で壊滅した。情報通信・技術・戦略・戦術、全てにおいて、日本海軍は米国海軍に劣っていた。
何よりも、バトル・ドクトリンの確立に失敗した。例えば、海戦要務令は明治34(1901)年2月に制定され、以降昭和9(1934)年まで数次の改正を見るに至った。軍令で定められ、全体が海軍軍機に指定されていたので、陸軍の作戦要務令ほど一般的ではない。陸軍の統帥綱領に相当するものである。
海軍の戦闘遂行上、各級指揮の準拠または心得とする兵術の基準を示した教典で陸軍の野外要務令と共通するところがあり、戦時の勤務要領について記された。
第1部・戦時要領と、第2部・演習の構成となっていたが、演習の部分は演習令として別に定められた(陸軍も同様)。昭和15(1940)年には、航空機の発達に伴い、航空戦の部という続編が起草されたが正式なものではなかった。
最終版の海戦要務令は、第1編勤務、第2編戦闘(要旨、艦隊、戦隊、水雷戦隊、潜水戦隊、航空隊、その他)から構成された。これが、「艦隊決戦」思考に基づいており、最後の連合艦隊司令長官小澤治三郎は海軍大学教官時代、上級士官必読とされていた「海戦要務令」を読まなくとも良いと公言し話題となる。
日本海海戦を手本とした艦隊決戦思想では、不測に事態の連続である実践に役立たないばかりか、固定観念を持つことになるとの理由からだ。結果は史実のとおりだ。
しかし、帝国陸軍は別である。硫黄島や沖縄を見ても、米陸軍や海兵隊に相当の出血を強いた。陸軍は海軍が制海権を失った後は本土決戦に望みを賭け、「沖縄を捨石」にしていたのだ。
この陸軍戦略は、実は現在進行形であり、来るべき日本の国家戦略の青写真だ。この点、いずれ、項を改めて、詳述する。
<参考>
http://www.computerworld.jp/news/sec/89709.html
MI5、中国によるサイバー犯罪に警鐘
中国のスパイ活動に注意するよう、銀行などに書簡で呼びかけ
(2007年12月04日)
英国情報局保安部(通称:MI5)は、Rolls-RoyceとRoyal Dutch Shellに対する攻撃に続き、中国によるサイバー犯罪が増加傾向にあると警告した。
12月3日のTimes of London紙によると、MI5は先ごろ、英国内の300の銀行、会計事務所、弁護士事務所に対し、中国の複数の「国家機関」が情報収集のため英国企業のネットワークに侵入しているとして、注意を促す書簡を送付したという。
英国政府は同日、書簡についてのコメントを拒否した。だが、ちょうど1カ月前、MI5の長官、ジョナサン・エバンス(Jonathan Evans)氏は、少なくとも20の海外諜報機関、特にロシアと中国によるスパイ活動が活発化していると警告していた。
Evans長官は11月5日、英国マンチェスターで、今なお多くの国が英国から軍事および民間の極秘技術を盗もうと膨大な時間と労力を費やしていると語り、「従来のやり方で情報収集するだけでなく、インターネットを使ってコンピュータ・ネットワークに侵入するという、ITを駆使した高度な攻撃が増えている」と指摘した。
Times紙は、セキュリティ情報筋の話として、中国のハッカーが、Rolls-Royceのネットワークをトロイの木馬に感染させ、機密情報をリモート・サーバに送ったと報じた。また、Shellは、アフリカでの事業に関する極秘の価格情報を盗もうとしたヒューストン在住の中国人スパイ・グループを突き止めたという。この件について、3日にロンドンの両社担当者にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
中国とロシアを発信源とする攻撃の増加は、セキュリティ調査を見れば一目瞭然だ。だが、国家の支援で動くハッカーと、単に同じ地域で活動するハッカーの区別が難しかったと、英国のセキュリティ・ベンダー、Sophosのシニア・テクノロジー・コンサルタント、Graham Cluley(グラハム・クルーリー)氏は語る。
これまで作られた悪意あるソフトウェアの30%は、中国人によって書かれたものだとCluley氏。しかし、そのうちの17%は、産業スパイではなく、オンライン・ゲームのユーザー・パスワードを盗むためのプログラムだ。「ジュームズ・ボンドばりのスパイ活動はごく一部だ」(同氏)
