ノッチフィルタ
選択度が今ひとつなホームラジオ用にノッチフィルタを作成してみました。
Hi-FiのAMラジオはどうしても選択度が今ひとつになるものです。
日本付近ではラジオ局の周波数は9kHzおきに割り当てられています。夜間になると、遠距離のラジオ局の電波も届くようになり、周波数が9kHzだけ離れたお隣さんだとその搬送波がそのまま9kHzの耳障りな音となって復調されます。
そこで、復調されてしまった音声信号を取り出し、そのうち9kHzの成分を鋭く切り捨ててしまう回路を挿入すれば快適受信ができるだろうというわけです。特定周波数成分を鋭く切り捨てる回路がノッチフィルタです。
実はROSE?で触れたナゾのFM/AMチューナ用にAMステレオ対応として2ch分のノッチフィルタを作ったことがあるのですが、組み込まないうちにチューナを手放してしまいました。ですから設計したのはそのときで、2ch用分の回路を製作してありました。今回はステレオでないため、当時余分に購入してあったパーツを利用して新たに1ch分を製作しました。
2chノッチフィルタ
以前製作した2ch分ノッチフィルタ

今回も同じ回路を1ch分だけ作りました。まずは実験してみたのが下の写真です。
ブレッドボード
ブレッドボードで実験

特性をざっと測ってみましたが、以前のボードよりリジェクト特性が悪いようです。ブレッドボードでバラック状態のためか、部品のバラつきなのかこの時点では不明です。9kHzの正弦波を入力して出力レベルを測定してみると以前の2ch基板の片チャネルでは32dB程度の減衰が得られているのですが、ブレッドボードでは20dB程度でした。

深く考えないまま基板作成
部品バラつきの可能性も捨てきれないまま、基板を組み立ててしまいました。
1ch用フィルタ基板
とりあえず組み立てた1ch用フィルタ基板

写真で見える多回転トリマを調整しても21dB程度の減衰しか得られませんでした。
ちなみに回路図兼実体配線図は次のようになっています。あと、本当はVccとGND間に数10uFのケミコンが入っています。ケミコンの耐圧はVcc-GND間は25V以上、図中の33uF、10uFは16V以上あればOKです。
回路図
この測定で分かったことはバラック状態だったからダメだったのでなく、パーツのバラつきがたまたま9kHzにぴったりではなかったということです。このままラジオに組み込んで、「今ひとつだった」ということになると面倒そうです。

特性改善
そこで特性改善のために、現状何kHzで減衰性能が最大になるか、調査してみました。入力周波数を少し変化させて、多回転トリマを調整し、出力電圧の最低値を確認し、また入力周波数を少し変化させて‥というのを繰り返しました。その結果、9.127kHzで減衰性能が最大になりました。これは9kHzに対して1.4%高いことになります。ちなみに、回路図から分かるようにフィルタの理想的な時定数は CR = 17.7 k×1 n = 17.7 us、周波数にすると f = 1 / (2πC R) = 8.991 kHz となっています。また、部品はコンデンサは2%級、抵抗は5%級を使用しています。しかし抵抗はテスターで誤差を確認して誤差の少ないものを選んでいます。それでも1.4%の誤差というのは十分あり得る結果と思います。改善策は厳密には各CRをまじめに測れ、ということになりますが、そこまでしなくても時定数を現状より1.4%大きくすれば良いと考えます。
そこで手持ち部品である15pFのコンデンサを1nFのコンデンサに1個ずつ、2nF分のコンデンサには33pFのコンデンサを並列に足しました。これで約1.5%の増加になりますが良いことにします。当然ですが、今回この基板ではたまたま部品精度、誤差の関係でこうなったということで、いつも15pF/33pF足せば良いわけではありません。

基板裏側に追加した15pF、33pFのコンデンサ

こうしてフィルタを多少チューンして9kHzで最大減衰となるように多回転トリマを調整したものを100Hzから15khzまで測定した結果が次のグラフです。縦軸Gain というのはちょっと怪しくて実際は出力レベルの相対値です。入力より出力のほうが多少小さくなっているので本当のGainは平らなところでいくらかマイナスになっています。しかしフラットなところの出力電圧が1Vrmsになるように入力を適当に調整して測定したため真のGainが今となっては不明です。
ChartObject Notch Filter Frequency Characteristics
9kHzノッチフィルタ(回路チューン後)測定結果

このグラフから9kHzで相対的に40dBの減衰が得られていることが分かります。(本当は8kHzと10kHzの間をもっと細かく測定したほうが正確な形が分かる。)ノッチフィルタとしてはあまりすばらしい出来とは言えませんが、今回の目的には十分耐えそうです。今後多少部品の特性が変化しても30dB程度の減衰は末永く得られるのではないかと(勝手に)思っています。部品の温特は確認していませんが仮に500ppm/℃あったとしても20℃の変動で0.1%の誤差にしかなりませんから、おそらく実用上問題ないでしょう。ちなみに8kHzでの相対的な減衰は1.4dB、10kHzでの相対的な減衰は2.3dBでした。

このノッチフィルタを組み込んだラジオは離れのICF-9740のページにあります。
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