忌々しい響きを持つ戦争と言う名の破壊があった。
軽軽しく口に出せるものであるのに、笑いの響きがとても耳障りなものとしか感じられない。
乾いた笑い声が鼓膜を刺激する。
もう戦争は終わったのだ、と。
他の者にも聞きたいという欲求がある。
――――何のために、あんなことが起きなくてならなかったのかと。
ある女が笑う。狂気じみた声を上げて。
「殺すのは楽しい?楽しいだろうね。自分より弱いものを虐げるのはさぞかし気持ちいいだろうよ!」
ある男は弱さを引き合いに出して、懇願する。
「私は身体が弱いんだ。ずっと身体が弱くて。なあ、だから殺さないでくれ。どうせ、私は長くないんだ」
ある老人は神の鉄槌が食らうだろうと慣れない脅迫をした。
「あんたたちがしたことを決して我らの神はお許しにならないだろう。あんたたちのしていることを我らの神は全部お見通しだ。
いつか、あんたたちは後悔することになるだろう」
ある子供は自分がなくしたものを追い求めた。
「何でこんなことになるんだよ。何でこんなことに。嫌だよ、こんなの。おかしいよ、こんなの。
だってこれからもずっといつもと同じ生活が続くと思ってたのに!」
わかっていたことだ、とロイは発火布を擦り合わせて、燃やした。焦げ臭い匂いが周りを包んだ。肉の焼ける臭いだ。
それを功労なのだと人は言う。実際に地位も上がっている。しかし、それが何だと言うのだ。
何人も何人も殺して手に入れた地位だ。怨嗟と呪詛が、まとわりついている。
戦場では自分の罪悪感、孤独を癒してくれる人間を求めている者たちが多くいた。
そのとき、何を馬鹿なことを、とロイは思わずにはいられなかったが、今なら気持ちはわかる。
ただ、寂しいと。
戦場の最中、そんなことは一度として考えたことがなかった。ただ、何としても戻らなければならないとそう思えたからだ。
両手を血で汚しても。
何故こんなことが起きなければならなかったのか、ただその憤りだけが色んな感情が風化していることを感じながら、
今でも消え去ることはない。
「嫌な日ですね」
せめて、安らかに送りたいとそう思っていた。
それなのに、天からは雨が零れている。
空が涙を零している、と表現すると似合うかもしれない。
「………みんな、死んでしまいましたね」
感慨深げに屈みこんだホークアイに何て言葉を掛けたらいいのか見つからない。
慰霊碑。
そこには自分たちと一緒に戦ってきた者たちが埋められている。
身体が故郷に戻って来れた者はいい。
遺体が五体満足なものなどそうはいない。遺体を引き取った家族の顔を忘れることなどできないだろう。
一瞬息が詰まらせたのかと思うと、悲壮に嘆いてみせた。
こんなことになるなんて誰も思ってなかった、そのことがよくわかる。
「………私たちには大佐がいましたからね。大佐には感謝してます」
そんな言葉を聞きたくなどなかった。他の者たちを助けられなかった。
ちらほらと花が手向けられている。色とりどりの花が。
「私、未だ夢を見るんですよ」
「何の夢だ?」
わかっていた。何の夢なのかは。
「イシュバールでの夢です。その中で私はもうひたすらイシュバール人を殺してるんです。ずっと」
何がロイが言うのを期待しているのだろう。
「ひたすらにひたすらに。機械的ですね。もう何でこんなことをしてるんだろうとか考えないで。
起きた後はだからか、すごく疲れます」
「休暇も残り少ない。休暇が終わったら、私の下で働いてもらうんだ。覚悟しておけ」
決意表明に何を今更、とホークアイは苦笑いを浮かべた。
自分たちの戦争は未だ終わりを告げていない。何もかもこれからなのだ。
ロイは今度此処に来るときは、自分が頂点を上り詰めたときだと。
そう決意した。
きっとずっと前から私たちは
いろんなことを置き去りにしながら
色々少しずつ足を進めて
やっていくことしかできないから
もう元には戻らないけれど
夢は全部夢で
現実との間には境界線が引かれていて
だからこそ悩んで迷って
そのときに後悔しないように
それでもきっと答えを探し出す
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