また、ボットネットからの攻撃は追跡が難しくなる。ボトネットを構成するコンピュータは複数の国に散らばっており、各国の法執行機関の協力が必要になることから、その調査には膨大な手間と時間がかかる。
ライバル企業を出し抜くためにスパイ活動を行うのは今になって始まったことはなく、中国だけを名指しで非難するのは難しいと、London School of Economicsで情報システム・セキュリティを教え、「The Industrial Espionage Handbook」(産業スパイ・ハンドブック)の著者でもあるピーター・ソマー(Peter Sommer)氏は話す。
インターネットの登場によって産業スパイの仕事もはるかに簡単になったとSommer氏。スパイが収集する情報の90%は公開情報だという。企業の公開Webサイトを見れば、従業員のメール・アドレスをいくらでも収集でき、こうして集めたアドレス宛てにキーストローク・ロガーなどの悪意あるソフトウェアを送りつける。ハッカーは言葉巧みに従業員に添付ファイルを開かせ、企業内ネットワークに入り込むためのドアを開けるのだ。「もはや建物に侵入して相手と顔を合わせる必要はない」(同氏)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071218-00000006-vgb-secu
SCAN DISPATCH : 米委員会、中国のサイバー軍事活動を警戒
12月18日20時38分配信 Scan
<http://rd.yahoo.co.jp/media/news/medianame/articles/?http://nsearch.yahoo.co.jp/bin/search?to=2&p=Scan>
SCAN DISPATCH は、アメリカのセキュリティ業界及ハッカーコミュニティから届いたニュースを、狭く絞り込み、深く掘り下げて掲載します。
11月16日、米国 US-China Economic and Security Review Commission (米中経済安全保障検討委員会 / USCC)が2007年の報告書を発表している。
この報告書では特に、中国の諜報活動について「米国内における、中国によるスパイ活動は目に余るものがあり、米国技術の安全に対する類を見ないリスクとなっている」と触れている一方、中国によるサイバー戦争の危険について「中国軍の戦略家はサイバー攻撃を含む破壊的な戦争技術を迎合している」として「中国の台湾に対する攻撃は、日本や韓国の米国基地に対する極秘任務やサイバー攻撃を連鎖させるものであり、米国本土の財政、経済、エネルギー、そして通信インフラへのサイバー攻撃をも含んでいるだろう」と結論している。
この報告書と前後して中国によるサイバー戦争関連のニュースが次々と報道されている。
まず12月2日、MI5(イギリス情報局保安部)が、英国の銀行や金融機関300社に対し中国政府が大規模なサイバー攻撃を行い技術上・経済上の極秘情報の入手を試みるであろうとする警告書を送付したと、BBCが報道した。
時を同じくして、マカフィー株式会社が「サイバー犯罪:次にやって来る波 〜Virtual Criminology Report - Cybercrime: The Next Wave」と題したレポートを出版していおり、中国の軍事専門家の James Mulvenon 氏の「中国政府は初めて、政治的、軍事的目的にサイバー攻撃を使用しました。
ドイツ官邸に接続したネットワークのハッキングを含め、中国は初めて、21世紀のサイバー冷戦のテクノロジに足を踏み入れた国家です。この問題はますます深刻化し、オープンなものになるでしょう」という言葉を引用して、「サイバー攻撃の多くは中国から発信され、しかも中国政府はサイバー諜報活動を行っていることを公言して」いるとしている。
これらレポートや警告を裏づけするような事件も次々と発生している。
10月の末から、米国エネルギー省の研究所で、核兵器の研究も行っているオークリッジ国立研究所(ORNL)のシステムに、何者かが侵入する事件が発生した。
12月8日ニューヨークタイムズ紙が入手したUS-CERTのメモでは、攻撃元IPは中国であると確認しているそうだ。攻撃は、科学コンファレンスへの招待状として添付ファイルのついたフィッシングメールが所員に送られ、所員11人がその添付資料を開けたことで可能となった。その添付資料にバックドアが潜んでいた…
