◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略VOL197
江田島孔明
今回は、アフガニスタン情勢の今後について検討したい。
結論から述べると、以前からの私の主張どおり、アメリカはアフガニスタンで敗北した。後は、ベトナムと同じような敗戦処理ができるかどうかが問題だ。現実に、アフガンを巡ってNATOに亀裂が入っている。
いよいよ、アメリカの代わりに日本が調停に入る「機」は熟しつつある。これは、後述の日本のインド洋戦略の発動だ。
アフガン・拡大問題焦点=4月2日からNATO首脳会議2008/03/30-14:20
【ブリュッセル30日時事】北大西洋条約機構(NATO)は4月2〜4日、ルーマニアの首都ブカレストで首脳会議を開く。NATOが最優先課題に掲げているアフガニスタンでの治安維持活動の強化や、加盟国拡大問題、米国が計画している東欧へのミサイル防衛(MD)配備などを協議する。
NATOは、アフガンで国際治安支援部隊(ISAF)を主導。現在39カ国が合計約47,000人を派遣している。しかし、イスラム原理主義のタリバンが勢力を盛り返しつつあり、ISAFの現地司令官らは、6000〜1万人規模の兵力増強を求めている。
こうした中、フランスのサルコジ大統領は26日、条件付きながらも、NATO首脳会議で増派を表明する考えを示した。AFP通信によると、増派の規模は1000人強とみられる。NATOスポークスマンによれば、11カ国が既に増派を表明しており、NATOは首脳会議でも増派要請に応じる国が増えることを期待している。
拡大問題では、加盟への第1歩となる「加盟行動計画」に基づいて準備を進めているクロアチア、アルバニア、マケドニアの西バルカン3カ国の加盟を承認するかが焦点。旧ソ連のウクライナ、グルジア両国との関係強化も話し合われる。
【3月27日 AFP】英国を公式訪問中のニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy
<http://www.afpbb.com/index.php?module=Linkword&action=Redirect&type=&word=%22Nicolas+Sarkozy%22> )仏大統領は26日、アフガニスタンに展開する国際治安支援部隊(ISAF<http://www.afpbb.com/index.php?module=Linkword&action=Redirect&type=&word=%22ISAF%22> )に参加している仏軍を増強する方針を表明した。
増強の規模は明らかにしなかったが、仏政府筋によると1000人以上となる見通し。ルーマニアの首都ブカレスト(Bucharest<http://www.afpbb.com/index.php?module=Linkword&action=Redirect&type=&word=%22Bucharest%22> )で来月開催される北大西洋条約機構(NATO<http://www.afpbb.com/index.php?module=Linkword&action=Redirect&type=&word=%22NATO%22> )首脳会議で詳細が発表される可能性がある。
フランスは現在、情勢の比較的安定した首都カブール(Kabul <http://www.afpbb.com/index.php?module=Linkword&action=Redirect&type=&word=%22Kabul%22> )を中心に、アフガニスタンに兵士約1600人を派遣している。増強される部隊が不安定な南部に派遣されるかどうかは不明。
サルコジ大統領の発言に、英米両政府はただちにこれを歓迎した。米、英、カナダはNATO加盟の欧州諸国に対し、アフガニスタン駐留部隊の増強を以前から求めていた。(c)AFP/Guy Jackson
(注) アフガニスタン: 1991年、英保護領から独立した西アジアの多民族国家。73年に王政が崩壊し共和制に移行した。79年に旧ソ連の軍事介入を受け社会主義政権へ。
