ジャック・ヒギンズ

 1929年、英国・ニューキャッスル・アポン・タイン生まれ。1960年頃よりハリー・パタースン、ヒュー・マーロゥ、ジェームズ・グレアムなど、複数のペン・ネームを用いて作品を発表。1975年に発表した「鷲は舞い降りた」で冒険小説界において一躍スターダムに踊り出る。

 ジャック・ヒギンズでの名義は1969年発表の「廃墟の東」より使用。1980年頃まではハリー・パタースンと使い分けていたが、その後は全てヒギンズ名義となり、他名義の作品群もヒギンズ名義で再発売された。

 ここ十年ほどは現代物はチャールズ・ファーガスン准将率いるグループ・フォアシリーズ、第二次大戦秘話物はドゥガール・マンロゥ准将率いるSOEのD課シリーズに集約されているが、近年はグループ・フォアのエージェントとなった元IRA闘士、ショーン・ディロンを主役に据えた作品が多い。

 過去のヒギンズ名義で発表された作品はほぼ、早川書房とNV文庫で独占販売していたが、1999年発売の「双生の荒鷲」以降は角川文庫に翻訳独占権が移籍している。


ジャック・ヒギンズ作品集(日本で翻訳されたもののみ)

■ハヤカワ文庫NV刊

鷲は舞い降りた
脱出航路
地獄島の要塞
死にゆく者への祈り
裁きの日
エグゾセを狙え
非情の日
廃墟の東
暗殺のソロ
神の最後の土地
ルチアノの幸運
雨の襲撃者
真夜中の復讐者
テロリストに薔薇を
黒の狙撃者
狐たちの夜
地獄の季節
反撃の海峡
鷲は飛び立った
嵐の眼
サンダーポイントの雷鳴
密約の地
シバ−謀略の神殿
闇の天使
虎の潜む嶺(ポール・シャヴァスシリーズ)
悪魔と手を組め

(自伝的小説)
ダンスホール・ロミオの回想

■角川文庫刊

双生の荒鷲
大統領の娘
ホワイトハウス・コネクション
審判の日
復讐の血族
報復の鉄路

(ポール・シャヴァスシリーズ)
地獄の鍵
謀殺海域

■ハリー・パタースン名義・ハヤカワ文庫NV刊

ヴァルハラ最終司令
ウィンザー公掠奪

■ハリー・パタースン名義・その他出版社刊

デリンジャー
復讐者の帰還
裏切りのキロス
鋼の虎
地獄の群集
獅子の怒り
勇者の代償

■ジェームズ・グレアム名義

勇者たちの島
サンタマリア特命隊
暴虐の大湿原−クフラ・ラン−
ラス・カナイの要塞


 グループ・フォア エージェント一覧

■チャールズ・ファーガスン

 英国陸軍准将。1972年のグループ・フォア創設直後にあたった事件では英国輸送船団、ハリー・ファーガスンと名乗ってサイモン・ヴォーン少佐と接触している。典型的なスコットランド貴族だが母親はアイルランド人で、しかるべき手続きを取ればアイルランド国籍を取得することも可能。

 大戦中はSOEに所属しエージェントとして大陸で活動中、ゲシュタポに逮捕された経験有り。戦後はパレスチナ、インドで任務についた後、朝鮮戦争に従軍。その後も軍内部で着々と実力をつけ、1972年、多発する国際テロに対応するべく時の英国首相の提言によって創設されたエリート情報組織「グループ・フォア」のチーフとなり、対IRA、対KGB活動で多大な功績を残した。冷戦終結後も、英国政府に打撃を与える数々の事案についてその辣腕を奮い、解決する。
 エドワード・ヒース、マギィ・サッチャー、ジョン・メージャー、トニー・ブレアといった歴代首相の信任も厚い。

 エイサ・モーガン大佐は部下だったこともあり、またサイモン・ヴォーン少佐の父とはインド駐留軍時代の同僚でもあった。1972年から2004年現在に至るも、グループ・フォアのチーフの座にある。仕えた首相は五人を数える。2000年頃、少将に昇進。

