屋久島・縄文杉への道

 

世界遺産 屋久島について

屋久島は島の75%が山岳地帯

九州最高峰の宮之浦岳1,935mのほか1,000m以上の山が10ある。

原生林は「もののけ姫」のモデルとなった。

日本の滝100選に選ばれた「大川の滝」がある。

樹齢7,200年の縄文杉を見るためには、往復8時間歩く。

ヤクシマザル、ヤクシカなど特有の動物がいる。

ウミガメの産卵は5月下旬〜7月下旬にみられる。

「るるぶ屋久島・種子島・奄美」より

 

屋久島 苦行の予感

屋久島への片道切符を申し込んだあと

縄文杉への道のりについて、調べてみた。

縄文杉まで登山口から歩いて往復8時間。(休憩時間は別)

登山口までホテルエリアから車で約1時間。

縄文杉の標高は1,300mで麓より約10℃低い。(防寒具が必要)

5月は最も降水量が多い。(防水対策が必要)

ゴールデンウィークは1年で最も混む時期(ホテル代が高そう)

これはツラそうだ。

 

屋久島の宿がとれた

ある民宿に電話したら、2人部屋が空いていた。

ただし、1人の客が来たら相部屋でお願いします、と言う。

ゴールデンウィークだから仕方ないね。

電話の感じも良いし、最近できた新しい民宿だという。

気に入ったら延泊するつもりだ。

それでOK、と返事して電話を切る。

 

しかし、知らない人と相部屋なんて恐ろしいね。

女の子ならいいけど、変なオッサンだったら嫌だな。

いや、きっと変なオッサンだろう。

どうしよっかなー ・・・

 

「中高年登山トラブル防止小辞典」(堀川虎男著)より

●雨具選びは生命にかかわる。レインコートやビニール合羽では心もとない。

 脱着しやすく、むれない、セパレートタイプを選ぶ。

 素材はゴアテックスが良い。防寒着としても役立つ。

●ヒル対策

 ヒルは無理にひっぱっても取れない。ライターであぶると取れる。

 ヒルに血を吸われると、ヒルの唾液成分によって血が止まりにくい。

 足元からの侵入を防ぐために、ズボンを靴の中にいれておく。

 靴や靴下に虫除けを塗っておくと良いと言われている。

 つばの広い帽子をかぶる。首筋にタオルを巻く。

●100m登ると0.6℃気温が下がる。

 秒速1mの風で体感温度は1℃下がる。

 

美女からの申し込み

(2002.4)

突然、美女2人から、ツアー参加の申し込みがあった。

(今からでは飛行機の切符が取れないんじゃないかな・・)と僕は思う。

だが、すぐに「取れた」との返事がきた。

「でも、宿は取れないんじゃないかな」と僕。

ならば、僕が予約した民宿の2人部屋に3人で泊まりましょう、と言う。

「じゃあ、宿に電話してみる」と僕は返事をして

(それはチョッとツラそうだね・・)と思いながら、宿に電話すると

なんと4人部屋が空いていたよ。

 

「山のトラブル体験マニュアル」(中井正則=著)より

●ズボンは丈夫で乾きやすいジャージで良い。(春〜秋)

 上着も乾きやすいものを。防寒着はフリースが良い。

●靴擦れ対策:歩き出して30分後、休憩をかねて、

 足に痛い部分があればテーピングする。布製のガムテープでも良い。

 (皮がむけていればガーゼを当ててから)

●野生のサルとは目を合わせてはならない。

 サルが攻撃するときは体に飛びつき、鋭い犬歯で首の頚動脈を狙ってくるという。

●水辺には寄生虫がいるので、水を汲むときは注意。

●ヒル対策:動物が近づくと鋭敏なセンサーで獲物の体温を感知して這い出してくる。

 一匹でも発見したら、直ちに現場を離れよ。四方八方から押し寄せてくる。

 先頭を歩く者は被害が少なく、2番目以降が被害に遭う。

 皆で首にヒルがついてないかを確認し合う。 (蛇は先頭の者が被害に遭う)

 

屋久島に上陸

2002年4月28日

美女2人とともに、YS−11で屋久島空港に到着。

安房(あんぼう)エリアのバス停「盛久神社」で

バスを降りて、予約した民宿を見つける。

 

彼女たちは5月1日に帰る飛行機の切符を持っているが

僕は帰りの切符を持っていない。

鹿児島までのフェリー(約4時間)なら

当日でも楽に切符が取れると聞いている。

普通の旅行者は、高速船「トッピー」に乗るのだ。

 

彼女たちは3泊4日で

宮之浦岳登頂、縄文杉、白谷雲水峡と

欲張りなスケジュールを考えている。

僕はいまのところ、縄文杉しか考えていない。

 

民宿の奥さんの薦めで

1〜2時間に1本しかないバスに乗って

尾之間(おのあいだ)温泉に行ってみる。

温泉は200円(住民は無料)

温泉のお湯は熱く、ヌルヌルしている。

 

温泉には山男が集まってきている。

下界は良い天気だったが、山では雨だったそうだ。

3日連続で山の天気は悪かったらしい。

 

