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本で読んだ真理も、我々は後で自身で考え出さねばなりません。
頭のはちの中には種子が一杯入っていますが、それに対して
感情が初めて培養土と培養ばちの役をするのです。

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印象を極めて新鮮に力づよく受け入れ、これを味わうということは、
青年の羨むべき幸福です。批判的認識が増すにつれ、次第に、
あの濁らぬ喜びの泉は枯れます。すべての人間はアダムです。
というのは、誰でも一度は温かい感情の天国から追放されるからです。

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喫煙は頭を悪くします。考えたり、創作したりすることを不可能にします。
それは怠け者や退屈している人々だけのすることです。彼らは人生の
三分の一を寝て過ごし、三分の一を飲食その他、必要な、あるいは無駄な
ことで空しく過ごし、そうしておいて人生は短いと口ぐせに言いながら、
残りの三分の一をどうすべきか知らないのです。そうした怠け者にとって
は、パイプに親しむこと、空中に吐く煙を眺めることは、時間つぶしになるので、
利口な楽しみです。喫煙にはビールがつきものです。それで熱くなった
口腔がさまされるのです

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卑怯な考えの、
びくびくした動揺、
女々しいしりごみ、
小心な嘆き。
そんなものは不幸を防ぎもせず、
お前を自由にもしない。

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すべての人間らしいあやまちを
清い人間性がつぐなう。

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慰めは無意味なことばだ。
絶望し得ないものは生きてはならない。

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すべて慰めは卑劣だ。絶望だけが義務だ。

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いかにして人は自分自身を知ることができるのか。
観察によってではなく、行為によってである。
汝の義務をなさんと努めよ。そうすれば自分の性能がすぐわかる。

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だが、何が汝の義務であるか。その日その日の要求。

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自分の能力に対する希望の誤断を早く悟ったものは幸いである。

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試練は年齢とともに高まる。

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生活をもてあそぶものは、
決して正しいものにはなれない。
自分を命令しないものは、
いつになっても、しもべにとどまる。

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いかなる政府が最上の政府であるか。
我々自身を治めさせることを教える政府がそれだ。

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生活を信ぜよ! それは演説家や書物より、よりよく教えてくれる。

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生活はすべて次の二つから成り立っている。
 したいけれど、できない。
 できるけれど、したくない。

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神聖な真剣さだけが生活を永遠にする。

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仕事は仲間を作る。

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人を知らねばこそ、人を恐れる。
人を避けるものはやがて人を見損なう。

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目標に近づくほど、困難は増大する。

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性癖に打ちかつことは難しい。これに習慣が次第に加わって
きて、根をおろすと、もう始末に負えなくなる。

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思慮を欠いた事をすると、始終、逃げ道はないかと探していなければならない。

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何物も生み出すことのできぬ人にとってのみ、何物も存在しないのだ。

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我々を最も厳しくこきおろすのはだれか。
自分自身に見切りをつけたディレッタントだ。

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愚なことは、多少の理性で補ってやろうとするより、そっくり
そのままにしておく方がいい。理性が愚とまじわると、その力を
失い、愚も愚なりに往々役に立つ性質を失ってしまう。

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愚か者と賢い人は同様に害がない。
半分愚かな者と半分賢い者とだけが、
最も危険である。

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役に立たぬ人とはだれか。
命令することも、服従することもできぬ者。

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気持ちよい生活を作ろうと思ったら、
済んだことをくよくよせぬこと、
滅多なことに腹を立てぬこと、
いつも現在を楽しむこと、
とりわけ、人を憎まぬこと、
未来を神にまかせること。

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敵の功績を認めることより
大きな利益を私は名づけ得ないだろう。

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清い生命の勇気を飲め
おしえを深く心にうけて
二度とここには立ち戻るなよ
人目をさける呪いなどして
おろかな土掘りはもうおよし
昼は働き 夜は友招き
週日は汗して 楽しい休日
これからの呪文はそうしなさい

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時を短くするのは何か
   活動だ!
時をだらだら長びかせるのは何か
   怠惰だ!
借金を背負いこませるのは何か
   停滞と受け身だ!
利益を得させるのは何か
   左顧右眄せぬこと
名誉を受けさせるのは何か
   なにくそだ!

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誠実に生かせ お前の時を
何かを掴もうとならば探すな 遠くを

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ただお前の領分で正しい仕事をせよ
他のことはおのずから得られよう

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小事によろこびを感じる人を見るならば
思え 彼はすでに大事をなしとげたのだ

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「言ってくれ どうして君はたえず若返るのか?」
君だってできる 偉大なものに喜びを感じさえすれば
偉大なものはつねに新鮮で 人を暖め生気づける
卑小なものの中では卑小な人間はふるえ凍える

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ああ 人は何を望んだらいいのか、
しずかに身を処し
かたくおのれを守るべきか。
東奔西走するのがよいのか、
ささやかなりとおのが家をもつべきか、
テントを担って生活すべきか、
巌に身を寄せ生きるがよいか。
堅い巌さえ揺らぐのだ。

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一事で万人に適するものはない、
人はおのれにふさわしい流儀をさがせ。
おのれにふさわしい足場に立て。
そして 立っている者は倒れぬように心せよ!

