なんちゃって標準電波リピーター

 事の始まりは以前、職場の人がマンションで電波式掛け時計が使えないとぼやいていた事でした。その時はぼんやり聞き流していたのですが、2014年のJARL兵庫県支部のテクニカル講座のネタを考えるときに、そのことを思い出したのです。
インターネットで調べてみると、簡単で効果的な対策としては電波時計に入っているバーアンテナを屋外に出して時計本体と配線接続して好結果を得たというものがありました。しかし、掛け時計から配線が出ることで、いくら配線を目立たないように細いポリウレタン線等にしても美観上問題とされることがありそうです。また、商品としてはリピーターを実現しているもの、インターネット接続してNTPの情報を得て電波時計に微弱電波を飛ばしているものがあるようでした。ただ、リピーター商品はかなり高額ですが使えなかったという感想もチラホラあったりして、あまり売れていないのではないかと推量します。インターネットの常時接続は現在の解決法として有効だと思いますが、インターネットを必要とする点が何となく癪です。
他にはNTPではなくGPS信号を受信して、微弱電波で飛ばす方法も考えられますが、今回はリピーターをしかも無線式としては最も安価に仕上げました。

[機能・特徴等]

[構成]
構成は下図のようになっています。

構成図

○リピーター機能実現部

標準電波受信用電波時計

リピーター基板
ACアダプター


リピータ出力アンテナ

○モニター機能実現部

リピータ出力モニター用電波時計


モニター基板


製作
製作の順序としては、モニター用電波時計改造、モニター基板製作、標準電波受信用電波時計、リピーター基板、リピータ出力アンテナの順が良いと思います。

リピータ出力モニター用電波時計改造
これは市販品を改造するのが手軽で安価なので、そうしました。ここではMarumanのMRA390WH(白)を使用しました。(MRA390PK(桃)でも同等です。)分解した写真等を示して改造について説明します。
ですがまず、改造前に電波時計の付属説明書を読み、電池を挿入するなどして正常動作を確認しましょう。電波状態によっては動作開始後5分程度以内に時刻が合わず、時々強制受信させても標準電波による時刻合わせに半日以上かかることがあるかもしれません。
正常動作を確認したら、電池を抜いておきます。

電波時計開封写真

この時計の回路は緑色の親基板と青い子基板からなっています。親基板にはボタンスイッチやLCDパネルが接続されています。電波を受信する回路は青い子基板に形成されています。改造は主として青い子基板とその接続部分になります。子基板のネジ留めを外し、子基板の部品面が見えるようにしたのが次の写真です。

子基板部品面が見えるようにした写真

円柱形の水晶フィルタが2つ見えます。一方が40kHz、他方が60kHzの水晶で、パーツ表面に周波数の記載があります。関西地方では一般的に40kHzより60kHzの標準電波の方が強いので、標準電波受信用電波時計では60kHzのみを受信するようにします。逆にリピータの出力は40kHzとすることで受信と送信の干渉を大幅に緩和することができます。このような理由でリピータ出力は40kHzしましたので、リピータ出力モニター用電波時計は当然ながら40kHz専用の受信機にします。
下に改造後の写真を示します。

リピータ出力モニター用電波時計改造後

子基板の端子は右端から順に、電源(V)、グランド(G)、受信イネーブル制御信号(P)、受信復調出力信号(TN)、周波数選択制御信号(F)の5本が並んでいます。子基板上の印刷は場所の都合でGとPの位置がかなりずれています。また子基板のTN端子の配線は親基板のT端子に接続されています。
受信イネーブル制御信号とは、普通の電波時計は低消費電力化のため間欠的に受信し、ほとんどの時間は水晶時計として動作させているので、受信する時にのみ受信回路に電源電流を流すようにする制御信号です。
周波数選択制御信号は、40kHz受信か60kHz受信かを選択するための制御信号です。40kHzと60kHzの水晶フィルタは並列接続となっていて、40kHz付近と60kHz付近の信号のみ通過させ、他の周波数はほとんど通過できません。制御信号は受信回路トップのバーアンテナのコイルと同調用コンデンサからなる同調回路に作用します。同調用コンデンサは2つあって1つは常にコイルと接続されていますが、もう1つはトランジスタスイッチを介してコイルに接続されています。トランジスタスイッチがOFF時は同調回路は60kHzに同調しており、トランジスタスイッチがON時は40kHzに同調します。トランジスタスイッチの駆動入力が周波数選択制御信号になります。

