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ピクニックって言っても飲み物じゃないんだよ☆
− Sister Princess Side Story −
この話は、お忙しい中にもかかわらず、励ましのメールを下さったポポフ氏に捧げたものの改訂版です。有り難う御座いました。
秋のよく晴れた日曜日。
と言えば必ず運動会かピクニックの話になるのが常だが、この小説は一筋縄ではいかない。
そんなありふれた話にしてはSPSSの名が泣くと言うものだ。
というわけで今回は趣向を変えて、秋なのに大掃除という素敵な話を…………
「ヒナ、ピクニックに行きたいなあ……」
…………………………………………。
………………………………。
……………………。
…………。
それは秋のよく晴れた日曜日。
朝から我が家はてんてこ舞いだった。
今日はみんなでピクニックに行くため、準備に大忙しなのである。
やれビニールシートはどこだの、やれバスの時間に間に合わないだのと大騒ぎをし、
姫に至っては全員分の弁当を作っているため、目を回しそうな勢いであった。
「でも、にいさまのお弁当が作れるなんて姫、最高に幸せですの────っ☆」
………………………………。
ようやく準備が整い、出発である。
「さあっ、みんな行くわよっ!」
こういう時には年長の咲耶が音頭をとってくれるので楽である。
「さすが、伊達に年は取ってないな……」
「お兄様。聞こえてるわよ……」
「すみません……」
笑顔の咲耶に尻をつねられながら俺はバスに乗り込んだ。
しかし、公共のバスなのに、一家族で満員というのはどういうことなんだろう。
バスの中では俺の隣の席を巡って席取り合戦が行われたり、鞠絵が酔ったりと
まあ色々あったが、取り敢えず山道入り口に到着である。
「あにぃ、はやくはやく────っ!!」
衛は全員がバスから降りる前に登り始めている。
「ちょっと待てって。……ほら、ヒナ。ゆっくり降りるんだぞ。手をつかんであげるから」
「うん、おにいたま。……よいしょっと、と、とっ、きゃっ!」
雛子が降り口のステップでつまずき、よろめく。
「おっと」
俺はすかさず雛子を抱き留める。
雛子の小柄な体の感触が俺の胸にヒシヒシと伝わる。
…………最高。
「あーびっくりした。ありがとう、おにいたま!」
「いやなに、当たり前の事じゃないか」
「………………………………」
ヒナは俺の腕の中で俺を見つめている。
「………………………………」
俺もキラリと光る歯でほほえみ返す。
「おにいたま、もう抱っこしなくても大丈夫だよ?」
「また転ぶかもしれないぞ☆」
「そんなこと無いと思うけど……」
「いや、未来は誰にも分からないんだ! だから俺が抱き上げたまま頂上まで……☆」
「調子に乗るなぁっ!!!」
バキイッ!!
咲耶の回し蹴りは今日も切れが良かった。
「…………ぁぁぁぁああああぁぁぁっ…………!」
「……あにぃ、速いな……」
俺の体は衛を追い越して山を登っていった。
空を飛んで。
「あっ」
と言う間に頂上である。
そこは一面の花畑だった。
「うわあっ、すごいすごぉーいっ☆」
「ホントにすごいです☆」
雛子と亞里亞が花畑の中で戯れている。
それはまるで花畑の妖精の如く、キラキラと光り輝いている。
「夢のような光景だ……」
「ねえ、お兄様。私もいるわよ」
「何てかわいい妹たちなんだろう……」
「ねえ、お兄様。私もいるわよ」
「……まだデザートの時間じゃないから、果物ナイフを出す必要はないと思うんだよ。咲耶……」
「ねえ、お兄様。私もいるわよ」
「……それは首に突きつけるものじゃないと思うんだよ。咲耶……」
「ねえ、お兄様。私も……」
…………咲耶もいるのでとても楽しい。
「やっぱりそうよね☆」
咲耶が俺と腕をからめて喜んでいる。
……モノローグまで読まれてしまうようになった俺の運命や如何に!
