LAゴルフ合宿
寄稿者:ミスターX
1998年 12月末
ゴルフ好きの宇佐美と橋本からRYOに、年末の休暇に ロスアンゼルス(以下LA)でのゴルフ合宿に参加しないかと誘いがあった。 過去、RYOは海外ゴルフ合宿を企画したことがあったが、 都合がつかず実現できずにいた苦い経験があった。 「ええね。」RYOはいつもの独特のフレーズで応えた。 その内容は、日の出から日の入りまで、3日連続ゴルフをやるという企画で その日スコアの良かった人がご褒美として一人部屋をあてがわれ、 負けた2人でツインルームというルールとした。
宇佐美と橋本は過去にパースとゴールドコーストで ゴルフ合宿を実行しており3回目の企画だ。 パースではカンガルーが後ろで見ているのを意識してショットしたと言う。 LAのゴルフ場は3つとも違うゴルフ場でしかもすべて有名なところだそうだ。 初 日:Sandpiper Golf Course 二日目:Pelican Hill Golf Club 最終日:Industry Hills Sheraton Resort & Conference Center 予約は宇佐美が日本から手紙で済ませた。 (当時、Eメールは今ほど普及していませんでした)
【 初日 】 Sandpiperというところだが、ホテルから非常に遠いところにあることが LAに着いてからわかった。 聞いてみると車でサンフランシスコ方向に 1時間半もかかるという。 しかも日の出までにゴルフ場に行かなければならない。 そんな時間にバスや電車があるとは思えない。 となるとレンタカーかタクシーとなるが誰も免許を持ってないので タクシーしか選択肢はない。 いくらか忘れたが、一日貸切という条件ながら かなり高い値段(たしか500ドルだった)で交渉成立し、 バン型のタクシーで行くこととなった。
翌朝、朝靄の中、タクシーはホテル前を出発。 橋本は美味そうにタバコを吹かしている。 横では嫌煙家のRYOが苦虫を噛み潰した様な表情で橋本を睨みつけていた。 RYOと橋本はこの旅が初対面で、お互いどんな人物か分からず、 いつもはストレートなRYOも様子を見ているようだ。 RYOはこの時、誓った。 「この勝負、絶対勝つ!一人部屋をゲットしてやる!!」 宇佐美は、RYOと橋本の微妙な緊張関係を楽しんでいるようだった。
左手に朝日が照りつける太平洋を見ながら、 国道101号線を約95マイル北上してようやくお目当てのコースに着いた。 このコース、PGAの開催コースでもあり、全米の人気投票でも常に上位に ランクインするほどの名門コースだが、その門構えはいたってシンプル。 日本のど派手でバブリーなそれとは明らかに対照的だ。 フロントに行って、出続きを済ますと 「一番スタートです。Have a nice day !」とコースに送りだされた。 準備運動もそこそこにはやる気持ちが抑えられず、 宇佐美はスタートの順番を決めるジャンケンを2人に促した。 「じゃんけん、ぽん!」と右手を力強く突き出した時、背後から 「Good Morning , Sir . My name is JIM .」 と低音の声が聞こえた。そのジムという人物、近所に住んでおり、 今日は一緒にラウンドするのでよろしくと言ってきた。 学者風で歳は40歳位だろう。 「ちゃんと手続きしたのかよ??」と思いつつ、 順番にティ―・ショットを放ち、3人の合宿はスタートしたのだった。
英語ではゴルフをすることを play golf というが、 まさに「ゴルフで遊ぶ」といった感じで各ホールが過ぎていった。 アメリカのコースでは、キャディはつかない。 だから、クラブ選択もロストボールも全て自己責任だ。 だから、日本のコンペでよく聞く「あのキャディ、距離全然違うよ、マッタク!」 といった責任逃れのコメントも今回に限っては無縁なのだ。 また、昼食時間は基本的にはなく、 コースをバギーで巡回している売り娘さんから サンドイッチやドリンクを買うシステムになっている。 せっかちなRYOはこのシステムが大のお気に入りで 「ええね!ええね!!」を連呼していた。 ここで同じ組でプレーしているJIMは感情の起伏が少ない物静かな男だったが、 そのゴルフスイングは非常に個性的で、 野球でいうなればメジャーリーグの打者のそれに似ている。 (でも、決して上手くはなかったようです) このコースでは、結局32ホール終了時点で日没サスペンディッドに なってしまったが、その時、ジムは既にいなくなっていた。 ジムはどのホールで、どうして、姿を消したかは3人とも分からなかった。 去り際まで、物静かな男だった。 日本から来て観光もせずに早朝から日没までゴルフに明け暮れている3人には ついていけないと思ったのかもしれない。
夕日を背にして、質素だがとても味のあるクラブハウスへ歩いて戻るころには RYOと橋本はお互いにキャラクターを分かり合えたようだった。 RYOが橋本にツッコミを入れている。橋本は微笑んでいる。 ゴルフの発祥の地、スコットランドには数多くの諺が残されているが、 その一つを紹介しよう。 「18年間、同じ職場にいるよりも、18ホールですべてがわかる。」 思わず合点するほど説得力がある。 行きのタクシーのドライバーが正門のところで、待って居てくれた。 もと来た道を逆送したが、やはりロスまでは遠い。 アメリカのスケールの大きさをこんなところでも感じてしまう。 ロスに戻ったら、いいステーキ屋を紹介してあげるとドライバーがいうので その店に行ってみることにした。 人気店らしくほぼ満員だった。ステーキを中心に注文し、ワインも2本くらい空けた。 宇佐美と橋本はあのホールから見えた景色がよかったとか、 何ホール目のグリーンがどうだったとかゴルフ談義に花を咲かせていたが RYOはあまり覚えていないらしく生ビールを乾いた喉に流し込んでいた。 (つづく) |