 ●登場作品
 非情の日
 暗殺のソロ
 テロリストに薔薇を
 エグゾセを狙え
 黒の狙撃者
 地獄の季節
 嵐の眼
 サンダー・ポイントの雷鳴
 密約の地
 闇の天使
 悪魔と手を組め
 大統領の娘
 ホワイトハウス・コネクション
 審判の日
 復讐の血族
 報復の鉄路

■サイモン・ヴォーン

 英国陸軍少佐。1972年の「エリンの息子」に関する不法事案でグループ・フォアのエージェントとなる。両親はアイルランド人、母方の祖母はドイツ人、伯父のマイケル・フィッツジェラルドはアイルランド独立戦争期のIRAの闘士という家柄。アイルランド語とドイツ語が堪能で、対テロ・ゲリラ戦の専門家。彼の父はファーガスン准将とは知己の間柄でもあった。
 
 陸軍士官学校を卒業後、朝鮮戦争に英陸軍少尉として従軍。パトロール中に捕虜となり、中国軍の捕虜収容所へ抑留。中国軍による辛い尋問と洗脳に耐え抜いて一年後に本国に送還。その後陸軍省から「革命戦争の新しい概念」を出版するが、中国抑留時代の影響か、毛沢東の言葉を引用した本書は本国内で様々な議論を巻き起こした。
 その後、出版した本がきっかけで軍情報部へ転属。マラヤの共産主義者ゲリラの鎮圧、ケニアのマウマウ団追跡作戦、キプロスのEOKA鎮圧作戦などに従事に戦果を挙げた。
 更にインドネシアでの暴動鎮圧に現地人からなる非正規軍部隊を指揮し、めざましい成功を収めるが共産ゲリラの捕虜たちを拷問にかけ、殺したことから本国のマスコミは「セレンガーの野獣」と呼び、バッシングされてしまう。

 それがきっかけで軍を辞した。その後は傭兵となり、アラブの小国で警察長官を務めたこともあったが革命によって国を追われてしまう。この時に武器商人、ジュリアス・マイヤーと出会っている。1963年には米英独の情報部の依頼で東ドイツ情報部に囚われの身となったアイルランド人神父の救出にあたった。

 東ドイツでの奪還作戦後の足取りは不明だが、その後も傭兵稼業に身をやつし、武器密輸などにも手を染めていたと思われる。1972年にギリシャで反政府ゲリラへ武器を供与したかどでギリシャ当局に拘留。そこへファーガスン准将(代将)が現れ、釈放を条件にグループ・フォアの作戦参加に応じた。
 この作戦は英国政府の金塊を強奪したIRAに潜入し、金塊の行方を追いIRAの動向を探り、更にIRA過激派「エリンの息子たち」の撃滅が主任務であった。

 この作戦はIRA幹部、マイクル・コークの死と「エリンの息子たち」と内通していたIRAの女闘士、ノーラ・マーフィーの死、エリンの息子のリーダー、フランク・バリーの逮捕という形で締めくくられた。しかしフランク・バリーは負傷しつつも、収容先の病院から脱走し、以降、国際的テロリストとして暗躍した。

 ヴォーン少佐はこの作戦以降もグループ・フォアでの作戦に従事したようだが、1979年現在、ファーガスン准将の元で働くことを拒否している。

 ●登場作品(時代順)
 裁きの日
 非情の日
 テロリストに薔薇を(名前のみの登場)
 
■エイサ・モーガン

 英国陸軍大佐。英国陸軍の英雄とも言える人物で、1972年の「クレタン・ラヴァー」事案においてグループ・フォアに関わった人物。しかし彼はグループ・フォアの指令で行動していたわけではなく、全く個人的なものであった。

 モーガン大佐はウェールズ地方の貧しい炭鉱夫の息子として生まれた。父を落盤事故で失い、14歳の頃から炭鉱夫として働いていた。しかし彼は疲れるばかりの生活に嫌気が差し、陸軍の募集事務所へ。軍隊人生の始まりであった。初陣は1944年のアルンヘムであった。この前後にファーガスン准将に出会っているようだ。

