ww1開戦時日英交渉

日外務大臣 加藤高明男爵
英外務大臣 エドワード・グレイ子爵
駐英日本大使 井上勝之助
駐日英国大使 ウィリアム・カニンガム・グリーン

1914/6/28オーストリア領土ボスニア州サラエヴォで、墺皇太子及び同妃の暗殺
1914/7/23オーストリア=ハンガリー、セルビアに最後通牒
1914/7/28オーストリア=ハンガリー、セルビアに宣戦布告
-ロシア、対墺洪動員。墺洪、対露動員
-イギリス、ドイツ、フランス、イタリアとの平和交渉決裂
1914/7/31独仏国境に軍事行動、駐仏大使召還
1914/8/1ドイツ、ロシアに宣戦布告 (7/31?8/1?に独仏交戦状態)
グレイ、井上を訪れ、欧州情勢、英の仏露側への参戦の可能性を示唆。但し、日英同盟には抵触せず、日本へ援助を求めることがないとの考えを示す。
19114/8/2ロシア、ドイツに宣戦布告。 ドイツ、ルクセンブルク侵攻
イタリアは英仏に好意的中立宣言
グレイからグリーンへ、上記内容の電報着
1914/8/3ドイツ、フランスおよびベルギーに宣戦布告、イギリス、ドイツに最後通牒
グリーン、加藤を訪問。グレイの意思を伝える。
加藤「中立宣言にしろ開戦にしろ、日英同盟の適応も、イギリスの意図を汲んで行動するので、政府の態度が決定し次第、早急な通告をして欲しい」
1914/8/4 朝、グリーンから、閣議でイギリスの意向を報告中の加藤へ「英独開戦を示唆、香港・威海衛が襲撃を受ける場合は日本の援助を信頼する」本国電文を伝える。

午後―加藤・グリーン会談:
加藤「閣僚一同の同意を得た」
グリーン「日本は、英政府の決定を待つのではないのか?」
加藤「前日の談話に関して、大使は誤解している。香港・威海衛の攻撃の場合、同盟は自動適用される。公海での英船舶の捕獲などの自動適用以外のケースは、英政府から日本政府に要請して欲しい」
第二艦隊が佐世保に待機、金剛も加わる予定。長崎・函館・釜山に各軍艦一隻を配置留守ことになった。仏露には極秘。
グリーン、謝意を示す。

グレイ・井上会談:
グリーンの電報にある、加藤の、「香港が攻撃された場合、日本は直ちにイギリスを援助するつもりであり、その程度方法はイギリスに任せる」旨に「イギリス政府は日本政府の寛厚な申し出に対し深く感謝する」
「日本を今回の戦争に引き入れることはイギリス政府として避けたいところである。(日露戦争中)フランスはロシア艦隊に援助を与えていたので、日本はこれについてイギリスの援助を求めることができたにもかかわらず、これを求めなかった寛大なる精神を酌み、イギリス政府もまた務めて日本に累を及ぼすこと避ける考えである」

日本政府は内外に、 「万一、イギリスが戦争の渦中に投じ、且つ日英協約の目的が危機に陥るような場合には、日本は協約上の義務として必要な措置を執ることがある」旨、を公示。

1914/8/6 グレイ→井上への公文。
「加藤の『香港・威海衛攻撃時に英が支援要請した場合に承諾すべしとの声明及び、支那海、露西亜海での英商戦捕獲などの折に、日本が行動する前にイギリスと協議すべしとの提言』への英政府の歓迎を表明する。
1914/8/7 電文:グレイ→グリーン→加藤/グレイ→井上
グレイ(グリーン)「イギリス、ドイツ武装商船撃破の為、日本の対独海戦の希望」を通達。
加藤「日英同盟に基づいたイギリス援助は拒まないのは先に述べた通り。だが、ドイツ仮装巡洋艦に戦局を限るのは可能かわからない。検討する」
グリーン「早急な回答を求める」
加藤「英商船への脅威は、実際に起こっているか?」
グリーン「自分は知らないが、あるだろう」

日本臨時閣議:概ねイギリスの申し出に応えることを決定。

1914/8/8 加藤、閣議決定を上奏。元老、大臣会議で、ドイツへの開戦を内定。 「支那海におけるドイツ武装商船の撃滅」というのは、開戦理由として不十分(日英協約に該当しない)→「英独開戦から戦乱の余波が東亜に及び、日英協約の目的が危機に陥り、日本に援助を要請、これに応える」を開戦理由とする声明を出すことを希望した。
1914/8/9 加藤→グリーン:
加藤「開戦時にドイツ仮装巡洋艦の捜索及び破壊のみに限ることはできない。東洋のドイツ勢力打破の為にすべての手段をとることもありうる。ドイツの侵迫的行動の結果、東亜の平和が危機に瀕し、日英同盟に基づき、英政府の求めによって開戦に至った旨、宣戦布告中に明示したいが、英政府の意見を求める」
加藤は井上に、グレイに対し上記内容の説明及び、6.7日のグレイからの公文によると、英政府が日本から積極的に援助を申し出たと認識しているきらいがあるが、その誤解を解くよう指示。

井上→グレイ
グレイ「東亜の戦争が、支那・東亜の騒乱へ拡大し貿易への打撃を懸念。駐支公使・絵支那艦隊司令長官に問合せ中。英政府の確答があるまで日本政府の軍事行動を見合わせて欲しい。日独開戦後、膠州湾を攻略領有しても英としては問題なし」
井上「ドイツとの開戦後は、(制限のない)一切の軍事的行動に出る」
グレイ「故に熟慮が必要」

