「 つ く り 変 え ら れ る 心 」
オウム真理教事件以来、クローズアップされた「マインドコントロール」。
人の心を自由に操る魔法のようなものとのイメージが強いようだが、これは社会心理学の応用技術として、確かに存在する。
「人の心はどのようにしてつくり変えられるのか」 ― その実際をあるカルト集団の元信者の証言をもとに再現してみた。
マインドコントロールされないためには、マインドコントロールの実際 を知ることが大切だ。
マインド ・コントロール (1) 愛の爆撃
県内に住むある脱会カウンセラーの元に、
今も社会復帰へ向け心のリハビリを続ける一人の元カルト信者の女性がいる。
現在三十三歳の彼女が二十代前半から青春時代のすべてをささげることになったこのカルトに出会うきっかけは、
顔見知りの主婦の紹介だった。
「楽しいビデオの会があるんだけどちょっとのぞいてみない」。
軽い好奇心からその言葉に従った。
退屈な日常。何となく満たされない思い。 自宅から短大に通う平凡な学生だった。
このカルト集団の入り口≠ニなっているビデオセンターは マンションの中にしつらえられたしゃれた喫茶店のような場所だった。
ほほ笑みをたたえた若い男女が大歓迎で迎えてくれた。 まるで長年の友人のようにきさくな態度。その言葉は巧みだ。
「これまでの人生であんなに褒められたことはなかった」。
相手をひたすら褒め上げ、その人格を受け入れてあげる「愛の爆撃」と呼ばれるテクニックである。
これだけなら通常の商行為でもよくある話だが、「愛の爆撃」との違いはカルトのメンバーが
本気≠ナ相手を愛そうと努めることだろう。 それが説得力を生む。
そして自分を受け入れてくれる人たちを「善い人だ」と感じるようになる。
また「こんなに一生懸命に話してくれるのだから、きちんと相手しないと悪いな」とも思うようになる。
最初の接触で、カルトの側は被害者の個人データの収集に全力を挙げる。
アンケートで住所や電話番号を聞き出すのはもちろん、家族構成、仕事、自由になる資産まで調べる。
また心理テストでは興味や性格さらに個人史までも記録される。 これらが後に、マインドコントロールのために有効な武器となるからだ。
さらに、当日は集団の教育用ビデオも見せられる。 主張をうんと薄めてはあるが、これが新たな人格の種≠ノなる。
カルトが最初のこの日にこだわるのも意味がある。 時間をかけて冷静に判断させてはならないからだ。