 大戦後も軍に残留して、陸軍学校に入り、エリート軍人への道へ進む。朝鮮戦争では捕虜となり、中国軍の捕虜収容所へ抑留された経験を持つ。そして本国へ送還された後に陸軍省で発表した論文では毛沢東の言葉を引用するなど抑留時の影響が見て取れる。同様に「革命戦争の新しい概念」を出版して議論を巻き起こしたサイモン・ヴォーン少佐と似た経歴をたどっていることが分かる。モーガン大佐もまた、こうした論文が評価されて対テロ専門家として重宝され、各地の民族紛争地帯へ派遣され、戦った。
 キプロスのEOKA鎮圧活動時には、襲撃したテロリストを撃退するが、テロリストは15歳の少年であり、モーガン大佐は容赦なく射殺した。これが本国でセンセーショナルに書き立てられ、マスコミのバッシングにあった結果、妻ヘレンと離婚する遠因を作った。

 1972年当時、モーガン大佐は英国軍のアルスターにおけるIRAに対する反攻作戦「モーターマン」の陣頭指揮に立っていたが、愛娘のミーガンが逃走中の暗殺者「クレタン・ラヴァー」によって轢き殺されたことで、ロンドンに戻された。大佐は娘を殺した「クレタン・ラヴァー」の正体を掴み、復讐するべく行動を開始した。

 モーガン大佐の復讐行にこれ幸いと乗ったのが、大佐とは腐れ縁でもあるグループ・フォアのファーガスン准将であった。長年、各国の情報機関が逃してきたクレタン・ラヴァーを捕えることが出来るチャンスであった。

 大佐は残る手がかりを元に朝鮮戦争時代の部下で現在はIRAの情報将校、リーアム・オヘイガンや心理学者、ケイト・ライリー女史の助力を得て、ついにクレタン・ラヴァーの正体を掴む。それは世界的に有名なギリシャ人ピアニスト、ジョン・ミカリであった。
 モーガン大佐はついにミカリを追い詰め、射殺した。しかしこれは事件を隠蔽したいファーガスンにとってはとても都合の良い展開であった。もしミカリを逮捕した場合、国際的問題となる。奪還テロが多発する可能性があった。従ってファーガスンにとってミカリは死んで欲しかったのである。

 モーガン大佐は事件後、准将に昇進しているがその後については不明。

 ●登場作品
 暗殺のソロ

■マーティン・ブロスナン

 元アメリカ陸軍レインジャー部隊軍曹にして、IRAのガンマン。1979年のフランク・バリーにおける事案、及び1991年のショーン・ディロンにおける事案でグループ・フォアに関わった。

 ブロスナンはアイルランド系アメリカ人で、母親がアイルランド人。熱心なカトリック信者で愛国心の篤い母の影響を受け、アイルランド語を話せる。実家はアメリカでも随一の資産家で、父が死去した後は母が会社を切りもみし、典型的なアメリカ上流階級の子弟であった。しかし、彼は大学在学中ベトナム行きを志願し、陸軍軍曹としてベトナムの激戦地へ送り込まれた。そこであらゆる戦闘経験を積み、後のIRAの闘士時代に役立つことになった。

 戦傷を受けて本国へ帰還した後、軍を辞してアイルランドへ留学。そこでアイルランド文学を専行していたが、たまたま休暇でベルファストで神父をしている伯父の元へ遊びに行った時にオレンジ教徒に暴徒に遭遇。伯父はプロテスタントの暴徒たちによってリンチにあい、片目を失明するという痛ましい事件が起こった。これがきっかけでブロスナンはIRAに入ることになり、IRA伝説の闘士、リアーム・デヴリンやエリンの息子たちを率いるフランク・バリーやショーン・ディロンといった人物たちと知り合うことになる。

 ブロスナンはデヴリンの片腕として、闘争に参加。恐らくはエイサ・モーガン大佐といった英国軍のアイルランド専門家とも渡り合ったのだろう。更にベトナム従軍で培った戦闘経験が役に立ったことは言うまでもない。IRAの中でその頭角を現しつつあった。しかしその一方で一般市民を巻き込む爆弾闘争には反対の立場を取り、爆弾闘争を唱えるバリーやディロン、リーアム・オヘイガンといった過激派たちと対立。特にバリーとディロンとの対立は深刻であった。