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君はどこまでさすらう気か。
見よ、よきものは足下にある。
ただ幸福をしっかと掴むことを学びたまえ、
幸福はいたるところにあるのだから。

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学者らは勝手に議論するがよい、
教師どもはしかつめ顔をふりまわせ。
古往今来あらゆる国のあらゆる賢者は
笑みうなずいて一致する、
「馬鹿ものどもの賢くなるのを待つのは
たわけだ。
賢慮の子らよ、愚人は愚人で捨てておけ、
それが何より」

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要するに、地位や身分はどうでもいい。第一人者の地位にすわる
人間が、必ずしも主役を演ずるとは限らない。いかに多くの国王が
大臣によって動かされ、いかに多くの大臣が秘書によって操られて
いることだろう。しんじつ、第一人者は誰か?私の考えでは、誰に
も負けぬ高い見識を持ち、周囲の人々の力と情熱を自由に動かし、
自己の計画の実現を図るだけの、たくましい実践力と手段を有する
人間である。

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自己が自己であるために、支配することも服従することもいらぬ人間が、
偉大な幸福な人間だ。

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自分が感じたもので、自分が見たもので、自分が考えたもので、
経験したもので、想像したもので、理性で判断したもので──
できるかぎり「言葉」を直接に、言葉そのものに直面して、
いきいきと理解しなければならぬ。これが私達の、日ごとに
課せられた、回避できない、厳粛な義務である。

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人々はみずからそれを試みてみるがいい。このような努力が、
想像以上に困難であることがわかるであろう。残念ながら、
金言や名句は、人々にとって常に代用品でしかないのだ。
言葉の意味を十分に考えること。そうすれば、つまらぬ自分の
意見を吐くよりも、より多くのことが理解できるはずだ。

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愚劣な人間と賢明な人間とを区別するものはほかでもない。
賢者は「現在」の微妙な本質を一瞬にしてとらえ、いきいきと、
個性的に理解し、たいした造作もなく、それを自分の言葉で
いいあらわすことができる。しかるに愚者は、たとえば私達が
おぼつかない外国語をあやつるように、ただその場その場で、
与えられた借り物の句法をあてはめるのに心労するだけである。

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事実がすでに理論であることを理解せよ。これが最高の叡知である。
大空の青は色彩論の根本法則を語っている。現象の背後を探る必要は
ない。現象それ自体が理論である。

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じかに現象を眼の前に見ている人間は、しばしば考えを展開させ、
現象以上に進むことができる。ただ記述や報告を読むことしかせぬ
人間は、ほとんど何も考えない。

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常識は健全な人間に生まれついたものである。だから、自然にそのまま
発達して、必然なもの、有用なものを明確に知覚し、承認することが
できるのだ。実際家は、みんな安心して常識をしようしている。しかし、
常識が欠けると、男も女もただ自己の欲するものを必然だと思い、自分に
好ましいものを有用だと信じてしまう。

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ダイナミックに考えなければならぬ問題を棚にあげて、
私達は毎日ただ機械論的な説明を繰り返す。

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まず自分で自分自身を教えること。そうすれば、他人の教えも、
身にしみて受け取ることができる。

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神聖と世俗をつきまぜた音楽は冒涜である。弱々しい、情けない、
くだらぬ感情を、ことさららしく歌おうとする三流四流の音楽は、
我慢できぬ。なぜなら、かかる音楽は、神聖になるために真面目さ
が足りないし、世俗になるためには、最も大切な明朗な喜びを
もっていないから。

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リズムには不思議な力がある。晴れの祝祭的なものが人間内部に
あることを、リズムは信じさせる。

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平凡な才能の人でも、じかに自然の前に立てば、かならず精神を
はたらかしている。だから、ごまかしのない素描が、かえって
よろこびをあたえる。

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ディレッタントの誤信は、でたらめに空想と技術を結びつけようとすることだ。

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ある人がいった。「なぜホメロスのために、そんな骨身を削るような
苦労をするのか? 君達はホメロスを理解さえできないのに」と。私は
それに答えよう。私は太陽も月も理解しない。しかし、大空の星々を
見て、その不可思議な、規則正しい運行を観察すると、私は星々の世界
に私自身を発見するのだ。そして、私自身から、何ものかが生まれて
くるに違いないと予感するのだ。