ソ連軍撤退後、内戦状態に陥りイス<http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2583%25A9%25E3%2583%25A0/> ラム武装勢力 <http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2582%25BF%25E3%2583%25AA%25E3%2583%2590%25E3%2583%25B3/> タリバンが台頭、国際テロ組織<http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25AB%25E3%2582%25AB%25E3%2583%25BC%25E3%2582%25A4%25E3%2583%2580/> アルカーイダの活動拠点となったが、2001年9月の米中枢同時テロ後、米軍による空爆などで<http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2582%25BF%25E3%2583%25AA%25E3%2583%2590%25E3%2583%25B3/> タリバン政権が消滅した。
04年に新憲法が制定され、親米内閣が発足。05年、30年ぶりに議会選挙が実施された。英語名はIslamic Republic of Afganistan首都はカブール。人口は約3000万人(2005年推定)で99%がイスラム教徒。主要産業は農業で世界最大のアヘン生産国。
中央アジアとインド亜大陸の間に位置するアフガニスタンは、昔から強国がその勢力圏を拡大しようと激しい闘争を繰り広げたことで知られている。19世紀のロシアと英国の闘争や冷戦時代のソビエトとアメリカの闘争がそれに当たる。
しかしアフガニスタンは山がちな地形と国境と合致しない複雑な民族構成のため、最初の闘争で勝利をおさめても、ゲリラ戦などで政権が簡単にひっくり返る国である。
1989年のソビエト軍撤退とそれに続くソビエト連邦崩壊によって、アフガニスタンにおけるロシア・アメリカの対立は一時収まったように見えたが、インドに飲み込まれることを恐れるパキスタンは、アフガニスタンに勢力圏を広げることを止めなかった。
2001年9月11日の世界貿易センターに対するテロ攻撃は、アフガニスタンの地政学上の重要さをいやが上にも証明した。
アフガニスタンの歴史的バックグラウンドを解説して、現在行われているアフガン戦争を読者に正しく理解してもらうために この小サイトを開設しました。
まず、同時テロ以降、ネオコンに牛耳られたアメリカは、明らかに変質した。はっきり言えば、ネオコンとその背後のイスラエルに引きづられ、アフガンからイラクへと軍事介入を繰り返し、泥沼の状態に陥った。
この経緯は、シーパワー戦略の放棄とランドパワー戦略への転換として、アメリカの国家戦略の大転換であり、かつ、大失敗だったのだ。
この様な認識は、昨年のアメリカの中間選挙の結果を見ても、アメリカ国内でも共有されていると考える。
イラクについては、核開発疑惑という、戦争の前提となった理由そのものが「捏造」であった可能性が高く、根拠が崩れているのだが、自民党政権は未だに、この点の総括ができない。
むしろ、諸外国がそうであるように、レイムダック化したブッシュ大統領に(日本も)引きづられ、「心中する道」を選んだということなのだ。
既にアメリカのブッシュ政権が、支持率もかなり低下し、安倍政権ほどではないにしろ、かなり国民の支持を失い掛けている政権であることも重要だ。
もっと言えば、ポストブッシュ政権として、民主党への政権委譲がなされるのではないかとの見方が有力だ。要するにブッシュ政権は来年の秋で終わり、ブッシュ政権のアフガニスタン政策、イラク政策が、大幅に見直される可能性が高いのだ。
現行のアフガン状勢をみても、ブッシュ政権の思惑は見事に外れ、タリバン勢力が、盛り返しの気配を見せている。「アメリカの中東戦略は完全に破綻」したのだ。
この点、かっての保守本流たる、吉田や佐藤の時代なら、アメリカの参戦要請をたくみに回避し、日本を19世紀の英国のようなポジションに置くことに腐心したであろう。
シーパワーたる国際金融資本は、決して自らが当事者になるという愚は冒さず、「影で他国を操り、武器を双方に売却し、利益を上げる」のだ。これを、「光栄ある孤立」もしくは「均衡戦略」と呼ぶ。
このように考えると、同時テロ以後のアメリカの戦略が、シーパワー戦略の王道から大きく逸脱していることが分かるであろう。私は同時テロ以後のアメリカを乗っ取り、中東への軍事介入を主導したネオコンは、国際金融資本ではなく、「イスラエルの代理人」であり、むしろ、両者は敵対関係にすらあるとにらんでいる。
この様な事態は、ベトナム戦争末期にもあった。ベトナム戦争においても、アメリカは泥沼の状態に陥っていた。
同盟国は、このような状況を前にしても、アメリカを支持しなければいけないのだろうか?
