超個人的・旅コラム

‘00.5.4

【パート3:気が変わって突然三木鉄道に乗りにいく】

  当初はここからJR加古川線に乗るつもりだったが、ここで急に先ほど通ってきた三木から走っている三木鉄道のことが頭をよぎり、突然三木へ折り返すことにする。突然の予定変更ができるのも、フリーきっぷのいいところである。同じ列車に乗り、ついさっき見てきた景色を逆向きに見ること約15分、三木に降り立つ。市街地は川の対岸にあり、駅のすぐ周辺にはローカルムードが漂うが、橋を渡ると国道沿いに小さな商店が並んでいる。しかし今日が休日なのもあるが、ほとんどの店が閉まっていて、国道を走るクルマは多いもののどことなく寂しい。モータリゼーションの影響を受け、旧市街地の商店が衰退している様子は全国至るところで見られるが、ここもそうなのだろうか。特に地方鉄道の駅周辺にはこのような街が多くあり、途中下車するたびに寂しい思いをする。

  歩道のない国道沿いを歩く。初めて来る場所であるから道はわからないので、少し不安であったが、何とか三木鉄道の三木駅に着いた。ここはかつての国鉄三木線を第3セクターとして引き継いだ路線であり、路線自体の歴史は古い。この三木駅も、1両のレールバスには似合わない、大きくて風格のある木造駅舎であり、駅構内も広大である。駅前の広場にはかつてここを走ったSLの動輪や記念碑があった。駅に着いたのが発車3分前であり、危うく1時間以上待ちぼうけを食うところだった。

  三木を発車した1両のレールバスは、先ほどと同じような平坦な田園地帯を走る。利用客は十数人であり、少し寂しい。線路の状態もあまりいいとは言えず、絶えず列車が横揺れを起こす。横を併走する国道のクルマにも抜かれていく。この周辺の人のほとんどがクルマで加古川や姫路まで直接出てしまうので、鉄道の方はやはり苦戦を強いられているようだ。しかし、いくらドアトゥドアといえども、道中運転に神経を使わなくてもよく、のんびり好きなことができる鉄道にも良さがある。もちろん他にも交通事故の危険性やエネルギー消費量、環境への負荷など、鉄道の利点は数多くある。1年に1回もこの列車に乗らない他所者の私がいうのも説得力がないが、もしクルマ利用者が鉄道の良さを知らずにいるのなら、せめて鉄道の良さを知るだけは知ってほしい。その上でクルマを利用してほしいと思う。単に鉄道マニアのひいき目からだけではなく、一度は鉄道に振り向いてみてほしい。そのためにも、決して判官びいきや感傷からではなく、鉄道にがんばってもらいたい、とささやかながらのエールを送りたい。

  三木から約10分で厄神に到着。さっき粟生で見たJR加古川線との乗換駅であり、駅周辺には住宅が少し密集しているだけで店もあまりなく、特に大きな町ではない。ここからスルッとKANSAIエリアから離れ、運賃を払ってJR線で姫路へ移動する。昼間(といってももう夕方)に姫路に来たことは最近なく、姫路城までは行けなかったが街中をしばし歩く。JR姫路駅から道を渡った反対側のデパートビルの2階に、山陽電鉄の姫路駅はあった。ビルの中に駅があるのは、その利便性とともに非常に都会的な印象を持て、実際駅の中もかなりの人が利用していた。

  実はこの山陽電鉄も今回が初乗車になる。いつでも初乗車は期待感でワクワクするものである。とはいうものの、もう辺りは日が暮れかけており、飾磨から伸びる支線で網干まで往復した頃には既に日が沈んでしまった。もう車窓も見えないので山陽特急で一気に大阪まで戻ることにする。今回乗ったのはクロスシートの山陽車両であり、快適に時間を過ごせる(他にロングシートの阪神車両もある)。山陽特急に初めて乗った感想は、意外に飛ばすことだった。姫路から阪神梅田まで直通特急を走らせているものの、スピードでは併走するJRに太刀打ちできず、思うように効果があがらないこの山陽電鉄だが、その最大限の努力の現れだろうか。しかし両者の路線は必ずしも接近しているわけではない(特に姫路―明石間)。お互いのテリトリーの住み分けができているならば安定した実績があげられるはずであり、また(いつになるか分からないが)将来予定されている阪神西大阪線延伸により、難波への直通列車が走ればこの山陽電車もさらに利用客の増加が見込めるだろう。そうこうしているうちにライトアップされた明石海峡大橋が見えてきた。見損ねた車窓を確認するためにも、もう一度この線に乗りに来なければならない。

 

  今日一日乗った中でも、初めて乗る列車が多かったのが今回の旅の特徴であり、テーマであった。先にも少し触れたが、初乗車のときはどんな沿線か、どういう車窓が見えるだろうか、といった期待感が湧いてくる。またそれが初めて乗る列車ともなれば、どんな車両か、車内はどんな雰囲気か、といったことも気になり、ワクワクドキドキしてくるものである。おそらくその時の私の顔は少なからずニヤけていることだろう。

  確かに、神戸電鉄にしても山陽電鉄にしても、鉄道マニアを自称する割には、自分が住む関西圏の列車でも乗ってないところが多かったのは、少し反省するところである。実際、フリーきっぷがない私鉄に乗ろうとすればどうしても金銭的な抵抗もあるから、結果として今まで残ってしまっていたのだろう。しかし逆に考えれば、まだまだ知らない列車が日本中にたくさんあるということであり、それだけ大きく広く、奥の深いのが鉄道の世界ということでもあり、まだまだ鉄道を相手に楽しめる、ということであろう。

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