「ねえ、おにいたま! お花がすっごいたくさんあるよ! おにいたまもおいでよ──!!」
ヒナが俺を呼びながら花畑を駆けてゆく。
「あはは、待ってくれよ〜」
砂浜を駆ける恋人達のように、俺も雛子の後を追う。
「きゃははっ、おにいたまこっちこっち〜」
「つかまえちゃうぞぉ〜」
わざとゆっくり走ってその甘い一時を楽しむ。
それでも雛子の歩幅は小さいので俺は簡単に追いついてしまう。
「そおら、つかまえたっ」
「きゃっ☆」
雛子を後ろから抱きしめ、二人で花の中にそっと倒れ込む。
そしてそのまま二人で並んで青空を見上げる。
「すっごくいい匂いだねっ、おにいたま!」
「ああ、そうだなあ」
「それにすっごくキレイ……」
「何言ってるんだ、ヒナの方がずっとずっと……」
俺は雛子の方に向き直ると、慣れた手つきで雛子の顎を持ち上げた。
「おにいたま……?」
「ヒナ……毎回言っているが、俺はお前のことが…はうっ……!」
「毎回言ってるけど、何をしていらっしゃるのかしら? お兄様」
早くも俺の頭は咲耶の足の下敷きになっていた。
土の香りが何とも……。
そこへ衛が猛ダッシュで駆けてくる。
「こら────っ!! 咲耶姉っ!!」
ムギュッ。「ぐはっ……!!」
「あら、なあに? 衛」
「もう、咲耶姉は離れててよっ!!」
「そうはいかないわっ。お兄様は私のものよっ☆」
「勝手に決めないでよっ!!」
「結婚式の日取りだって決めちゃってるもん☆」
「なっ……! あ、あにぃっ! そんなこといつ決めたんだよっ!!」
「冗談よ、冗談☆」
「もう───っ!! からかうのはやめてよっ!」
「衛ったら引っかかりやすいんだもの、単純ねぇ……」
「何だってぇっ!」
「いいからお前ら、俺の頭から足を離せっ!!!」
「うわっ!」「きゃっ!」
俺が土だらけの顔をがばっと上げ、二人は思いきりこけた。
「いたたっ……、もうあにぃったらいきなり起きあがらないでよ」
「ああん、もっと優しくしてくれなきゃダ・メ☆」
「咲耶姉っ! 誤解を招くような台詞はやめてよっ!」
「おまえら、人の頭を踏んでおいてそのコメントかよ……」
もういい。こうなったら意地でも雛子と遊びまくってやる。
俺は遠くで花と戯れている雛子に声をかけた。
しかし。
「おーい、ヒ……!」
「せいっ!!」「たあっ!!」
二つの手刀が光った瞬間、
「ぐはあっ……!!」
音もなく俺はその場に崩れ落ちた。
「今回は咲耶だけじゃなく、衛まで…………」
そして俺は咲耶と衛に引きずられ、その場から消え去ったのである。
「みんな───っ! お昼の時間ですわよ──っ! …………あれ? にいさまは?」
「咲耶おねえたまもいないよ」
「それなら…………私のダウジングで…………探してみないかい?」
「衛お姉ちゃまもいないみたい」
「…………ダウジングでも…………やってみようか」
「本当ですわ。兄上様、どこへ行ってしまわれたのでしょうか……」
「…………ダウジング…………嫌いかい?」
「兄チャマ───っ、どこ──っ?!」
「…………ダウジングは…………確率が結構…………高いんだが」
「兄や……くすん」
「…………それとも……違う…………方法がいいのかな…………」
「お兄ちゃん……どこ行っちゃったのかな……」
「…………タロットは…………どうかな…………」
「アニキのことだからトイレじゃないの?」
「…………ここは広いから…………魔法陣という手も…………あるんだが…………」
「兄君さま……ワタクシの舞をご覧に入れようと思ったのに……」
「…………みんな…………私のこと…………嫌いかい?」
「ここまで来れば大丈夫ね」
「森の中だからね」
「お……お前ら、何をするつもりだ……」
まだ上手く動けない体で訪ねた俺に2人は不敵な笑みを向けた。
「うふふっ☆」
「むふふっ☆」
不敵な笑みで答える2人に俺は少したじろぐ。
「…………な、何でしょう……?」
「決まってるじゃない☆ ねえ、衛?」
「もちろんだよ、咲耶姉」
「ここは森の中」
「ボク達しかいない」
『ということは』
2人の声が合わさった瞬間、俺の体が地面に押し倒される。
『目的はただ一つ!!』
「お…………おい、まさか」
『ヤル!!』
「カタカナで言うなあぁ────っ!!」
「大丈夫っ、ここは誰もいないわっ!」
「そうさ、あにぃ! ボク達だけなんだから何の遠慮もいらないよっ!!」
俺の服はどんどんとむしり取られていく。
「やめろっ、やめるんだあぁ─────っ!!」
とうとうシャツまで脱ぎ捨てられ、2人の目が輝き出す。
「うふふっ、……うふふふふふっ☆」
「むふふっ、……むふふふふふっ☆」
「お、おい、……眼が危ないぞ…………」
そして2人が勢いよく俺に覆いかぶさった瞬間……、
「あにぃっ!!」「お兄様っ!!」
ゴッ!!!