《 屋久島情報 》

タクシーは予約制。(台数が少ない)

バスは本数が少なく、運賃は高い。

観光客はレンタカーを借りるのが一般的。

タクシーで縄文杉に行くなら安房の宿を選ぶのが経済的だが

レンタカーを借りるなら、どこを拠点にしても良いでしょう。

 

縄文杉へ向かう

4月29日

荒川登山口までのタクシー料金は4,600円。

帰りは、縄文杉に着いた時に携帯電話で連絡すれば

降りてくる時間を推測して迎えに来るとのこと。

 

早朝5:40に荒川登山口(標高600m)をスタート。

歩きにくいトロッコ道を2時間歩く。

 

鹿が現れた。お尻が白い。

 

山道に入って1時間半。

AM 9時すぎ、木の階段を登ると縄文杉があった。

片道11kmの登りは5時間かかると聞いていたが

僕たちは3時間半で着いたのだ。

最初、それが縄文杉とは気づかなかった。

縄文杉は噂よりも小さく見えた。

柵があるために近づけない。

 

縄文杉で猿岩石に似た若者二人組(以下、猿岩石)と知り合う。

猿岩石も3時間半で縄文杉に着いたそうだ。

彼らは一泊2500円のユースホステルの6人部屋で

知らない男たちと雑魚寝してるのだという。

 

帰りは猿岩石がレンタカーで民宿まで送ってくれた。

民宿のオヤジに3時間半で縄文杉に着いたぜ、と報告すると

「ならば、明日は宮之浦岳に登ってみろ」と薦められた。

その場にいた猿岩石も同意して

翌日は5人で九州最高峰・宮之浦岳(1,935m)に登ることになった。

 

ガイドブックによると、宮之浦岳コースは8時間、16kmとある。

もちろん、今日のトロッコ道のような甘い道程ではない。

しかも、明日の天気予報は雨だ。

そして、標高が高い。寒いだろう。

2,000m近くになると高山病を起こさないだろうか?

 

今日は22kmも歩いて、中休み無しで、明日は16km

そんなハードスケジュールをこなすことができるのかしら?

僕は山登りの素人で、しかも

他の4人のような若者ではなく、いい年のおじさんなのだよ。

 

九州最高峰・宮之浦岳(1,935m)に挑む

4月30日

早朝、猿岩石に迎えに来てもらって

レンタカーで淀川登山口(1,370m)に向かう。

下界は曇りだったが、登山口では雨が降っていた。

新品のレインスーツを試すことになる。

 

昨日は僕の先導が速すぎたと不評だったため

今日は、5人の最後尾を僕が歩くことになった。

片道8kmのコースを女子のペースに合わせて

ゆっくり歩いて、たっぷり休憩を取って行くと

宮之浦岳の頂上まで5時間もかかった。

 

遅い人の後ろを歩くというのは疲れるものだね。

せっかちな僕にはストレスだ。

休暇を楽しむはずなのに、ストレスがかかるのはおかしな話だ。

 

山頂からの景色は絶景だと聞いていたが

霧がかかっていて何も見えない。

鹿や猿にも会えない。

雨の日に宮之浦岳に登っても、何もご褒美は無い。

証拠写真です

 

山頂で一休みした後

帰りは、ストレスがかからぬように

マイペースで、先に山を下りる。

 

美しい森の中で、僕は

Load of the Rings のフロドの気分になる。

あの映画の舞台のようなところで

2日間で40km近く歩いているのだ。

 

キャラバンのトレッキングシューズ(17,000円)は優秀で

靴の中に水は入ってこなかった。

 

ミズノのレインスーツ(10,000円)は少し暑かったけど

べたつかず、なかなか良いものであることが確認できた。

 

軍手(イボつき)は手の保護のために役に立ったが

1個では足りなかった。雨を含んで気持ち悪くなるのだ。

 

宮之浦岳登頂(1,935m)は、かなり疲れた。

これまでに僕が登った最高峰は六甲山(931m)なのだ。

 

美女がキレる

その夜、民宿のロビーで

僕が気持ち良くビールを飲みながら

「明日、縄文杉に行くんですぅー」という

新入りのピチピチギャル2人と楽しくおしゃべりしていると

突然、美女たちから責めたてられた。

 

「あなたは私たちのことを無視して一人で先に山を下りた。

写真も一人で写っているし、私たちのことが嫌いなんでしょ。

それなら、その小娘たちと一緒に旅すればいいわ!」

美女は部屋に戻ってピシャリとドアを閉めた。

 

・・・・・何か勘違いをしているんじゃないか?

