| 接触不足
エドワードの機械鎧が故障した。 故障と言えばいいのかはわからない。 毎度のことながら、エドワードが機械鎧を振り回した挙句、壊したのだ。偽の情報を掴まされたことに対する、 八つ当たりが含まれていることに疑いの余地はない。 そのため、急遽リゼンブールへと帰路に着くことになった。 車両の中には、色々な目的で列車に乗っている人たちがいる。 自分たちは何に当て嵌まるのだろうとそうアルフォンスは思う。 しかし、溜息の一つくらい吐きたいのに、吐けない自分の身体が悲しい。 「ウィンリィ、怒ってるだろうね。唐突に帰ったりしたら」 「ははははは」 エドワードの額には汗が滲んでいる。 自分の身に何が起こるのかわかっているのだ。 「笑ってる場合じゃないよ!兄さんいつもウィンリィのスパナ食らってるし、 このままだと骨格に影響して背伸びなくなっちゃうかも・・・!」 「誰か成長ホルモンないほど取り返しのつかないドチビか!」 「ウィンリィももっと別のもので兄さんを殴ればいいのにね」 「おい、さりげなく何てこと言ってるんだ!」 「でも、兄さんがウィンリィに心配かけなきゃいいんだよ。ちゃんと連絡もしてさ、だから、ウィンリィ怒るんだよ」 さりげなく、報告のあまりにもの少なさを責めるような口調になってしまう。 ロックベル家に戻ってきたとき、ウィンリィはスパナでエドワードを殴った後、すっきりしたという顔をする。 それは自分の中にあったいろいろな感情(連絡しろとか、心配かけてとか)をエドワードにぶつけているのだと思う。 それほどまでに、心配してくれている人がいるのだ。 だから、身体を取り戻して、喜ばせてあげたいとそう思う。 アルフォンスは動かせなくなって使えなくなったエドワードの機械鎧をひとしきり眺めた。 高性能な、エドワードの片手同然の機械鎧だ。 アルフォンスは問題漢なので、わからないが、機械鎧を作る作業の大変さを知っている。 それがどれだけ、技術が必要な職業であるかも。 ウィンリィは幼いながらに立派な一人の機械鎧技師だ。 もう少し丁寧に扱いなさいとウィンリィはそう言うが、無茶なことを理解しているだろうと思う。 それでも、言わずにはいられない。 怪我をして欲しくないと思っているし、だからこそ、改良に余念がない。 エドワードとてだから、機械鎧を壊してしまった後で、とても後悔する。 ウィンリィの気持ちを踏み躙ってしまったような、そんな感覚に陥るのだろう。 「だってさ」 独り言のようにエドワードは呟いた。 窓枠に肘をつけ、車窓を見ているので、どんな顔をしているのかはわからない。 つられるように、アルフォンスも車窓を眺めた。 穏やかな田園風景が広がっている。 リゼンブールに近付くにつれて、長閑な景色が広範囲に渡っている。 「うん?」 「やっぱり、報告は成功したって知らせたいだろ」 根底にあるのは同じ感情だ。 心配を掛けたくないし、悲しませたくない。 だから、未だ機械鎧の身体でいることを教えたくない。 ウィンリィがどんな思いでエドワードに機械鎧を付けているかを知っている。 それに報いたいと思っている。 だからこそ、人体練成が成功したときに、一番に知らせたい相手がウィンリィだろう。 「青春だねえ」 しみじみ呟くと、照れ隠しにエドワードに頭を殴られた。 「青春言うな!馬鹿!」 |