
1.5V動作 スピーカ駆動アンプ

小型スピーカラジオと1.5V動作のスピーカ駆動用アンプ試作回路
1.5V動作のスピーカ駆動用アンプ設計/試作のきっかけ
中古のラジオを3個セットで入手したところ、その1つは1.5Vの単三電池1本でスピーカの鳴るものでした。上の写真、左上がそれです。裏ブタを開けたところで、電池の格納場所が分かると思います。(電池は抜いてあります−分かると思いますが‥) しかし、その音量は非常に小さくてあまり実用的とは思えませんでした。また、電池電圧が下がると小さい音量がさらに急激に小さくなっていきます。またこの手のラジオの音質は、トランスがそれなりのためか心地よいものとは言えません。
そこで1.5Vの電池1本でトランス不使用、古いゲルマニウムトランジスタ不使用で動作するスピーカ駆動可能な回路ができないかと考えてみました。電源電圧が多少下がっても、それなりに動作することも条件の1つです。
それを試作してみたのが上の写真で右側の回路です。
このアンプに信号を入れたときの入出力波形をオシロで観測したのが次の写真です。

1.5V動作試作アンプの入出力信号オシロ波形
オシロ波形の縦軸は200mV/divです。電源電圧が1.49Vのときの入出力の最大振幅です。負荷は10Ωの純抵抗で、出力レベルは0.3VRMSといったところです。( 0.8/(2√2) ≒ 0.3 ) もちろん小さい方の波形が入力で、大きいほうが出力です。
電圧利得が小さい欠点がわかると思います。もう少し利得を上げることも可能かもしれませんが、この利得でもオフセット誤差が目立って大変です。比較的良好なのは減電圧特性で、常温では電源電圧0.8Vでも0.3Vp-p程度の出力が得られています。しかしこのとき利得は1倍弱で、フルパワーを出すにはいつも0.3Vp-p程度の入力が必要ということです。
もう1つの欠点は消費電流で、常時約40mAを食います。フルパワー時も殆ど変わりません。つまりA級動作だということです。
次に回路図を示します。図では出力としてスピーカの代わりに10Ωの抵抗になっています。上のオシロ画面も抵抗負荷で測定中のものです。

1.5V動作試作アンプ回路図
一部の定数は実験でガシガシ決定しましたが、どうでもいいけど最適ではないよね、という定数ももちろんたくさんあります。例えばr2、c1、c2はどうしてこの値なの?といった定数になっています。r2はもっと大きな値でいいし、6.2kというやや半端な値にする必要もありません。c1、c2はr2が今の値でももっと小さくできます。
動作概略
ご覧のとおりです。笑ってください。おしまい。
‥というのではホームページとしてあんまりなので説明していきます。
- b1、b2がレベルシフトを目的としたソースフォロワ回路になっています。これがないと、きっと低電圧マージンが非常に厳しくなると思います。
- q2からq6が差動増幅回路で出力はq5、q6のカレントミラーから取り出しています。q2を用いずに抵抗にすると抵抗値が小さくなってまともな差動増幅回路にならないと思ったので、最初からq1と組み合わせた定電流回路にしました。出力も抵抗負荷にすると電源電圧範囲が狭くなりそうな予感がしたので、最初からカレントミラーを採用しています。
- こうして得た差動段の出力をq7、q8のアンプでスピーカを駆動するようにします。電源電圧が1.5Vなのでエミッタフォロワのプッシュプルは問題外です。ということでエミッタ接地方式になっています。裸では出力インピーダンスが高すぎますが、負帰還の力で電圧出力アンプに変身させます。バイアスはr12、q7、r13の回路でq7のコレクタ電流が決まり、一蓮托生でq8のコレクタ電流が決まるという原理です。r13でバイアス電流を調整します。抵抗を小さくすると消費電流増加と引き換えに出力振幅が0Vにより近くまで振れるようになりました。出力振幅をVCC側に良く振れるようにするにはr8の値を小さくして差動段のバイアス電流が増える方向にすると良いようでした。なお、r17は当初1.5kでしたが同じr13の値の場合、r17が0Ωの方がひずみの発生し始める振幅が大きくなったので0Ωに変更しました。r15については何も実験していません。
- c3は位相補償コンデンサです。18nFというのは大きすぎるのですが、AMのサウンドを増幅するには高域を多少カットした方が聴きやすいと思うのでこのような値にしています。その目的では負帰還で高域の帰還量を増やすのがスジなのですが、負帰還後の仕上がり利得が小さいのでいくらも変えられないというのが、こじつけてきな言い訳になります。(実際c3の値を小さくしても発振したりしませんでした。念のため。)
もし、高域をもっと伸ばすのであればc6の値も2〜4倍にして低域も伸ばしたほうがバランスが良いと思います。
- 話が前後しますが、r14、r16が負帰還量を決める抵抗です。負帰還アンプのDC動作点の目標としては、r4とr3の接続点電圧がVCC/2となり、差動段の入力であるb1とb2の電圧が共に等しくなるように、すなわちq7とq8のコレクタがVCC/2に近づくことになります。また、アンプの利得としては1+(r16/r14)、実際にはアンプの裸利得が有限なのでもっと低い値になります。
所感
- トランジスタのhfeに応じて抵抗値を調整しないと十分な出力が取り出せないようで、量産にはあまり向かない回路にしかなりませんでした。
とりわけ、初段のFETは同一ロットでもb1とb2を入れ替えただけで明らかに良くなったり悪くなったりしました。r5かr11を半固定抵抗にすれば良いのかも知れません。
q7はPcの大きいTrも試しましたが、r12の値を変更すれば振幅はあまり変わらないように思いました。
また、r8固定でq8をいくつか変えたところ歪みの目立たない最大振幅は、2SA1358-Y(Pc=1.5W, hfe=173)→振幅244mVrms、2SA1175-HF(Pc=250mW, hfe=205)→振幅191mVrms、2SA720-R(Pc=625mW, hfe=136)→振幅191mVrmsとなりました。解釈の難しいところですが、エミッタやコレクタのオーミック抵抗が少ないと思われるPcの大きなTrが適しているのかもしれません。
- なお試聴した結果は、ITL(インプットトランスレス)、OTL(アウトプットトランスレス)方式なので小型のIPT(インプットトランス)、OPT(アウトプットトランス)を使用した昔のラジオとは比べ物にならないほど良い音質でした。これは感想というより紛れもない事実だと断言できます。ただし、特にHi-Fiではないので念のため。
- 追試する方もいらっしゃらないと思いますが、オシロや低周波正弦波発振器がないとつらいと思います。あるいはこの周波数帯ならパソコンのフリーソフトでOKなのかもしれませんが。
- スピーカ出力を狙うと大変ですが、32Ω以上(少なくとも16Ω以上)のヘッドホンアンプとしてはもう少し低消費電力で、容易に定数決めできるような気がします。
