観察方って仕事は、地味に見えて結構きつい。

新しい情報を入手しないといけないし、その情報が本当かどうか調べなきゃいけないし、敵の本拠地に潜入して情報を得らなきゃいけないし。
下手したら苦労して手に入れた情報がデマだったり罠だったり、うっかり捕まってしまったりとかある。

てか、今がまさにそれなんだけど・・・。

ヘルプ

まさかこんなドジをするなんて思ってもいなかった。

今回の自分の任務は最近新しく出来たテロリストの調査であって、直接対峙する事ではなかった筈だった。
でも、調査を進めるに従って段々テロリストの全貌がわかってきて、あんまり大きくない集団だったから、どんどん勝手に調査をして・・・運悪く見付かって捕まってしまったのだ。

何故捕まってしまったかと言うと・・・。
こっそり尾行中にそこらの餓鬼に声をかけられて、慌てて追い返したらその餓鬼がでっかい声で「ここに変な人がいる〜!」って叫ばれてしまったからだ。
運が悪かったとしか言いようがない。

そのせいで自分はテロリストに捕まってしまった。
変装の為に買ったちょっと高めの着物が拷問のせいでボロボロだ。
気に入ってたのに・・・真選組の領収書で買ったからいいか。

(でも、土方さんにバレたら殺されるかもなぁ。)

そんな事を冷静に考えてるなんて、自分は肝が座ってるなと山崎はコンクリートの天井を見ながら思っていた。

今山崎がいるのは、一畳ほどのスペースの部屋の中。
カビ臭くてジメジメしてて息苦しい。
窓もないし家具もない。
床もコンクリートで冷たいし、壁も同じ。
唯一の出入り口は鉄の扉で硬く閉じられている。

そんな場所に山崎は力なく、体中怪我だらけで横たわっていた。
いや、倒れていると言った方があっているかもしれない。
着物はボロボロで、頭からは血が流れ、腕も脚も着物で隠れている部分も打撲と切り傷だらけ。
骨も何本か折れているだろう、動こうとしても激痛で動けない。

テロリストに捕まって三日目。
どうやらテロリスト達は山崎が真選組だとは知らない。
自分の正体がバレていないのは良かったが、その代わりどこの手の者かとしつこく聞いてくる。
さすがに自分は真選組ですなんて言った日には殺されるだろうし、下手に他のテロリストの名前を出してそれが敵対している相手だったら同じように殺されるだろうし、仕方がないからダンマリを決め込んでいるのだ。

そんな事を露とも知らないこいつらは、山崎の正体を暴く為に拷問をし続けていた。
朝から晩まで、たまに休憩はあったがほとんど一日中山崎は拷問を受けていた。

その手口は残酷であって、大抵の人間では一日も持たないだろう拷問に山崎は必死で耐えていた。

観察方だからと言っても、それなりに腕も立ち様々な拷問や尋問にも耐えれるよう訓練もしている。
それに下手にいろいろしゃべってしまったら、大切な仲間を危険な目に合わせる事になるかもしれない。
それだけはどうしても避けたい。

(・・・さすがに三日目となるときついな。)

一応捕まる時に、自分の状況を携帯のメールで土方さんに送っておいたが、逃げている時に打ったから三文字が限界で「ヘルプ」としか送っていない。
きっと最初は悪戯だと思っただろう。
テロリストの情報は一応報告してはいたが、真相が定かではなかったからメールの内容と結びつくかどうか。
てか家出とか思ってる可能性の方が高いかも。

三日も連絡がないんだから、そろそろ不審に思ってもおかしくないだろうけど。
ちょっと絶望的かもと、また冷静に考えていた。

「・・・?」

ドタドタっと遠くの方で音がすることに気が付いた。
さっきまで静まり返っていた周りの空気が震えているみたいだ。
何事だと思ったけど、やっぱり身体が痛くて動かない寝たまま思考を巡らす。

「誰も逃がすんじゃね〜ぞ!?一人残らずとっ捕まえろ!!?」
「・・・土方さんの声?」
「たく、なんでこんな雑魚共に山崎の馬鹿は捕まったりしたんですかねぃ。やっぱり鍛え方が足りなかったんじゃないですかぃ。こりゃあ俺が直々に絞り直してやしまさぁ。」
「沖田さんの声もする・・・って事は。」
「まぁまぁ総悟、今はそんな事より早く山崎を見付けてあげような。」
「局・・長・・・局長だ。・・・局長!!?俺はここに!局ちょ・・ぅ。」

興奮して大声を上げたら、肋骨が悲鳴を上げた。
やっぱり折れているらしい、激痛のあまり声が出なくなった。

「つぅ・・・くそ・・・・っ。」

さっきまでの冷静さはどれえやら、局長達がすぐそこまで来ているって言うのに、こんな所でのん気に寝ていられるか。

「なんか今声しなかった?」
「あ〜ここ辺りからしましたぜ。あ、土方さ〜ん!後ろ危ないですぜぃ!」
「総悟!?てめぇ少しは働けよ!!?」
「何言ってるんでさぁ!俺は近藤さんを守っているんですぜ、雑魚は土方さんが片付けてくだせぇよ。そんでそのまま死んでくだせぇ!」
「総悟君、それはちょっと言い過ぎだよ。」

どんどん声が近づいてくるのがわかる。
声が出ないのなら他の方法で自分の居場所を教えなければ。

山崎は、近くにあった不味い飯の入った茶碗を掴むと今出せるだけの力を振り絞って鉄の扉へ投げる。

派手な音がして茶碗は砕けた。

「近藤さん!今の音、この扉から聞こえましたぜ!山崎、生きてるか!!」
「おぃ!山崎!!ここにいるのか!!?」

(あぁ・・・これでもう大丈夫だ・・・・。)

その後、鉄の扉が勢いよく開いて待ち焦がれた人が入って来た気がしたけど、三日間の緊張の糸が切れて、疲労と激痛に意識が飛んでしまって覚えていない。

でも気が付いて目を開けると、冷たいコンクリートの上にいるのではなく暖かくて広い近藤の背中に背負われ凄く嬉しくて、山崎は安堵したようにまた目を閉じた。