改造点
モニター基板製作
少し反省すると、発振回路のゲート数を減らしてその分をLEDとブザーの入力に回せば良かったとか、トランジスタ2SC1815が全く無駄だとか、改善の余地はあるのですが、取りあえず動くので本体の動作確認用の一時的なツールとしては許容範囲かと思います。
回路図を示します。

モニター基板回路

回路図で"40kHz受信電波時計より"となっているのは"リピータ出力モニター用電波時計より"に読み替えてください。
2SC1815とそのベースに接続されたR472は役立たずなので削除しても何の問題もありません。(当初の設計ではブザー(BUZZER)と直列にコンデンサを入れるつもりでしたが、省略した際に残ってしまった設計上の残骸です。)
ブザーは先に述べたようにリピータ出力モニター用電波時計から外したものを用います。

次は本基板の動作説明です。

モニター基板(表)レイアウト図


モニター基板(裏)レイアウト図

基板裏面のレイアウトは元のパターン通りで、何の変哲もありません。
次に製作完了した基板の写真を示します。

モニター基板(表)写真

ブザー音の発振周波数がブザーの共鳴周波数と少しずれていたので、ブザーの穴をビニールテープで少し狭めることで共鳴周波数を調整した結果、十分な音量を得ることができるようになりました。

リピータ出力モニター用電波時計とモニター基板の動作確認

標準電波受信用電波時計改造
正常動作を確認したら、電池を抜いておきます。

ネジを外して時計の中を見ると、この時計の回路は緑色の親基板と青い子基板からなっています。親基板にはボタンスイッチやLCDパネルが接続されています。電波を受信する回路は青い子基板に形成されています。改造は主として青い子基板とその接続部分になります。子基板のネジ留めを外し、子基板の部品面には円柱形の水晶フィルタが2つ見えます。一方が40kHz、他方が60kHzの水晶で、パーツ表面に周波数の記載があります。関西地方では一般的に40kHzより60kHzの標準電波の方が強いので、60kHzのみを受信するようにします。また常に受信し続けるようにし、受信出力を時計外に出すようにします。
下に改造後の写真を示します。


標準電波受信用電波時計改造後

子基板の端子は端から順に、電源(V)、グランド(G)、受信イネーブル制御信号(P)、受信復調出力信号(TN)、周波数選択制御信号(F)の5本が並んでいます。子基板上の印刷は場所の都合でGとPの位置がかなりずれています。また子基板のTN端子の配線は親基板のT端子に接続されています。
先の標準電波受信用電波時計改造後写真では、青字で"T"と記しました。
写真左端にある配線追加と記した線は、ユニバーサル基板を切った小さい基板に半田付けしています。この小さい基板からリピーター基板まで細いポリウレタン電線で接続するようにしています。
現在(2014〜2015年)の日本の液晶表示式目覚まし型電波時計の大多数は似たような構成になっていると思います。ですから、本機種以外でも応用可能でしょう。ただし、中には親基板と受信回路用子基板に分かれていないものもあるようで、その場合は信号線の特定が困難でしょう。また、電池2本(3V)でなく1本のものもありますが、その場合はリピーター基板とのI/Fに信号レベルの気づかいが必要になるでしょう。
本機の改造点について説明します。
なお、写真の右側に配線追加不要と記した赤い配線がありますが、電池の正極からの配線と内部回路間にあるダイオードをショートするために追加した配線です。このショートするための追加配線は特に必要ありません。
ACアダプターについて
リピーター基板製作
回路図を示します。


リピーター基板回路

回路図で"60kHz受信電波時計より"となっているのは"標準電波受信用電波時計より"に読み替えてください。
また、PUSH SWにはタクトスイッチを使用しました。
40kHz Xtalは標準電波受信用電波時計から外した40kHz水晶を用います。

