◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略VOL186
江田島孔明
中東情勢が改善へ向かってきた。今回は、その考察。
<参考>
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/asia/20080112D2M1200512.html
米大統領、クウェート首長と会談――イラン封じ込めへ協力要請
【ドバイ=加賀谷和樹】ブッシュ米大統領は1月11日夜、訪問先のクウェートで同国のサバハ首長と会談した。ウラン濃縮停止を拒むイランの封じ込め策に対する協力や、イラク復興への支援を求めたとみられる。サバハ首長は米国がイランに対する軍事攻撃の可能性を否定しないことに懸念を表明したとみられる。
クウェート国営通信は、会談内容を「二国間問題と中東地域の最近の政治状況」と報じた。クウェートには1万5000人の米兵が駐留している。だが、クウェート政府はイランの報復を恐れ、米国がイランを軍事攻撃する際には領土を使用させないと公式に表明済みだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080110AT2M1000K10012008.html
米大統領「イランの核開発は脅威」・イスラエル首相と会談
【エルサレム=安部健太郎】中東歴訪中のブッシュ米大統領は1月9日、イスラエルのオルメルト首相との会談後に開いた共同記者会見で、イランの核開発を「世界平和への脅威だ」と述べ、今後も強い態度で臨む意向を示した。16日にかけての中東7カ国・地域歴訪では、イランの核問題が主要議題のひとつになる見通しだ。難航するイスラエルとパレスチナ自治政府の和平交渉については、進展へ双方に圧力をかけていく考えだ。
米情報機関の分析によると、イランは核兵器開発を2003年に停止しているとされる。だが、大統領は「ウラン濃縮ができる国はその知識を容易に軍事転用できる」と指摘、イランの核兵器開発阻止へ国際社会の協調を訴えた。かねてイランへの圧力強化を主張してきたオルメルト首相は「勇気づけられた」と応じた。
今年末までの合意を目指す中東和平交渉については、ブッシュ大統領は「苦痛を伴う政治的妥協が必要だ」と強調。今後、局面に応じて米国がイスラエルとパレスチナ自治政府の双方に圧力をかける姿勢を見せた。 (10:53)
周知のように、「イラン攻撃」の有無は、ネオコンVS米軍(米情報部)の死闘の結果、ネオコンが政権から一掃されたことで無くなった。
今後の展開は、VOL.148で記した様に「中東版NATO」創設による勢力均衡と予測している。追い詰められたイスラエルをなだめに行ったのが、今回のブッシュ中東歴訪だろう。しかしながら、レイムダックと化したブッシュに既に、イスラエルを抑える力はない。
ポイントは、MI6、つまり、英国が握っている。中東というのは、従来が、英国の「シマ」であり、人的NWはロンドンを経由している。
(編者注) M16: 英情報機関、秘密情報部
ネオコンの暴力的覇権路線が否定された後は、日本の明治維新がそうであったように、MI6のお家芸である、「調略」が発揮されることになる。
タリバンやイラン革命防衛隊は、日本における尊皇攘夷派の様なものだ。そして、これに、CIAをはじめとする米情報部が乗れば、中東問題はほぼ安定していくだろう。
「調略」の中で最も高度な部類に属するのは、「表面的に対立を激化させつつ、裏で手を結ぶ」というやり方だ。
終戦条件を決定するために、最後の交渉をしているのだ。例えば、春闘におけるスト突入前夜であり、太平洋戦争における沖縄戦や、ベトナム戦争におけるラムソンの様なものを想起されたい。
重要な視点として、中東情勢が英国情報部主導により安定した場合、世界におけるアメリカの影響力は決定的に失墜していくという事だ。
大統領選挙でも、国際金融資本の代理人であるヒラリーの人気のなさや、国際金融資本との決別やFRB廃止、孤立主義を掲げるロン・ポールの様な候補の存在を見ても、アメリカにおける国際金融資本支配体制は長くは続かない事が分かる。
<参考>
http://npslq9-web.hp.infoseek.co.jp/sls141.html
カンボジア進攻作戦は南・アメリカ軍にとって大きな勝利であったが、一方では翌年のラオス進攻の失敗と深く結びついているのである。
この作戦は「ラムソン719」と名付けられ、南・アメリカ軍共同の戦闘としては実質的に最後のものとなった。また作戦の規模としてもベトナム戦史上最も大きなものであった。
