◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略VOL202
 江田島孔明


今回は、私の予想通りの展開となった、ヒラリー撤退とその影響を検討したい。

 端的にいって、国際金融資本の完全な代理人であるヒラリー敗退は、国際金融資本の頸木から逃れようとする米国民、なかでも、米軍の意思というべきだろう。
 クリントン時代の再来を恐れる日本にとっては、神風だ。今後は、米軍再編をめぐって、オバマVSマケインの勝負となり、結果は米軍が支持するマケイン勝利となるだろう。

 <参考>
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00134315.html

 米大統領選民主党候補指名争い、――オバマ候補、ヒラリー氏の支持表明に「光栄だ」

 アメリカ大統領選の民主党候補指名争いは2008年6月7日、ヒラリー・クリントン上院議員が正式に撤退を表明した。今後は、オバマ候補がヒラリー議員の支持層をいかに取り込むかが注目される。
 ヒラリー議員は「きょう(7日)、わたしは選挙運動を中止します。彼(オバマ氏)の勝利を祝福し、全力で彼を応援します」と宣言した。
 出馬表明から1年5カ月にわたり、初の女性大統領を目指してきたヒラリー・クリントン上院議員が7日、ついに撤退を表明した。
 ヒラリー議員は、「わたしは、オバマ候補とともに闘います。Yes, we can (われわれにはできる)!!」と、オバマ候補が繰り返し使ってきたスローガンを使い、支援の意向を示したが、会場からブーイングが起こるなど、長い選挙戦で深刻化した民主党内の亀裂が浮き彫りになった。

 ヒラリー議員の支持者は、「とにかく、本当にがっかりした。オバマ氏には、アメリカを動かせるほどの経験はない」と話した。
 ヒラリー議員の支持表明に、オバマ候補は「身の引き締まる思いであり、光栄だ」と、謝意を表明した。

 今後は、白人女性層やヒスパニック層など、ヒラリー議員の支持層をどう取り込むかが課題となる。
 また、ヒラリー議員の副大統領候補の可能性については、「改革」を訴えるオバマ候補の勢いをそぐとの懸念もあり、オバマ候補の決断に注目が集まっている。


 <VOL192より抜粋>
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/353184/

 ◆日米関係を無視したヒラリー候補の外交政策 中国こそ最重要だと強調 10月18日  古森義久

 アメリカ大統領選挙戦で民主党側のフロント・ランナー(先頭走者)となったヒラリー・クリントン上院議員が、大統領になったら、こういう外交政策を推進しますという意味の論文を外交雑誌に発表しました。

 「21世紀の安全保障と機会」というタイトルの論文です。

 大統領への展望を踏まえての外交政策発表ですから、当然、グローバルな視点からアメリカの対外政策のあり方を広範に論じています。

 この種の包括的な論文を「では日本に対してはどうなのか」という角度だけからみることの偏りの危険は当然、あるでしょう。
 だが、それでもなお日本側としては、ヒラリー女史の対日政策がどうなのかをみることは怠れません。アメリカにとって日本は超重要な同盟国のはずです。他の大統領候補も外交政策を語るなかでは、必ず日本との関係、日本との同盟を一つの主要案件として位置づけ、正面から論じています。

 しかしこのヒラリー論文を読んで、びっくりしました。日本への正面からの言及がないのです。「日米関係や日米同盟について、何も無い」のです。日米関係はこの論文では無視されているのです。

 他の問題が多々あるから、とか、日本が重要なことは言を待たないから、とか、あれこれ、口実はあるでしょう。

 しかし私もアメリカの大統領選キャンペーンは何度もみて、多数の候補の政見も聞き、その外交政策にも耳を傾けてきましたが、日本をこれほどみごとに無視した政見発表は、まずみた記憶がありません。
 そもそもこの論文では、「Japan」はただの二度しか出てきません。その二度とも、日米関係とか日米同盟という文脈ではなく、他の諸国、他の問題と一緒になった記述のなかに、ほんのつけたしとして、出てくるだけなのです。

 さてその「日本」についてみましょう。

 ヒラリー論文は、ほぼ終わりの部分で「同盟を強化する」という項を設け、まずヨーロッパとの関係の重要性を説きます。フランス、ドイツ、イギリスの新世代のリーダーたちに手を差し伸べ、米欧の関係を強化しよう、と述べています。