「…………」「…………」
2人は頭を抱えてうずくまっていた。
どう考えても2人の頭がぶつかった光景にしか見えない。
「咲耶姉っ! 邪魔だからどいててよっ!!」
「衛の方こそ私の邪魔をしないでっ! 後ろにいなさいよっ!!」
「何だってぇっ!!」
「何よっ!!」
「あ……あの…………」
おずおずと声をかける俺だったが、
『何っ?!』
「…………何でもありません」
2人の剣幕には勝てなかった。
その後、延々と15分以上も2人の言い争いは続き、俺は延々と体育座りで膝に顔をうずめるしかなかった。
何なんだ俺の立場は……。
「ゼェゼェ…………と、とにかく、咲耶姉は離れててっ!!」
「はあはあ…………ま、衛こそ、後ろにいなさいっ!!」
「…………結局、話は何も進んでいないんじゃ……」
「せいっ!!」「たあっ!!」
「今回……俺……イイとこなし…………ぐはっ」
俺はまたも2人の手刀で気を失ったのであった。
「…………くん、…………にくん」
誰かの声が聞こえる……。
「…………う、ううん……」
……この声は……。
「……兄くん」
「……っ!!」
地面からガバッと起きあがった俺の目の前には、
「気づいたかい?」
やはり千影が居た。
「千影……どうしてここに……?」
「兄くんを…………捜して…………森まで…………来てみたんだが…………
やはり…………ダウジングは…………確率が…………高いね…………」
「そ、そうか。…………あれ、咲耶と衛は……?」
「ああ、あの2人なら…………」
そう言って振り向いた千影の目の先には…………
「…………あれは……何?」
「ああ…………2人が…………いつまでもケンカを…………やめないものだから…………
ちょっと…………ね…………」
そう言ってクスリと笑った千影の笑顔を俺は一生忘れない。
…………色んな意味で。
「さて…………兄くん」
「は、はいっ!!」
「ここは…………森の中だね…………」
「はあ……」
「私たちだけしか…………いないと…………いうこと…………だね」
「ま、まあ…………」
「兄くん…………これが…………どういうことだか…………わかるかい…………?」
「どうって……ま、まさか…………!」
俺が言葉を言い終えぬうちに、千影はスッと立ち上がった。
そして千影の上着が1枚、スルリと地面に落ちてゆく。
「お、おい、千影。まさかお前まで…………」
「兄くん…………私は…………本気なのだよ…………」
俺と会話を交わしている間にも、千影の体からいくつもの布が剥がれていく。
そして……………………
「兄くん…………」
顔をほんのり赤らめた千影が俺に覆いかぶさってくる。
ああっ、挿し絵がないのが悔やまれるっ!!
「さあ、兄くん…………力を抜いて…………」
「ち、千影…………」
もうダメかっ!!
いや、ダメなわけがない! 据え膳食わぬは男の恥っ!!
しかし、俺には雛子という可愛い妹がいるじゃないかっ!!
ならば両方っ!!
うむ、解決っ!!!
「千影ーっ!!」
俺は思い切り起きあがり、千影を抱きしめた。
だが……
「兄…………くん…………スー…………スー…………」
「千影……?」
寝ていた。そして……。
「…………この香りは……ワイン……?」
そう言えば、白雪が言っていた。
『今日はデザートにワインも付いてますのよ。あっ、別ににいさまを昏睡状態にして
寝込みを襲おうなんて考えている分けじゃないんですのっ。ただのデザート、そう、
デザートなんですのっ!』
……何か気になるが、今はそんなことを言っている場合じゃない。
恐らく千影はみんなに無視された腹いせにやけ酒をしてしまい、勢い余ってこんな事に…………。
……いや、ただそう思っただけ。
とにかくこんな状況を誰かに見られでもしたら大変だ。
どう考えても少女を昏睡状態にして襲っているようにしか見えないからな。
俺は急いで千影に服を着せようと…………。
「お兄様☆」
「……………………」
「あにぃ☆」
「……………………」
そうだよな。ギャグ小説だもんな。
こうなるのは当然のことだよな。
「2人とも回復力がすごいね……」
「おかげさまで☆」
「もうバッチリさ☆」
「そうか、それは良かった。じゃ、俺はこの辺で…………」
『待って』
俺の両肩は笑顔の2人にがっしりと掴まれ、
「…………ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…………!!」
「…………ん? 今、おにいたまの声しなかった?」
「兄やの声……? ううん、聞こえなかったです」
「アニキの声? 気のせいじゃないの?」
「兄チャマったら、四葉の追跡をかわすなんてただ者じゃないですぅ!!」
「お兄ちゃま、まだ帰ってこないね」
「うん、お兄ちゃんもみんなもどこに行っちゃったんだろう……」
「兄上様……どちらにいらっしゃるのですか……」
「早くワタクシの舞をご覧に帰っていらしてくださいませ、兄君さま!」
草原ではみんな仲良くお弁当を囲んでいた。
そんな平和な秋の午後である。
【 完 】
「あれっ、あれっ? にいさまに飲ませるはずのワインが見あたりませんわっ!!
姫とにいさまのラブラブ大作戦はどうなってしまうんですの─────っ!!」
【本当に完】