冷陰極管用インバータ(調べてみた+マネしてみた)
周波数カウンタの落としまえも、昇圧型DCDCコンバータの応用もしていないのに、冷陰極管用インバータです。
あぁ、この趣味は無責任で構わないからいいなぁ!
秋月電子で扱っている極細冷陰極管+小型インバータ点灯セット(通販コード M-00400)のインバータを調査してみました。添付の資料を引き写すと
電気的特性 条件 (入力電圧=5V 負荷=FLE-3095(**)BB(φ3.0−95mm 冷陰極管) 周囲温度=25℃)
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項目
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記号
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MIN
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TYP
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MAX
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単位
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備考
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入力電圧
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Vin
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4.5
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5.0
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5.5
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V
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入力電流
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Iin
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-
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410
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-
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mA
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Vin=5.0V
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無負荷出力電圧
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Vs
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-
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650
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-
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Vrms
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放電管電流
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IL
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-
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4.5
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-
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mArms
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点灯周波数
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f
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-
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80
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-
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kHz
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放電開始電圧
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Ez
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-
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-
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4.5
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V
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ランプの点灯電圧
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電特の条件を見るとφ3.0ですが、セットになっている陰極管はφ1.8です。
インバータの説明書には適合ランプとして冷陰極管 関係φ3.0以下 管長120mm以下と記されていますから使用上の問題はないのでしょう。ただし、電特表の条件と異なりますから、表のとおりの特性とは限りません。
自分は冷陰極管の駆動波形を知らなかったので、まずは波形を見たいと思いました。
しかし電圧が高いので、オシロの普通のレンジでは観測できません。また、インピーダンスが高くないと測定することで本来の波形でなくなる心配があります。
ということで、まずは100:1のプローブを何とか入手したい。これも秋月電子等で扱っていますが、普段使わないのにちょっと見るだけで購入するのは気が進みません。趣味の世界ということで、まずはプローブを何とかすることにしました。
といって何も工夫したわけではありませんが、10:1で入力が10MΩ//約20pFのプローブの先に、さらに10:1のアダプタを作って間に合わせます。90MΩ程度の抵抗と2pF程度のコンデンサを足せばOKとなるわけです。次に回路図を示します。

プローブ先端アダプタ回路図
90MΩは手近にあった100MΩの抵抗のうち低めのものを選びました。(これは100:1に強くこだわらなければ、基準の電圧を入れて感度を確認すれば良いだけなので特に選び出す必要はありません。) 追加の抵抗と並列接続するコンデンサは耐圧が問題となりますし、微調整も必要です。このコンデンサには、ガラスエポキシの両面基板の切れ端を利用しました。大きめに切っておき、オシロのCAL端子、あるいは方形波の出る何かに接続して、立ち上がり後、立ち下がり後のオーバーシュートがなくなるまで切れ端を小さくしていきます。鈍りが出たら切れ端を小さくし過ぎなので、やり過ぎないように注意します。このようにして調整した後の波形を次に示します。上側が上記アダプタを追加したことで約100:1になったプローブ、下が普通の10:1プローブの方形波観測波形です。高電圧を印加する前には、銅箔のくずが基板断面に残らないように除去します。

(約)100:1プローブと10:1プローブの方形波観測波形
なお、アダプタと10:1プローブとの接続は銅箔テープとSMAコネクタを使用しました。
100MΩの抵抗周りからのノイズ侵入は、測定したい信号の電圧が大きいので(600Vrmsの信号は1/10しても60Vrms)、目立ちません。
インバータの出力波形観測
このようなアダプタを追加して実現した100:1プローブを用いた波形観測のために接続した様子を撮った写真が次です。