 その次にアジアについて以下のように述べます。

 「アジアでは、インドが発展するパワーとしても、また世界で最も人口の多い民主主義国家としても、特別な重要性を有する。私は上院のインド議員連盟の委員長として、インドの台頭によって供されるすばらしい機会と、地域的機関や国連のような国際的機関でインドに拡大された発言を促す必要性とを認識してきた。
 われわれは、オーストラリア、インド、日本、そしてアメリカが対テロ闘争、グローバルな気候管理、グローバルなエネルギー供給の保護、グローバルは経済開発の深化などを含む相互に懸念を抱く諸問題に関して、協力をするための、さらなる方法を見出さねばならない」

 日本は上記のように出てくるだけなのです。

 そもそもヒラリー女史がアジアの部分で真っ先に名をあげるインドは、アメリカの同盟国ではありません。それでも彼女がインドの重要性を力説するのは、上院議員としての地元のニューヨーク州には合計30万ともいわれるインド系米人が住んでいることが最大の理由だといえましょう。

 ヒラリー女史はそのほかにもう一度だけ「日本」の名を出します。中国とアメリカとのきずなの意義を説く際に、これまたほんのつけたしとして出てくるだけなのです。

 その部分につながる「対中関係の最重視」の部分を紹介しましょう。

 「われわれと中国との関係は、今世紀の世界において最も重要な二国間関係である。アメリカと中国は非常に異なる価値観と政治システムを有しており、貿易から人権、宗教の自由、労働慣行、チベットまで、意見が根本から異なることは多いのだが、なお米中両国が歩調を合わせて達成できること、達成せねばならないことは多々ある。
 中国の支援は、北朝鮮の核関連施設を無能力化する合意の成立に重要だった。われわれはこの枠組みを、北東アジア安全保障の組織体の確立への構築していくべきだ」

 中国との関係がアメリカにとっては21世紀の全世界で最重要だと明言するのです。そして「日本」がその中国のつけたしとして登場します。

 「しかし中国の台頭は新たな挑戦をも生んでいる。中国人たちは自国の経済急成長がものすごい環境破壊の代償を払って、達成されていることをやっと悟るようになった。アメリカは中国と日本とともに、新しいクリーンなエネルギー資源を開発し、より大きいエネルギー効率化を促進し、気候変化と戦うための共同プログラムを請け負うべきだ」

 ここでも「日本」は明らかな「つけたり」です。

 日本が中国やアメリカと共同のエネルギー開発のような作業を地元の東アジアで始めれば、いかにも日本こそが金銭的な貢献をとくにしたい、ということになるでしょう。

 要するに「日本」はここでも末端での役割しか演じていません。

 以上がヒラリー論文の日本やアジアに冠する最大量の紹介です。日本は無視、といっても、そう外れてはいないのです。



 中国系米国人の支持を見れば分かるが、「ヒラリーの勝利」は北京政府のシナリオだ。北京政府としては、ヒラリー政権下で日米安保の発展的解消を狙うだろう。これは、戦前の日英同盟が発展的に解消し、4カ国同盟となった歴史を再演するものだ。

 東アジアでは、1920年代にワシントン体制というものが出来た。4カ国条約、5カ国条約(海軍軍備制限条約)、9カ国条約がその内容であった。マルチの取り決めで、そのなかで日英同盟の廃棄が行われた。
 日本は日英同盟という錨、外交の機軸を失い、漂流し始めた。日米戦争の遠因もここにある。欧州におけるロカルノ体制同様、これは平和の維持に失敗した。こういう歴史を踏まえる必要がある。


 <阿修羅掲示板より抜粋>
http://www.asyura2.com/07/war97/msg/396.html

 ヒラリーが、対中関係を「今世紀における最も重要な2国間関係」と大きく謳い上げたのだが、日本に関する言及は驚くほど少ない。
2007年10月25日 木曜日

 ◆日米関係は大丈夫か?(4) 10月24日 冷泉 彰彦
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20071022/138120/

 日米関係の距離を判断する材料として、日米と米中との比較論は避けられない。

 例えば、ビル・クリントン政権時代には、1995年に北京で行われた世界女性会議に、当時はファーストレディーだったヒラリー・クリントンを派遣するなど、何かと米中が重視され、日米は軽視されるという印象論が横行した。

 特に98年には、大統領として訪中したビル・クリントンは、中国には9日間滞在しながら日本を素通りして帰国している。日本の官邸は立ち寄りを要請したのだが無視された格好となり、これでは“ジャパン・パッシング”、日本素通りだというような愚痴も聞かれたものである。

