超個人的・旅コラム

00.5.6

【パート3:ノスタルジック能勢電鉄完乗!】

  大阪空港から一駅戻って蛍池で降り、ここから阪急宝塚線に乗り換え、川西能勢口まで行く。お目当てはこれも今回初乗車となる能勢電鉄である。阪急電車とほぼ同じ形のクリームとオレンジの塗色の3両編成は、左に大きくカーブを切って阪急線と分かれるが、序盤は勾配も小さく、沿線には住宅やマンションが立ち並ぶ、といった、よくある近郊住宅街の様相が広がる。このあたりの主要駅は、朝のラッシュ時に阪急梅田行きの直通特急が走るため、ホーム長が10両対応になっており、普段の3両編成には少々贅沢である。しかし、次第に勾配がきつくなり始め、一の鳥居あたりでは付近には住宅も減り、レールをきしませるほどのカーブが連続する。紅葉の季節にはこのあたりは美しいだろう。

  山下で2線に分岐するが、この列車はそのまま妙見線妙見口へ直通する。妙見線末端部分までくると、家もまばらになり、途中駅のホームも短くなり、一気にローカルムードが高まる。線路状況も少し悪く揺れが大きい。森の中をトコトコ走る、といった感じだ。終着の妙見口もそのムードの終着にふさわしい、山あいの小駅、といったこぢんまりとした終着駅だった。小さな集落が道沿いに続く。この道は妙見山のロープウェイに続いているようで、ハイキングの出発駅として利用されているようだった。クルマも少なく、また日が傾きはじめた頃でもあり、落ち着いた静かな時間が、次の列車を待つ間流れる。ヒバリの鳴き声のみが山あいにこだまする。

  また分岐するもう一方の日生線日生中央は、妙見口とは対照的に近代的な橋上駅舎で、ファストフード店やコンビニが併設されたデッキに直接つながる広い駅前広場が整備されており、さらに向こうには住宅が思っていたよりたくさん立ち並んでいた。先の阪急梅田行き直通特急は、ここ日生中央から発車することからも、かなりの通勤需要をこの地域は抱えていることを、現地に来て初めて知った。同じ能勢といっても、自然の中と、住宅開発が進むところの両面を併せ持つことを、能勢電鉄が端的に表現しているようだった。(この駅を含め、能勢電鉄が豊能郡能勢町内を走っていないことに気付いたのは、帰ってからのことだった!)

  川西能勢口まで戻った後、同じルートを戻るのもなんなので、宝塚から阪急今津線で今津まで行く。神戸本線と接続する西宮北口から終着の今津までは、西宮市内を縦断する線であるにもかかわらず、ワンマン列車が走る。その割に終着の今津はまだ新しい高架駅で、ワンマン列車とは似つかわしくない。阪急今津駅を出ると目の前に阪神今津駅があり連絡は便利だが、阪神今津駅も普通しか止まらない駅なので、どれほど連絡客がいることか。(2001年3月から急行が停車することになった)

  もう既に辺りは日が暮れ、景色は街のネオンしか見えないが、今日一日ふりかえってみると、京都・大阪・兵庫と私鉄で乗り通した割には、いずれも都心から離れた場所ばかり通ってきた。いわゆる郊外の風景を改めて見てみると、確かにこの時代、周辺の景色は住宅地ばっかりで見ごたえが少ない(能勢のかなり山間にも住宅地が続いていたのには正直驚いた)。しかしその中にも、伏見から見た巨椋池、大阪モノレールからの見晴らしなど、ハッと息を飲むようないい景色も点在することを、今回の旅行で知ることができた。

  通勤通学で普段利用する分には気づかないかもしれないが、乗る場所をちょっと変えたり、時間を変えたりすることで、いつもの車窓がまた違った風景に映るものなのかもしれない。そんな小さな発見が、もしかしたら私のまわりにもたくさん落ちているかもしれない。そして、あなたのまわりにも…

〈番外編に続く〉

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