アダプタを追加したプローブを接続したところ
フック部分を外したプローブが右から覗いています。SMAコネクタにプローブ先端を差しこみ、プローブGNDスリーブとSMAコネクタのGND側を銅箔テープで包み、すずメッキ線で固定します。SMAコネクタの中心導体に90MΩ抵抗を付け、反対側に赤いみの虫クリップを付けます。抵抗の両端にコンデンサ役をする両面エポキシ基板の切れ端を並列に接続してあります。左下に見える黒いみの虫クリップは元々のプローブのGND接続用です。
次はこうして測定した入力電圧約5V時のインバータ出力波形です。
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冷陰極管点灯時
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無負荷時
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インバータ出力観測波形
説明書には、「冷陰極管を接続しない状態で、インバータに通電しないでください」との記載があります。追試される方は自己責任でお願いします。なお、波形の記録タイミングが悪かったので点灯時のインバータ出力周波数がオシロ画面に出ていませんが、1divが5usなので約85kHzです。なお点灯中の入力平均電流は343mA、無負荷時の入力電流は45mAとなりました。
インバータ回路
このインバータはあまり安価でないし、回路がどうなっているのか気になるところです。
基板にはチップTrが2個、チップインダクタが2個(うち1個はトランス)、チップ抵抗が1個、チップコンデンサが2個が載っています。
パッパと取り外したりして調べて作成した回路図は以下のようです。(無保証)

インバータ回路図(調べてみた)
20pFはセラミックコンデンサ、0.047uFはフィルムコンデンサです。2端子のインダクタは表示が470となっていましたが、かなり小さいパーツで測定すると43uH程度でした。出力側の20pFは小さくて意外でした。20pFのコンデンサは80kHz時のリアクタンスが約100kΩになります。4.5mAの電流を流すと電圧降下は450Vになる計算です。
そこで、改めて冷陰極管を接続したときの負荷電流波形と、出力部の電圧との関係を測定してみました。

出力電圧波形と負荷電流波形の測定風景
この表の測定時は1kΩに印加される電圧がほぼ等しくなるよう、入力電圧を調整しました。
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冷陰極管印加電圧波形、電流波形
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トランス出力波形、電流波形
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インバータ出力電圧/電流波形
表の左半分の結果から、1度点灯状態になった冷陰極管は電圧と電流の位相差がなく、概ね抵抗のように振舞うようです。一方、表の右半分の結果ではコンデンサの入力側、すなわちトランス出力直後の電圧波形と比べると、電流波形の方が1.52usほど進んでいて、20pFの影響と思われます。これは79.36kHzの43°に相当します。
ともあれ、冷陰極管の等価抵抗+1kΩは表の左半分の結果から、Rtube=1180[V]/12.4[mA]=95.2[kΩ]
となります。なぜなら1kΩの両端に加わる電圧の1/1000が通過する電流になりますし、電圧、電流は共に実効値で計算してもp-p値で計算しても、割り算の分子、分母に同じ係数がかかるので、結果は等しくなるためです。
また、20pFと冷陰極管+1kΩを合わせたインピーダンスは、Z=1640[V]/12.6[mA]=130[kΩ]
電圧と電流の位相差および、20pFと冷陰極管+1kΩを合わせたインピーダンスから、冷陰極管+1kΩの抵抗を求めると
R=130[kΩ]cos43°=95.1[kΩ]
となり、先に表の左半分から求めた95.2kΩと良く一致します。
これらをグラフにしたものを次に示します。

グラフ 負荷インピーダンス
20pFのリアクタンスについては10%ほど違いが生じますが、容量測定精度や波形の読み取り方、あるいは100:1プローブの2pFが影響しているのではないかと思います。
いずれにしても20pFという測定値は概ね正しいと言えます。また、20pFにも冷陰極管に匹敵する電圧がかかっていますので、DCならば1200V以上、おそらく2000V耐圧のコンデンサが使用されていると思います。20pFコンデンサの役割はおそらく、電源投入後印加電圧が無負荷時電圧近くまで上昇して、放電が開始すると、負荷電流に応じて印加電圧を適切に下げることにあるのではないかと思います。
インバータは、インダクタを何とかすれば秋月で完成品を購入するより安価に自作できそうです。高圧巻き線の巻き始めと巻き終わり間の耐圧がネックになるかもしれません。
ということで、リバースエンジニアリングの結果を元に試作してみました。
点灯させてみたのが、次の写真です。

