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【part-1:南部縦貫鉄道との予期せぬ再会】
丸2日間、みっちりドライブ漬けだった割に、疲れもほとんど残らず、普段絶対に起きないような時間に、目覚ましよりも早く目覚める。どうなっているのだろう。よほどアドレナリンが放出されている状態なのだろうか。(いや、両日とも、津軽海峡フェリーの中で仮眠を取ったからだろう。)
まず、市街地から南西方向に少し離れた丘陵地にある青森空港までひとっ走り。シックな色調で、どっしりした印象の外観であるターミナルビルの中を一回り。到着便も出発便もない時間帯だったため、ターミナル内は閑散としていた。空港からの帰り、雨の中に少しみぞれが混じっていたが、麓まで下りてくると止んでいた。
国道7号線バイパスで青森市街をすり抜け、みちのく道路を経由して七戸に向かう。七戸には、今では東北新幹線が町の中央部を縦貫しているが、それ以前の鉄路としては野辺地と七戸を結ぶ南部縦貫鉄道がかつて走っていた。1両のレールバスが、森の中をトコトコ走るメルヘンチックな鉄道だったが、もともと需要が薄い地域を結ぶ路線でもあったため、1997年5月に休止、そのまま2002年8月に廃止になった。今の姿はどうなっているのだろう。正確な位置も下調べせず、しかし地図にあるおおよその廃線跡を頼りに、ウロウロすること数分。砂利敷きの空間の奥に忽然と現れた、コンクリートむき出しの無骨な駅舎。その奥には対面のホームと車庫。ここが南部縦貫鉄道七戸駅である。
前回訪れたのは1997年3月。廃止直前だった南部縦貫鉄道に、卒業旅行と称して高校の同級生と乗りに来た。七戸駅に滞在したのは折り返し列車の発車時間までの15分間だけだったが、足元に少し雪が残っていたこの小さなホーム、その脇に立っていた木、そしてこの駅舎。今でもハッキリ思い出せる。


旧駅舎の待合所と改札口があった場所が、今は売店になっており、南部縦貫鉄道のグッズ販売のほか、現役時代のサボ(行先標)やタブレット、駅名標や切符も展示されている。これは懐かしい!おそらく17年前当時にも目にしたものだろう。これまで、過去に廃止された路線を記念する施設は何度か訪れたことはある(一昨日の瀬棚駅もそうである)ものの、(一度だけではあるが)廃止以前に乗ったことがある路線を、このように歴史として見ることが、これほど感慨深いものになるとは思わなかった。ましてや、生活の足として毎日利用していた人にとっては、より多くのことが思い出されることだろう。いや、自分の子供の頃のアルバムを見るように、懐かしい一方で、楽しかったこと、辛かったこと、思い出されることが多すぎて、軽々しく正視できなくなるときがあるのかもしれない。
売店のおばちゃんと、17年前に乗りに来たことをなんとなく話していると、「よかったら車庫の中見せてあげるよ」と、何とも思いがけないお誘いが。もちろん二つ返事で、駅舎の奥へ。かつての改札を通り、線路を渡った向こうにある車庫に連れて行っていただく。
電気をつけても少し薄暗いながら、背の高い天井から外の明かりが少し差し込んでいる車庫の中には4両が保存されており、まさに17年前に乗ったレールバス、キハ101・キハ102そのものが鎮座していた。1962年製というから、誕生から50年以上、しかも雪深い厳しい環境の中を走り続けた車両である。車体の角や板金の継ぎ目など、ところどころ隠せない痛みが見受けられるものの、現役の車両だと言われても不思議には思わないような、保存状態の良さである。しかも扉の鍵を開け、車内にも入らせてもらった。車内は掃除が行き届いており、ホコリなどは見当たらない。しかも、料金表や時刻表など、車内の掲示物は廃止当時のものがそのまま残されているのだろう。たしか愛好会が中心となって、定期的に体験乗車イベントを開催するなど、保存活動を続けていると聞いた。ファンの熱意により、この車両、そしてこの鉄道が、愛されているのがよく伝わってくる。





これまで感じたことのないような高揚感を胸に、案内してくれたおばちゃんに礼を述べ、駅を辞した。この出逢いには、本当に感動した。17年の時間を超えたタイムスリップ。しかもあらかじめ計画したものではなく、突然目の前に現れた。思いがけない出逢いだからこそ、より深い感動があり、より強く印象に残る。