 ブロスナンとバリーは殺し合いまで発展したが、1972年にヴォーン少佐の活躍によってバリーは逮捕され、IRAからは姿を消した。バリーの信奉者であったショーン・ディロンとも袂を別つことになる。爆弾闘争か、古典的なゲリラ戦闘か、IRAは闘争手法を巡って内部対立が激化し、IRA自体の求心力も低下した。
 1975年、デヴリンの代理人としてIRAの武器調達のためにフランスのブルターニュへ向かうが、待ち受けていたのはフランス当局であった。ブロスナンは警官一名を射殺したことで同国で終身刑を言い渡され、地中海の孤島、ベル・アイルの刑務所に収監された。この事件はデヴリンがIRA活動から引退した遠因にもなっている。

 1979年。元IRAの国際テロリスト、フランク・バリーを抹殺するためにファーガスン准将はバリーと因縁のあるブロスナンに暗殺依頼を検討するが、ブロスナンは終身刑でフランスの刑務所に収監されている。そしてブロスナンは英国情報部のために依頼を受けることはない。そこで准将はバリーの恋人だったブロスナンの従妹、ノーラ・キャシディの死を利用し、バリーがノーラを見捨てて殺したとブロスナンの説得役に担ぎ出されたリーアム・デヴリンに嘘の情報を伝えた。ブロスナンは怒りにかられ、バリー殺害の依頼を受ける。
 
 ブロスナンはフレンチ・マフィアの代表組織「ユニオン・コルス」とデヴリン、元恋人、アンヌ-マリー・オーダンの協力を得て、脱獄に成功。ついにバリーと対決し、英国の湖水地方で追い詰めて射殺した。しかしバリーは死に間際にノーラを見捨てたことは一度もない、と嘘が発覚。またしても利用されたブロスナンはデヴリンのコントロールを抜け、英国首相、マーガレット・サッチャーの命を付け狙う。その機会が巡るも、彼は結局暗殺が出来なかった。

 その後、ブロスナンはバリー暗殺の功績が認められたことや、フランスの有力者の出身であるアンヌ-マリーの働きかけによってフランス政府から恩赦が事後承諾で認められ、これまでの罪は帳消しとなり、アンヌ-マリーと寄りを戻して平穏な生活に戻った。ファーガスンもIRAも、彼を呼び戻すことはないと思われた……。

 バリーの事件から12年後。1991年にフランク・バリーの信奉者であり、同様にIRAを離脱して国際的テロリストとして各国当局を悩ませてきたショーン・ディロン逮捕のために、グループ・フォアとフランス情報部は再びブロスナンに助力を求めた。ディロンとブロスナンは、因縁の間柄であった。
 ブロスナンはアンヌ-マリーとの約束で、二度と殺し合いをしないと約束していたため、あくまで助言のみの協力に留まっていたが、ブロスナンがグループ・フォアと接触していることを知ったディロンは、ブロスナンを消すために姿を現す。そして、二人の諍いに巻き込まれてアンヌ-マリーは死んだ。
 最愛の人を失ったブロスナンは、再び復讐の鬼と化してディロンを追う。ディロンはロンドンの首相官邸に砲撃を加えた後、英国を脱出してフランスへ逃げたが、ブロスナンによって始末された。

 ブロスナンのその後については、以後不明。

 ●登場作品
 テロリストに薔薇を
 嵐の眼

■リーアム・デヴリン

 IRA伝説の闘士。マイクル・コリンズらが活躍していた独立戦争期からIRAに関わり、第二次大戦時には「鷲作戦」のバックアップを行ったとされる。ちなみにリーアム・デヴリンは本名ではない。