パーツを寄せ集めて試作した冷陰極管インバータ
写真の左後方にあるのが秋月の超小型DC-ACインバータ、手前にあるのが、今回部品を寄せ集めて試作したインバータです。
どのような部品を使ったか、トランスはどうしたのか等を記していきたいと思います。
まず、今回試作したインバータの回路図を示します。

自作インバータ回路図
47uHと150mHのチョークは共にサトー電気で購入しました。47uHは縦型(許容DC電流370mA)、150mHは縦型TR用コイル(許容DC電流70mA)というものです。なお、トランジスタと22pF/2VのセラミックチップコンデンサはRSコンポーネンツで購入しました。追試したいがRSコンポーネンツでは購入できないという方は、多少大きくなりますが22pF/2kVの高圧セラミックC、トランジスタは2SD882がサトー電気で入手できるでしょう。なお、0.047uFには特に高電圧が掛からないので、普通のフィルムCが使用できると思います。
今回使用した150mHのチョークはこのような高電圧を発生させることを想定して作られてはいないと思います。長期動作中に発火事故が発生することがないのか当方には判断できません。追試はくれぐれも自己責任でお願いします。
150mHチョークのトランスへの改造について
150mHチョークは巻き線の外側が透明フィルムで覆われています。透明フィルムの上にトランジスタに接続する巻き線を巻きます。
当方の場合、回路図で黒点のある方が巻き始めになるようにしています。つまり元々のチョークの巻き線は芯側が巻き始め、外周側が巻き終わりです。外周側がアースになりますから、トランジスタ用巻き線との電位差が小さくてすむと考えました。ベース用巻き線とコレクタ用巻き線では、コレクタ用巻き線を先に巻きました。2つのトランジスタがなるべく平等に動作するように巻き線は2本まとめて18回巻きます。2本のうち片方の巻き終わりと他方の巻き始めと接続して47uHに繋ぐ中点タップとします。最後にベース用巻き線を1本5回巻きにします。
なお、線を巻く方向は、はじめからできている150mHの方向と合わせます。少なくともベース用巻き線とコレクタ用巻き線の巻きつけ方向が逆だと5V側の電流がいくら流れても正常に発振せず、トランスによる昇圧が行われません。
すべての配線と点検後、初めて電源を投入してテストするときは電流制限をかけておく方が安心です。5Vを直接印加せず直列に100Ωを挿入しておくだけでも良いでしょう。冷陰極管は外しておきます。発振と昇圧は観測できます。もしこれで電源電流が50mA近く流れるようであればダメです。当方の場合は約27mA流れました。したがってインバータセットには約2.3V印加されています。そのときの波形を示します。

5V電源に100Ωを直列に挿入した無負荷のテスト波形
このオシロ波形は前記の初期テストの設定で、上がインバータ出力22pFの先の波形、下が下側トランジスタのコレクタ出力波形です。コレクタ出力波形が電源電圧よりずいぶん高くまで励振されていることがわかります。
続いて、100Ωを挟まずに5V直接印加した、無負荷時と冷陰極管点灯時の波形を示します。といっても電源からインバータまでの配線抵抗の影響で、点灯時のインバータ印加電圧は約4.6Vになっています(汗)。
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5V電源直結無負荷時波形
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5V電源直結冷陰極管点灯時波形
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試作インバータ出力22pFの先の波形(上)と下側トランジスタコレクタ出力波形(下)
試作機は秋月のインバータに比べて発振周波数が低くなっています。試しに0.047uFを0.033uFにしてみましたが約3kHz上昇するだけでこれといった効果がありませんでした。現在、周波数が低いことによる問題は特に発生していないようなので特に対策していません。なお、試作機の消費電流は前述の評価条件で点灯時270mA、試作基板印加電圧=5V時は300mAでした。
(冷陰極管用インバータの項おわり)