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「ゲーム的リアリズム」とは何か


 哲学者・批評家・オタクの東浩紀の提唱する分析概念で、ゲーム、コミック、アニメ、小説等のフィクション作品において、受け手にリアリティを感得させるための創作技法の一。
 作品内部において展開される状況と、作品外部の受け手が置かれている環境との間に、構造的類縁関係を作り出すことを特色とする。
 この関係性は、作品内の要素や設定との類似といった明瞭な形では示されず、受け手(あるいは作り手自身)に必ずしも表面上意識されない。
 ’大きな物語’が凋落したポストモダン状況下における文学的要請に応えるものとして出現した。(※)

(※)近代においては、フィクション作品のリアリティは、’大きな物語’との意味的連関によって担保されていた。別の言い方をすれば、フィクションとしての個々の作品は、一個の現実の反映であると見做された。これを可能としたのは、一個の現実=’大きな物語’が、万人によって共有されるという近代特有の状況であった。
 だがポストモダンにおいては、もはや’大きな物語’は共有されない。あるいは少なくとも、一個の特定の物語が、万人に対して特権的な位置を占めることはない。これは、自己の意識が置かれる場としての〈現実〉が、恣意的に選択され得るということを意味する。
 こうした状況は、従来のようなリアリティの成立を困難にする一方で(なぜなら何を’リアル’と見做すかは人によって異なってしまうから)、虚構の表現を通じて現実の様相を明らかにするという文学上の課題を初めから放棄した、過去の作品群に表れた虚構の要素・設定を受け手の嗜好に応じて組み合わせることで成立している、二次的な作品群を大量に産み出した。
 対して、「ゲーム的リアリズム」は、同一行程の反復、選択肢の提示、別ステージへの移動といったゲーム的手法を物語内に巧みに織り込むことにより、複数の〈現実〉が並行的・多元的に存在するポストモダン的状況を現出させ、自己の置かれている〈現実〉の認識を受け手へと迫るものとなっている。

[参考文献]
東浩紀 『動物化するポストモダン』、講談社、2001年
東浩紀 『ゲーム的リアリズムの誕生』、講談社、2007年
2010/ 5/11

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