「出雲ちゃん、ちょっとセロテープ買って来てくれない?」
メイド喫茶の店長が出雲にそう声を掛けた。
普段こういうときに、使いに出されるのは玄衛だ。しかし、今日は休みだ。 イベント告知に使うセロテープがなくなってしまったらしい。
「はい、いいですよ」
店は今、落ち着いている。 コンビニは直ぐ近くである。 着替えていこうとしたのだが、「ごめん、急いでもらえる?」という言葉に着替えがままならず、メイド姿で行くことになった。
まさか、知り合いに見られたりしたらどうしようと思いつつ、びくびくしながら歩くが、知り合いはいないようだ。 しかし、「あ、メイドさんだ」と出雲に向かって子供が指を指したりするので、店ならまだしも恥ずかしくて仕方ない。
それだけならまだいいが、にこやかな顔をした男に声を掛けられた。 「君、メイド喫茶の子?どこの店?」
出雲の容姿は女に片寄っているようだ。容姿に引きつけられて、声を掛ける人物がそれなりにいる。 俺は男だ!と声が出そうになるが、メイド姿では言えなかった。 ぐっと堪え、無視して歩き出そうとすると、手首を掴まれた。
「無視するのは酷くない?」
意外に強い力だ。
あー、これだから嫌なんだ。
自分の容姿目当てで近寄って来る男共は、出雲の気持ちを考えず、自分の気持ちを優先して、あれこれ勝手なことを言ってくる。
うるせー。
目を光らせ、暴力を振るおうとしたその瞬間に「國崎くん!」と馴染みの背後で聞こえた。
「國崎くん、大丈夫!?」
憤った声音でその男に割って入る。たまにバイトでお店に入ることがあるが、今日は客で紗英は来ていた。 手首を掴まれていた男の力がふと抜ける。
「何だ、男連れか」
分が悪いと思ったのだろう。男が立ち去る。
早く行っちまえと、睨みつけて男を見送り、紗英に向き直る。
「ありがとな」
紗英がいなくても解決出来たが、それでも感謝の言葉を伝える。
しかし、紗英は出雲の言葉が聞こえないらしく、自分の世界に入っている。男連れという言葉に何か妄想しているようだ。目がきらきらしている。
「おい、先置いてくぞ」
コンビニはもう歩いて少しだ。
「あ、ちょっと待って、國崎くん」
きっと、紗英は心配してついてきたのだろう。何せ、紗英にとって、出雲はプリンセスなのだ。女性だと勘違いしており、傍迷惑だと正直思うところがあるが。
ちらりと振り返ると、紗英が追ってくるところだった。
紗英が出雲のことを想っているのがわかるから、全力で振り払えないのだ。 一抹の悔しさを感じながら、出雲はコンビニへと入った。


さえいず、好き過ぎる!出雲はツンデレがいいよ!
ほんとは手を繋ぐ予定でしたが、手を繋ぎませんでした(←)