カンボジア進攻作戦についてはアメリカ国内から猛烈な反対の声があがったが、南・アメリカ軍による戦果は大きく、作戦の評価は成功と認められた。しかし、それ以上のスケールで実施された「ラムソン719」は―作戦終了後の大戦果の発表にもかかわらず―失敗であった。
カンボジアにおいてかなりの損害を出したNLF(南ヴェトナム解放戦線)とベトナム軍は、次に敵がラオスに侵攻してくることを予想し、充分な反撃を準備していたのである。それでは、実質的に南政府軍、アメリカ軍にとって最後の大攻撃となったこの軍事行動をもう少し詳細に見てみよう。
「ラムソン719」は70年初めから計画され、同年秋から準備がすすめられていた。当時この地区には、共産側4〜5万名の兵士が存在すると推定されていた。一方、投入される南、アメリカ軍は2〜3万名で、地上戦闘は”ベトナム化“されつつある南政府軍が受け持ち、輸送および航空攻撃をアメリカ軍が担当するということになっていた。
2月8日から、政府軍はDMZ沿いにラオスに侵入した。そして2日後、たいした抵抗もなしに共産側最大の拠点チュボン市を占領した。作戦はその後も順調に進行し、チュボン市の西方30qあたりまでラオス領内深く進んだ。
しかし、作戦開始後1週間目の2月15日頃から急に北ベトナム正規軍による抵抗が激化し始めた。折りしも天候が悪化し、アメリカ空軍機の活動が低下したこともあり、反撃は一層効果をあげた。北正規軍は数十台の戦車を使用し、その多くはアメリカ軍機に撃墜されたものの、南の兵士に大きな動揺を与えた。
この戦域において本格的な道路は国道9号線以外にはなく、したがって地上戦闘部隊への補給はもっぱらアメリカ軍のヘリコプターに頼ることになっていた。しかし、それを見越した北正規軍は3,000機に達する「対空火器」を搬入していた。アメリカ軍と南ベトナム軍は、合計700機という大量のヘリコプターを用意して作戦を開始したものの、1ヵ月以内に100機以上を失なった。
こうなると進攻した地上部隊への補給は途絶えがちになり、このため2月末には作戦成功の望みは薄らいだ。
3月10日頃から、北ベトナム軍はそれまで以上の反撃に移り、南政府軍は圧倒された。そして一部の部隊が崩れ出すと、それは全軍の退却につながった。そして3月中旬には北軍が約1万名の新戦力を投入したため、南軍は撤退を決め、ヘリによる脱出を開始した。
この状況においては共産側の攻撃は極めて激しく、いくつかの地域では部隊輸送用のヘリコプターが着陸できず、数百名の南兵士が置き去りにされるという事態も発生している。
結局3月末までにラオス進攻作戦は失敗に終わった。南、アメリカ軍は敵の戦死者13,700名、味方の戦死者1,540名であり、「ラムソン719」作戦は成功であると発表したが、客観的に見て共産側の勝利というべきであろう。
このようにしてラオス領内の共産勢力を壊滅させるという目的は完全に失敗し、同時にベトナムにおけるアメリカ軍の大規模な戦闘は幕を降ろすことになるのである。
よって、表面的には、イランとアメリカの緊張が高まっている様に見えるが、それに釣られるのは素人であり、プロは、「交渉の妥結が近い」事を予測する。下記記事に見られるように、MI6が極秘に行動を開始した様だ。私は、これを待っていた。
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/eu/20071227D2M2701K27.html
和平目指し秘密会談か――タリバンと英情報機関
【ロンドン=共同】英情報機関、秘密情報部(MI6)とアフガニスタンのイスラム原理主義武装勢力タリバンが、和平を目指し秘密会談を開いたと、2007年12月26日付の英紙デーリー・テレグラフが報じた。
英国は北大西洋条約機構(NATO)率いる国際治安支援部隊(ISAF)に参加する形で、英軍7800人をアフガンに駐留させ、ブラウン首相はタリバンに政治プロセスへの参加を訴えている。
英政府は報道について「情報活動についてはコメントしない」としている。同紙などによると、会談は今夏以降、アフガン南部ヘルマンド州の州都ラシュカルガー郊外で6回開催され、アフガン政府当局者も同席。周辺の警備は英軍が担当した。
<参考>
http://npslq9-web.hp.infoseek.co.jp/sls148.html
このように、米国が中東での影響力を増大させていく中で、旧植民地利権に基礎をおくシェルは、超大国として登場した米国の力をバックとするエクソンに追い上げられる。
戦後の中東情勢を概観するに、まさに、英国の撤退と米国の影響力拡大は表裏の関係といえる。