 彼はスペイン内戦時に共和国軍の義勇兵として参加したものの、イタリア軍の捕虜となりその身柄をドイツに移された。彼がIRA出身だったことに目をつけたナチス・ドイツの情報部、アプヴェールは彼をアイルランドでの工作に使えると判断し主に情報部で翻訳の仕事に就かされていた。
 その後、アイルランドでのドイツ情報網確立のために潜入していたゲルツ大尉救出のために、アプヴェールの命令によってアイルランドに単身降下し、ゲルツ大尉を捜索したが失敗。南アイルランドからポルトガルを経由して、ドイツに逃げ戻った。
 その後はベルリン大学で教鞭を取っていたが、再びアイルランドへ降下する機会が来る。鷲作戦のバックアップのためであった。彼は北アルスター経由で英国に入国し、ノーフォークのひなびた村で、ポーランド軍に偽装したドイツ軍降下部隊を待ち受けた。
 鷲作戦は成功寸前まで行きながら、あるドイツ軍将校の捨て身的な英雄行為によって失敗に終わるが、デヴリンと一人生き残ったドイツ軍将校、リッター・ノイマン特務曹長と共に脱出に成功。ドイツ軍の病院に収容されたが、ヒムラーによる粛清を恐れて早々と脱出。ポルトガルのリスボンに逃れていた。公式記録ではここから船でブラジルを経由してアメリカに向かい、戦後の一時期、中西部の州にある大学で教鞭を取っていたとある。

 しかしこの間には空白期があり、不明瞭な点も多い。リスボンではヴァルター・シェレンベルクSD少将と接触しているとの目撃情報もあるという。

 戦後のアメリカ滞在期には、大学の生徒としてハリー・クセインと出会っている。しかしこのクセインこそが英国とIRAの間に和平の機運が高まる度に水を差すような暗殺事件を起こすKGBの休眠工作員であり、そして前期IRA時代の親友であったショーン・ケリィの息子、ミハイル・ケリィであった。

 ともあれ、アメリカ滞在を経て、デヴリンは再びアルスターへ戻ってきた。失墜したIRAを再建させるためである。デヴリンの組織力もあって、密告や裏切り、恐喝が横行しモラルが低下していたIRAは甦り、再び英国との武力闘争を開始する。しかし、デヴリンが掲げる古風な戦略に反発する者も多く、そうした者たちは過激な爆弾闘争に傾倒していった。リーアム・オヘイガンを初めとする一派は現実路線として爆弾闘争を支持し、またエリンの息子たちのような過激派は一般市民を巻き込むことすら平然とし、再びIRAは闘争方法を巡って対立していった。

 デヴリンはその頃、マーティン・ブロスナンと出会い、彼を片腕としてアルスターで英国軍相手に立ち回った。途中でフランク・バリーと袂を別つこともあり、次第にIRAの爆弾闘争路線に幻滅。1975年に片腕だったブロスナンがフランス当局によって逮捕されると、これがきっかけになったのか、IRA活動からは一切身を引き、南アイルランド、ダブリンの郊外に隠居し、大学の助教授としての生活がはじまった。

 デヴリンが再びキナ臭い世界に入ったのは、1979年のフランク・バリーにまつわる事案であり、ファーガスン准将の策略によってSASの精鋭部隊によってダブリンから拉致され、ロンドンへ連行された。それはブロスナンにバリー暗殺を説得して欲しい、という依頼であった。

 その後もファーガスンとの腐れ縁は続いた。1982年のミハイル・ケリィの事案では、グループ・フォアとIRA暫定派との橋渡し役に尽力し、彼も一時的ではあるがグループ・フォアの正式なエージェントとして活動した。
 また、キルリアの自宅の隣に立つ教会の神父であり、アメリカ時代からの教え子でもあるハリー・クセインこそがKGBの休眠工作員、ミハイル・ケリィであった。デヴリンは彼を追撃し、ついにロンドンでローマ法王の面前まで追い詰めた。かつての弟子を追い詰めなければならなかった彼の心情は察してあまる程であった。

 1991年のディロンの事案では、ディロンのロンドンでの武器調達先を掴むためにかつての部下であるブロスナンに協力したが、既に年なのかエージェントとしては活動していない。その後、グループ・フォアに協力するディロンにも数々の助言を与えている。