http://www.asyura2.com/0601/war80/msg/863.html
世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略VOL100
江田島孔明
今回から、情報通信分野における国家の役割を考察する。つまり、情報から見た場合に、どのような国家像が考えられるか、そこから見えてくる問題とは何か、そしてどのような政策が求められているのかである。
シーパワー戦略の根幹はエネルギー、食料、情報通信、金融そして軍事の5要素(戦略の五道)についての連立方程式を解くことで、適切な解を与えることであり、中でも、情報通信戦略は根幹をなす。
シーパワーは英米をみても分かるが、情報産業が発達し、情報の優位性により、ランドパワーを封じ込めるという戦略をとる。日本では、この点の考察が弱いようで、明確な情報通信戦略がないことが問題だ。
情報通信の世界はめまぐるしく変化している。例えば半導体チップの性能は18カ月毎に4倍になるという「ムーアの法則(インテル社のゴードン・ムーアが導き出した経験則)」が知られている。そうした変化の早さに国家という制度・枠組はついていけないかに見える。
そのために最先端の情報通信技術でつなぎ合わされたグローバル経済・市場には、国家が不要であるという議論もある。しかし、依然として政策や規制の単位は国家であり、国家は主権を放棄していない。従って、変化が著しい情報通信分野においてこそ再び国家に注目する必要がある。
現代社会が情報化の度合いを進めていることには異論がない。しかし、その情報化の中身は多様である。家庭や職場にコンピューターを導入することをもって情報化とする考え方がある一方で、活字メディアや放送メディアがデジタル化されることを情報化という場合もある。
本来、我々の世界は情報であふれている。我々の存在自体が情報であり、無意識のうちに大量の情報を発信すると同時に受けとってもいる。そういう意味では情報で満たされた社会に我々は生きている。そこであえて情報化という時には「情報が電子化(デジタル化)され、蓄積され、加工され、伝達され、共有される」度合いが高まっているということが背景にあるのだろう。
社会の情報化と同時に、政治もまた情報化している。政治を様々な価値や資源の分配に関する意思決定・合意形成のプロセスだと考えるとすると、そのための手段は、暴力や搾取から説得や誘導に移ってきていると指摘されている。 政治は情報を使ったアクター間のゲームになりつつある。冷戦が終わって、大量破壊兵器による大量殺戮の可能性が下がってきた現在、情報としての政治の役割はますます大きくなっている。米国の大統領選挙で顕著なように、テレビや新聞などのマス・メディアを通じた政治は従来から威力を発揮してきた。さらに現代では情報はデジタル化され、インターネットなどの新しいメディアの中で語られるようになっている。
社会における政治的な営み・行為の結果として人類は、国家という制度・枠組を作り上げてきた。政治において情報が重要な役割を果たし、政治的な制度として国家が重要なものだとするならば、「国家と情報」という問題も重要性を増しているだろう。
近代的な国民国家(nation-state)の成立を1648年のウェストファリア条約に求めるならば、国家は人類史上まだ新しい制度である。しかし、政治制度としての国家は現代において不可欠なものとなっている。
情報通信技術の発達による経済のグローバル化に伴って、国家の役割の低下が指摘されているが、しかし、情報を収集し、蓄積し、分析し、活用するためのシステムとして、国家はその役割を失っていない。
例えば、議員代議制というシステムは、国民の意見という情報を集約し、議論し、国家としての意思決定・合意形成をするためのものであり、これが失われていいと考えることはできない。
しかし、国家という意思決定・合意形成システムが情報を扱うやり方は一つではない。それは国家制度、国家形態として現れてくる。民主制度は情報を底辺から集約するシステムだが、権威主義体制は情報の流通を制限するシステムであるといえるだろう。
