4-2、警戒宣言の中身

4-2-1、警戒宣言による規制

交通の制限もしくは停止

警戒宣言が発令されると、強化地域内へ流入する交通はほぼ禁止されます。同時に強化地域内では交通手段が大幅に制限されます。

 強化地域内では、公共交通機関は原則停止します。新幹線をはじめJR各線、私鉄などの鉄道は最寄りの駅、バスは最寄りのバス停もしくは安全なところで運転を停止し乗客を降ろすことになっています。乗用車の移動も速度制限(一般道路では時速20キロ、高速道路では時速50キロ)が行われます。また、必要な救援体制のため、一部の幹線道路については緊急車両以外は通行止めになります。

 強化地域内から地域外に避難する車両は通行を認められるようですが、地域外から強化地域内に入ることはできなくなります。たとえ強化地域内の住民であっても中に入る(帰宅もしくは帰社)ことは出来なくなります。これは例外なしの通行止めとなります。

 最近の見直しでは、強化地域内の全ての公共交通機関を急に止めてしまうと、帰宅難民が発生し大混乱に陥ることが明らかになり、震度5弱程度が予測される地域の場合、耐震に問題がなければ、一部公共交通機関は徐行運転で運行を続けることを検討しているようです。しかしそれも大幅な緩和ではなく、おそらく比較的震源から遠い名古屋市から西側の交通機関に限られると思われます。
 徐行運転が長く続けばどのようなことになるかは明らかです。スピードが通常の五分の一になれば、単純計算でも目的地に到着する時間が5倍になるということです。実際には信号や踏み切り、前後の列車で乗り降りに時間がかかるので、遅かれ早かれ動かなくなることと思われます。

 

 通信の制限

 制限されるのは交通機関だけではありません。携帯電話や一般加入電話は通話制限が行われます。通話制限によりかなり通じにくくなると思われます。

 携帯電話はまず通じません。大きな災害おきると、通常の数十倍もの電話が殺到します。一度に多量の通話が集中し(「輻輳」ふくそう、というそうです)緊急電話が使用できなくなる恐れがあるため、携帯電話を含め一般電話の通話を大幅に制限してしまいます。

 阪神・淡路大震災当時は比較的、携帯電話がかかりやすかったといわれていますが、そのときの携帯電話の普及は500万台程度でした。現在では、固定電話が6000万台に比べ携帯電話は7000万台も普及しています。阪神・淡路の時とは比べようも無いほど携帯電話が集中し、かかりにくくなると思われます。
 ある研究では、一番かかりやすいのは携帯のメール、次が固定電話、最もかかりにくくなるのが、携帯の音声だったといわれています。携帯のメールと音声をまったく別の系統で中継することにより、連絡しやすくする試みがはじまっているようです。

営業の停止

人の集まる場所での営業は原則中止し、客を店外に出すように決められています。デパートや地下街、劇場などは閉店し、客を店外に誘導することになっています。病院も外来診療は閉鎖しますが、入院患者は原則そのままのようです。銀行も原則閉まってしまいますが、時間と金額を制限して引出しには応じるようです。ATMなどは一部を除き、引き続き営業するようです。

 

4-2-2、警戒宣言は戒厳令

 警戒宣言は戒厳令

 警戒宣言はそれ自体、災害の始まりとなります。これは有事法制なのです。個人の自由を制限するという、まるで戒厳令のような状態になります。しかも、警戒宣言はいつまで続くかはっきりしません。

 2000年の東海豪雨や、毎年やってくる台風などの風水害は、被害さえなければ一夜明ければ交通は復旧し、台風一過の晴天になり、何事もなかったように帰宅できます。しかし警戒宣言発令中はそうはいきません。大地震がおきると予知された時(2,3時間、もしくは2,3日後)まで警戒態勢が続きます。

警戒宣言が出れば、日本の大動脈が止まってしまうことになります。運輸関係の会社は大変な損失でしょう。また、さまざまな物資が東海道を動くことで仕事が成り立っている会社はもっと多くなります。警戒宣言中に仕事が出来ず、予定した商品が届かないことで倒産する会社も出てくることでしょう。

交通の自由も通信の自由も営業の自由も、警戒宣言によって停止されることになります。

 国は、国民の生命と財産を守るという大きな公共の福祉を目的とし警戒宣言を発令したのであって、警戒宣言の発令に原因する企業の経済的損失には、たとえ地震がおきなくても何の保障もする義務はありません。

 このような体制のなかで耐えるという経験は、戦時下の体制と同じです。しかも敵の姿は見えないのです。

 だれも経験したことの無い異様な状況が繰り広げられ、パニックが起こらないとは断言できません。様々な問題があり、対応が必要となります。 

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