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あれは・・・いったいなんでしょうか。 子猫 その3 猫がいた。 近藤局長の部屋の隅の座布団の上に丸くなって寝ている。 いつからいたのか・・・。 見れば座布団の近くには餌の入った入れ物と水、首には鈴の付いた首輪が付いている。 どこぞの家の猫なのか野良ではないようだ。 身体は綺麗に洗われていて、さらさらの毛が風になびいていた。 「あれは・・・いったいなんでしょうか。」 「子猫でさぁ。」 「あ、沖田隊長。あの・・・、それはわかってるんですけど・・・なんで局長の部屋に子猫が??」 「拾って来たらしいわ。」 「はぁ・・・。」 襖を開けたまま固まってしまった山崎に、たまたま通り掛った沖田が子猫の説明をし始めた。 「ダンボールん中で弱ってたあいつを近藤さんが見付けて連れて来てねぇ。んでそのまま居座っちまった。山崎ぃ、知らなかったのか?」 「はぁ・・・ここ一週間はり込みしてまして、今日はその報告に局長に会いに来たんですけど。」 「ふ〜ん。」 「一時保護ですか?」 「違うみてぇだ。近藤さんは飼う満々でさぁ。」 「でも・・・ここはペット禁止ですよ。」 「山崎、よく考えてみろ。近藤さんが弱ってる動物を見捨てて来れるような人か??」 確かに、と山崎が頷いた。 根っからのお人よしで、優しい近藤の事だ。 弱っている動物を見付ければ、助けてあげない訳がない。 「でもな、気を付けろぃ山崎。」 「はぃ??」 近藤がそう決めたのならばとやかく言う必要なんてないなと思い始めた山崎に、沖田が意味ありげな顔を向けて来た。 「こいつの姿に騙されるんじゃねぇぞ。子猫だからって気を許してると近藤さんを取られちまうからな。」 「??なんでです?」 「直ぐに思い知らされるぜぃ。」 そう言うと、沖田は去って行った。 一人残された山崎は、また訳がわからないというように首を傾げた。 「子猫に対抗意識剥き出してどうなるって言うんですか。」 「誰にだ?」 「うわぁ!!?」 沖田が去って行った方に意識を向けていたので、山崎は背後から掛けられた声に驚いてしまって手に持っていた報告書を落としてしまった。 ばさばさっと音を響かせながら四方八方に散乱した報告書を、やばいと山崎は屈んで拾う。 「おっと、すまねぇ。驚かしちまったか??」 振り向けば、一週間ぶりの近藤の笑顔があって山崎はちょっとドギマギしながら「大丈夫です。」と答えた。 恥ずかしいのか嬉しいのか、頬が少し赤くなっている。 「そうか?顔が赤いぞ。そんなにびっくりしたか?」 「はははっ・・・あの、局長。あの子猫は・・・ってあれ?」 落とした報告書を拾いながら、話しを逸らそうと近藤に座布団の上に寝ている子猫について聞こうと指を指した。 ・・・が、 「いない・・・。」 「あぁ、こいつの事か?」 「へ?」 座布団から近藤へ顔を向けると、そこには甘えるようにして足に擦り寄る子猫がいた。 近藤の声で起きたのか、それとも報告書の音で起きたのか、今ではわからないが子猫はすっかり目を覚ましてしまったらしい。 「可愛いだろう。この前拾って来ちまってな。ペット禁止とはわかってたんだが・・・その、かなり弱ってたみたいだったもんで。」 近藤は、あははと笑いながら子猫の喉を撫でると気持ち良さそうにゴロゴロと鳴いた。 暫しの沈黙の後、近藤は「すまねぇ。」と困ったように笑いながら謝って来た。 「なんで謝るんですか。ここでは近藤さんがいいって言えば規則なんて関係ないんですよ。だからいいんじゃないですか。」 「いや〜そう言ってもらうと嬉しいよ。実はこいつを飼ってる事はまだ総悟と山崎しか知らないんだわ。トシに言えば捨ててこい!っていうに決まってるしな。」 だからまだ内緒にしてるんだと言う近藤は、また困ってしまったように頭を掻いた。 隠し事などないとまで言い切れる土方に内緒にしているのだ、どうやら少し後ろめたさがあるようだ。 「そうだったんですか。・・・だったら俺もその子猫のお世話手伝いましょうか??」 「え?」 「ほら、局長はいろいろ出張とか接待とかで忙しいじゃないですか。その時は俺が面倒みますよ。・・・それに副長になんか言われたら俺のせいにすればいいんですから。」 ねっと笑うと、近藤がちょっと嬉しそうな顔で笑ってくれた。 「山崎がそこまで気を使う必要はねぇよ。トシには近い内に言うつもりだしな。いや〜でも一緒に面倒みてくれると助かるわ!頼んじまうかな!」 「任せて下さい。」 よいしょっと近藤が子猫を抱くと、山崎の方へ連れて来てお互いの顔と顔が向き合うように上げた。 あいさつでもさせるように、「宜しく御願いします。」と子猫の頭を下げさせたので、山崎も「宜しく御願いします。」と頭を下げた。 (この子を使う気じゃないけど・・・これで局長ともっと一緒にいられる回数が増えたぞ。ラッキー) 笑顔の裏でそんな事を思っていた山崎は、嬉しそうに子猫に触ろうと手を出そうとしたその時・・・子猫の目がキラリ光った。 「・・・え?」 「あ・・・。」 近藤に抱かれたまま、出ていた前足で山崎の顔を思いっ切り引っ掻いて、フーっと威嚇するように毛を逆立ている。 「おぉぉ!山崎!!大丈夫か ぁ!!?血が!血が出てるぞ!?」 慌てる近藤に対し、山崎はその場に固まってしまった。 (こいつ・・・俺の心の中を読みやがったな。) 戻 |