 ●登場作品
 鷲は舞い降りた
 鷲は飛び立った
 テロリストに薔薇を
 黒の狙撃者
 嵐の眼
 悪魔と手を組め
 大統領の娘

■トニー・ヴィリアーズ

 SASの若き勇士。グループ・フォアに関わるのはフランク・バリーに関連する事案で、リーアム・デヴリンをアイルランド領土からロンドンへ連行する極秘作戦に動員された。1979年当時は大尉。その後1982年には少佐となった。ベトナム、アデン、アルスター、キプロス、フォークランド等、各地の紛争地帯で活躍した。まさにエイサ・モーガン大佐の後継者とも言うべき人物である。

 1982年のミハイル・ケリィの事案では、最初にクークリンの正体解明の足がかりとなる人物をイエメンで救出したことから始まる。また、ミハイル・ケリィ事件にはフォークランド紛争が勃発しており、ヴィリアーズはグループ・フォアの別作戦に参加している。この作戦はアルゼンチン情報部がKGBの協力を得て、フランス空軍が保有するエグゾセミサイルを奪取するというものであり、ヴィリアーズは見事これを阻止している。この時、敵国であるアルゼンチン空軍の英雄、ラウル・モンテラ大佐と共闘している。フランスでの作戦後、中佐に昇進した。

 しかし、一方で妻であるガブリエルとの関係はうまくいかず、1982年には離婚している。ガブリエルはファーガスン准将の依頼で、モンテラ大佐に接近して情報を聞き出そうとしたが、そのままモンテラと再婚した。

 1983年には、ミハイル・ケリィ事案後に異動したハリー・フォックス大尉の代わりにファーガスンの補佐官的な役割を果たしており、ショーン・イーガン大尉をサポートした。
 1983年のスミス事件以降、グループ・フォアの作戦には関わった記録は残っていないが、1991年の湾岸戦争時には大佐に昇進し、イラク本土への侵入作戦を指揮した。戦後はイエメンの自警団を指揮して国境制定が曖昧な南アラビア半島における治安維持活動に携わっている。ラシッド家事件時においてかつて敵同士でもあったショーン・ディロンに協力した。

 ●登場作品
 テロリストに薔薇を
 黒の狙撃者
 エグゾセを狙え
 地獄の季節
 復讐の血族
 報復の鉄路

■ガブリエル・ルグラン

 トニー・ヴィリアーズの元妻。彼女は西ベルリンでグループ・フォアの部員として書類の運搬などに携っていた。しかしヴィリアーズとはうまくいかずに離婚している。
 1982年のフォークランド紛争の事案では、ファーガスンの依頼によって敵国側のラウル・モンテラ大佐に接近し、情報を流したが、その後モンテラ大佐とは結婚している。その後の足取りは不明。

 ●登場作品
 エグゾセを狙え
 黒の狙撃者(名前のみの登場)
 報復の鉄路(名前のみの登場)

■アレクサンダー・マーティン

 ファーガスンの補佐官、ハリー・フォックス大尉の又従兄にあたるウェールズ人。グループ・フォアの正式な部員ではなかったが、郵便係として彼を使っていたことがあった。東ベルリンではトラブルにあったグループ・フォアの女性部員を間一髪のところで助けるなど、有用な人材であった。陸軍の近衛連隊に所属し、アルスターでの勤務三回。

 1982年のミハイル・ケリィの事案時には部員として活動しておらず、ジャージィ島に住み、金融関係の仕事についていたが、ソ連の有名なピアニスト、タニヤ・ヴォロニノヴァが英国に亡命する際、グループ・フォアのサポートをしている。この時、彼女を追ってきたKGB部員を見事叩きのめした。

 ●登場作品
 黒の狙撃者

■ショーン・イーガン

 SAS隊員でトニー・ヴィリアーズの部下。1983年のスミス事件時に麻薬組織に息子を殺され、復讐を誓う実業家、サラ・タルボットを手伝った。

 彼自身は北アイルランドのカトリック教徒出身のSAS隊員という経歴を持ち、それが原因で恋人がカトリック住民のリンチにあい、死に追い遣ってしまったという過去を持つ。

 この事件ではイーガンはシチリアへ単独でパラシュート降下している。シチリアへパラシュート降下したのは、1943年の連合軍のシチリア侵攻作戦の予備行動のために送り込まれたSOEのハリー・カーター大佐、1969年のシチリアの山賊、セラフィーノ・レンティーニ逮捕のためにシチリア・マフィアから送り込まれた傭兵のステイシー・ワイアット以来、三人目となる。