これは、「英国の立場」で考えれば、失った旧領回復のインセンティブを強くもつことを意味する。そのように考えると、「イラク戦争は実は、米国を中東での自滅的戦争に介入させ、そして中東から撤退させる」という謀略なのではないかと考えられる。
つまり、イラク戦争のパターンは過去の、ナチスドイツのソ連侵攻や大日本帝国のシナ事変介入と同じ、国際金融資本のお家芸としての、「漁夫の利」を得るための「二虎競食」の高等戦術とはいえないだろうか。
はっきり言って、ロスチャイルドとロックフェラーの深層部分における対立や協業がどのように行われているか、わからない為、あくまで仮説である。
しかし、イスラエルの代理人であるネオコンが、アメリカをイラク戦争に引き釣り込み、泥沼化すると、ロスチャイルドの影響の強い民主党が撤退を決議するという、究極のマッチポンプとしての国際金融資本のいつもの手口が見えてくる。ネオコンに加担して、ブッシュやブレアは用済みとして、切られるのも、いつものパターンだ。
すなわち、国際金融資本の基本的ポジションは常に、「漁夫の利」を狙うという事であり、かつ、「遠くの戦争は買い」ということだ。
つまり、戦後の中東情勢を英米対立すなわち、ロスチャイルドとロックフェラーの死闘と考えると、イラク戦争は「ロスチャイルドのロックフェラーへの意趣返し」と考えられる。
背景として、90年代のバブル崩壊により、アメリカが国際金融資本にとって、旨みの無い国になったということが挙げられる。アメリカで利益を吸い尽くしたので、「次は日本」というわけだ。そのまえに、「賭場を店終い」する意味で、イラク戦争の大博打を打ったのだろう。
この仮説が正しいのなら、今後の中東情勢は、ロスチャイルドとサウジアラビアを中心に考えるべきだ。
サウジは英国や米国が任命した、中東第一の「守護」であるが、アメリカ幕府の衰退により、自前で戦国大名化し、領国を維持する必要に駆られている。湾岸戦争以降の、国内への米軍駐留から反米感情や貧富の格差の高まりにより、そうしなければ、まさに、「下克上」がおきるのだ。
ここで、サウジと英国は、「米国の追い出し」という点に関して、利害の一致があることがわかる。サウジは原油と資金を、英国は情報とネットワークをそれぞれ提供できる。
つまり、相互補完関係にあるのだ。唯一の問題は軍事力だ。「軍事力」の点では、米国抜きの戦略は考えられない。それぐらい、米国の軍事力は隔絶している。
米国民主党は、もともと親英、親シオニストなので、次回大統領選で政権を獲得すると、ロスチャイルドの意思を忠実に体現して動くだろう。
そうすると、いよいよ、「中東情勢は英国が主導」していくことになると予想する。5月に開かれるイラク安定化会議において、英国とサウジがどのようなイニシアティブをとるか、そこが重要なターニングポイントになる。
より広い見方をすれば、ミュンヘン会談以降、単独で国際政治の主導権を握った事がない英国が、その立場を回復できるかどうかの試金石となる。
英国は、日本に協力を求めてくるであろう。まさに、水面下での日英同盟の復活だ。
正確には、アメリカを完全に切ることはできないので、「日米安保を日米英三国同盟」にするということだ。先般行われた、日豪の「安全保障協力に関する日豪共同宣言」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/australia/visit/0703_ks.html は、この文脈で考える必要がある。
全てのシナリオの背後には、英国、すなわち、ロスチャイルドがいる。
イラク情勢の究極の落としどころは、以前書いた「イラクの東西分割」による、「均衡戦略」、すなわち、欧州の冷戦方式となるであろう。
湾岸諸国の「ドル離れ」が叫ばれていたが、その可能性は、ひとまず去ったようだ。
背景として、相当強力な情報操作と圧力がサウジに対してあったのだろう。サウジに安全保障上の危機を感じさせる事ができれば、湾岸諸国は米軍を必要とする。そして、その限りにおいて、ドルも安泰だ。
しかし、今後は、ドル単独での基軸通貨維持は無理であろう。
シーパワー連合は、「円ドルポンドの通貨バスケット」をつくり、それに湾岸諸国がペッグするというような形になるのではなかろうか。
要するに、湾岸諸国がランドパワーを選ぶか、シーパワーを選ぶかで、世界の運命は大きく変わってくるのだ。
今回のイランイラン戦争情報操作で、湾岸諸国は、どの国が正しいのか、見極めた事であろう。
以上
(江田島孔明、Vol.186完)
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