超個人的・旅コラム⑭
’07.3.18
【パート3:車窓は見えなくても・・】
23分のインターバルの後、期せずして収穫の多かった鳴子温泉を後にする。駅を出発後、すぐにトンネルに入り、渓谷を渡る山岳コースに突入。このあたりはまだまだ雪がかなり残っており、一気に冬に逆戻りした様相。注意していなくても感じられる急勾配に、さすがのキハ110も、唸りを上げて峠に挑む。なかなか乗りごたえのある区間だ。
堺田でサミットを迎え、一転なだらかな下りに。分水嶺を越え、寄り添う川は日本海に向かう小国川に変わった。鳴子温泉までと違い、太陽は厚雲に隠れ、時折雪が舞っている。峠を降り切っても辺りは一面の雪化粧。凹凸を覆い隠された田畑は、あたかも純白のヴェールに覆われているかのようだ。そんな車窓を暖かい車内でボックスシートを一人独占し、足を投げ出して眺め、悦に入る。ローカル線の旅の醍醐味、贅沢な瞬間である。
終着の新庄まで2駅の長沢を過ぎたところで、左手から奥羽本線が寄り添ってきた。2線はしばらく並走するが、合流はしない。(特に現在は、標準機と狭軌で合流のしようがないが…)次の南新庄も、奥羽本線側にはホームはない。程なく、銀色のフォルムの東京行き<つばさ128号>とすれ違う。<つばさ128号>の新庄出発は17時16分、この列車の到着のわずか6分前。もう少し乗り継ぎの利便を考えてほしいものだが…。ともあれ、本格的に雪の舞う新庄に、定刻通り到着した。
新庄はこれまで乗り継ぎで何度か降りたことがあったが、来るたびに駅舎の改装中だったり、新駅舎が出来ていたりと、駅前の様子が変わっている。しかし、乗り換え時間の都合上、街中まで出て行ったことはこれまで一度もなかった。さっきは乗り継ぎがなってないと毒づいてみたものの、個人的には、次の<つばさ>までの約1時間、新庄の街中を回ることができ、実は好都合だったりする。今回のようなのんびり旅行には、こういった余裕が重要である。
18時36分発<つばさ130号>で、既に夜を迎えた新庄駅(新庄駅舎の夜のライトアップは、なかなかきれい)を後にする。あらかじめ指定を取っておいた席が、壁に直面した1番席。しかしこの車両の乗客は数人。なんで敢えてこんな席に!と憤っていたのもつかの間、途中駅からの利用が意外に多く、山形を発車時点でほとんど席が埋まってしまった。通常1番・2番席は売り切れ寸前で発券されるというウワサだが、単に指定を抑えるのが遅かっただけのようだ。車窓は既に真っ暗、前を向いても圧迫感。東京までの約4時間、今回から旅のお供のメンバーに加わったモバイルノートPCで、ひたすら旅の記録を綴っていたのだった。
ルートは単純ながら、ダイナミックに新幹線・特急に乗りまくった今回の「土日きっぷ」の旅。青春18きっぷの旅とはまた違った、随所に余裕のにじみ出る旅になった。緩やかに流れる時間を楽しむか、ゆったりした空間を楽しむか。どちらも捨てがたい魅力であるが、どちらも日常から離れた時間を過ごすという意味では共通している。次の旅はどちらの趣向にしようか、悩ましい問題が今から一つ増えそうである。
<Fin>