そんな事は無い。アメリカがベトナムから抜けることができたのは、ドゴールが徹底的に反米姿勢を貫いたからであり、パリ和平会談の仲介を行ったからだ。あそこで、ドゴールがベトナム戦争を支持していたら、もっと長く、戦争は継続していたかもしれない。
世界史の真理として、戦争に負けた指導者はよくて退陣、悪ければ処刑だ。そして、負けた国に引きづられ、傘下や郎党が討ち死にした例も、枚挙に暇が無い。この点、日本史を例に取れば、関が原や戊辰戦争を見れば、分かるであろう。
貿易立国は、誰とも敵にならない事が、国是となる。現にイスラム諸国は親日的であったが、同時テロ以降の対米従属の結果、反日になってしまった。
実は、これが、将来的に、日本のエネルギー政策に最も重大な影響を及ぼす、地政学上の変化だ。つまり、同時テロ以降、「アメリカに従属する事が、非常に大きなリスク」となってしまったのだ。
この様な視点で見れば、ブッシュ政権に小沢代表が「No」を突きつけたのは正しい選択だ。アメリカと距離をとりつつ、「もっと役に立つ貢献の仕方を考えるべきではないか」 これが小沢の考えであろう。
国際交渉の常道として、当初は「No」を突きつけ、徐々に妥協点を探すという交渉のやり方になるであろう。
私は、将来のインド洋戦略を考える場合、インド洋に海上自衛隊の「プレゼンス」を示すことは必要と考える。これは、対テロ戦争とは別の理由だ。よって、最終的には、民主党も、テロ特措法に条件付賛成に転じるであろう事を確信している。
(編者注)プレゼンス: 国外における軍事的影響力の存在価値
しかし、かといって、無条件にアメリカに追随していくことは、上記のように、安全保障上の危機を招くとも考えている、特に同時テロ以後、ネオコンに乗っ取られたブッシュ政権は危険だ。
問題は、アメリカに対して、「日本はポチではない」という、主張をした実績を作ることだ。この事実があれば、アメリカは日本を粗略には扱えない。
何よりも、ドゴールがベトナムを終結させるために、反米を貫いた故事に倣えば、日本がアメリカを対テロの泥沼から救うために、敢えて「No」を告げる意義は大きい。
親米派とされる極めて皮相な連中は、イラク戦争に対する、中間選挙後のアメリカの世論や世界情勢をまったく無視し、国務省の単なる代理人と化している。
近代以降の世界史が教えることは、インド洋の制海権を確保した最強のシーパワーが、エネルギー供給源である、最重要の中東の支配権を得るということだ。
これは、英国の3C政策とドイツの3B政策の衝突の結果としての第一次世界大戦、米英間の中東争奪としての第二次世界大戦、米ソ冷戦でも繰り返された「世界史のパターンだ」。「インド洋を制するものは中東を制し、世界を制する」ということだ。
現代の911以降の日英米軍の中東やインド洋への戦力投射も、全ては、この文脈で理解すべきだ。
すなわち、「シーパワーとランドパワーの中東争奪戦が本格化」したことが、今日の中東の争乱事態の背景だ。
そして、ランドパワー陣営で、最も、中東を欲しているのは、間違いなく、北京政府だ。
北京政府は、海外石油資源への依存度の増大に伴って、中東地域からアラビア海やアンダマン海周辺を経由し、北京政府に至るシーレーン沿いに戦略的拠点を確保する戦略を展開している。
背景として、北京政府は2003年以降、石油消費量で世界第2位、輸入量で第3位となった。
北京政府は2001年からの第10期5カ年計画で、国家石油備蓄制度を創設しエネルギーの安全保障を確保することを決定した。
その後、寧波、舟山、青島、大連の4箇所に備蓄基地を設けることが決められ、2003年から建設が開始されている。2004年4月には石油戦略備蓄の運営・管理に当たる国家発展改革委員会(発改委)エネルギー局が正式に創設されている。4箇所での建設が決められた石油備蓄基地の中でも寧波の建設が最も順調に進み2005年9月には完成している。
因みに、石油備蓄基地の整備の終わる2008年には、石油消費日数換算で35日以上の備蓄が行われることになる見込みである。
しかし、中国政府が寧波に初めて建設した石油戦略備蓄タンクは、完成後6カ月経ってもほぼ空のまま置かれている。中国政府当局が、原油価格が高水準を続けているなかでの備蓄石油の購入をためらっているためである。つまり、実態は全く戦略備蓄が存在しない状況だ。