 ◆対中重視を明確にしたヒラリー次期大統領候補

 2001年に就任したブッシュ大統領は、共和党政権ということもあって、就任当初は海南島における米国の偵察機と中国空軍のトラブルなど、米中の間に互いの手の内を探り合うような緊張関係もあった。だが、これまで7年近くにわたるブッシュ政権を通じて、米中はじわじわと距離を縮めてきているように見える。

 世界の生産拠点として、米国はなりふり構わず中国に製造を委託していったし、自由貿易を基本として、大企業の収益向上をサポートするというブッシュの経済政策がそれを加速させていった。その結果として中国の経済は拡大を続けたが、それはそのまま米中経済の一体化が進むという結果となった。

 政治外交の面でも、ブッシュ政権は就任当初には考えられなかったような対中融和に転じている。対北朝鮮政策では敵視姿勢を弱めて、中国による実務的な対応を支持する方向に変わったし、国連加盟を口にする台湾に対する圧力のかけ方を見ていると、共和党にとって伝統的だった「親台勢力」は、どこへ行ったのかという印象がある。

 大統領自身はダライ・ラマ14世との親密な関係を維持しているが、2007年10月の議会での名誉黄金勲章授与に際して、実は中国当局の怒りに対する細やかな気遣いを見せた。それもこれも、経済の結びつきが強まったからだと言えるだろう。

 そんな中、2006年の米国中間選挙では民主党が圧勝、議会では上下両院で多数を確保した。
 さらにヒラリー・クリントンが、民主党の大統領候補選考レースで優位な戦いを進めており、民主党の大統領として「第2次クリントン政権」が誕生する可能性は相当にあると言ってよいだろう。

 ヒラリーは「フォーリン・アフェア」誌の11月/12月号で自身の外交政策論を発表している。「リーダーシップとはブレンドされた戦略を持つことだ」という宣言を掲げたこの論文では、対中関係を「今世紀における最も重要な2国間関係」と大きく謳い上げたのだが、日本に関する言及は驚くほど少ない。

 ◆古い友人だが、結局は理解し合えなかった?

 では、再び“ジャパン・パッシング”が起きるのだろうか。さらに言えば、米中が手を組んで日本を軽視するような流れが米国にとっての「21世紀アジア外交」の主軸となるのだろうか。筆者は米国に流れる“空気”から、そうした可能性は無視できない水準にまで高まりつつあると感じている。

 まず、価値観の問題がある。一定の教育を受けた米国人の間では、「中国は独裁国家であり言論の自由がない」というのがベースの認識だと言っていいだろう。一方の日本は、アジアでは最も民主的な国家としてよく知られている。
 だが、ヒラリーに代表されるような民主党カルチャーからすると、日本の国内問題に対しては、中国の問題ほど同情も興味もわかないのが実情だ。
(後略)



(私のコメント)

 アメリカの大統領選挙では、ヒラリー・クリントンが独走態勢になりつつあります。オバマ候補は外交に弱いところを見せてしまった。選挙資金力もヒラリーが独走態勢でカネがものを言う大統領選挙では、オバマも巻き返すのは不可能だろう。どちらにしてもイラク戦争が続いている限り共和党が勝つ見込みは無く、民主党のヒラリーが大統領に選ばれるだろう。

 しかしヒラリーが大統領に選ばれれば、90年代の日米関係の再来になる事は必至だ。「クリントン夫妻が中国びいきであり日本嫌い」であることはビル・クリントン時代に十分わかっている。かなりのルートでチャイナマネーがヒラリーに渡っているのだろう。

 中国は賄賂政治が文化のような国だから、アメリカの大統領を金で買えればこれほど効率の良い投資は無い。

 株式日記では、ジャパンマネーでヒラリーを買収しろと主張してきましたが、日本にはそのような事が出来る「工作機関」がない。中国はやりたい放題出来るから、アメリカや日本のような民主主義国家は、チャイナマネーで買収されやすい。FBIも目を光らせていますが、大統領を買収してしまえばFBIは動けない。

 ヒラリーの外交論文では、ヨーロッパ諸国や中国との関係を強化する事を言っていますが、日本との関係についてはつけたし的に触れているだけだ。
 伝統的にアメリカの民主党の外交は、中国重視日本軽視だったのですが、中国が人権無視で共産党一党独裁国家であることは、民主党にとっては障害ではないのだろう。

