超個人的・旅コラム 〜赤穂・岡山
99.4.7
【パート2:春うららかに・・・ふらり岡山】
あまりに居心地がよく、あやうく乗り遅れそうになった赤穂線の列車でさらに西にむかう。いきなり山の中へ突っ込んでいったので意外な気もしたが、日生で海が見えた。しかししばらくしてまた内陸の方へ戻ってしまった。赤穂線は海岸を走る、というイメージは現実によって崩された。チラッと見えた海以外は、山陽本線とさほど変わらない景色であった。
赤穂線内で途中下車ができる時間があるので、何処でもよかったが、西大寺にした。近鉄の大和西大寺と比較すると、対面2線のホームは少し見劣りするが、そのホームの向こうに広がる田畑とさらに奥の山々が、春の陽気につつまれて美しく見えた。のんびりとした田園風景である。その反対側の町中のほうは、細い川にかかる橋もきれいに整備されていて、落ち着いている。特に夕方になったらいい雰囲気を醸し出すだろう。それにひきかえメインであるはずの西大寺は特に目を引くものはなく、さっさと出てきてしまった。
程なくして着いたのは岡山。四国に行くときなど、何度も利用している駅だが、観光で駅を出るのは今回が初めてである。市電で岡山城へ。ちょうどサクラが見頃で、三脚をセットしたカメラマンが何人も並んでいた。黒ずくめで他の城よりも太くどっしりしている感じの天守閣にのぼると、春霞の岡山市内が一望できる。特に上から眺める後楽園はいいもので、昔の殿様もこうして春の季節をめでていたのではないか、とふと気分が数百年前に飛んでしまった。
このまま岡山市内を巡ってみても良かったのだが、予定を変更して宇野線に乗ることにした。特に茶屋町以南は宇高連絡船がまだあった時代以来乗っていないので、景色ももちろん覚えていない。事実上の初乗り区間である。どこかで降りてみようとしたが、特にめぼしいところもなく、結局宇野のひとつ手前の備前田井で途中下車した。町並み自体は、海は近いものの漁村ではなく、普通の家が国道沿いに並んでいるだけだったが、目を奪われたのはホームの横に立っている満開の桜の木だった。人っ気のない寂しいホームの上を覆いかぶさるピンクの傘。ちょうど夕暮れにさしかかる時間帯だったのもあいまって、まるでどこかのドラマの1シーンに出てきそうな情景だった。その横の踏切を、犬を連れた子供が横切っていく。ここを故郷とする人が今ここで生活している。あの子は大きくなったらこの駅を使って学校に通うのだろうか。そして何年後かの春に、これと同じような景色を見るのだろうか。そのときあの子は何を思うのだろうか・・。ここでは私はあくまで他所者の旅行者である。私の方が勝手に人が生活しているエリアに立ち入っているのだが、旅の途中にこのような印象深い風景に出会うと、ふと自分がここの人間であるかのようにその風景を眺めて、感情を移入したりしてしまう。そんな気分になれるのも、旅の一つの魅力なのであろう。