ever after





リゼンブールにエルリック兄弟が戻ってくるときはいつも決まっている。 ウィンリィはだからこそ、エルリック兄弟の姿を二回のベランダから見たとき、瞬時にしかめっ面を作った。 それは勿論、二人にもわかったことだろう。 どこまでも続いているようなそんな穏やかなリゼンブールの景色の中に赤いコートを着たエドワードと鎧姿のアルフォンスは目立つ。 ウィンリィは直ぐに階下へと向かった。

「また機械鎧壊したの?」
「悪い!!」
「もう、一体どんな旅してんのよ!」
「だから悪いって言ってるだろ…」
「謝ってないじゃない!」
「すみません、ウィンリィさん機械鎧直してください」
「それでいいのよ。勿論、ちゃんとお代貰うからね」

ロックベル家へエドワードとアルフォンスが来てから、早速ウィンリィは機械鎧の調子を見ることにした。 屈曲させたりとその状態を確かめる。 どうやら、接続部の接触が悪くなってしまったようだった。 ぶらんぶらんとどうしても、機械鎧が垂れてしまう。 エドワードとアルフォンスが心配そうに見遣る中、ウィンリィの視線が鋭くなっていく。

「私の最高傑作を」

一体どうしたらこんな風にしてしまえるのだろうとそうウィンリィは心の中で呟く。
一体どんな旅をしれいれば、と。
機械鎧がそう簡単に壊れたりしない。 勿論、機械だから、整備をしなければいけない。 それは二人に言っている。 しかし、それにしても、何度も壊しているのだ。 それは、旅が過酷なものである何よりの証拠だった。

「ちょっとエド、背中向けて」
「ん」

背中を向けたのを機に別の角度から、機械鎧を後ろの接続部分を確かめる。 ソファの上に今、ウィンリィとエドワードは隣同士で座っている。 だからこそ、不意に背中に目が自然と吸い寄せられた。 機械鎧をちゃんと見れるように、とエドワードは上半身裸だった。 だから、尚更わかってしまう。 エドワードの背中には傷跡が幾つもあった。 幾つも幾つも。 笑えなかった。 これまでの旅で治癒したいたものも幾つもあった筈だ。 しかし、こうやって残ってしまう痕を見るとどうしようもなく胸が痛んだ。

行かないでって言えたら良かったのに。
聞き分けのない子供のように、そう言えれば。

遠ざかっていく背中に向かって言いたいことがあった。
両親にもそして、幼馴染にも。

言いたかった。
そうすれば、傍にいてくれただろうか。

「あの、ウィンリィさん?」

ウィンリィの動きがないので、心配になったのだろう。 ウィンリィは答えず、エドワードの背中に手を当てた。 傷だらけであっても、温かく、生きているのだと知れた。 遠くなる背中も今は触れる場所にある。 そのことに安堵を覚える。

「えっと、あの、ウィンリィ?」
戸惑っているエドワードにウィンリィは手を放して、立ち上がった。
「ちょっと工具持って来るから、そこで待ってなさいよ」

怒気を露に、直ぐに直してやるんだから、とウィンリィは袖を捲り上げ、工具を取りに向かった。





「なんかさ、今日ウィンリィ変じゃない?」
残されたエドワードはアルフォンスにこそこそ囁いた。 顔が火照っているのは隠しようがない。 仕方ないだろう、免疫がないのだから。 それに、とエドワードは思う。
昔と違い、少しずつ幼馴染と距離が出来てしまったように思う。 隠し事もするようになった。 それは自分たちが成し遂げようとしていることに対する思いからきているのかはわからなかった。
「だってさ、普段だったらスパナで殴るのにさ」
「いや、そんなことないよ」
そんなエドワードの心境を知らず、アルフォンスが否定する。
「ほんとか?」
「うん」
そうアルフォンスは頷いた。
「ちゃんと心配してくれてるよ、いつも」

遠回しに安心させてあげないとね、と言うアルフォンスにエドワードはどう答えたらいいのかわからなくて、結局苦笑いを浮かべた。 そして「おう」と答えた。