超個人的・旅コラムJ

'05.9.4

【パート2:三陸大縦断・中編】


 久慈からは三陸鉄道北リアス線に乗り継ぐ。久慈駅は市街の真ん中に位置しているものの、9時10分発の盛行き列車の乗客は、ようやく座席の半分が埋まっている程度。時間帯を考えると、むしろ久慈方面の流動の方が多いのかもしれない。地方部の第三セクター鉄道の経営は相当厳しい環境にあると思われるが、地域を挙げて「マイレール三鉄・地域30万人運動」を展開し、利用促進・サービス維持のための努力が随所に見受けられる。まさに手づくり感のある鉄道、といったところか。

 アッカ川をまたぐ高い鉄橋の上で、観光案内のアナウンスとともに、列車は一時停止。毎日全列車でこのようなサービスをしてくれているわけではないと思うが、一般の列車でありながら観光列車さながらのサービスで、なにやら得した気分。地域外の客に対しては観光路線で売り出したいところである一方、実際の路線はリアス式海岸を眺めながら走れるわけではなく、トンネルの連続なのが実態である。(いや、それこそリアス式海岸の特徴ではあるのだが・・)

 宮古からJR山田線に入るが、この列車は直通で、雰囲気は特に変わりない。陸中山田を過ぎると、再び三陸らしい静かな湾が眺められる。次の吉里吉里でも、同じ湾の外周をぐるっと回り込み、トンネルを抜け次の大槌ではまた隣の湾に移っている。三陸らしい車窓が広がるのは、このあたりであろう。また、比較的大きい湾では、ところどころ水門を見かける。おそらく津波が発生した時の防潮堤であろう。普段は波の穏やかな内湾でも、津波が襲来したときは逆に波が増幅するものであり、日頃からの備えが欠かせない。美しいものにはトゲがある、という例えが相応しいかどうかよく分からないが・・・

 長細い製鉄工場のある釜石からは再び三陸鉄道となり、南リアス線となる。小さい湾の脇を通り、トンネルを抜けるとまた隣の湾へ、というパターンは同じだが、山田線とは違いトンネルの長さが長くなった。また、3線を通じて、都市部を除いて比較的小高い場所に線路が走っており、その分、町全体を見渡すことができる。

 久慈から約4時間、ようやく盛に到着。広大な操車場を眺めつつ、ゆったり乗り換え時間を過ごす。3年前にここを訪れたとき、昼ごはんを探して盛の街を歩いていたところ、震度4の地震に遭遇し、店のガラスが割れるなどの被害を目の当たりにした。今日はそんなトラブルもなく、まだまだ暑い日差しの下、のんびり過ごす。

 30分のインターバルの後、大船渡線に乗り継ぐ。リアス式海岸のパターンはまだまだ続くが、1つ1つの湾がさらに大きくなってきたようだ。キハ100系は思いのほか軽快に歩を進めるが、線形がよくなったからなのか、それとも多少の勾配に影響されない程の車両性能の良さなのだろうか。

 陸中高田を過ぎ、昼下がりのいい時間、うつらうつらしていたところ、突然の減速と連続するタイフォンで目が覚める。どうやら野生のシカが線路を横切ったらしい。無事にやり過ごしたようでなによりだが、自然が豊かな証拠だとのんびり言ってはいられない。衝突してしまうと立派な事故であり、運転士も気が抜けない。安穏と山の縁を辿っていればよいものではないのだ。


<パート3へ続く>

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