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しばしば人間は、自分の無力から法律をつくることがある。世慣れた人は
いった。「不安とおそれを韜晦する知慧には勝てない」と。弱い人間が、
かえって過激な革命意識を持つこともある。彼らはなによりも、支配され
ないことを人間の幸福だと信じている。そして、自分を支配することも、
まして他人を支配することもできない自分を、忘れている。

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相手側に立ってみれば、その人に対する日ごろの嫉妬や憎悪は、きれいに
ぬぐい取られてしまう。相手と自分を入れかえてみれば、うぬぼれや誇り
も消え失せてしまう。

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三十分なんか塵くずにひとしいといっいてるひまに、むしろ、
塵くずみたいな仕事を片づけるのが、賢明なやり方だ。

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外国語を知らない人は、母国語を知らない。

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外国語を排除することではなく、どしどし外国語を消化してしまうことが、
生きた国語の力である。

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エメラルドの玉の美しい色は、私達の眼をよろこばす。いや、単によろこばす
だけでなく、むしろ眼に対して或る種の不可思議な治癒力を持っているという。
しかし、人間の美しさはもっと大きな力で、私達の感覚と魂に作用するだろう。
一度人間の美しさを見たものは、もはや決して悪の毒気を吐くことができぬ。
彼は自己と世界の美しい調和を、心一杯に感じるからである。

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いわば現世の「福音書」として、すなわち精神内部の明るさや外界の楽しさ
によって、私達を重苦しい地上生活の重圧から解放するのが、真実のポエジイ
である。それは軽気球のように、私達をつないでいる重石とともに、私達を
清らかな高い空へ引きあげる。そして、私達の眼下に地上の錯綜した迷路を
鳥瞰図的にくりひろげてみせる。清澄な作品といわず、深刻な作品といわず、
あらゆる文学作品に共通する目的といえば、完璧な、すぐれた描写によって、
人間的よろこびと悲しみを融和することだ。

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詩人は党派に属するには、あまりに高く立っている。神は詩人に、
美しい贈り物として、清らかな心の明るさと、真実な意識を贈ったのだ。
恐ろしいものの前に少しもたじろがぬ真実な意識と、あらゆるものを
楽しく描いてみせる屈託のない心の明るさを。

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いかに卑俗にみえる人生、いかにたやすく日常の平凡さで満足しそうに
思われる人生でも、必ず人生はある高い要求をひそめている。そして、
ひそかに、その切なる願いを実現する手段を求めている。

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確信したものを実行するだけの力は、かならず誰でも持っている。

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私達が熟考し、私達が着手することは、まったく無垢の、清らかな、
美しいものでなければならない。世間の泥にまみれるのが、もったい
ないぐらいに。そうして、初めて私達は、少しずつ世の中の狂った
ものを直したり、壊れたものを修理したりすることができるのだ。

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すぐれた人間は、ただひとり正しいことをするだけだ。世の中に
正しいことが行われているかどうかは、問題にしない。

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義務とは──自分自身にあたえた命令を愛すること。

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楽しく行為し、自分の行動を楽しむことができたら、その人は幸福だ。

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その日その日の価値よりも、より高い価値はない。

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他人の好意を心からよろこぶとき、私達はほんとうに生き生きした人間になる。

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だまされるというが、ほんとうは自分が自分をだましている。

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礼儀はその人の姿を映す鏡。

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心の丁重さというべきものがある。それは愛に似ている。
表面の作法のここちよさは、ここからあふれ出るのだ。

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人々はただ自分の理解することしか聞かない。

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意見が完全に一致したかどうかを問うな。それよりも、
言葉の意味に食い違いがないかどうかを、確かめよ。

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感性的な人間は、別におかしいことがなくても笑う。どんなものに
刺激されても、すぐに内部の気楽さが飛び出すのだ。

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悟性的な人間は、ほとんどすべてのものを「滑稽だ」と思っている。
理性的な人間は、ほとんどすべてのものを「滑稽だ」とは思わない。

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愛を知らぬ人は追従を学ばねばならぬ。そのほかに、もはや方法はないのだから。

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逃げ口上ばかりを探しているから、かえっておろそかになるのだ。

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無理に他人を追い越そうとすれば、きっと失望するにちがいない。
ただ自分にできるすべてを尽くせばいいのだ。そして
「もうここまで」と、気持ちよく自分を納得させたまえ。
すると君は、誰よりも多くのことを為したにちがいない。

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いつまでも地面にへばりつくな
さあ 思いきって あらたに踏み出せ
あかるい力が 頭に 腕に みなぎれば
どこだって きみの家になる
よろこんで太陽を仰ぐところ
そこに 決して憂いなどない
ぼくらは 世界に散っていこう
世界は こんなに広いのだ


・ゲーテ格言集(新潮文庫)
・ゲーテ全集11(人文書院)
  などから主に引用しました。

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