よって、海外石油資源への依存度の増大(現在の依存度は40%、2025年には80%に達するという)が北京政府の戦略と政策形成を決定しつつあり、北京政府がアフリカ、中東・ペルシャ湾岸、ロシア、中央アジアなどからの安定した調達を図るため、「資源パラノイア」とも揶揄される積極的な外交戦略を実行すると共に、資源輸送のシーレーン防衛のために、外洋能力を持つ海軍と海外における軍事力のプレゼンス強化を目指している原因だ。
つまり、エネルギー確保の必要から、北京政府は好むと好まざるとを関わらず、シーパワー戦略をとっているのだ。
エネルギー安全保障は、資源供給先の確保と共に、それらを本国に安全に輸送することが不可分の関係にある。現在、北京政府の石油輸入量の80%がマラッカ海峡を経由しているとされているが、北京政府にとって、資源輸送のシーレーンの安全確保は重大かつ困難な課題である。米国は、これらの海域において強力な海軍力のプレゼンスを維持しているからである。北京政府は石油輸送におけるこの戦略的弱点を「マラッカ・ディレンマ」と呼んでいる。そのため、北京政府は、「真珠数珠繋ぎ」戦略(the string of pearls strategy)と呼ばれる、シーパワー戦略を実施している。
これは、中東、ペルシャ湾から北京政府に至る1万キロを超える長いシーレーン沿いに戦略的拠点を確保することを狙いとして、北京政府が展開している一連の外交的、軍事的措置の総称である。
「真珠」には、パキスタンのグワダルに建設中の港湾に対する財政支援、バングラディシュ、ミャンマー、カンボジア、タイ、南シナ海の島嶼に基地や外交的結び付きを確立するための商業的、軍事的努力などが含まれる。
この戦略の問題点として、米海軍が海上自衛隊の支援を得て、マラッカやホルムズといった重要チョークポイントを封鎖すれば、戦略備蓄がほとんど存在しない北京政府は、それだけで崩壊するという事だ。
そして、日米海軍の封鎖を突破する能力は中国海軍にはない。すなわち、海軍力を駆使した兵糧攻めに北京政府は耐えられないのだ。つまり、原油シーレーンは北京政府の致命的弱点であり、アキレス腱だ。
この問題点の克服のため、2006年にパキスタンの軍指導者、ムシャラフ将軍の2度の北京訪問に強調されるように、パキスタンはアメリカから支援が受けられなかったため、クシャブ近くでの第2のプルトニウム生産炉完成完了を含む、より大きな北京政府の戦略的援助を求めている点に見られるように、北京政府との結びつきを強めている点に注目する必要がある。
昨年の胡主席のパキスタン訪問の目的は、世界の石油供給の40%が通過する、最重要なチョークポイントであるホルムズ海峡に近く、北京政府人の建設したグワダル港の開港だ。既に北京政府の情報収集拠点があり、北京政府海軍の寄航地でありそうなグワダルは、インド周辺の北京政府の前衛の一連の関連施設の新たな中心だ。
石油と海軍施設を持つグワダルは、より強固にペルシャ湾のエネルギー資源を確保する北京政府の重要な戦略拠点として用いられる事も意図されている。
北京政府国営会社はグワダルから西北京政府にペルシャ湾の原油を搬送するパイプライン構築について調査している。このルートが開拓されれば、北京政府はマラッカを経由せず、陸路で中東の石油を本国に送ることができるようになる。つまり、シーパワー戦略をランドパワー戦略に転換できるのだ。そのための最重要な拠点がグワダル港であり、パキスタンとの友好関係だ。
<参考>
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http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/2917/middleeast/gwadar.html
最近、アフガニスタン問題に絡んで再びグワダルが脚光を浴びている。内陸国のアフガニスタンにとって、最も近い海の出口はグワダル。グワダル港は北京政府の援助で整備が始まり、トルクメニスタンからアフガニスタンを通ってグワダルへ至る天然ガスパイプラインも建設が始まる予定だ。再び自由港に指定して貿易拠点にしようという計画もある。