 この事件ではIRAが麻薬取引に関わり、その仲介者にイーガンの伯父、ジャック・シェリーが関わっていたことが発覚し、タルボット女史によってシェリーは射殺された。
 
 ●登場作品
 地獄の季節
 密約の地(名前のみの登場)

■ショーン・ディロン

 IRAの闘士にして国際的テロリスト。だが、かつては将来を嘱望された俳優の卵として、ロンドンの芸能学校で学んでいた。世が世であれば彼は俳優として大成していた可能性もあったのである。
 だがしかし、悲劇は故郷の北アイルランド帰国中に起こった。実父がパトロール中の英国陸軍兵士の誤射によってテロリストに間違われて射殺されたのである。英国軍の暴虐に憤ったディロンは英国へ復讐するべくIRAに加盟した。時にも1969年以降の暴動が激化しつつある頃で伝説の闘士、リーアム・デヴリンによって再建された新生IRAが、英国陸軍やアルスター警察、プロテスタント側武装組織との武力闘争を開始した頃であった。
 
 ディロンはその時にリーアム・デヴリンと彼の右腕として頭角を現しつつあったマーティン・ブロズナン、そしてフランク・バリーと出会った。ディロンはデヴリンから全てを学び、そしてIRA闘士としての頭角を現した。彼は俳優学校時代の経歴を活かし、変装を得意として何度も英国政府側を欺いては打撃を与えた。
 だが、英国政府に憤りを感じて怒り燃えるディロンにとって、デヴリンやブロズナンが掲げる英国陸軍やアルスター警察だけをターゲットとする古風なゲリラ戦法はまどろっこしく見えた。じきに無差別殺戮による爆弾闘争を掲げるIRA過激派の最右翼「エリンの息子たち」に加盟し、フランク・バリーの信奉者となったことからデヴリンとブロズナンと激しく対立、果てには殺し合いをするにまで至った。
 この過程でディロンはスクール・バスを爆破してしまい、無辜の子供たちを多数殺害してしまう。同様にスクール・バスを爆破したというマーティン・ファロンという伝説的なIRA闘士は、結局はIRA主流派から粛清される羽目になったがディロンはバリーの庇護下にあったことから粛清は逃れている。しかしこの暴挙はデヴリンやブロズナンの怒りを買い、殺し合いを激化させた。これが二人の間に深い溝を残したという。
 
 だが、サイモン・ヴォーン少佐の活躍によってエリンの息子たちが壊滅し、バリーも逮捕されるとディロンはIRAを離脱した。エリンの息子たちはその後もリーダーを変えて存続したが、バリーのいない組織に魅力を感じなかった。以降、ディロンは国際的テロリストとして世界各国でテロや暗殺を起こした。また、逮捕後に脱獄して同様に国際テロリストとなったバリーとも何度も仕事をしたようだ。

 1991年、湾岸戦争の最中、サダム・フセインの部下とKGB守旧派の依頼を受けてディロンはジョン・メージャー首相以下、英国政府閣僚全員の暗殺を企むが、かつてのIRA時代のライバルであったブロズナンの妨害にあい失敗。かつてのフランク・バリーと同じ轍を踏むと思われたディロンだったが彼は生き延び、1992年にユーゴ内戦で苦しむ子供たちに医療物資を運ぶべく、単身で飛行機を操縦したもののユーゴ空軍機の妨害にあって墜落。ついにディロンが囚われの身となった。

 その後、ユーゴ領内の古城に囚われて処刑される日を待っていた彼だったが、そこに現れたのはかつての仇敵、英国情報組織「グループ・フォア」のチーフ、チャールズ・ファーガスン准将だった。彼は全ての罪状を不問する代わりにグループ・フォアの工作員として働くことをディロンに提案。この時、第二次大戦中、ナチスと元英国国王、ウィンザー公との間に結ばれた密約文章を巡る事件が起きたため、急遽、ディロンの採用となった。