こうした情報に対する国家の態度に相違があることを踏まえて、情報から見た場合の国家のモデルを特に「情報国家(information state)」と呼ぶことにする。
なぜこうした国家と情報という視点が重要なのであろうか。第一に、政治学あるいは国際政治学において、情報の問題が必ずしも十分に論じられてきていないということがある。
情報を扱った枠組としては、国際コミュニケーション論(情報通信あるいはコミュニケーションがコミュニティ形成の重要な要因の一つと考える)や国際レジーム論(放送や通信を規制する国際電気通信連合[ITU]を中心とした電気通信レジームにおける国際協力を考える)、政策過程分析(サイバネティックス・アプローチを応用した政策過程モデルを構築したり、組織内における情報伝達の問題を考える)、ゲーム論(不完全情報の問題がアクターの選好を大きく左右すると考える)などで論じられてきた。
しかし、例えばインターネットのような通信と放送の両方の要素を兼ね備えたメディアがグローバルに展開していることを分析する枠組は、いまだ議論の最中である。
第二に、現実の問題として、政治経済における情報通信の役割が今後大きくなると予測される。短期的に見ても、1990年代の日本経済はバブルの後遺症に悩まされ続けたのに対し、米国は80年代の不調から一転して、情報技術(IT:
InformationTechnology)を使って活力ある経済を取り戻している。
より長期的に考えれば、国益と情報という問題もある。明治維新まで話をさかのぼれば、明治新政府は「欧米の技術や考え方という情報」を積極的に取り入れ、国家を転換させるのに成功した。情報を国益に結びつけることができたのである。
しかし、国際社会においてその存在を認知されるにつれて、外部・内部の情報を適切に処理できなくなってしまったように思われる。太平洋戦争を見ても、暗号解読という情報戦で完全に負けていたことが、ミッドウェーの敗戦やその後の敗北に繋がった。
それに対し、英国と米国は情報を国益に関わる戦術、戦略へ活用することに長けていた。ドイツや日本の暗号解読をはじめ様々な形で情報を吸い上げ、さらに、自分たちがそうした活動によって利益を得ていることを相手に悟らせなかった。
なお、太平洋戦争中の日本では陸軍、海軍、外務省と独自に暗号体系を開発していた。ほとんどが米英側に解読されている。米英側が無限乱数式暗号などを活用した陸軍の高度の暗号には手を焼いたという話はあるが、外務省、海軍のことはあまり聞かない。
ミッドウエー海戦は短期間であったが連戦連勝を続けてきた日本軍側が初めて経験した挫折であり、太平洋をめぐる日米両軍の戦いにおけるターニング・ポイントとなった。
まさにミッドウエー海戦は「太平洋の戦局はこの一戦に決した」というべき戦いであり、「戦史上特筆大書さるべき」海空戦であったが、それは日本側にとってではなく、戦果絶大なものがあったのは米軍側であった。
この作戦は山本五十六司令長官のシナリオ通り進行。ミッドウエーを攻略することによって米空母部隊の誘出を図り、これを捕捉撃滅することは現在の戦力からみて容易であると判断、ミッドウエー上陸予定日は月齢や気象を踏まえて6月7日(昭和17年)と計画され、同じにアリューシャン攻撃も行われることとなっており本作戦には日本連合艦隊の決戦兵力のほとんど動員されていた。(350隻の艦隊、飛行機1000機、将兵10万以上の大出動)
山本五十六司令長官に「日本海軍暗号の解読は絶対にありえない」と言はした暗号であったが、守勢の立場にあった劣勢の米国海軍の強い力となったのがこの暗号解読であった。
日本海軍主力が太平洋のどこかで遠からず積極的な作戦に出てくることは確実であったが、その時期や目的地について判断がつきかねていた。その時期、日本海軍の最も広く用いられた戦略常務用(海軍暗号書D)の解読に取り組んでいた米軍海軍情報部は5月26日までにほぼその解読に成功。ミッドウエー作戦の計画に関して、日本側の作戦参加艦長、部隊長とほぼ同程度の知識を得ていた。
<参考>
日米陸海軍暗號解讀史余話。
http://homepage2.nifty.com/ijn-2600/angoukaidoku.html
逆に、第二次大戦における英国は、シーパワーの本家らしく、情報の重要性を理解していた。
