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最近結婚が多くてな 軍人同士の結婚も多いよ そうなの この前見たら花嫁は私とデートしたことがある女性だった あんたの武勇伝には興味ないけど やっぱり花嫁になるときが1番女性は綺麗だな 華やかな白いウェディングドレスを纏った女性が頭の中に浮かぶ。きっと綺麗な笑顔を浮かべ、みんなから祝福されるのだろう。 結婚もいいものだと思ったよ あんたはそういうの嫌いかと思ってた 相手によるよ あんたを捕まえられる人はいるのかよ 本当に仲が良くてな、その新郎新婦は 花嫁に未練持ってるの? 私たちもそうなれるといいな その言葉に、一瞬で顔を上げた。 不意打ちだ。 えーと心の中で呟く。 あんた何言ってるの!?オレは・・・。 色んな言い訳がついて出てくる。 しかし、ロイの目に縫いつけられたように言葉が失われた。 結婚しよう 私の人生は君のものだ ずっと言おうと思っていた オレのって言われても 要らないと言えるわけがない。 ずっとこの男が好きだった ――もらってやるよ その日、エドワードとロイは誰も知らない中、執務室で結婚式を挙げた。 冬の訪れは突然やってくる。東方司令部でも、それは変わりない。白い世界がやがて、全てを埋め尽くすような気がする。 「ん、終わった」 「よろしい」 場所は執務室。 エドワードは報告書の手直しをロイからさせられていたのだが、ようやく終わった。 「肩凝った〜」 「だったら、初めからちゃんと書きなさい」 「・・・眠かったんだよ」 「たまにはちゃんと寝なさい」 ロイはそう注意して、思い出したように執務机の引き出しを開けた。 「チョコがあるが、食べるかね?」 「引き出しに入れとくなよ」 「これならいつでも食べれるだろう?」 手のひらサイズのまだ、封を開けていない小箱が差し出される。自然と報告書と小箱をエドワードは交換した。 「大佐からもらうと何かありそう」 「失敬な。私はそんな大人じゃないよ」笑って、嘘を吐く大人に思わず毒づく。 「嘘くせえ」 何だかもらってふと、思い出したことがある。 今は1月。 2月にはイベントがなかっただろうか。しかも、チョコレートに関する。 一瞬、想像したそれに、エドワードは頬が緩みそうになるのを堪えた。 多分これから数ヶ月はこの目の前の男にも会えないだろう。 「もらっとく」 「そうしたまえ」 心なしか、ロイが嬉しそうに見えるから、不思議なものだ。多分、チョコレートの中に混じっているのは、愛情なのではないだろうか。 甘くて美味しいだろうチョコレートの味を想像して、エドワードは次回会うときは俺から何か渡そうかとそう考えた。 「ごめん」 気持ちが伝わればいいのに。気持ちを伝えるのは難しい。 謝れば、大佐は複雑そうな、そんな顔をした。 「何で謝る?」 「ごめん」 色々なことに疲れて、喧嘩をして、その後で謝った。 大佐じゃなきゃ良かったのに、とか、互いに男同士だし、とか、しまいにはどうでもいいことを言ってしまった。 もう別れる、とか。 心がささくれて仕方ない。 変わらないことに対してエネルギーをぶつけるのは、非生産的だ。科学者は、理論的に物事を考える。 「大丈夫だよ」 何も根拠はないくせに、何故そんなに説得力があるのだ。絶対おかしい。 これが、きっと大佐の周りに人が集まる理由の一つかもしれない。 大佐は優しいから、俺のことを自分から切り捨てたりしない。 絶対的な安心感が今、ここにある。 大きな受け皿だ、まるで。 だからこそ、俺が支える側になりたいとも、そう思う。 「大丈夫じゃねぇよ」 あーもう、本当に離れられなくて困る。 「やる」 そう言って差し出された掌の上にちょこんとのせられた小さな包み紙に予想がついたが、なかなか頭は追い付かないもので。 「これは?」 つい、質問が口に出た。 「チョコだよ」 「鋼のが?私に?」 目が瞬くのは、あまりに状況が不自然だからだ。 「要らないのなら別の人に渡すけど」 「いや、もらうとも」 「じゅあな」 「ああ」 そう言って男らしく、エドワードは振り返らずに執務室を出ていった。 しばらく驚きでロイは固まっていたが、チョコレートの包みを開いて、口に入れた。 紛れもなく普通のチョコレートだ。 甘く、どこかほろ苦い。 執務室には偶然人がいなかったのだか、そこへハボックが手に小箱を持って現れた。掌サイズだ、とロイは思わず確認していた。 「あれ、大佐。大将にチョコもらわなかったんすか?」 じろじろと机の上を見るハボックに一瞬、何とも言いようのない殺意を覚えた。 「お前ももらったのか」 今日はバレンタインデー。女性から男性へ気持ちを込めてチョコレートを渡す日だったらする。何故そんな日が作られたのか。 「いや、アルから。律儀ですよね」 感謝を込めたチョコレートだろう。アルフォンスらしい。 「大きさが違う」 不平不満が口に出る。これでも、大事にしているつもりなのだ。ふと、見つけた大きな可能性の塊。初めて会ったときの焔の点いた目を思い出す。 「大将がチョコ渡したの大佐だけですよ?」 小さかったとしても、気持ち入っていますよ、とそう言われて納得しない気持ちがありながら、単純にも少し胸の奥が温かくなった。 「素直じゃないからなあ、あの子は」 「大佐がそうさせてるんですよ」 きっと、そうなのだろう。 ひねくれ者の私もたまには素直になって、素直な気持ちを伝えてみようか。 君が好きだと。 |