なんて珍しい。

縁側で猫

今日も一日良い天気で、太陽の光が丁度良く降り注ぎ風は強過ぎず弱過ぎず。
夏と秋の境目は一番過ごしやすい季節だと近藤は気分も良く人々が行き交う大通りを一人ニコニコしながら歩いていた。

異様な光景である。
真選組の隊服を着た大男が緊張感も何も感じさせない雰囲気を漂わせているのだ。
と言うか鼻の下を伸ばして笑っているのだから、人々はちょっと気持ち悪いモノを見るような目で近藤に目線を向けていた。
元は悪くないというのに勿体ない。
しかし、そんな事を知ってか知らずか気にもしていないのか近藤は足も軽くもくもくと進んで行く。

向かうは未来の妻、妙の道場。
いつものパターンで殴られるのはわかっているが懲りる事もなく近藤は大好きな妙の元へ向かった。
右手にみたらし団子を持ち、もしかしたら今日は優しく迎えてくれるかもという淡い期待を持ちながら。


妙の道場兼自宅に付いた近藤は、呼び鈴を鳴らしても誰も出て来なかったので無断で塀をよじ登り敷地内に潜入を試みる。

「よ〜う!局長さん!今日も懲りずに来たじゃないか!!頑張れょ!」
「お〜う!有難う!」

近藤のこの行為は、ここら周辺のご近所さんには有名で諦めずにやって来る近藤の根性に感動して応援してくれる人さえいる。
昔は迷惑がっていた人も、今では何も言わなくなった。
慣れと言うものは恐ろしいものだ。

「よ・・・っと。」

でかい図体とは裏腹に、軽い身のこなしで近藤は華麗に着地をした。
こそこそする気は全くなく、近藤は道場を越えて奥の妙の自宅へと走り出した。
本人に不法侵入をしているという実感はないらしい。

「おっ妙さ〜〜ん!!お元気で〜したかあぁぁぁ!!?・・・れ?」

ズザザっと音を立てて縁側で元気一杯に大声を上げた近藤だったが、そこであまりにも有り得ないモノを目にし固まってしまった。

最初に感じたのは猫。
まるで猫の昼寝だと近藤は思った。
今日は天気も良く、風も気持ちがいいからきっと休んでいる内に眠ってしまったのだろう。
その証拠に、周りを見ればたたみ途中の洗濯物がちらほら見当たる。

「なんて珍しい。」

さっきの大声とは打って変わり、出て来たのは小さな声。
近藤は物音を立てず、静かに縁側に腰を下ろした。
それでも、目線だけはそれから外さず。

「可愛いよ、なやっぱり。」

近藤の表情はとても優しい。
先ほどの鼻の下を伸ばしているような顔ではなくなっていた。
全てを包み込んでくれるような、誰もがホッと安心するようなその笑顔。
優しいその笑顔を最愛の人は気付くはずはないが、近藤はただただ優しい目線を向けていた。

暫くして、近藤はそっと縁側にお土産に持って来たみたらし団子の袋を置いた。
そして、ゆっくりと右手を伸ばす。
伸ばすと同時に身体を前に倒した。

そして・・・。

「今日だけ許して下さいね。」

顔と顔が近い位置で、近藤は優しく妙の顔を手の裏で撫でた。
そして惜しむように上体を起こすと、ふ〜とため息を付いて今度は雲一つもない青空を見つめる。

心なし、顔が赤い。
自分のやった行動を思い出し、ポリポリと頭を掻く。

そしてチラッと妙の方を向くと

「このままずっとここに居たらきっとぶん殴られるよな。でも・・・もうちょっと見ていたいし、この寝顔が見てられるのなら後で殴られても全然いいか。」

と幸せをそうに二カッと笑った。

結局その後三十分後に妙は目を覚まし、目の前にいた近藤に驚き激怒しぶん殴るどこかぶん投げられてしまったが、やっぱり近藤の顔は幸せそうであった。