1940年6月、フランスがドイツに降伏し、フランス軍はドーバー海峡を渡ってイギリスに逃れる。ヨーロッパ西部をほぽ制圧したドイツは、イギリスに降伏を迫った、イギリスは断固拒否。同年7月、ドイツはイギリス本土へ本格的な空襲を開始した。
特にロンドンヘの空襲は、9月から10月はじめまで続いた。大きな打撃を受けていたイギリスにとって、ドイツ軍の情報入手が最重要課題だったが、ドイツ軍は「エニグマ」という優秀な暗号作成機を使って通信していた。
第2次世界大戦においてドイツの「エニグマ」、日本の「パープル」は、解読が困難な暗号として有名である。エニグマは3つの歯車と電気プラグで暗号を組み替えるもので、その組合わせの数は10京(兆の10万倍)。しかも、ドイツ軍は毎日、暗号の組み合わせを変えてくるため、暗号の解読は不可能とされていた。イギリスは、ドイツ軍の暗号を解読するため、外務省暗号研究所に約1万人の人材を投入する。
その中、数学者のアラン・チューリングを中心とするチームが、電磁石を使った電気式計算機「ボンベ」を開発し、1940年11月、見事にエニグマ暗号の解読に成功したのだ。
さっそく傍受したドイツ軍の暗号を解読した結果、ドイツは攻撃目標をロンドンから別の都市へ変更。最初の標的はロンドンの北西にあるコベントリーという町で、攻撃の日は、11月14日と判明した。
情報はチャーチルのもとに伝えられ、暗号研究所のメンバーは、イギリス軍がドイツ軍を返り討ちするニュースを心待ちにしていた。ところが、チャーチルはこの情報を無視。コベントリーは無防備のまま空襲を受け、街は壊滅的な被害を受けた。
チャーチルはコベントリーを失うことよりも、イギリスの暗号解読能力を知られることを恐れたのだ。
この後も、ドイツはエニグマより格段に解読が難しい新型暗号機を開発するが、イギリスも真空管を使った世界初の電子計算機「コロッサス」を1943年12月に完成させ、この暗号を解読させている。
これらはすべて最重要機密として扱われ、その存在が明らかになったのは、戦後30年たってからである。エニグマ暗号が解読可能なことも、長く秘密にされた。
大戦後イギリスは、ドイツから大量に押収したエニグマ暗号機を、中南米やアフリカ諸国に「高いコンピューターを使わずに解読不可能な暗号を作る機械」と言って、売却している。エニグマを買った国は大喜びで、外交文書をエニグマで暗号化し、大使館や情報機関とやり取りした。もちろん、この情報はイギリスには筒抜けであった。
イギリスは国家機密を守るために多くの自国の市民を犠牲にしたが、これは正しい判断であったとされた。チャーチルは英雄となり、1953年には、『第2次世界大戦回顧録』で、ノーベル文学賞を受賞している。
現代において情報の意義はさらに高まってきており、情報を国益と結びつける技術の重要性はさらに高まってきている。
米国はそうした情報の戦略性にいち早く気づき、投資を強めている。米国は現代における一つの情報国家のモデルとなっているといえるだろう。
情報国家には三つのタイプがあると考える。つまり、独占型情報国家、ガバメント型情報国家、ガバナンス型情報国家である。この三つのタイプは、情報独占と情報共有のどちらを重視するかによって位置づけられる。
つまり国家の内外あるいは政府と国民との間で情報が共有されるか、あるいは一部の人々の間で独占されてしまうかによって、国家の情報に対する態度を区別するのである。そして、この情報国家モデルを使って、主として米国を事例にとりあげて分析をする。
米国は世界で最も競争力のある情報通信産業を有し、世界の情報の流れを左右することができる立場にあり、現代の情報通信大国である。インターネット発祥の地でもある米国を抜きにして現代における情報と国家の問題を語ることはできない。
情報通信分野におけるいくつかのトピックをとりあげ、ケーススタディを行い、歴史的な考察と国際比較を織り込みながら、多角的に情報通信大国としてのシーパワー米国と英国の姿をとらえていくことにしたい。
それによって、日本の国益の確保のみならず、国際関係の安定とグローバルな経済の発展への礎の一つとなることを期待している。 (江田島孔明、Vol.100完)
以上
(江田島孔明、Vol.185完)
(注) 目次の頁へ戻るには、左上の「戻る」を押して(クリックして)下さい。