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http://www.visiongwadar.com/
VisionGwadar グワダルの開発計画のサイト。背景の写真はグルダルじゃなくて香港です。北京政府系企業がサイトを運営?(英語)
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このように、資源パラノイアと化した北京政府が中東へ接近すれば、必ず、英米の利害と衝突する。私は、「米中開戦の可能性」は、台湾海峡よりも、中東での方が高いと見ている。
それでは、このような理解を前提として、北京政府のシーパワー戦略が成功するかどうか、検討してみたい。
結論から言って、北京政府のシーパワー戦略は、英米のみならず、インドとの対立を惹起し、失敗する可能性が非常に高い。
つまり、パキスタンが北京政府と組むなら、自動的にインドは日英米と組むシーパワー陣営になり、北京政府海軍は結果として、アウェーのインド洋で日英米インドの全海軍と空軍を敵にしなければならなくなるということだ。
インドと日本やアメリカの同盟関係を示唆するものとして、具体的には、米国によるインドの民生用原子力利用支援やインドの核保有容認を盛り込んだ米印原子力協力協定や日本政府がそれらへの支持を表明したことだ。
アメリカ軍のインドに対する梃入れとして、インド初の米軍装備導入が行なわれるようだ。インド空軍がロッキード・マーティン社製の輸送機「C-130J」の購買情報を求めたことが挙げられる。
C-130J(ハーキュリー)は、整備されていない滑走路からでも短い距離で離発着ができる輸送機で、システムによっては1機あたり7000万ドルする。販売に当たっては米議会の承認が必要な戦略兵器だ。アメリカはインド空軍の戦闘機採用計画に対し、F-16とF-18スーパーホーネットを提示している。
インド海軍が米海軍のヘリ「H-3シーキング」を6機購入するとの話もある。更に、ロシアから購入予定の空母ゴルシコフ艦載機Mig-29K搭乗予定のパイロットは、アメリカに行ってT-45Aゴスホークで空母着艦訓練を受けるそうだ。
この様に、アメリカはインド海空軍を支援し、北京政府海軍への対抗馬としようとしている。太平洋は海上自衛隊、インド洋はインド海軍をそれぞれパートナーとして、米海軍の支援をさせるのであろう。
現代の制海権は制空権なしでは確保できない。エアカバーが無い艦隊は、大和の沖縄特攻と同じ結果になるのだ。
この点を考えると、更に、北京政府は分が悪くなる。つまりインド洋に空軍基地を持っておらず、かつ空母も保有していないため、エアカバーが全くないのだ。この点を考慮すると、インド洋で米軍と北京政府海軍が海戦を行ったら、サウジやディエゴガルシアに空軍基地を保有し、空母機動部隊を持っている米国の圧勝が予想される。
米軍は、制空権絶対支配戦闘機(Air dominance fighter)であるF22ラプターを嘉手納に配備することを決定した点に見られるごとく、対中シフトを強化している。
圧倒的に優勢な米空軍のカバーを受けた、日米インド海軍の連合艦隊を、北京政府海軍が打倒する可能性は、0%でしかない。
何故なら、海軍戦略や空軍戦略において、ランチェスターの第二法則、すなわち、戦力二乗の法則が機械的に当てはまることを知る必要がある。
ここで「ランチェスターの第二法則」について、市販本やWebサイトで紹介されている式を簡単に紹介する。
集団Xと集団Yが戦闘を行ったときに集団Xについて戦闘前の兵力x1、戦闘後の兵力x2とし、集団Yについて戦闘前の兵力y1、戦闘後の兵力y2とすると次の式に従う。(y12−y22)=E・(x12−x22)、これが市販本やWebサイトでランチェスター第二法則として紹介されている式である。
