ラファエロ・サンティ 1483-1520(37歳)
ダヴィンチの絵の謎を解くのに、ラファエロは多くのヒントを残してくれました。
それをダヴィンチ・コードにちなんでラファエロ・コード(ラファエロの暗号)と呼んでます。
『聖家族と子羊』 杖を持つ者は誰?
左下がラファエロの『聖家族と子羊』1507年、右下がダヴィンチの『聖アンナと聖母子』1507-10年
ラファエロが3年早く描き終わっていますが、ダヴィンチは1501年頃から聖母子の構想を練っています。ラファエロはダヴィンチの構想段階の構図を参考にして、先に描き上げただけでしょう。
ダヴィンチの絵と比較させやすいように、ラファエロの絵を反転させたものが下の画像になります。各人物の視線の向け方が同じですよね。
ラファエロの人物構成は、幼子イエス・聖母マリア・養父のヨセフです。
ダヴィンチの方は、タイトルから見れば、幼子イエス・聖母マリア・聖アンナです。
二つの絵の違いは、一番後ろの人物。
ダヴィンチの絵を元にしていたはずなのに、なぜラファエロは聖アンナではなくヨセフを描いたのか?
それはダヴィンチの絵の一番後ろの人物が、体も大きく、杖を持ち、男性に見えたから、イエスの義父ヨセフと思い込んだのでしょう。 この絵には天を指す人差し指はありませんから、隠れたイエスはいないはずだと、普通の宗教画だと勘違いしたのです。 この絵が『モナリザ』『洗礼者ヨハネ』との三部作になるとは、まだ知らなかったんじゃないかと思います。
『聖家族と子羊』は、ラファエロが積極的に仕掛けたラファエロ・コードとは言えませんが、『聖アンナと聖母子』の絵を解くヒントにはなりました。
『聖体の論議』 イエスの隣に座る洗礼者ヨハネ
神学の勝利を象徴した絵だそうです。
上段は、天上世界を表していて、中央にイエス、左右に聖母マリアと洗礼者ヨハネ、その周囲はダヴィデ・アブラハム・アダム・モーセ・ペテロ・パウロ等々の聖人が座っているそうです。
イエスの背後に神と、イエスの足元に聖霊(ハト)があるので、聖三位一体を表現しています。
聖三位一体とは、父(神)と子(イエス)と聖霊(ハト)のこと。古くからこのテーマの作品があります。父と子と聖霊だけでなく、その周囲に様々な人物が描かれるものが多いです。
『最後の晩餐』は、ボッティチェリの『聖三位一体』の絵をベースに、イエスの隣のトマスが洗礼者ヨハネを兼任することによって、反対隣のヨハネにマグダラを当てはめるようにしたものです。
『最後の晩餐』のトマスは、首と天を指す人差し指だけなので、トマスが洗礼者ヨハネを兼任していることは読み取れても、 その反対隣がマグダラのマリアであると証明するには、ボッティチェリの『聖三位一体』の絵が唯一のものでした。
もしもボッティチェリの『聖三位一体』が何らかの事故で消失してしまったら、マグダラのマリアを証明するのが難しくなります。また、ボッティチェリとダヴィンチ二人の絵の関係性に誰も気づかなければ同じことです。だからラファエロはヴァチカン宮殿内にダヴィンチの絵を解くヒントを残そうとしたのです。
ここなら絵は大切に保存してくれるはずですから。保険をかけたようなものです。
『聖体の論議』のイエスに、神とハトを描き『聖三位一体』を示し、イエスの左側に洗礼者ヨハネを座らせることによって、ボッティチェリの描いた『聖三位一体』と関連づけました。イエスの反対隣は、さすがにマグダラのマリアを直接描くことはできなかったのでしょう。聖母マリアとしていますが、これもボッティチェリの絵があればマグダラのマリアに変わるものです。 『最後の晩餐』では12弟子と兼任していた洗礼者ヨハネとマグダラは、その任を解かれ独立してイエスの左右に座ります。6番目と7番目の聖人が、体半分隠れるようなのも意図的なものでしょう。
聖人を12人にしたのは、もちろん『最後の晩餐』を想起させるためです。イエスの左側に洗礼者ヨハネがいる『最後の晩餐』は、ダヴィンチの絵しかありませんから。
ボッティチェリの『聖三位一体』とダヴィンチの『最後の晩餐』の関連性を『聖体の論議』に残しました。
最悪、ボッティチェリの絵が消失したとしても、『聖体の論議の』12人の聖人とイエスの隣の洗礼者ヨハネは、ダヴィンチの『最後の晩餐』へつながるヒントになります。
さらに『聖体の論議』の向かい側に『アテナイの学堂』が控えています。ラファエロは、『アテナイの学堂』の絵中で、さらなるヒントを描き込むのです。
『アテナイの学堂』 ダヴィンチと天を指す人差し指
『聖体の論議』が描き終わったあと、続けて対面に描いたのが『アテナイの学堂』。この絵は、古代ギリシアの哲学者たちを描いたものだそうです。
黄色の枠で囲ってあるのが重要人物。
中央で天を指す人差し指のポーズをしている老人はプラトンですが、ダヴィンチの姿を描いています。
