大好きな貴女の笑顔が頭に浮かんだ。

大切な人++06.09.14++

激痛が襲った。
でも何処が痛いのかわからなかった。
身体全体が悲鳴を上げているのだ。

無意識に手が動くと、触ったのは腹だった。
触った瞬間、また激痛が襲う。
今度は腹から直に伝わってきたから、やっぱり痛いのは腹なのだと何故か冷静に思った。

少し腹から手を離し目線を向けると、掌は真っ赤に染まっている。
腹からは止まる事なく血が流れ出ていた。

これは不味いと思って直ぐ近くにいたトシに目線を向けると、見た事もないような顔して近付いて来る。
おいおい、今は戦闘中だぞ。
そう言ってやろうと思ったら、声がでなかった。

足がもつれてその場に倒れた。
背中から倒れて、うっと声が出た。
腹に響いたみたいだ。

仰向けになって、今見えているのは空だ。
煙の間から見える空は清々しいほどに青い。

相変わらず腹からは激痛が襲い血はドクドクと流れ出ていたが、何故か心は落ち着いていた。
致命傷ではないもののちょっと血が流れ過ぎだなと冷静に考えていた。

人間、死に直面した時は過去に起こった事が走馬灯のごとく思い出すとか。
でもそんな事を思い出す事はない。
だからきっと大丈夫だとうと思う事も出来た。

それでもだんだんと意識が薄れてくるとこのまま死んでしまうのではという不安が生まれる。
まるで眠りにつくように瞼が重くなっていく。
意識を飛ばしてはいけないとわかっているのに、逆らう事が出来ない。

これで死ぬのか、そう思った時、大好きな貴女の笑顔が頭に浮かんだ。

そうだ。
お妙さんが待っているんだ。
こんなところで死ぬ事なんてあってはいけない。

大切な人が待っている、その思いを胸に近藤は薄れ行く意識の中で絶対に死ぬものかと強く誓った。