春が来るまで





4月1日といえば。
日付が今にも変わりそうだ。 自室の時計をじっと睨んでいた出雲は、携帯電話へと目を向けた。 カレンダーは土曜日で、ゆとり教育のため、学校は休みだ。 そのため、肝心な言葉が言えていない。紗英に誕生日おめでとう、と。 メールしようと思って、けれども認めたくないが、最近紗英を意識しているため、メールがし辛い。何だか変な誤解をされそうで。 もう時刻は23時53分。 誕生日おめでとうだけでいいかなあと試行錯誤しつつ、結局電話でおめでとう、と伝えることにした。
紗英は直ぐに電話に出た。
「今日、誕生日だろ?おめでとう」
「ありがとう」
わざわざ電話してくれて、という言葉の響きがひたすら優しい。 誰かに祝ってもらえたのかな、自分は祝ってくれたのに、とそう思う。
「…友達だし」
自分の言葉が白々しく聞こえるのは何故だろう。
「何か欲しいもんねぇの?」
紗英が自分にしてくれたことを思い出す。 「こうやって電話してくれただけで充分だよ」
「ほんとに?」
今日くらい我儘聞いてやってもいいけど、と暗に伝えると「じゃあ、今度二人でデートしようよ」と小さな声で言われる。
男同士で何がデートだ、と言いかけるが、気持ちをぐっと抑える。自分から言い出したことだ。男らしくない。
「いいぜ」
「やったあ、國崎くんとデート!」
子供みたいに電話口で騒ぐ声に、ふと、言いたくなった。心の中が温かいものでみたされて。 「紗英」
「何?」
「好きだよ」
「え‼」
絶句している紗英の姿が思い浮かぶ。きっと赤面しているだろう。もしくは、困惑しているか。
「友達としてな」
4月1日。
今日は紗英の誕生日でもあり、エイプリルフールでもある。 笑いが口元に自然と浮かぶ。
「え〜」
非難の声が携帯電話から聞こえる。
時計は0時をそろそろ回る。
嘘だよ、と出雲は伝えず、「また高校生デートにするからな。セレブなデートはなしだぜ」と紗英に釘を差した。


エイプリルフールに更新しようと思って、出来ず(>_<)出雲が天然小悪魔(笑)