向かって右端の、視線をこちら側に向けているのがラファエロです。彼は古代ギリシアの画家アペレスとして描かれてるそうです。(あとミケランジェロもいます。)
ラファエロは、
ある人物に別の人物を兼任させる描き方があることを示しました。中央メインの人物に、天を指す人差し指のポーズのダヴィンチを兼任させることによって、ダヴィンチの描いた絵を想起させるようにしたのです。
ダヴィンチが天を指す人差し指を描いた絵は、この時点では、未完成の『マギの礼拝』、『最後の晩餐』、カルトンの『聖アンナと聖母子と洗礼者ヨハネ』の3枚。
ダヴィンチの天を指す人差し指は、『再臨するイエス』を指すか、絵の中においてイエスを直接的に指すことのできない場合に使用するポーズですから、それも証明するために、『アテナイの学堂』の中に隠れイエスを描き込んでいます。
注目してほしいのが、ラファエロと同じライン上、等間隔の左側の3人。ラファエロのようにこちら側に視線をむけています。 彼らが、直接指すことのできないイエスです。幼子イエス→子どものイエス→大人のイエスの時間の異なるイエスを描いたのです。
これは、カルトンの『聖アンナと聖母子と洗礼者ヨハネ』にもつながることです。まさに一石二鳥ってやつです。
ダヴィンチの描く絵の真実の姿を、いつの日か公に知ってほしいと思っていたのでしょう。
誰かに盗まれることもない、焼かれることもない、ヴァチカン宮殿内の壁は秘密を隠すのに絶好な保管場所だったのです。
ちなみにダヴィンチはなぜ幼子イエス→子どものイエス→大人のイエスの3つの年代のイエスを描いたかというと、新約聖書には、産まれたときの幼子イエスと、12歳で両親とエルサレムに巡礼に出るイエスと、大人になって弟子らと布教をするイエスと、大きく3つの年代のイエスが書かれているからですね。
1枚の絵に異なる年代のイエスは、イエスの成長を示した異時同時法なのです。
『一角獣を抱く貴婦人』 小さな一角獣と左右の柱
向かって左のスケッチ画は、おそらくダヴィンチが、個人的な肖像の依頼を受けて普通に描いてたころのものをスケッチしたのだと思います。ダヴィンチが注文を請け負った個人的な肖像画ですので、婦人の姿を完全コピーするのではなく、自分の作品に取り入れることを念頭に、構図だけを参考にして衣装や顔は変えたんじゃないかと推測します。
中央の絵は、1930年頃までラファエロではなく別の画家の作品とされ『アレクサンドリアの聖カタリナ』と呼ばれていたものですが、1930年頃、絵に不自然な点が見られたことから、下に別の絵が描かれているのでは?ということで洗浄してみたら出てきたのが右端の一角獣の絵だったのです。 筆使いと技法から、一角獣の絵はラファエロ作だと判明し、タイトルも『一角獣を抱く貴婦人』と呼ばれるようになりました。 まさに奇跡的な発見だったのです。
何故、空想の生き物の一角獣を描いたのか?
ダヴィンチの素描の中にも一角獣を描いたものがありました。左端のものです。女性は一角獣に向かって指差ししていますね。中世において、一角獣はキリストを象徴したものだったからです。『見よ、神の小羊』と指差しするのも納得です。 ラファエロが一角獣の絵を描いたのは、ダヴィンチが2枚目の女性の絵を描きはじめたから。2枚目に描いているのが、ヨハネ黙示録12章の荒野で男の子(キリスト)を産む女性だということ、左右の柱が重要な意味を持つことも判ったのでしょう。 だからラファエロは女性に赤ちゃんの一角獣(キリスト)を抱かせ、左右の柱は見えるように描いたのです。(ラファエロの背景は、黙示録の意味が込められたものではないので、左右の柱は見せたままでいいのです)。 一角獣(キリスト)を抱く女性の絵は、ダヴィンチの描く2枚目の女性の絵の正体を想起させるものになるはずでした。
・・・しかし、一角獣の絵は、上から壊れた車輪を塗りこめられて『聖カタリナ』の絵に変えられてしまいます。著名なラファエロの絵に、いつ、誰が、何のために、そのような事をしたのか?これも想像するのも面白いですね。
※モナリザの正体と柱の意味などについては、以下の記事でお願いします。
ラファエロは、モナリザのポーズを元にいろんな方の肖像を描いていますが、それらの肖像には柱は描かなかったことからみても、左右の柱というものが特別なものだったと判るのです。
ところがラファエロ又はラファエロの工房が描いたとされる肖像の中で柱があるものがありました!
ジャジャーン!
『Portrait of a Young Man in Red』で、タイトル上は誰か特定してないけど、これはラファエロ本人の肖像で間違いないでしょう。 この絵を見つけたときは、どれだけダヴィンチ好きなのかと思わず笑いがこみ上げました。自分の肖像には柱を描くのですから。
濃い色合いの存在感のある左右の柱は、自分とダヴィンチとの関係性を強く主張しているように見えます。
彼が右手に握りしめているものは何なのでしょう? ダヴィンチの絵の秘密?