 このウィンザー密約書事件をきっかけに、ディロンはグループ・フォアのメイン工作員として数々の事件解決に関わることになる。また、グループ・フォアに恭順した後、かつてのIRA時代の上司であったリーアム・デヴリンとも和解し、共闘している。

 ●登場作品
 嵐の眼
 サンダー・ポイントの雷鳴
 密約の地
 闇の天使
 悪魔と手を組め
 大統領の娘
 ホワイトハウス・コネクション
 審判の日
 復讐の血族
 報復の鉄路

■ハリー・ベイカー

 ロンドン警視庁刑事。クレタン・ラヴァー事件時にグループ・フォアに出向して、一時的にエージェントとして活動。エイサ・モーガン大佐とは戦友であった。事件後は刑事として復帰したのか、グループ・フォアが関わった事件には登場していない。

 ●登場作品
 暗殺のソロ

■ハリー・フォックス

 英国陸軍近衛連隊の若き大尉。ファーガスン准将の補佐官を務めた。アルスター勤務時代にIRAが仕掛けた爆弾によって左腕を失っており、それ以降、グループ・フォアで准将の右腕として活躍していた。又従兄弟にやはりグループ・フォアを手伝っていたアレクサンダー・マーティンがいる。人当たりのいい人物で、敵であるリーアム・デヴリンやマーティン・ブロズナンに友誼を抱き、バリィ事件時に知り合ったヴィリアーズの宥め役でもあった。
 ファーガスンの補佐官として、オフィス勤務が主だが場合によっては任務につくこともある。ケリィ事件時にはデヴリンとの接触と、彼の補佐を務め上げた。

 フランク・バリー事件をはじめとしてケリィ事件、エグゾセ事件に関わった。ケリィ事件時、デヴリンの補佐をしてKGBの休眠工作員、ミハイル・ケリィを追跡していた時、ケリィから銃弾を受けて負傷。彼のその後については不明だがグループ・フォアからは引退したものと思われる。

 ●登場作品
 テロリストに薔薇を
 エグゾセを狙え
 黒の狙撃者

■スーザン・コルダー

 ハリー・フォックス大尉負傷後、一時的にロンドン警視庁から派遣された補佐官。デヴリンを補佐したが、その後については不明。ロンドンを訪れていたヨハネ・パウロIII世を暗殺しようとしたミハイル・ケリィを射殺した。その後については不明。ロンドン警視庁に復帰したものと思われる。

 ●登場作品
 黒の狙撃者

■メアリー・ターナー

 1991年時のファーガスン准将の補佐官で英国陸軍大尉。英国首相公邸砲撃事件時に活躍し、事件の首謀者、ディロンを追うマーティン・ブロズナンを補佐した。その後については不明。

 ●登場作品
 嵐の眼

■ジャック・レイン

 湾岸戦争時、1991年2月な発生した英国首相公邸砲撃事件時にロンドン警視庁特別保安部から派遣された刑事。その後、メアリー・ターナー大尉に代わるファーガスン准将の補佐官としてグループ・フォアへ出向。ウィンザー公の密約書を巡るネオ・ナチの陰謀を調査していたが、ネオ・ナチのマックス・サンチャゴの手にかかって殺される。

 ●登場作品
 嵐の眼
 サンダー・ポイントの雷鳴

■ハンナ・バーンシュタイン

 殺されたジャック・レイン刑事に代わる、グループ・フォアの新しい補佐官。レイン刑事同様、ロンドン警視庁特別保安部から出向した刑事。現在確認できる限りではグループ・フォアの補佐官では最長の在任期間を誇る。

 ●登場作品
 密約の地
 闇の天使
 悪魔と手を組め
 大統領の娘
 ホワイトハウス・コネクション
 審判の日
 復讐の血族
 報復の鉄路

■キム

 ファーガスン准将の従卒。元グルカ兵で、老練な戦士でもある。主に准将の身の回りの世話をしており、前線に立つことはない。

 ●登場作品
 暗殺のソロ
 テロリストに薔薇を
 エグゾセを狙え
 黒の狙撃者
 地獄の季節
 嵐の眼
 サンダー・ポイントの雷鳴
 密約の地

 以下準備中

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