またEは集団Xの兵士の集団Bの兵士に対する「強さ」であるというものである。集団Xの兵力が1000、集団Yの兵力500で、集団Xと集団Yの兵士の強さが等しくE=1のとき、集団Yが全滅するまで戦闘が続いたら集団Xの残存兵力はどれほどかという問題に対してE=1、y1=500、y2=0、x1=1000を前述の式に代入すると(5002−02)=1・(10002−x22)∴250000=1000000−x22∴x2=866 (集団Xの残存数)つまり、兵士の強さは同じでも、集団Yは500の全兵力を失うのに対して、兵力1000の集団Xの兵力損失は 1000−866=134にとどまり、兵力の多いほうが圧倒的な勝ち方をするというものである。
そこから「兵力二乗の法則」とも呼ばれる。この法則は、世界の戦史を見れば、陸戦よりも、海空戦によく当てはまっていることがわかる。
何故なら、陸戦は、兵の士気や錬度や作戦の有効性や天候や将軍や参謀の能力や戦場の地形といった不確定要素が多すぎ、「変数E」を一意に特定できないが、海空戦では、兵器の性能を分析することで、変数Eをかなりの確度で特定できるからだ。
実際、日本海海戦や太平洋戦争や湾岸戦争の結果は、海空戦において「兵力の多いほうが圧倒的な勝ち方をする」という、ランチェスターの第二法則が正しいことを如実に物語る。
例えば、F22登場以前、世界最強戦闘機のF15は、過去20年の実戦で、100機を越える撃墜と被撃墜ゼロを両立している。そして、F22は、F15を相手にした模擬空戦で、圧倒的な戦績を残している。
<参考>
------------引用開始--------------
http://www.masdf.com/crm/eaglekilllist.htmlF-15
EAGLE 栄光の伝説ー全撃墜リスト
改訂版ーF-15イーグルが記録した20年間に渡る空中戦の結果を調べ、リストにまとめてみました。結果から言えば空対空戦闘において115.5機を撃墜しイーグルの損害は0。キルレシオ115.5:0という比類なき戦果こそが、30年間に渡り世界最強と言われ続けた根拠でしょう。
------------引用終了--------------
------------引用開始--------------
http://ja.wikipedia.org/wiki/F-22_(%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F)
2007年1月現在においてF-22には実戦経験がないためどれほどの空戦能力をもつかは未知数であるが、訓練中の模擬戦闘において驚異的な逸話がいくつも作り出されている最中である。
例をあげれば、「1機のF-22が、世界最強の戦闘機の一つに挙げられるF-15を5機同時に相手にして、3分で全機を撃墜判定」「同じくF-15を相手として100戦以上行われている模擬戦闘において無敗」「アグレッサー部隊のF-16が300ソーティもの模擬戦闘を行ってついに一度もミサイルの射程内に捉えられなかった」等々、どれもF-22の高性能ぶりが良く分かるものである。
あるパイロットは「F-22Aと戦うのは、姿が見えないボクサーに顔面をタコ殴りにされるようなものだ」と形容している。詳細は不明だがテスト飛行でF-15とドッグファイトにもつれ込んだ際、目視は出来ているのにレーダーに映らないとF-15のパイロットが言っていた事からも、敵に回すと厄介な機体であることが伺える。
------------引用終了--------------
ここから、どういう解が導かれるだろうか。もし、北京政府が、「ランチェスターの第二法則」を理解できるのであれば、インド洋においてシーパワー戦略を実行したとしても、制空権も制海権も確保できないため、結局は、失敗することが分かるであろう。
つまり、シーパワー連合は、インド洋を封鎖することで、いつでも、北京政府を兵糧攻めにできるのだ。そうであれば、北京政府は日米インドと中東で対立することの不利を悟るべきだ。
そうして、地続きのシベリアの資源を狙うというランドパワー戦略をとることが、妥当な戦略であることを理解するだろう。つまり、「南進をあきらめ北進する」ことこそが、北京政府の基本的戦略であるべきなのだ。この点で、日米英インドといったシーパワー連合は、北京政府を支援すらできるであろう。
以上
(江田島孔明、Vol.197完)
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