次は本基板の動作説明です。
発振周波数精度について
発振回路の周波数はCXとCYの調整により常温で40.000kHz±1Hz程度以内に合わせたつもりです。10Hzもずれると電波時計はフィルタのために受信しなくなります。電波時計のフィルタ自体誤差があると考えられますが、どの程度ずれた周波数まで受信可能かは保証されないので、リピーターとしてはなるべく正確に40kHzに合わせておくべきでしょう。目安としてはリピータ出力モニタ用電波時計とモニタ基板のLEDで見当をつけることができますが、実際に使用したい時計と、リピータ出力モニタ用電波時計の受信範囲がずれており、リピータ出力モニタ用電波時計の受信範囲であっても実際に使用したい時計では受信できない周波数となっている可能性も否定できません。周波数カウンタがない場合は、受信可能となるコンデンサの上限、下限値を調べて中間の値にするなどの工夫にも意味があるかもしれません。
表 リピーター発振周波数
識別子
調整前周波数(CX=CY=0)[kHz]
CX[pF]
CY[pF]
調整後周波数[kHz]
A
40.0018
8
10
40.0000
B
40.0003
0
1
40.0001
C
40.0013
0
8
40.0001
D
40.0010
0
8
39.9999
E
40.0003
0
1
40.0001

上表の周波数は校正期限切れ測定器の表示値ですが、気休めを言えば他の校正期限切れ測定器の表示値との差異が0.3Hz以内でした。


リピーター基板(表)レイアウト図


リピーター基板(裏)レイアウト図

基板裏面のレイアウトは元のパターンをカットした部分が1ヶ所あります。また、Cx、Cyは周波数の微調整でカットアンドトライで決めた値のセラミックコンデンサで、1台ごとに値は異なっています。また、CxとCyの容量値も異なります。
次に製作完了した基板の写真を示します。

リピーター基板(表)写真

C104のセラミックコンデンサは手持ち部品の関係で抵抗のような外形をしています。
また、DCジャックは共立電子の2.1φDCジャック基板型[R指]18742 _ 商品コードC4S131を用いました。2.54mmピッチのユニバーサル基板に何とか差し込めるので、楽ができます。

リピーター基板の動作確認

標準電波受信用電波時計なしでもリピーター基板の3ピンピンヘッダのショートピンを右側に挿すことで、リピーター基板の動作確認ができます。
標準電波受信用電波時計とリピーター基板の組み合わせ動作確認
リピータ出力アンテナ製作
空芯コイル状のものを製作しました。ソレノイド長という意味では、この長さは径と比較して非常に短いものです。径は大きいほど到達距離が延びます。


リピータ出力アンテナ

写真のものは台の部分が15cm×25cm程度だったのではないかと思います。このサイズですと、小型のステレオセットのスピーカボックスの見えない部分に貼りつけることができるのではないでしょうか。100円ショップで購入した発泡樹脂の板で、巻き線を引っ掛けるために小さな四角形の板を8枚つくり、両面テープで貼り合わせ、コイルの巻き枠にしました。コイルは0.2mm径のポリウレタン被覆電線を約50回巻き、ほどけないように巻き始めと巻き終わりのところでより合わせます。リピータ基板までの距離は1mもあれば通常は足りるのではないでしょうか。アンテナとリピータ間の引き出し線も、アンテナに巻いたポリウレタン被覆電線をより合わせたものでOKです。リピーター基板接続のために、線の端はピンプラグに半田付けします。極性は特にありません。写真は試作のため、引き出し線の長さが短めになっています。

リピータ出力アンテナの動作確認
なお、巻き数が同じでアンテナのコイル面積を2倍にしたものは明らかに到達距離が延びました。コイル面積(径)が同じで、巻き数を増やしても到達距離は延びないようです。インダクタンスが増大して電流が減り、磁束が増えないためでしょうか。


全体確認
すぐ上の段階でリピーター機能は実現して動作中(のはず)ですから、いよいよ全体を確認することができます。
実際の設置

使用した主要なパーツ類

[その他]
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