超個人的・旅コラム

01.3.15

【パート4:秘境!冬の只見線を行く】

  列車は小出で降り、今日のハイライトである只見線に初乗車する。白に緑と黄緑のストライプが入った2両編成のディーゼルカーはいきなり、なだらかながら登り坂に取りつき、それが延々と続く。途中の駅に止まるごとにさっきの乗り換えてきた高校生も少なくなり、車内にはディーゼルのエンジン音がけたたましく響く。

  登り坂はしだいにきつくなり、スピードもかなり落ちてしまう。途中駅の間隔も次第に大きくなってきた。周りはまさに森の中。家一軒、人一人見ない時間が長く続く。雪の高さも高くなるのがはっきり見て取れる。踏切もすっぽり埋まって、雪の中で鳴っている有り様。JR線最大の豪雪地帯ともいわれるこの沿線。厳しい自然条件がイヤでも感じられる。この只見線は営業面から言えば明らかに赤字だが、代わりとなる道路もあまりよいものでないため、特に冬場の足のために廃止が免れている現状である。現に只見で観光客グループが下りたあとは、私が乗る2両目の乗客は旅行者3人になった。

  只見から先、会津川口までは、列車本数もグンと減り、定期列車は一日3往復しかない。ここから先はホームも1両分しかない小さな駅が続き、後ろの車両のドアは開かない。駅舎(というより小屋)の屋根より高く雪が積もっているところも普通にあり、ホームに降りてもその先が雪の壁で進めないようなところである。しかしどの駅も、道からホームの乗り降りするスペースまでだけは雪かきされている。一日で一人も乗客がないかもしれないような小さな駅にもかかわらず、全ての駅でそうだった。雪かきするのがJRの職員なのか、地元の人なのか定かではないが、鉄道が地域の重要な足だがらこそ、苦労して毎日雪かきしてくれている人がいる。鉄道が愛されている。私はいつも鉄道が好きだが、これほど大事に思うことは普段そうそうあることではない。

  小出から約2時間経った会津川口で、反対列車と行き違うため6分停車。ちょうど休憩時間、ということで両方の列車からホームに数人が降り立つ(もちろん私も)。ずっとみぞれがやみそうでやまない。駅前には何もなかったが、ダム湖のほとりで眺めはよい。ここまでの沿線でもダム湖はいくつか見られ、それぞれいい景色なのだが、それだけ只見が電源地帯であることがわかる。よくこんな山奥にダムを造ったものである。

  ここからはしばらく下りか続き、走りは幾分軽快になった。しかし雪は依然として多く、深い森の中と、その合間に現れる山あいの集落を通り抜けていく。こんな風景は私にとっては非日常だが、何時間も同じ景色を見ているとさすがに単調に思えてくる(ずっと海が間近に見れる五能線も同じ感じ)。相変わらずエンジンの音のみが支配する車内で、ムースポッキー(ビター)を食べながらいつしか記憶が跳んでいた。

  会津宮下の他には目立った町もなく、ずーっと薄暗い森の中を走ってきたが、突然森の景色が開け、左側から白い光りがパッと射し込んだ。思わずそちらの方を振り向くと、青白い空が広がっている。眼下には白一色の平野が一面に広がり、その彼方には磐梯山をはじめとする会津連峰が連なっている。小出から約3時間、長かった越後山脈を超え、ついに会津盆地に出た瞬間である。こういった劇的な景色の変化は、長野の篠ノ井線などいくつかの路線で見ることができるが、ここの景色が今まで一番感動的に思えた。ここまでパッとしなかった只見線のイメージが、ここでガラリと変わった。(この瞬間を写真に撮っておけばよかった…)

  山を下りきった会津坂下からは、ここまで一人占めできたボックス席も埋まり、久々に立ち客が出るほど混み合ってきた。車内の雰囲気もガラリと変わった。ここからは盆地の中の平坦なルートが終着の会津若松まで続く。列車も今までとうって変わって軽快な走行になった。山あいで降っていたみぞれもここではもう止んでおり、傾きかけた日差しが雪に反射してまぶしい。今日はほとんど一日中列車に乗り詰めだったが、私にとっては全く苦ではない。それより一日で海あり山あり平野(ホントはここは盆地だが)ありと、メニュー盛りだくさんの車窓が楽しめて良かった。そんな思いを抱きながら、ここちよい揺れに身を任せていた。右手に町並みが広がってくると、終点の会津若松はもうすぐである。

<番外編へつづく>

<あれ?帰るの?>