グリーン→加藤
グリーン「支那の動揺を懸念。駐支公使・支那駐留艦隊に問い合わせ中」
東京にて、新聞が着目。閣議内容が漏れた形跡。

加藤→グリーン
加藤「日本政府は、最早その処決に重大な変更を加えることができないので、賛同を求める」
・支那が動揺した場合、日英に領土保全、中立維持を頼ることを警告するのが適切
・開戦は、同盟に基づき東亜の平和維持の為であり、領土獲得や利欲の為ではない。
・政界が危機に陥るので、早急な回答を。
・望むなら、開戦理由を両国の特殊利益防御、東亜全局の平和維持の為に改める。

日「日本軍事行動はドイツ仮装巡洋艦の捜索及び破壊だけに限定することができない」
→英「膠州湾攻略は差し支えないが、その他の日本の軍事行動はしばらく見合わせることを希望」

1914/8/10 グレイ→井上
・揚子江の英独両国の砲艦乗組員が引き揚げ。同地域の戦闘は起こらないと想定される。
・支那において陸戦が起これば、英貿易が破壊される。
・英商船は、独艦に襲撃されていないことが確認できた。
・支那-印度間は、目下安全である。
グレイ「戦闘は海上、英商船の保護のみに留めたい。日本がその局限を不可能とするのは理解できる。拠って、同盟に基づく支援要請はしない」
井上「武装ドイツ戦に対するイギリスの依頼は取り消されたということか?」
グレイ「その通りである」
日本、参戦措置を一時中断。
1914/8/11 加藤→井上
加藤「イギリスの要請に応じて、宣戦布告を残すまでに戦備を整えた。今更要請を取り消されては、政府は困難な立場に追い込まれる。経緯をある程度国民に説明せざるを得ないが、そうすれば日英同盟への国民感情を悪化させる恐れがある。翻意を要請して欲しい」

井上・グレイ
グレイ「日本の排独熱が盛んで、対独開戦しなければ騒乱が起こる形成になった旨、閣議報告した」
井上「参戦準備がほぼ完了した時点での、参戦の取り消しは政府を非常に困難な立場に陥れる。翻意を要請したい」
グレイ「加藤が、英政府の依頼があれば、日政府はこれに応え、方法・程度を英政府に一任するという話だったので、一方法として独武装艦の撃破を依頼したが、支那海において実際の脅威はなく請求を取り消した。だが、ドイツ大使は日本政府に対し、(連合軍側に立ちて参戦せば非常の不利を蒙らんとの)威嚇的言辞を弄し、日本の利益が迫害されているので、これを防御する為の開戦に異議を唱えない。但し、開戦宣言は過日のものではなく、日英両国の東洋における特殊利益が危機に瀕したので、日英協約に基づき必要な措置を講じるという意味にして欲しい」
井上、加藤の類似の意味の公文を提示するが、グレイは自己の案を加藤に通告すると伝える。

グレイ「自分は日本の真意を少しも疑わないが、世間において、日本はこの際領土侵略の野心があるのではないかと誤解するものも少なくないので、戦闘区域を局限して、日本は支那海の西及び南及び太平洋において戦闘しないことを声明されたい」
井上「日本が領土侵略の意思を持っていないこと、及びその軍事行動を支那海における防御、反故に制限することは既に加藤男爵の覚書で明白なことである。しかし、太平洋にはドイツ軍艦が回遊しており、南米、北米の航路に従事する日本商船に危険があれば、日本は必要な措置を執らなければならないので、しいて戦闘区域を局限することは不可能である」
グレイ「もっともだ。考慮したのち、駐日大使に訓令する」

1914/8/12 グレイ→井上
グレイ「オランダが、日本が今回の戦争で蘭属領を侵略する野心があることを恐れている。イギリス自治領も、ドイツの南洋属領を日本が占領することを懸念している。世間を安心させるために、戦闘の地理的範囲を定め公開して欲しい」
井上「日蘭は親交国であるので、その懸念は無用。日本の目的はあくまで東洋の特殊利益保護。ドイツ軍艦が自国南洋属領に逃れれば、追撃が必要だし、オーストラリア航路・定期航路において日本商船を保護する必要があるので、局限は困難」
グレイ「そのような場合は例外として、ドイツ南洋領地を占領しないでもらいたい」

夕刻:グリーン→加藤
グリーン、英国からの要請ではなく、日本国が自己の利害の為に日英協約に基づいて、戦地局限の為に開戦することには賛意を示す意を伝える。
加藤「両国が協議のうえ、同盟の想定する利益防護の為に必要な手段をとる旨を宣戦布告に声明するが、戦地局限については英国及び同盟国に現地を与えてもよいが、宣戦布告には盛り込めない。同意いただきたい」
1914/8/13 加藤、上記の件、グレイの同意を得るよう井上に指示。

井上・グレイ会談
グレイ「宣戦布告中に戦地局限に言及するのは必須ではない。豪・米・蘭は常に日本に領土侵略の野心があると誤解しているので、これを公然と打ち消すために申し出たもので、英国及び他国にこれを保証するのであれば了承する」
「ドイツは日独開戦時には膠州湾が日本に占領されることを予想し、同地を中立とするために租借地を変換するため支那政府と交渉中である」と付言。
1914/8/14 グリーン→加藤
「威海衛似て英艦隊が攻撃される場合は、日本は英国の要請に基づき救援すべしと述べられた件を復命したが、そのような脅威は存在せず、拠って前述のことも発生しないだろう」旨、覚書送付。
1914/8/15 グリーン→加藤
グレイの所言と同内容の覚書を手交。

日本、ドイツに最後通牒。(8/23正午期限) 「日本及び支那海洋方面よりドイツ国艦艇を即時撤退させること、退去することができないものは直ちにその武装を解除すること。」 「ドイツ政府は膠州湾租借地を支那国に還付する目的で、1914年9月15日を限り、無償無条件で日本帝国官憲に交付すること」

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