確信なんか全くなかった癖してなんて大胆な事をしたんだと思う。
気が付けば、手はその背中にそっと触れていて無意識に名前を読んでいた。

呼ぶ

今日はお店がお休みで、新ちゃんは仕事に出掛けてて、一人で家にいるのもなんだかつまんなかったから街に出る事にしてみたのが一時間前。
でもこれといって行きたい所がある訳ではなかったので、ぶらぶらとただ歩いているだけで時間を潰していた。
街にいくつか立てかけられている時計を見ると、短い針は一を指していてお昼をまわっていて、なんだかお腹がぐ〜となった気がした。

(たしか家に新ちゃんが用意してくれたカレーがあったから食べに帰ろうかな・・・。)

そんな事を思ってぶらぶらと歩いていた道を戻ろうと踵を返そうと視線を横に向けると、人ゴミの中にやたらと目立つ黒い制服を着た人物の背中が目に入った。

恥ずかしいけど、最初は本当に誰だかわからなかった。
・・・だっていつも私の目の前にはあの人の背中じゃなくて笑顔があったから。
だから本当にわからなかったんですよ。

でも、誰だかわかんなかった癖して目が離せなかったのは事実。
それで、その背中に向かって進んでいたのも事実。

人を寄せ付けるような、安心させてくれるようなあの人の背中。
だからなのかもしれない。
誰だかわからないのにその背中が凄く気になってしまって。

確信なんか全くなかった癖してなんて大胆な事をしたんだと思う。
気が付けば、手はその背中にそっと触れていて無意識に名前を読んでいた。

「・・・近藤さん?」

ほら、やっぱりあの人だったじゃない。