午後三時。
この時間だけが、一日の中で一番幸福な時。

午後三時

台所でお茶を淹れるのは山崎の仕事だ。
一癖も二癖もあるあの三人にお茶を淹れられるのが山崎だけだという理由であった。

土方にお茶を持って行くと、大抵は怒鳴られる。
仕事に息詰まっていている時なんか最悪だ。
下手な事したらあの鋭い目で睨まれるか、一発ぶん殴られる。

沖田にお茶を持って行くと、大抵はアイマスクで昼寝をしている。
だからお茶だけ置いておく様になるのだが、沖田の場合必ずお菓子を用意しておかないと後で虐めのターゲットにされてしまうのでかなり注意が必要だ。

近藤にお茶を持って行くと、大抵は苦手なデスクワークをしている。
山崎がお茶を持ってやってくると、あの笑顔で迎えてくれる。

「局長、お茶持って来ました。一息して下さい。」

ほら、今日もデスクワーク。
頭掻きながら、背中を丸くしている。

「お、もう三時か〜。有難うな山崎。」

お茶を近藤の机の上に置く為、部屋に入る。
相手は軽く机の上を片付けると、横に置いてある棚を開けながらニカっと笑う。

「おう、山崎!実はな、昨日美味そうな菓子屋を見付けてな。お茶ん時に食べようと思って買っといたんだ!」

棚から出したのは、大きな二つの大福。
ほんのりピンク色をしてるので、いちご大福のようだ。

「ほれ、山崎分。」
「いつも有難う御座います。でも、副長達に内緒で俺なんかにこんなんしてくれていいんすか?」

近藤の机の上には、湯飲みが二つ。
一つは近藤のデッカイ湯飲みで、もう一つは山崎の普通の湯飲み。

近藤はガハハと笑いながらあぐらをかき、山崎はそんな近藤のちょっと斜め後ろに正座して腰を下ろしている。

「いいんだよ。トシは甘いもん嫌いだし、総悟は独りじめしちまうだろ。それに、山崎には仕事に関係ない雑用もやらしてるしな〜これはその感謝の気持ちってやつだ!気にすんな!」
「・・・はぁ。」

山崎は思う。
もし土方が近藤に三時のお茶に誘われたら、文句も言わずこのいちご大福を食べるだろう。
もし沖田が近藤に三時のお茶に誘われたら、いちご大福を独りじめして食べたりしないだろう。
大好きな近藤との時間を、無駄にはしないよう気をつけながら三時のお茶を楽しむに決っている。

山崎にとって、今までのこの三人を見ていれば手に取るようにわかる事だ。
あの二人にとって、近藤は中心的存在で絶対的存在だから。

でも、当の本人は全然気付いてない。
可哀想な二人。

「どうした、山崎。いちご大福は嫌いだったか?」

大福をじっと見たまま固まっている山崎に近藤は見当違いな事を言う。
そんな事ないです大好きですよと言うと、また嬉しそうに笑った。

可哀想だとは思うけど、教えてあげる気はしない。
いつもこの人の笑顔を隣で見れるんだから、こん時くらいはいいでしょ。

三時のお茶は、この人の笑顔を独りじめ出来る幸福な時間。
代わりにやってくれるって人が出ても譲る気はありませんよ。