火照った身体に冷たい掌はとても気持ちが良かった。

冬はコタツで

空は雲っていた。
太陽は見えず、冷たい風が強く吹いて葉の落ちた木々を揺さぶっている。
冬も中頃で、寒さは日に日に厳しくなり真選組の隊士達は震えながら一日の仕事に励んでいた。

そんな中、沖田総悟は屯所の一室にある暖かいコタツを独占し居眠りをしていた。
こんなに寒いのに仕事なんてできねぇと文句を言ってサボっているのだ。

外では他の隊士達が寒さに震えながら仕事をしていると言うのに、そんな事お構いなしと言わんばかり沖田は暖かいコタツの中、頭だけを出して気持ち良さそうに眠っていた。

ここは幹部専用の部屋だ。
他の隊士達が無断で入る事は出来ない。
そして沖田を怒鳴りつける事の出来る唯一の存在だった土方は、二日の出張で江戸を出ていた。

まさに天国。
沖田は今この瞬間を心の底から味わいつつ大きく深呼吸をした。

「総悟君みっけ。」

浅い眠りに入っていた沖田は、聞き慣れた声に呼ばれうっすらと目を開く。
自分の上に覆いかぶさるように、ゴリラのような近藤の顔がよっと歯を見せて笑っている。

(あ〜いいな、これ。)

目をあけると直ぐに大好きな近藤の顔を見る事が出来て、沖田はうっすらと唇に弧をつくる。
そして、おはようごぜぇます、と挨拶をした。

「総悟、お前まだ仕事中じゃなかったか?」
「仕事中でさ・・・・。」
「さっき山崎が捜してた。今日は一緒に見廻りとか言って。」
「寒いから、外に出たくねぇです・・・・。」
「まったく、お前はしょ〜がねぇなぁ。」
「すいません・・・・・。」

沖田はまだ眠たそうにうつらうつらして近藤に言われた言葉を意識が飛びそうになりつつもなんとか返していた。

(・・・・・・・ねみぃ。)

コタツは暖かく気持ちが良くずっと入っていたい。
誰が好き好んであんな寒い外に出て行かなくてはいけないのだ。
仕事だからと言っても、沖田はまったく行く気などなかった。

「駄目だな、こりゃあ。」

呆れたような声がした。
近藤だとは分かっていたが、沖田は睡魔に負けてもう返事すらしない。
瞳は閉じたり開いたり、このままほっといたら眠ってしまうだろう。

意識が飛びそうになった時、額にヒヤリとしたものが触れた。
何だろうと意識を戻しつつ、それの正体が近藤の手だと知った。

暖まっていない近藤の手は、コタツで火照った沖田にはいつも以上に冷たく感じ、そしてとても気持ちが良かった。

「近藤さんの手・・・・・冷たくて気持ちがいいでさぁ。」

大きくてゴツゴツした近藤の手は、昔から竹刀や刀ばかりを握っていた武士の手だ。
乾燥しているのか肌触りはザラザラしていてあまり良いものではないものの、とてもホッとする。

「コタツの入り過ぎだぞ、総悟。」

長くコタツに入っていた沖田の額は、じっとりと汗が出ていてサラサラの髪の毛が頬にはり付いていた。

近藤が苦笑をし、手を放そうとするのを沖田は眠気でハッキリしない意識のまま、コタツから手を出し近藤の手を掴んだ。
そして放さないでこのままでいてと言うように、自分の額にまた押し付けた。

「ちょっとだけ・・・・・。」

そう呟くと、パタリと沖田の手が床に落ちた。
それを合図にするように、深い眠りに入ったようだ。
沖田はスースーと規則正しい寝息を立てている。

近藤は少しの間困ったようにその場を動かなかったが、流石に寒くなって自分もコタツの中に入った。
汗を掻いている沖田を思い少しだけコタツを弱くすると、空いている方の手で頬杖をしながら沖田の額に添えられた手をゆっくり動かし優しく撫で始めた。

汗ではり付いていた髪の毛を払うと、柔らかい頬っぺたをプニっと突付いた。
沖田は起きそうになく、気持ちが良さそうに眠っているものだから、プニプニと調子付いて突付きまくってみたがやはり起きそうにならない。

沖田がここまで無防備でいるのは珍しい。
完全に心を許しているようだ。

あどけない寝顔をする沖田を見つめ、近藤は二度目の苦笑いをした。

「あ〜ぁ、こりゃあ後でトシに怒られるな。」

ぼやきつつも、自分は沖田に甘いなぁと自覚しながら近藤は嬉しそうだった。