 もちろん政治的ポーズとしては、人権問題などを非難はするが言葉だけだ。これはヒラリーに限らず共和党のブッシュ政権も、中国に対しては対立路線よりも友好路線であり、ポールソン財務長官などは70回以上も中国を訪れた親中派であり、アメリカの連邦議会議員たちも、年に百数十人も中国を訪れている。それに対して日本へは十数人が来日しただけだ。

 このような状況になるものアメリカと中国との経済の繋がりが大きいからで、日本はその陰に隠れがちだ。「経済的」構図から見れば、米中の経済同盟と日本とが対立している構図になる。
 「軍事的」には日米同盟が中国と対立している構図になっていますが、アメリカは軍事的競争関係にある中国を、経済大国にしている事になる。

 日本にとっては中国はすぐ隣の国で歴史的交流も長い。だから中国という国や国民性もよく分かっている。それに対してアメリカと中国の関係は、本格的交流は78年からの改革解放以来でアメリカ人は中国の事をよく分かっていないのだ。だから幻想的な中国イメージだけが先行している。しかし実際に利害が衝突し始めれば、米中関係は決して楽観は出来ない。

 来年は北京オリンピックが開催されますが、中国はこのような国際的行事をはじめて行ないますが、中国にとってイメージアップになるのだろうか?
 アメリカ大統領候補を金で買収工作してしまうくらいの国だから決して品行方正とはいえない。天安門事件から17年が過ぎていますが、オリンピックの機会を狙って暴動が起きるかもしれない。天安門事件もゴルバチョフが中国訪問する機会を狙って起こされた。

 このような政治的不安定さと、中国のナショナリズムが反米に向かった時に、米民主党やヒラリ−次期大統領はどのように対処するのだろうか?
 国際金融資本も中国に莫大な経済的投資を行なったが、はたして最後まで上手く行くとは思えない。他のアジア諸国に対したように債権を回収しようとしても、中国は軍事的大国になりつつあるので、軍事力で回収しようとしても上手くいかない。

 日本企業は中国に投資はしても、何度も煮え湯を飲まされて泣きを見てきましたが、アメリカは上手くやるだろうか?
 90年代と現在とでは日米関係も米中関係もかなり変わってきている。中国は対米黒字第一位であり、ロシアとも上海協力機構で同盟を組み、アメリカにとって中国はかなり手強い国になったのですが、米民主党はいまだに一昔前の幻想にとらわれているのだ。


http://www.financial-journal.net/blog/2007/05/000190.html

 米大統領は巨大資本が決める?!

<http://today.reuters.co.jp/news/articlenews.aspx?type=worldNews&storyid=2007-04-27T114803Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_JAPAN-257576-1.xml&src=rss>

 米モルガン・スタンレーCEO、ヒラリー議員への支持を表明
 2007年4月27日(金)11:48 (ロイター) 

 ビジネスウィーク誌最新号によると、米モルガン・スタンレーの<http://www.financial-journal.net/blog/2007/04/000159.html> ジョン・マック最高経営責任者(CEO)は、民主党の次期大統領選候補者の1人ヒラリー・クリントン上院議員を支持する意向を表明した。同CEOは共和党員。

 同CEOは、ヒラリー氏は共和党と連携する意思があり、金融業界や医療問題をしっかり把握していると信頼しているとの考えを示した。

 ビジネスウィーク誌は、政治献金を調査しているポリティカルマネーラインを引用し、リーマン・ブラザーズ、ゴールドマン・サックス・グループ、JPモルガン・チェースのトップも、過去数年間、民主党に好意的な見方を示していると報じている。


 モルガンもリーマンもゴールドマンも民主党支持となると、ヒラリー大統領誕生が色濃くなった。
 アメリカ大統領は巨大資本によって決まるといっても過言ではないかも知れない。

 巨大資本の意向で大統領が決まるとなると、アメリカ(=巨大資本)から日本への要求がますます強まるだろう。

 そしてモルガンもリーマンもゴールドマンも日本でやりたい放題になるかもしれない。そして、それは目論み通りかも知れないのだ。

 日本政府もマスコミもアメリカベッタリのがんじがらめで、日本経済は骨の髄まで吸い尽くされる危機にある。


 どうしてこうなるのか、流れを変えることはできないのか?!
唯一の変えられる可能性は、日本国民の声にある。
以上
(江田島孔明、Vol.202完)


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