 

もともとの経緯を振り返ってみよう。

僕が美女に「いっしょに行こうよ!」と誘って

山登りを強要したのなら、美女の言い分は正当だ。

 

しかし、僕から美女を誘ったわけではない。

美女の方から、強引に「一緒に行くわよ!」と

押しかけ女房的に申し込んできたのだ。

これはコバンザメ式旅行法(※)をしてやられた。

※コバンザメ式旅行法

他の人が考えて作ったプランに便乗して

何も考えず、楽に旅をする、という高度な旅行法。

(「これが正しい海外旅行」西本健一郎著より引用)

美女たちの第一目的は宮之浦岳で、縄文杉はおまけだった。

しかもコッフェルとバーナーを用意する程の経験者なのだ。

(空港でガスボンベは危険物として取り上げられたが・・)

僕は宮之浦岳に登るつもりは、まったくなかったのだが

彼女たちが行こうよ、としきりに誘うので

老体に鞭打って、お付き合いしたのだ。

 

美女たちの苦情からわかることは、

 

「『コバンザメ』のような私たちを連れて来てくれてありがとう!

その上、宮之浦岳にまで付き合ってくれて

RYOさんって、なんていい人なの!(ウルウル)」

という謙虚な気持ちではなく

 

「アンタは私たちのシェルパなのよ!なのに

私たちより先に山を下りるなんて、いったい何考えてるのよ!

バカじゃないの!このオッサン!(プンプン!)」

と、こう考えていたわけだ。

 

その上、僕がひとり、心静かに

旅の時間を過ごすための部屋も占領されている。

 

さらに、民宿で出会った、千葉から来たと言う

ピチピチギャルとの楽しいおしゃべりまでも妨害してきた。

 

美女たちはコバンザメどころか

宿主を食い殺す、恐ろしいパラサイトだったのだ!

 

民宿のロビーでビールを飲みながら

僕は怖くなって、ブルブル震えてきた。

一刻も早く、逃げなければ・・

 

失敗の原因を究明する

5月1日(水)

朝早く目が覚めたので、一人で散歩に出る。

 

この島には不釣合いな

DOCOMOの高い鉄塔を発見する。

 

今回の失敗の原因は何だったのか、を考えてみる。

 

僕が美女からの申し込みをアクセプトしたのは

縄文杉へ一人で行くのが怖かったからだ。

別に美女でなくても、男でも良かった。

自分の安全のために、同行者が欲しかっただけなのだ。

(首に付くというヒルも注意してくれる人が欲しかった)

 

美女たちには、最初にこう宣言すべきだった。

「僕は『水戸黄門』で、君たちは、『助さん』『格さん』だと思ってくれたまえ。

僕は自分の安全のために、君たちを連れてきてるんだよ!」

 

ガイドブックには遭難することがあるので入山届が必要

などと大げさなことが書いてあるが

実際には、縄文杉も宮之浦岳も整備された安全な登山道だった。

道に迷うことも無く、ガイドも入山届も必要無い。

(木の根を守るために、階段が作られ、年々、

道が整備されて歩きやすくなっているようだ。)

ヒルの被害にも遭わなかった。

 

それでも心配ならば、民宿で仲間を募ることもできる。

そのために僕は今回、民宿を選んだのだった。

 

厳しい登山の後、疲れた美女の機嫌が悪くなって

ヒステリーを起こすことは、予想していなかった。

 

部屋を同室にしてしまったのにも問題がある。

ずっといっしょにいると、お互いにアラが見えるものだ。

 

民宿にトイレが一個しかないのもいけない。

少なくとも男女別になっている宿を選ぶべきで

女性には苦痛だったかもしれない。

 

美女たちを別の宿にして

それを理由にレンタカーを借りさせておけば

僕の行動範囲が広がって、良かったのにねっ!

 

そして、僕が「猫ちゃん」であることを言っておかねばならなかった。

僕は団体行動が大嫌い、ということだ。

これは、団体行動が大好きな日本人の感覚からは、大きくかけ離れている。

すなわち、「猫ちゃん」であることは

日本の社会に背を向けている、とも言える。

 

この島で暮らすのも悪くはない

海が見えてきた。

この島の海にはタイドプール(※)があって

貝や海老が簡単に捕まえられると、民宿のオヤジが言っていた。

オヤジが採ってきたという、トコブシのような貝が毎晩、食卓に供された。

魚もうまかったな。

※タイドプール

岩場の海岸では潮の引いた後、岩のくぼみに海水が取り残されて

大小さまざまな海水の“池”ができる。

このような“池”は「タイドプール」あるいは「潮溜まり」と呼ばれる。

 

早期リタイアした後、この島で暮らすのも悪くはない。

僕の好きな海も山も身近にあって、温泉もある。

コンビニは少ないが、Aコープに行けば何でも手に入る。

標高が高いので地球温暖化で沈む心配も無い。

 

すれ違う子供が「おはようございます」と挨拶してくれる。

すれてない。

気持ちいいね。

 

新たなる旅立ち

彼女たちが寝ている間に清算を済ませた。

8時からの朝食をキャンセルして

AM7:45発の「宮之浦港」行きのバスに、一人で乗り込む。

 

バスは学生で超満員だ。

屋久島高校のバス停に着くと、高校生が運転手に

「ありがとうございました」と声をかけながら降りていった。

バスはがらがらになった。

 

850円という高いバス代を払って、終点「宮之浦港」で降りる。

港の近くに屋久島シーサイドホテルがある。

ここは白谷雲水峡への拠点となる。

白谷雲水峡は「もののけ姫」のモデルとなった原生林だ。

(つづく)